才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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9.夢の続き

「さあ行きますわよ! スリザリンの部屋を見つけるのです!」

 

 そんなことを言って、意気揚々と地図の間を飛び出したダフネに立ちはだかったのは、クソ長い昇りの螺旋階段だった。来るとき下りてきたんだから、そりゃそうよ。

 

 だけど普段から身体が弱くて、運動も特にしてない彼女にしてみればなかなか絶望的な光景だったみたいだ。ぽかんとして階段の先を見上げたあと、わたしにこう命令した。

 

「……わたくしを運んでくださいまし」

「かしこまりました」

 

 こういうとき、魔女でよかったって思うよね。ウィンガーディアム・レヴィオーサは運搬に便利だ。

 

 まあそれはさておき、地図の間から戻ってきたわたしたちだけど。学生には授業があるわけで、隠し部屋探しに没頭するわけにはいかんのです。

 魔法史と、次の空きゴマはダフネに連れられる形(そしてわりと早い段階で彼女を運ぶ形)でホグワーツ内を調べて回ったけど、パッと見てわかる範囲で見つかるなら隠し部屋とは言わないわけで。

 

 結局、空き時間にそれぞれが探索を行う。それらしいところを見つけたらすぐに連絡する、ということで自由行動になった。

 自由行動とは言うものの、基本探索はわたしに任された形って言っていい。お嬢様体力なさすぎ問題。身体が丈夫じゃないからしょうがないけどね。

 

 とはいえ、わたしじゃなかったらたぶん一生終わんなかっただろうな。ノーヒントでわかる場所じゃない。逆にわたしは場所がはっきりわかってるから、むしろ簡単まである。

 

「……ってことがあったんだ」

「じょ、情報量が多いわね……」

 

 その日の夕食前。わたしはハーミーを地図の間に招いて、この日のことを報告していた。

 

 もうバラすのかって思われるかもだけど、やっぱりハーミーは特別なんだ。ダフネとは共有してる秘密を、ハーミーとも共有したかった。ハーミーを除外したくなかったんだよ。

 要するにわたしのエゴ。でも別に後悔はしてないんだ。だって一緒に悩むって言ってくれたし、ダフネのことについてもできることは協力するって言ってくれたからね。たとえこの秘密がハーミーから漏れたとしても、わたしは今日の選択を後悔しないだろう。

 

 ダフネのほうは……あとでなんとかしよう。下手にバレておしおきしてもらうのがわたし的にはベストだけど、彼女の心情を考えればきちんと順を追って誠心誠意言葉を尽くすべきだろう。わたしは人の心があるドMなので。

 恋人いるのに恋人増やそうとしてる点についてだけは、なんとか大目に見てください(手のひらドリル

 

「つまりリンは、普通の魔法とはまた違う才能を持っていて? それをうまく使えば、血の呪いも解くことができるかもしれないってことなのね?」

「みたい。で、そのヒントがホグワーツの中にいろいろ隠されてるんだって」

「ここみたいに、誰にも知られていない部屋がたくさんある、ってことなのね……ロマンだわ……」

 

 改めて地図の間を見渡して、ほうっと息を漏らすハーミー。わかるよ、ここすごくきれいだよね。

 

 でもここみたいにきれいな場所はもう他には……。ああでも、デパルソの間とかヘロディアナの間はハーミー好きそうだな。パズル部屋だもん。

 

「……でも探すのはいいけど、きっと簡単には見つからないわよね。ヒントとかないのかしら?」

「ないんだよね、それが……。だからハーミーに説明かねてもう一度ここに来たんだ」

 

 小さく首を傾げるハーミー。彼女をよそに、わたしは肖像画に向きなおる。

 

「というわけで、何かヒントとかないですか」

「……まさか一日も経たずにヒントちょうだいって言われるとは思ってなかったなぁ」

 

 わたしの呼びかけに、左から二番目の肖像画から青い縁取りのローブを着た女の子がひょっこり現れた。ドラゴンの目玉柄のメガネつき。

 あとよく見ると、ローブの下パジャマだね? あまりのインパクトに、ハーミーが引いてる。レガ主ェ……。

 

「ほら、わたしまだ12歳なので。ハンデとかそんな感じで、なんとかなりません?」

「君、結構いい性格してるね?」

 

 とか言いつつ、くすくす笑うレガ主もなかなかだと思いますよ。あなた、日常的にはっちゃけてたじゃないすか。

 

「でもまあ、それもそうか。あの当時ボクは15歳だったから、そこの差は加味したほうがよかったね。……うーん、強いて言えば……スリザリン寮の近く、とかかなぁ……」

「まだだいぶ範囲広いですけど……とりあえず地下って感じなのかな。わかりました、ありがとうございます」

「とりあえず今回はこれだけね。まずはちゃんと探してみてからだよ。それでダメそうならもう一度おいで」

「はぁい」

 

 それだけ会話して、レガ主は肖像画から去っていった。

 

「……だいぶその、なんていうか、個性的なファッションの人なのね……」

「前来たときはなんでか組み分け帽子被ってたよ」

「本当になんで??」

 

 なんでだろうね。でもわたし、ハロウィンのかぼちゃかぶってても驚かないよ。レガ主ならやるもん。

 

「それにしても、スリザリン寮の近くか。私は行きづらいわね……」

「グリフィンドールとの仲、悪いもんね。わたしたちはこんなに仲良しなのに」

「……それは寮以前からの話でしょう。例外よ」

 

 自分の手とハーミーの手を向かい合わせにしたわたしに、彼女はちょっとだけ照れたように唇を尖らせた。

 

「あと、私もマグル生まれだし。でも私、リンみたいにあの人たちに従えないから余計よね」

「わたしは好きでやってるだけだもんね。ハーミーはそれでいいと思うよ」

 

 ドSの人なんかは、そういうハーミーをこそ屈服させたいとか考えるんだろうか。わたしにはよくわからない考え方だ。

 

「どっちにしても、私も時間を見つけてあちこち探してみるわ。怪しいところがあったら共有するわね」

「うん、よろしく。わたしも頑張るよ」

 

 とりあえず、そういうことになった。

 

「……じゃあハーミー、夕ごはんの前にお風呂はいろ?」

「……うん」

 

 あとはイチャラブの時間だ。持っていたお風呂用のスーツケースを掲げて見せたわたしに、ハーミーがこくんと頷いた。

 

 ふふふ、久しぶりに例の魔法が火を吹くぜ。ハーミーには、わたしの裸に欲情する身体になってもらうんだ。

 もう逃げられないゾ。

 

***

 

 それにしても、授業開始初日の夕食の時点で、ロックハートの授業がヤバいって既に噂として回り始めてるの、シンプルに怖いなって思いますね(感想

 

 いや本当、原作見てたときから思ってたけど、ホグワーツの噂の早さなんなんだろう。他に娯楽がないの?

 だとしたら、TCGとかボードゲームとか流行らせたら、もうちょっとこの学校は落ち着くのかしら。

 

 まあそれはともかく、ロックハートの授業が今日あったのはグリフィンドールの2年生で、入浴中にハーミーから愚痴って形で聞いてる。基本原作通りだったけど、この世界のハーミーはロックハートに入れあげてないから、普通にあしざまに言ってた。

 

 この情報はわたしを通じてスリザリンに共有されていて、噂の発端は主にここからって感じみたいだ。

 

「あんな男の趣味なんて、知るもんか。興味もないね」

 

 ミニテストのくだりを聞いてそう吐き捨てたドラコのセリフは、スリザリンどころかホグワーツ全男子の総意って言っても過言ではないんじゃなかろうか。

 

 パンジーを中心に、女子には信じてない子も結構いるけど……まあ、化けの皮が剥がれるのにそう時間はかからないんだろうな。逆にどこまでロックハートを信じていられるか、見せてもらおうじゃないって感じだよ。

 

 とはいえ、あの男の授業が劇団員の養成以外には何の役にも立たないことは間違いないわけで……さて、どうしたものだろう。こっちには伝家の宝刀、フォイがいるわけだけど、辞めさせるのも手かな……ロンの杖が折れかけてないから、正直ロックハートはいないほうが……。

 

「そ、それでは、その、ま、まずは出欠をと取ります」

 

 なんて思ってた翌朝。スリザリン2年生の一時間目となった闇の魔法に対する防衛術の教室にやってきたのは、なんとクィレル先生だった。ロックハート、なんか準備があるんだってさ。ホンマかいな。

 

 そういえば、入学式のときにロックハートの補佐を主に担当するって言われてたっけ。強盗にケガを負わされて後遺症があるから、非常勤講師みたいな立場になったって説明されてた。

 

 ちなみにこの強盗、去年クィレル先生がおびえまくってる原因ってことにしてたアルバニアの吸血鬼って設定です。うまいこと言ったもんだよね。

 

「ぜ、全員出席……と。た、大変すば、す、素晴らしいですね。ではま、まず、ミニテストをお行いますので……」

 

 とはいえ、この授業の主体はあくまでロックハート。くだらないミニテストを配るクィレル先生の姿からは、哀愁が漂ってる。先生もこれはアカンって思ってるんだろうな……。

 

 そんな姿に去年の授業が思い出されて渋い顔をする生徒たちだけど、ロックハートの授業の噂を聞いてる生徒……主に男子たちからは、こっちのがまだマシかなって気配も感じる。

 マシどころか、クィレル先生の授業はとってもわかりやすかったのに、この扱いだもんね。おまけにあとからやってきたロックハートに、大丈夫だから任せろ(意訳)と追い出される始末。なんて……なんて不憫なんだ……。

 

 本当、クィレル先生そいつにボンバーダかましても許されると思うよ。あの日のボンバーダ・マキシマやっちゃってくださいよ。部屋のすぐ外で待機してるの、わかってるんだからさ。

 

「うーん、スリザリンの皆さんはあまり私の教科書に目を通していないのですかね? グリフィンドールの同級生に比べると、正答率が低いようです!」

 

 ミニテストの採点を終えたロックハートがいけしゃあしゃあと言ってのけ、キラリンと歯を光らせてる。

 今ここにいる大半の生徒が、グリフィンドールに負けても悔しくないっていう体験を生まれて初めて味わってると思うよ。

 

 ちなみにわたしは面倒だったから白紙回答。こんなので成績優秀って思われたくないもん。

 

「さて、それでは実践の時間とまいりましょう! 既に聞いているかもしれませんが……私は座学よりも実技を重視します。私の冒険とは、机の上で行われるものでは常にありませんからね!」

 

 そうして取り出されたのは、原作同様ピクシーが詰め込まれた籠。……でもなんか思ってたより数が少ない気がする。さすがに昨日の失敗で懲りたのかな。

 

「さあみなさん、ピクシーたちを籠の中に戻してごらんなさい!」

 

 なんて思ったのもつかの間、具体的にどうすればいいのかとかの説明もないままロックハートはピクシーたちを解き放つと、すすすっと部屋の隅に下がって空気と同化する作業を始めた。あのさぁ……。

 

 当然、解放されたピクシーたちは喜び勇んで飛び回り、周りのインテリアや窓、シャンデリアなんかの明かり、はては生徒のもちものどころか生徒そのものをターゲットにいたずらを開始する。あっという間に悲鳴があっちこっちから上がり始めた。

 

 そんな中、隣にいたわたしを即座に盾にしたダフネはなかなかいい根性してるよ。イタズラっぽく微笑んで、こそりとささやいてくるのもズルい。

 

「よろしくお願いしますわね?」

 

 はい、わたしのことは肉の盾とお思いください!

 

 まあ、実際はそんなことはなかなかできないんだけどね。ダフネをはじめ何人かの純血の皆々様が近くにいるから、ダフネだけをってわけにはいかない。

 彼ら彼女らを守るためには、魔法を使ってピクシーを寄せ付けないようにしないとだもん。

 

「ゼンポウジ!」

 

 おっと、パンジーがお呼びだ。どうやらピクシーに杖を取られて、大層お怒りの模様。

 

「命令よ! こいつらをさっさとぶちのめしなさい!」

「かしこまりました、ただちに」

 

 怒りに任せた発言はそれはそれは語調激しく、火を噴くような命令だった。

 とはいえ、ご命令とあらばこの善宝寺凜、純血の皆々様がたのために全力を尽くしましょう。

 

 それにね。

 わたし、誰かの期待に応えるために動いてるときが一番やりがいを感じるタイプでしてね?

 

「ヴェンタス・デュオ」

 

 杖先から風が二つ、巻き起こる。決して強い風ではないけど、小柄なピクシーにはそれなりに面倒な規模の風がそれぞれ別の生き物みたいに吹いて、鞭のようにからめとりにかかる。

 つまり動きが鈍るってことで、場合によっては抵抗しきれず風に流されるものもいる。そうしてある程度ピクシーたちがまとまったところで、

 

「インカーセラス──デパルソ。……フリペンド・マキシマ」

 

 束縛呪文で一塊に縛り上げる。そのまま地面に引きずり下ろすと、置かれていた籠にデパルソで叩き込む。

 ダメ押しで籠の中のピクシーどもにフリペンド・マキシマをぶちかまして軒並み気絶させたら、籠の鍵をかけておしまい。

 

 最後にわたしは小走りに部屋のある地点まで行くと、そこに落ちていたパンジーの杖を拾い上げる。そのまますぐにパンジーのところに戻ると、イギリス魔法界のマナーに従って礼を尽くしてひざまずき、杖を恭しく彼女に差し出した。

 

「ご命令の通り、ピクシーどもを片付けました。こちら、どうぞお受け取りください」

 

 ここまで約30秒。ちょっとあっさり行きすぎちゃった。パンジーはもちろん他の生徒も、ロックハートですらも、ぽかんとしてる。

 

 だけどさすがに差し出された杖には反応する。パンジーはそっと杖を受け取って、表情を緩めてほっと息をついた。心底安堵したって感じの表情だった。かわいいね。

 

 でもわたしの前ってことを思い出したのか、すぐに顔を取り繕って咳ばらいを一つ。それからその杖で、恭しくわたしの肩を叩いた。マグルの騎士の叙勲みたい。

 

「……よくやったわね、ゼンポウジ」

 

 普段の彼女らしくない。だけど、ダフネ他友人と接するときに見せる華やかな。それでいて、気恥ずかしさも混じる表情と声音で、パンジーはそう言った。

 ティーンにも満たない少女が、理想の姿を目指して必死に背伸びしてる姿そのものって感じで本当にかわいい。

 

 それになにより、こうやって期待に応えることができたときの達成感は、何物にも代えがたいんだ。これがたまらなく嬉しくて、わたしは前世で執事になりたかったんだよねぇ。

 貴族や王族、あるいは皇族の人たちに、こうやってお仕えしたいだけの人生だった。現代でそんな仕事、なろうと思ってもなれるもんじゃなれなかったけど、そんな前世に置いてきた夢がかなったような気がして。

 

「ありがたきお言葉。身に余る光栄でございます」

 

 だからわたしはにこりと微笑んで、パンジーに答えたんだ。

 




こんなやつにも、かつてはそれなりにまっとうな夢があったんですよ。
だが奴は弾けた。
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