才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
本日より更新を再開いたします。
秘密の部屋編、全36話になります。お楽しみいただければ幸い。
ちなみに、秘密の部屋が開くまで14話かかります。ご了承ください(白目
1.そうだ、京都行こう
1992年の7月6日。7年ぶりに日本へ帰国したわたしはこの日、大阪から一人電車を乗り継いで京都を訪れていた。
「ぐへぇあっつ……。気温はそんなに高くないはずなのに、すごく暑く感じる……」
その立地上、夏はクソ暑くて冬はクソ寒いのが京都だ。2020年代ほど暑くはないにしても、ついこの間までスコットランドのハイランド地方にいた身としてはかなり暑く感じる。
特に、昨日降った雨の影響で湿度がやばい。梅雨明けもまだだから、結構しんどいものがあるぞ。
じゃあなんで京都まで来たのかと言えば、ここに日本魔法界の入口があるからだ。正確に言えば、ロンドンにおけるダイアゴン横丁に相当する場所がある。らしい。
日本に住んでた頃はこの世界がウィザーディングワールドだって知らなかったから、そんな場所があるなんて知れる機会なんてあるはずもなく。
日本にいる間、魔法関係で困ったことがあったらどうすればいいのかスネイプ先生に相談した結果、魔法省に問い合わせてくれて。それで日本にある魔法界の入口をいくつか教えてもらったんだよね。
京都に来たのは、単純に今の実家がある大阪から一番近かったからだ。あと歴史のある土地柄だから、色んな意味で面白そうじゃない?
ということで、わたしが来たのは二条城……の、西にある千本通り。ここに面した、一見すると幽霊屋敷に見えなくもない純和風家屋の門の前で杖を掲げて数秒待つと……音もなく門扉が開かれた。
門の向こうにあるのは、やっぱりうらぶれた屋敷。傾きかけた建物は見ていて不安になるレベルで、とてもじゃないけど人が住むのに適してるなんて言えない。早く解体しちゃったほうがいいように見えるレベル。
だけどここが入口なんだ。ダイアゴン横丁で言えば、漏れ鍋に当たる場所。それがここ、魔法宿白亀屋だ。
漏れ鍋同様に宿をやってるけど、こっちはその名の通り宿屋がメイン。京都周辺に滞在する魔法族が泊まるとなると、ここが一番お手頃なんだってさ。いわゆる大衆宿ってやつだね。
外見は完全にダミーで、見た目から感じる危険さは一切ない。中もすごく立派だ。でもって広い。これは検知不可能拡大呪文が駆使されてるんだろうな。
その受付で、わたしはひょこっと背伸びをして顔を出した。
「すいません。こっち初めてなんですけど、
「お嬢ちゃん、今日は平日やろ。学校はどないしてん?」
「わたし日本人ですけど、ホグワーツに通ってるんです。ホグワーツはもう夏休みですよ……はいこれ、身分証です」
「どれどれ……おおホンマや。へえ、スリザリンなんやね? 向こうの純血主義はなかなか強烈って聞くけど、実際どないなん?」
受付のおじさんの言葉に、わたしは笑う。わたし自身が原理的な純血主義者って聞いたら、どう思うのかな?
その後おじさんは、案内すると言ってついてきてくれた。週明け月曜の真昼間、受付はヒマしてたらしい。
世間話をしながら宿の中を少し歩いて、こじんまりとした日本庭園にやってくる。
「ここや。ここに植わっとる暴れ柳の……ここを撫でてやり。そしたら門塞いでる枝をのかしてくれはるから、出てきた門の閂を杖で七回叩くんやで。やってみ?」
「はい」
まさかの門番が暴れ柳。しかもめちゃくちゃでかい。
手前の立て看板に、「日英国交樹立100周年を記念して、英国魔法省大臣ヘスパイスタス・ゴアより」って書かれてる。なるほど、最低でも200歳レベルの古木と。
にしても、なんで入口に植えたし。入り方がわからない人間に対してはガチの警備だけど……ここに来る人はみんな知ってるだろうから、どっちかっていうとマグル対策とかそっち系なのかな?
まあいいや。まずは言われたとおりにやってみよう……おお、暴れ柳がわさわさ動く。なかなか元気なお年寄りらしい。
……門デッッッッカ! ホント魔法ってすごいな、こんなでかいのどうやって隠してるんだ? 将来グーグルマップとかにどう写るんだろうこれ。
だけどそんなことを考えてられたのはここまでだった。門が開いて向こう側が視界に入った途端、わたしの意識は完全にそっちに持っていかれた。
門の向こう側に広がっていたのは、まるで太秦の映画村か、それこそタイムスリップしたんじゃないかって勘違いしそうになるほど時代がかった大通りだった。
ここが、日本で現存する最古の魔法族の街。その名も、
「ここが玄武大路……!」
なんて歴史情緒あふれる街なんだ。普通に住みたいぞコレ。
そうやって目をキラキラさせているわたしの後ろで、受付のおじさんがせやろせやろと言いたげに腕を組んで頷いていた。
なんて、いつまで突っ立ってるわけにはいかない。わたしは気を取り直して、日本魔法界の経済をつかさどる山科銀行の玄武大路本店に足を向けた。持ち込んだ円を魔法界のお金に両替しないと。
どうやら日本魔法界では、普通に人間が銀行をやってるらしい。まあそれも当然っちゃ当然か。グリンゴッツはイギリスのゴブリンがイギリスに設立した銀行だもんな。
というか、そもそもゴブリンはヨーロッパ発祥の種族だし、日本にグリンゴッツ銀行がないのは当たり前か。探せば支店くらいはあるかもだけど。
なおこの山科銀行、戦国時代に日本各地から朝廷のための資金調達を任されていた山科
あの人魔法使いだったんだ……って思ったけど、どうも歴史のある公家は大体魔法使いの家系らしい。
朝廷が弱体化しても、世紀をまたぐ戦国時代を経ても、冷遇されてた江戸時代を経てもなお彼らが生き続けたのには、そういう歴史の裏事情があったからなんだろうね。文字通りの力があるはずの武家が公家を、朝廷を常に立てていたのも、そういうことなんだろう。
「……うーん、歴史好きの興味がガンガン刺激されてる。もう既にめっちゃ楽しい」
で、そんな日本魔法界で使われてる通貨で、ガリオン相当つまり金貨が小判と。まさか20世紀に現役の小判を見ることになるなんて思わなかったな。
シックル相当の銀貨も、二朱銀によく似てる。クヌート相当、つまり銅貨に至ってはほぼほぼ寛永通宝では?
まるで江戸時代に来たみたいだ。テンション上がるなぁ~。
……まあ、普通に携帯するには重いしかさばるしで、わりと邪魔なんですけどね。紙幣って便利だったんだなぁって思うなどするよ。
モバイル決済アプリが待ち遠しい……けど、魔法界でそれが導入されるのは難しいかなぁ。
おかげで魔法界で最初に買ったモークトカゲの巾着袋が大活躍だ。当時の判断はやはり正しかったと証明されてしまったね。
「よーし、それじゃまずは本を買おう。ハーミーへのお土産も見繕わなきゃだし、しばらくは通い詰めかな」
そうしてわたしはウキウキ気分そのままに、街並みに溶け込んでいった。
***
定期的に玄武大路に出かけるという生活を続けること3週間。わたしはかつてないほど散財しまくっていた。
両親からもらった一年分のお小遣いはとっくにないし、お年玉すら既に本やら道具やら(あと、ちょっとの漫画とかゲームとかにも)ですべて消えようとしている。
おかしい、両親はもちろん親戚一同からめちゃくちゃお年玉もらったはずなのに。おかしい。こんなことは許されない。
でも思い返すと心当たりしかねぇんだ。
何を買ったかって? そりゃもちろん大半は本だよ。いやぁ、杖魔法の伝来が17世紀とかなり遅かった日本には、独自の魔法が現代も残っててね。その辺のをちょこちょこと。
ちなみに伝来のきっかけは、無謀なホグワーツ生。箒で旅してるときに嵐で迷い込んだ結果、救助してくれた日本人にクィディッチを伝来させてるんだけどさ。このときに杖も一緒に伝わったんだって。これが江戸時代初期のことだとか。
じゃあ日本独自の魔法って何よってなるんだけど、和歌や祝詞による補助を受けて行う無杖の詠唱魔法であり、魔法力を込めたお札を用いる呪符魔法であり、風水その他を絡めた空間に作用する結界魔法であり……何より、それらを組み合わせた儀式魔法がそれに当たる。
どれもこれも魅力的が過ぎる。おかげであれもこれもと手を出しちゃった。
ただいくらわたしが才能の塊でも、教師もなしにたった3週間ですべてを身に着けられるはずがない。ホグワーツで習う内容とはかなり違うところもあって、この一年間の経験が活かせないこともそこそこあった。
おかげでいずれも理解にはまだまだ遠い。器用貧乏にすらなれてないって感じ。
必要の部屋があれば、もうちょっと理解を深められたんだろうけどねぇ。あいにくそんなチートめいたものなんてそうそうないわけで。
あとそれとは被るところもあるんだけど、呪い関係の本も結構買った。どうやら昔から今に至るまで、日本は呪い大国らしくてね。おかげで充実した買い物ができたよ。
これがあればあるいは、ダフネの血の呪いも治すことはできずとも、軽減させるくらいはできるかもしれない。確かに懐は南極の風が吹き荒んでるけど、どれもこれも無駄な出費じゃないからいいのさ。
一方で、特に役に立つってものじゃないんだけど、思わずぜひにって買っちゃったものもあったりして。
「……うーむ、マジで先祖代々マグルとは。神様謹製の才能、恐れ入った」
この夏、日本魔法界ですごす最後の日。帰路に就いたわたしは、今日手に入れたばかりの巻物……3週間かけて作ってもらった、善宝寺家の家系図を眺めてうなっていた。
……日本は伝統的に、家の存続を重視してきた。これは中国を中心とした東アジア地域特有の文化で、イギリス魔法界の家に対する考え方とはまた違うものが含まれている。
そんなお国柄だからか、玄武大路には「魔法で家系図作ります」ってサービスをやってるお店があるんだよね。どうやら日本には、家系を辿って調べる専用の魔法があるみたいで。
聞いたところによると、戸籍制度との兼ね合いでそこら辺の情報を自動で集積する魔法(ホグワーツの入学者名簿と羽ペンみたいなやつらしい)が日本全体にかかってるとかなんとかで、なんと8世紀半ばの養老律令発布まで遡れるんだとか。
起点がそこってことは当時日本じゃなかった沖縄や北海道は? と思われるかもしれないけど、日本が国土にしたことのある地域は全部有効範囲らしい。それこそ台湾とか、パラオなんかも一応機能してるんだぞって自慢げにお店の人に言われた。しゅごい。
それとどうもこの魔法があるからこそ、日本魔法界ではいわゆるヨーロッパで重視されがちな、いわゆる「純血」はさほど重要じゃないみたいだ。知ろうと思えば簡単に先祖のことがわかっちゃうから、そりゃそうだよね。
そもそも純血の定義が違ってて、
それについてはいつかそのうち語るとして……家系図をつまびらかにする魔法とか、マルフォイ家相手に使ったら不都合な真実が湯水のごとくあふれてきそうな魔法だけど、日本国内でしか使えないからなぁ。残念だなぁ、えへへ。
ちなみに、利用料は直系だけ遡るならそこまで高くなかった。それに我が家の家系がどうなってるのか純粋に気になったから、利用してみたってわけ。
で、結果。
善宝寺家、8世紀半ばまで遡ってもマグルしか出てこねぇ! ここまで生粋のマグルとは思ってなかった!
いや本当、スクイブすら一人も出てこない。こんな根っからのマグル生まれとかある? 普通12世紀も遡ったら誰かしらいるもんだろうに、どんな確率やねん。
そのマグルとしての血筋も、どこに出しても恥ずかしくない一般庶民ばっかりでもう笑うしかない。せいぜい戦で負けて落ち延びてきた大名……の、妾腹の血とかの微妙に由緒正しくないのがいくつか、ってくらい。
料金の関係で直系しか調べられてないけど、つまるところわたしはマジでガチの突然変異な魔法使いって可能性がめちゃくちゃ高い。
おかしいな。マグル生まれの魔法使いって先祖に魔法族がいて、その隔世遺伝って話じゃなかったっけ……。
もちろん傍系とか、戸籍に関する魔法が施行されるより前の時代に関わってる可能性はまだ残ってるけど、この感じだとあんま期待はできないんじゃない?
これはあれかな。あの世のバトルトーナメントの報酬にあらゆるものごとの才能をもらっていなかったら、きっとわたしはこの世界でもマグルだったのかも。
そんなつもりでもらった転生特典じゃないんだけど、結果的に最高の選択をしてたんだなぁ。
「……この家系図はホグワーツにも持っていこう。イギリス的にはわたしが穢れた血オブ穢れた血だってはっきりしたわけだし、これを見てぜひとも思いっきりいじめてほしいなぁ」
そしてわたしは家系図をいつものショルダーバッグにしまい、にっこりと満面の笑みを浮かべた。
そのまま妄想の世界に意識を飛ばし、えへえへうふふと笑い続ける。
仕事帰りのリーマンがかわいそうな子を見る目で距離を取ったけど、その視線すらわたしにとってはご褒美だ。いいぞ、もっとさげすんだ目でわたしを見ろ!
……結局のところ、わたしはどこまで行ってもわたしなのだった。
初っ端から独自要素、独自解釈の山盛りてんこ盛りでお送りしております。
ほぼすべてボクの捏造(クィディッチが伝来したことくらいしか公式に沿ってないレベル)なので、鵜吞みにはしないほうがよろしいかと。
主人公が日本人である以上日本魔法界には触れたかったんですが、あれこれ考えた結果マジでほぼ設定を垂れ流すだけの回になったのは反省。超楽しかったから後悔はしてない。
でもこんだけ設定を語ったのは、この先日本関係の話題がちょこちょこ物語に関わってくるからでもあります。
せっかく捏造した独自設定なので、この部分も含めて楽しんでいただけたら考えたかいがあったというもので・・・。