才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
ご注意ください。
1.新生活の始まり
「ゼンポウジ・リン!」
『おや、これはこれは……なんとも度し難い心の持ち主が来たものだ』
色々すっ飛ばして、9月1日。ホグワーツ入学の日。
キングスクロス駅からホグワーツ特急に乗り、ホグワーツにやってきたわたしは、アルファベット順の法則に従って一番最後に組み分け帽子をかぶった。そして組み分け帽子が開口一番に発したのがこのセリフだった。
『あ、やっぱりそういうのわかるんですね』
心の中で応じれば、帽子もまたウムと応じてくれた。
組み分け帽子は、元々ホグワーツの創設者であるゴドリック・グリフィンドールの持ち物だ。今は意思を持つ魔法道具であり、かぶったものの心を垣間見て適性に応じた四つの寮に振り分ける仕事に従事している。
年一の仕事だけであとは悠々自適とか、羨ましい話やで。いや本当、心の底から。
ともかくわたしは転生者で、前世の享年は四十五歳だ。その記憶も精神もそのまま持ち込んでいるわけで、他の子どもたちとは違うリアクションになるのはそりゃ当然ってなもんである。
だからって、いきなり度し難いだなんて言われるとは思わなかった。なんでやろなぁ(すっとぼけ
『とはいえ私はただの組み分け帽子。個人の趣味嗜好については何も言うことはないし、組み分けの過程で知ったことを誰かに漏らすことはない。たとえそれが校長であったとしてもだ』
『別に言いふらしてくれても、それはそれでいいですけどね。まあされないほうがやりやすいので、そのまま胸の内に秘めておいてくれると助かります』
『ふむ、君は本心からそう思っているのだね。そしてそれはそれだけの自信があるゆえではなく、そうなったとしても貫きたい大望があるからである……と。なるほどなるほど。
人と人との和も、積み上げられてきた知識も、なすべきときに踏み出す勇気も持ち合わせているが、すべては胸に抱いた望みのためであるというのであれば……君が身を置くべきは──』
──スリザリン!!
そして組み分け帽子は、予想通りの寮へとわたしを振り分けてくれた。
まったくもって予想通り。そして望み通りの寮でもある。だからわたしはにっこり笑みを浮かべると、帽子に礼を述べてスリザリン生たちが並ぶテーブルに足を向けた。
向かう先は空いている席は、一番いい場所に陣取るプラチナブロンドの少年のところだ。彼の前に来た私は、怪訝な表情を浮かべる彼に対して魔法界の礼儀にのっとってひざまずき、最上の礼を取った。
「……ふぅん? 最初に僕に対して伺い立てとは、実に結構。名前からして、君は日本人か? あいにくと日本魔法界についてはまだ僕も詳しくないが……どういう家柄のものなのかな?」
「直答をお許しください、マルフォイ様。わたしは魔法族ではありません。両親ともに代々マグルであり、本来であればここにいる資格なきものでございます。
……ですが、組み分け帽子はわたしをスリザリンに振り分けました。どうか、どうかわたしめをこの誇り高き寮の末席に連なることをお許しいただきたく」
わたしの返答を受けて、プラチナブロンドの少年……純血貴族にして純血主義の体現者、ドラコ・マルフォイは一瞬眉をひそめた。わたしの声が聞こえた人たちも同じように、顔をしかめる。
それは当たり前で、スリザリン寮は純血主義者が多く集う場所だからねぇ。
もちろん本人の気質をもとに所属が決まる以上、半純血だろうとマグル生まれだろうと関係なく振り分けられるんだけど……俊敏狡猾とも帽子にうたわれるスリザリン寮に振り分けられる人間は、子供であってもその手の機微に敏いものが多い。彼らは己の出自をうまく隠し、純血主義者たちもそれを暗黙の了解として受け入れることで表向きはマグル生まれのものはいない、と標榜してきた。
だけどわたしは、それを初手で大々的に暴露した。ほぼ確実に全校生徒が集まる新学期初日だからこそ、このことはホグワーツにいる全員が知ることになる。これは純血主義者たちからすると、色々な意味で都合が悪いだろう。
とはいえ今の時代、マグル生まれを差別することは忌避されつつある。公の場では特にだ。
あと仮にそうでないにしても、わたしが取った礼はイギリス魔法界における適切なものだ。純血貴族であり、その手の礼儀にうるさいからこそ、完璧にこなされた以上は応じる義務が彼らにはある。
ドラコもそこは承知してるんだろう。すぐに表情を取り繕うと、言葉少なに了承を下した。その態度は明らかに不承不承で、この辺りがまだ幼いなとも思うわけだけど……大勢の前で出した言葉は取り消せない。
だからわたしは再度最上礼を取ると、テーブルの隅の隅まで移動。その辺りにいた人にも頭を下げると、その人たちはおかしなものを見るような目と態度で距離を取ってくれたので、いいものだと判断してそこにちょこんと座った。
周りからはぶしつけな視線がたくさん飛んでくる。スリザリンからは扱いかねる奇妙なものを見る目で、それ以外の寮からは異常者を見る目だ。
その視線が気持ちいい。いいね、ゾクゾクする。
あとは、このスリザリン寮でわたしのご主人様を見つけるだけだ。できれば同級生がいいな。在学中、ずっとご主人様でいてほしいからね!
そしてわたしは、これからのホグワーツ生活を脳内に思い描いて思わずにんまりと笑った。周りから届く視線に、困惑の度合いが増した。
***
ホグワーツでの生活は、ほぼほぼ順調だ。
最も順調なのは学業で、やはり神から直接賜った才能は伊達じゃない。現状、スリザリン一年生でもっとも寮に得点をもたらしているのはわたしなんじゃないかな。
マグル生まれなのに成績が優秀すぎると純血主義者たちから顰蹙を買う可能性があったけど、政治的な感覚に優れるスリザリン生の多くは寮に貢献している人間を積極的に排除することはないっぽい。
これはわたしが、マグル生まれでありながら純血主義者を標榜していること。それに魔法界のしきたりやマナーと言ったものを積極的に学んで実践しようと態度で示していることが大きい。
……と思う。いや狙ってやってるんだけどね。
わたしはドラコをはじめとした聖28一族を頂点に、その他の純血魔法族を立てる言動を一貫している。一方で、半純血(ということにしているマグル生まれも含む)の人に対してはそうはしていない。従う対象はあくまで純血のみってわけだ。
彼ら純血は、言ってみれば魔法界の既得権益層。郷に入っては郷に従えって言葉があるように、別の界隈から来た人間をいきなり歓迎できるはずがない。
ましてや別の界隈のルールやらマナーやらを持ち込もうとするなんて、もってのほか。たぶんだけど、彼らがマグル生まれを忌避するのはそういうことをする人が一定数いたからなんじゃなかろーか。
一方でわたしは、そういうことはしない。常に手元に魔法界の礼儀作法指南書であったり、しきたり関係の本を持って読んでいる。時には無礼を承知で純血の皆様方に教えを請い、しくじった際には甘んじて罰を受ける。そういう態度を一貫しているから、心理的に受け入れやすい状態になってる。……はず。
実を言うと、最初魔法界の存在を知ったときは魔法関係の本じゃなくてこういうマナー系の本ばかりを攻めるつもりでいた。でもよくよく考えたら、失敗を繰り返してお仕置きしてもらったほうが百倍お得だな? って気づいちゃって。
無杖魔法に挑んだのは、そういう超自分中心の考えがあったりする。
ともかくそういうわけで、わたしの新生活は順調だ。まだ開心術は習得していないから、その穢れた血に成績で負けているらしいことについて、彼らが内心どう思っているかはわからないんだけど……彼らのそういう鬱憤も、失敗したわたし相手にお仕置きすることで適度に発散されてるだろうから、当面は大丈夫なんじゃないかな。
「違うわよ! 何回言ったらわかるの!? 穢れた血ごときに私の貴重な時間を割いてるんだから、これくらいさっさと覚えなさい!」
「はい! 申し訳ありませんパーキンソン様!」
今まさに、思い切り見下されながら本(わたしの私物)を投げつけられてる。本の角がみぞおちにジャストミートして思わず喘ぎそうになったけど、押し殺して深々と頭を下げる。
女子におけるスリザリン一年生の最上位級にいるのが、今まさにわたしを昂らせてくれているパンジー・パーキンソン。実に典型的な、わがままお嬢様って感じの子だ。
見た感じすごくかわいいから、やっぱりこの世界でのルックスは映画版準拠(賢者の石基準)なんだろう。ハーマイオニーもそうだったけど、ハリーやドラコもそうだったし。ぜひそのまま順調に成長してほしい。
話を戻して、パンジーは「穢れた血相手にも魔法界のしきたりを教えてあげる私って、優しくていい人でしょ?」みたいなノリで絡んできては、こんな感じでわたしの失敗(9割わざと)を大げさになじりつつ、きちんと折檻してくれる非常に将来有望なお嬢様だ。今のところ、ご主人様候補堂々の一位である。
原作だと、彼女と並ぶスリザリン女子の意地悪な子っていうとミリセント・ブルストロードがいるんだけど、彼女はわたしにはあんまりかかわってこない。わたしは知らなかったけど、彼女って半純血らしいんだよね。
彼女のルームメイトは全員純血だから、わたしが近くにいると彼女だけ居心地が悪い思いをするんだろうな。そこは素直にすまんやで。
「パンジー、そこまでなさらずとも」
「甘いわよダフネ! 穢れた血なんて、すぐにつけあがるんだから。これくらいがちょうどいいの!」
はい、仰る通りでございます!
わたしは全力でパンジーに同意するんだけど、彼女に苦言を呈した少女……ダフネと呼ばれた少女はそうは思わないらしい。
ダフネ……ダフネ・グリーングラス。パンジーのルームメイトで、同じく聖28一族の出身。
こちらもかわいい子だけど、一見するとクール系。争いを好まない物静かな子で、感情をストレートに言動に出すパンジーのブレーキ役をしていることが多い。
「はいはい。……そろそろ次の授業の時間でしてよ。早く教室に参りましょう?」
「あ、本当だわ! まったく、こいつのせいで無駄な時間を使ってしまったわ」
「……あなたも大変ね。大丈夫?」
「はい……ありがとうございます、グリーングラス様」
こんな感じで、わたしにも気を遣ってくれるあたり優しい子でもある。見た目は。
というのも、グリーングラス家はその血に特大の爆弾が仕込まれている。クール系に見えるのは、単にその爆弾のせいで11歳にして既に世を儚んでいるんだろうとわたしは見たね。
優しいのも、周りのすべてがどうでもいいからなんじゃないかな。実際彼女の目は普段から大体無感動で、常に一歩引いた視線で物事を見ている節がある。家族の話、特に妹のこととなると輝くから、まだ完全に絶望したわけじゃないんだろうけど。
「はい、荷物持ちお願いね」
「かしこまりました、グリーングラス様」
何せこの子、優しいと言っても純血の中ではという但し書きがつく。こうやってナチュラルにパシらせてくるし、何かやらかしたときの無価値なものを見るような白い目が本当に最高なのだ。だからわたしの中では、ご主人様候補二位につけている。
物理的に責めてくるパンジーか。精神的に責めてくるダフネか。どっちも甲乙つけがたい。スリザリンに来てよかった。
もちろん、彼女たち以外にも候補はいる。できれば女の子がいいけど、別に男だってかまわないのだ、わたしは。だから今年一年は、その辺りを見極めていく年にする予定。
ただ、そんなわたしの新生活にも順調じゃないこともある。たとえばグリフィンドールの生徒とか。
組み分け帽子に勇気をうたわれる彼らは、持ち前の正義感でわたしを助けようとしてくるんだよね。マグル生まれのわたしが、スリザリン内で理不尽な扱いを受けているのだと思い込んで善意で声をかけてくるんだ……。
彼らはみんな、本当に悪気はないんだよな。でもわたしは別に理不尽とか思ってないし、むしろご褒美だって思ってるからさ……。
たとえばこんなことがあった。スリザリンとグリフィンドールの合同で行われる魔法薬学の一回目で、ネビル・ロングボトムがおできを治す薬の調合に失敗し、派手に薬をぶちまけたときのことだ。
薬の大半はネビル本人にかかって大変なことになったわけだけど、彼にかからなかったものは周辺に飛び散った。ネビルはグリフィンドール生だから、多くはグリフィンドール生がいた机周辺に飛び散ったわけだけど、スリザリン側に来たものも少しだけどあった。
「おいお前、ここきれいにしておけよ」
それを見て、わたしに片付けろと命令したのは純血のとある男子生徒だ(たぶん原作では言及されていない)。純血の命令であればわたしに否はなく、即座に「かしこまりました」と答えて片付けを始めた。
この様子を、グリフィンドール生たちは信じられないものを見るような目で見ていた。そして授業が終わったあとすぐに追いかけてきて、わたしに命令した生徒にそんな扱いはやめろと言うとともに、わたしに対してそんな理不尽な命令に従う必要なんてないと諭してきたのである。
言われた生徒は心底めんどくさそうにグリフィンドール生たちをあしらったので、当然のようにグリフィンドール生たちはヒートアップする。しかし、
「いと尊き純血の方々のご命令に従うのは、当然のことでは? 特にわたしのような卑賎の身にとっては」
とわたしが返したところ、まったく想定していない答えだったからか彼らはみんな唖然としてしまった。一方。スリザリン側はこれに当然だとばかりに胸を張っていた。
ちなみにグリフィンドール側の筆頭は、原作以上の時間をかけて無事ハットストールになった結果、原作通りグリフィンドールに配属されたハーマイオニーだったりする。
以前にも触れた通り、彼女とはプライマリースクールでの同級生。そして彼女にとって、わたしは唯一交流のある同級生だった。己のライバルがひどい目にあっていると思って声を上げたのに、当のわたしが本気で従っていることが信じられなかったんだろうね。
他の面々も大体似たようなもので、彼女たちはわたしが何か弱みを握られていて、無理やり命令を聞かされているのだと解釈したらしい。以降、わたしは何かとグリフィンドール生から声をかけられるってわけだ。
別に声をかけられるくらいいいんだけど、わたしだって暇じゃない。ハリポタの物語の中で、比較的平和で時間にも余裕がある初年度はマジで時間がいくらあっても足りないんだからね。
「ねえリン、本当に無理しちゃダメよ?」
そして今日、初めての日曜日の昼過ぎ。図書館でとある本を借りて退室したわたしを見つけて声をかけてきたハーマイオニーは、やはりそう言って気遣ってきた。
「大丈夫って言ってるのに。ハーミーってば心配性なんだから」
「友達を心配するのは当たり前のことじゃない!」
年度初めからのわずか一週間で、そんな会話をハーマイオニー……もとい、ハーミーとすること実に五回。ほぼ毎日言われてる。
「うん、ありがとう。ハーミーのその気持ちは本当に嬉しいよ。それは本当なんだ」
「……何かあったらすぐに言ってよね。そのときは何があっても助けに行くから」
「ふふ、ハーミーのそういうまっすぐなところ、わたし大好きだよ」
「そ……んなこと言ったって、ごまかされたりしないんだから!」
「わたしは本気で言ってるんだけどなぁ」
「もう!!」
彼女のことはわたしも友達だと思っているので、気持ちはとても嬉しい。前にも言ったけど、友達以上になっても構わないって思っているくらいだしね。
そんなかわいい子の照れ顔を、間近で正面から見られるのは今のところわたしだけの特権だ。
幼馴染と言える関係なだけに、彼女だけは他のご主人様候補とはちょっと違うなって自覚はある。具体的には、ロンに彼女を渡したくないなぁって気持ちがあるくらいには。
でも結局のところ、わたしが一番ほしいのはご主人様なんだよな。仮にハーミーと友達以上の関係になったとしても、それは普通に恋人で、ご主人様ではないやつになりそうっていうか……。
そんな状況で理想のご主人様が見つかろうもんならですよ。わたしのことだから、そっちに鞍替えする可能性がそこそこあってぇ……。
その場合、ハーミー相手にNTRをかますことになっちゃうわけで……それは本意ではないなぁって気持ちもあるんだよね。我ながら心が二つある~。
いや、わたしが間男にヤられるだけなら別にいいというか、むしろ大歓迎なんだけどさ。前世での薄い本よろしく徹底的に快楽堕ちしたいまである。
でも親しい人相手にそれを見せつけるのは、さすがにわたしでもちょっとなぁって思うわけなんですよ。わかりますかねこの複雑な乙女心(元男
だからどうしようかなぁって思ってて、ハーミーに関しては色々と保留してるっていう。まったく、我ながら度し難いヤツだよねぇ本当に。
実を申しますと、当初の予定では主人公はドMではなくドSで、ホグワーツ内の女子生徒を食べまくる話にするつもりでした。
でもそんなカスみたいな野望を胸に秘めてホグワーツに来たら、組み分け帽子も「アズカバン!」以外の選択肢がないだろうなって思って・・・自分からめちゃくちゃにされたいドMならギリ許されるかなって思って・・・。