才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
ホグワーツ特急が無事にホグズミードに到着したけど、周りにハリーとロンの姿は見えなかった。原作通り、きっとドビーに邪魔されてホームに入れなかったんだろうなぁ。
他のウィーズリー家の面々はいるのに、これはおかしいとハーミーが首を傾げている。他の新入生と一緒にハグリッドに連れていかれたジニーも首を傾げながらハリーの姿を探してた。
うん……あれは別に、ロンのことは探してないんだろうなぁ。恋する乙女は一途なのよね。
まあいずれにせよ、ごった返してるホームで簡単には見つけられないし、そのあとも数人しか入れない馬車に乗ることになるから、ハリーたちを探すのはすぐには無理だ。ハーミーには、「大広間まで行けば会えるよ」と言っておく。
彼女も「それもそうね」と軽く返してきた辺り、異変が起きてるなんて考えもしてないんだろうな。実際には今まさに、退学になりかねない法律違反に手を染めてるわけだけど。
そんなことより、彼女は馬のいない──普通の子供にはそう見える──馬車に興味津々だ。
ちなみにわたしはばっちり見えるし、なんならすべてのセストラルたちからやたらすり寄られてる。
なんでこんな懐かれるんだろう。わたし自身が一度死んでるし、なんなら冥界の女神様にも会ってるから? それともやっぱ、この身体の問題なのか……。
「馬もいないのに、どうやって動かしてるのかしら。これも魔法?」
まあわたしはともかく、ハーミーはそう言ってしきりに首を傾げている。
そんな彼女に説明をしようとしたところで、聞き覚えのある声が後ろから飛んできた。
「馬はおりますわ。あなたなら、セストラルと聞けばすぐにわかるのではなくて?」
「グリーングラス様」
そこにいたのは、体調が悪そうなダフネだった。わたしはひざまずくより早く、彼女の身体を支えることにする。
と、介助するにはショルダーバッグがちょびっと邪魔だな。他のスーツケースとかは自動で自室に運んでくれるから列車に置いてきたけど、このバッグはとっさに使えるものを色々入れてるから、持ち出してきてたんだよな。どうしようかな。
振り返ったハーミーが、それを見て一瞬顔をしかめた。去年度は年末くらいからわたしの使用人ムーブに対して何も言わなくなってたし、夏休み中も特に言及することはなかったけど、やっぱり思うところはまだあるみたいだ。
でも、さすがに具合の悪そうな人間をとがめるつもりはないんだろう。その介助に入ろうとしてるわたしに対しても同様で、彼女はすぐに取り繕って、わたしが持ってるショルダーバッグを預かってくれた。
「セストラル……って、確か天馬の一種だわ。そうか、死を見た人間にだけ見えるようになるっていう……」
「ええ、仰る通り。グリフィンドールの才女はさすがですわね? ……ああ、ありがとうゼンポウジ。今年もお世話になりますわ」
「はい、お任せください」
ふらついてて危なっかしいダフネの身体を支えて、馬車に乗せてあげる。
ん……? 体温が高いな。体調が悪そうな、どころじゃなく普通に悪いんじゃないか。こんなの放っておけるはずがない。
「ハーミーごめん、わたしの荷物から元気爆発薬出してくれる?」
「……本当に具合が悪いのね。待ってて、すぐに……」
「不要ですわ……少し前ですが飲んでこれですので……」
はあ、とため息交じりに言いながら、ダフネは力なく背もたれに身体を預けた。これは重症そうだ。本職が必要なやーつー。
「嘘でしょ? あなたそんな体調で……ああもう、ホグワーツに着いたらすぐ医務室に連れていくからね」
そう言いながら馬車に乗り込んできたハーミーに、ダフネは憂鬱そうな顔の中で目を丸くした。
「……おせっかいですこと」
「はいはい、病人は黙って身体を休めておきなさい。……リン、確かよくあることなのよね? どうすればいいか教えてちょうだい」
「うん、ありがとうハーミー」
そのまま二人でがかりで、ダフネの看病を始めた。冷たい飲み物を渡したり汗をぬぐってあげたり……できることはそんなに多くないけど、何もしないよりはマシだよね。ダフネはそれでもけだるげにしてはいたけど、どこか嬉しそうな顔をしていた。
ちなみに馬車はもっと人数が乗れるだけのスペースがあるけど、ダフネが横になるスペースや周囲である程度動くスペースを確保したかったから、あえて他の人は乗せてない。
乗せてないっていうか、乗せないように調整してくれたってのが正しい。誰がって、パンジーが。
いやさ、何も言わずにやると角が立つから周りの生徒に一声かけて、少人数で一台を使わせてもらうことの了承を取らなきゃってわたしは思ったんだけどさ。こっちの様子を見ていたパンジーが、先んじて取り仕切ってくれたんだよね。
珍しい、まさか彼女にデレ期が……? とは思ったけど、「ダフネをしっかりホグワーツまで送り届けなさい! 医務室よ!」って命令してきた以外は何も話しかけてこなかったし、目線も合わなかった。善意ではあるけど、ダフネだけに向けたものだったわけだ。でもそうでなくっちゃな!
そのままホグワーツに着いた後、わたしたちはハーミーの宣言通りに(あるいはパンジーの命令通りに)ダフネを医務室送りして、大広間に向かおうとしたとき。
「……お二人とも。ありがとうございました」
ダフネからそんな声がかけられた。
「ええ、どういたしまして。お大事にね」
「グリーングラス様、早くよくなりますよう祈っております」
彼女にそう返して、わたしたちは今度こそ保健室を後にする。
大広間に向かう道中、ハーミーが意を決したような顔で問いかけてきた。
「彼女が例の……? たぶんだけど、そういう血筋……なのよね?」
「うん。なんとかできればいいんだけど……こればっかりは……」
廊下を歩きながら、わたしは小さく首を振る。ハーミーは渋い顔だ。
ダフネのことは少しだけ、ハーミーには伝えてある。去年度も結構な回数、ダフネの看病してたからね。デートができない理由になったこともあるから、説明しといたほうがいいって思って。
詳細は言ってないんだけど、知識欲にあふれるハーミーだ。自発的に調べて、答えを見つけたんだろうな。
「もしかして、リンが悩んでたのってこのこと? そういえば、日本から持ち込んだ本って大半が呪い関係だったわよね」
「ん……これ『も』って感じかな。どこまでできるかはわかんないけど……」
「ものすごく難しいことだわ、それって。本当にやるの?」
「うん、挑戦したい。助けてあげたい。……それに、魔法界って結構物騒でしょ。もしハーミーが誰かに、子々孫々続くような強さの呪いなんてかけられたらって思ったら……ね。だから……その、ハーミー。手伝ってくれないかな……?」
「もちろんよ。何ができるかはわからないけど、でもリンに求められたらなんだって手伝うわ。もちろん犯罪以外ね」
「……ありがと、ハーミー。百人力だよ」
とはいえ、血の呪いをどうにかする方法は、今でもまったくないからどうしようもない。長い魔法界の歴史の中でも、未解決の案件なんだよね。
聡明なハーミーならそれは理解してるだろうけど、何も言わない。任せろって言わんばかりに頷いてくれてる。本当に頼もしいよ。
ただ原作の彼女が同じ反応するかっていうと、ちょっと首を傾げるかもしれない。スリザリン生だろうと病人を見捨てることはないとは思うけど、ここまで親身になってくれるかっていうと、どうなんだろう?
これはきっと、わたしだから。そんな風に思うのは、うぬぼれだったりするのかなぁ?
まあ、とはいえ。
「あ、ハリーとロンだわ。よかった、ちゃんと来てたのね」
「え」
わたしのそんな感慨は、普通に大広間の食卓にハリーとロンがいるのを見て、吹き飛んだんだけど。
……ひょっとして二年目、初っ端から原作外れちゃってます?
***
ハリーとロンは原作通りホームに入れなかったらしいんだけど、そのあとアーサーさんの空飛ぶフォード・アングリアじゃなくて
正しい使い方。むしろただの移動手段に使ってた夏休みより、こっちのが正しいまである。
おかげでハリーたちは遅刻こそすれど、法律は違反してないしロンの杖も折れかけてない。問題なく新年度を迎えられたってわけだ。
安全確認ヨシッ!
……いやヨシじゃないが。フォード・アングリアには禁じられた森で野生化してもらわないとアクロマンチュラの群れから逃げ切れないし、ロンの杖が折れかかってないとロックハートが自滅してくれないんだが?
一体誰がハリーに
……はい。わたしのせいですね。全部わたしが悪い。
なんてことだ。マジで初日からつまずくことになるとは思わなかった。
どうしよう、このガバ。
「ちょっと! 聞いてるの!?」
「アッ、も、申し訳ありません、聞いていませんでした……」
「は? ……まったく、夏休みですっかり頭の中身をマグル界に置いてきたみたいね? このグズ! 駄犬!」
「はい! わたしはたった二か月で己の立場も忘れてしまう愚か者です!」
「うるさいわね! 穢れた血の言い訳なんて聞いてないのよ! ディセンド!」
「あひぃん!?」
まあパンジーのお仕置きが気持ちいいからもうなんだっていっかぁ~~!!
もうね、これこれ。これですよ! ハーミーに正面から愛で包み込んでもらうのはすっごく幸せだし、かつてないほど充実した満足な時間だけど、それはそれこれはこれ!
まさかディセンド使って床にたたきつけてくれるなんて! 年度末は使えなかったですよね? まさか夏休み中に覚えてくれたんですか? わたしのために!? なんてよくできたお嬢様なんだ!
おまけに覚えたてで、まだ制御が甘いんだろう。あんまり効果が強くなくって、ちょうど犬のお座りみたいな体勢になって……これを「最高!」以外にどう表現したらいいかわからねぇんだ。
「生意気ね! さっさとひれ伏しなさいよ!」
「はい、かしこまりまし……た!?」
んひぃそんなッ、こんな大勢の前で踏んでくださるんですか!? ありがとうございますありがとうございます、このまま土下座すればいいですね!?
……あああああ靴の感触、これはいけませんよ! ヤバいヤバい、達する達する!!
「パンジー、そこまでにしておこう。さすがのゼンポウジもものすごく震えてるじゃないか。それに、一年生がおびえてしまう」
「……そうね。ごめんなさいドラコ、ついカッとなっちゃって」
アッ、待ってドラコやめてとめないで! 震えてるってこれ、別に恐怖とか屈辱とかそんなんじゃないのよ!? 単純に気持ちよくてびくんびくんしてただけなの! あとちょっとなの!
「やれやれ。……あーその、なんだ。君たちは気にしないでくれ。彼女がああやって当たるのは、そこのマグル生まれだけだからな。……おい、立てるか?」
「は、い……♡ ありがとう、ございますマルフォイ様……」
くッ、紳士! 英国紳士ッ!
でも違うんだよ……! 今のわたしが必要としてるのはそういう気遣いじゃないんだ……!
「マグル生まれってだけで、あんなことになるなんて……」
「……じゅ、純血こそ至高なんだ、ある意味当然、なんじゃないか?」
今どもってた人、絶対純血じゃないだろうけどそこは誰も指摘しないのがスリザリンでの暗黙の了解ってやつだ。
そんなことを考えながらわたしは指先だけでスコージファイを使って、それから杖を振って声に出してエピスキーを唱えた。
途端に身体から痛みがすっと引いていく。あーあ、もったいない。身体には熾火みたいな熱がはっきり残ってるのに。
はあ……ホント、あとちょっとだったんだけどな。今夜は眠れない夜になりそうだ。ルームメイトがいる寮の部屋だと、声出せないから全然気持ちよくないんだよね。やっぱさ、声って大事なわけ。
ハーミーに思いっきり愛してもらえれば、この身体のうずきも収まるんだろうけど。グリフィンドール棟は遠いよなぁ。
ドMがアップを始めたようです。
今章は長いので、ちょこちょこアホがいじめられて気持ちよくなるシーンが入る予定になっております。