才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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12.書斎の入口

 パンジーとのめくるめく素敵な時間を過ごした翌日、今学期初の週末。わたしはダフネと一緒に、スリザリン寮近くの通路でハーミーを待ち合わせていた。

 時間帯としては朝で、大体の生徒はまだ眠ってるか朝ご飯を食べてる頃合い。早めに食事を終えてこうしてるのは、ひとえにこの場所でやることを誰にも見られたくないからだ。

 

 ちなみに、クィディッチ競技場ではそろそろグリフィンドールとスリザリンのクィディッチチームが鉢合わせた頃だろうけど、それについてはもう何も気にしないことにした。原作イベントだけど、ハーミーはこっち来るからピッチにマグル生まれの人間がいない状態になるわけだし、原作通りには絶対いかないだろうからね。

 

 仮にあっちに行ってたとしても、ロンの杖が折れかけてないからなめくじ食らえも逆流しないだろう。そうなったら、ドラコはきっとえらいことになる。

 ハーミーがいないことでその可能性がなくなるんだから、むしろわたしたちは行かないほうがいいってわけよ。

 

「ごめんなさいお待たせ!」

「遅いですわよ、グレンジャー」

 

 予定よりちょっと遅れてきたハーミーに、ダフネがじろりとねめつけながら言う。

 

「どうせ行こう行こうと言いつつ、しばらくその場に残って話し続けたのでしょう? グリフィンドールって、そういうルーズなところありますわよね」

「……あなた見てたの? 偏見って言いたいところだけど、事実その通りだったから何も言えないわ……」

 

 ちょっとダフネの言い方がきつめではあるけど、思ってたより気軽な感じで言葉を交わせてる。案外相性悪くないのかもしれない。

 ハリーとドラコが水と油ってだけで、グリフィンドール生とスリザリン生の相性って案外悪くないのかな。そういや始祖のグリフィンドールとスリザリンも仲たがいするまでは親友だったらしいし、案外この説あると思います。

 

 まあそれはそれとして、二人には事前に言っておかないといけないことはきちんと説明済ってのもあると思うけどね。わたしは根回しのできるドMなのだ。

 

 今日の用件は、隠し通路に繋がるんじゃないかもしれない仕掛けを見つけたから手伝ってほしい、ってもの。人手が必要そうで、事情を知ってる人間は限られるからハーミーとダフネそれぞれに来てもらったって形になる。

 

「さて、それではあなたが見つけたそれらしいものを見せていただきましょうか。素晴らしい成果を期待しておりますわ」

「はい。あそこに燭台がありますよね」

 

 ということで、ダフネに振られたので早速本題と行こう。

 わたしは通路の先に設置された燭台を示した。二人の顔がそちらに向く。

 

「……ありますわね」

「あるわね。今は火はついてないみたいだけど」

「これに……インセンディオ」

 

 その燭台に駆け寄って、火の魔法をかける。魔法は問題なく発動して、燭台に火がついた。

 けれどその火は、すぐに消えてしまった。

 

「消えてしまったではありませんか」

「そうなんです。ちなみに計ったんですけど、きっかり10秒で消えます」

「……おかしいわね。魔法で灯された火が、そんな簡単に消えるなんてありえないわ」

「ね。……で、ここからが本題なんですけど」

 

 次にわたしは、今しがた火をつけた燭台があるのとは逆方向に歩いていく。少し進んだところで、それを示した。

 

「ここにも同じものがあるんですよ……インセンディオ」

 

 燭台に火がともる。これもやっぱり、すぐ消えてしまう。

 

「さらに、あそこにもあります。見つけたときに試しましたけど、やっぱりすぐに火が消えます」

 

 続けて、次の燭台を指で示す。こっちはもう、説明するまでもないだろうから火はつけない。

 

「火がすぐ消えてしまう燭台が、離れたところに合計三つ……なるほど、そういうことですのね」

「怪しいですよね。で、消える前に全部に火を灯せたら、何かあるかも? って思いませんか?」

「ええ、思いますわ。よく見つけましたわね、ゼンポウジ」

 

 ふっと薄い笑みを浮かべたダフネが、そう言った。

 

 えへへ。わたしはこうやって上位者に褒めてもらうのも大好きなタイプのマゾなので、思わずにっこりと応じちゃう。基本的に支配されたいんだなわたしは。

 

「……今の感じだと、コンフリンゴみたいに火を遠くに飛ばす魔法があれば、一人でもぎりぎり全部に火をともせそうね。でもコンフリンゴは」

「うん。一年生、二年生で習う魔法じゃないから、人数を揃えるしかないなって思ったんだ」

「インセンディオは一年生で習って、二年生になってからも最初の授業で復習として扱われたものね。これなら誰だって使えるわ」

「……クラッブとゴイルは怪しいとわたくし思いますけれどね……」

「……グリーングラス様、それはさすがに……。と言うより扱えるようになっていないと、お二方にずっとつきっきりで指導していらっしゃったマルフォイ様が浮かばれませんよ……」

 

 あの二人についてはホントよく進級できたなって感じだし、原作で見ててもこの先よく進級できるなって感じなんだよね……。

 はたから見ててもマジでドラコがいたからなんとかなったんだろうなって思うし、そんなやつを二人もずっとちゃんと面倒見てたドラコって、マジでいいやつなんだなって思うよね。

 

 いや本当、ドラコいい人なんだよ。今のところ、同級生はおろか関わったことのある人の中でも、将来上司にしたい人トップスリーに入るよ。

 

 だって彼、面倒見てる部下のためならどれだけでも穢れた血と関われるんだぞ。クラッブとゴイルのために人目を避けてわたしに話を持ってくる姿は、それこそ原作でドラコのためにすべてをなげうったパパフォイママフォイを彷彿とさせる。

 もちろんこの程度でマルフォイの嫡男が穢れた血に頭を下げるはずないし、接触って言っても命令ではあるんだけどさ。それでもきちんと成長できたら、絶対いい男になるよ。それこそお辞儀なんかより、よっぽど器のでかい男だ。

 

 その面倒見の良さは身内にしか発揮されないから、ハーミーは想像つかないっぽくて首を傾げてる。これについてはゴンさんじゃないけど、どうしてその優しさをもっと他の人に向けてやれなかったんだとも思うけど、まあ……優しさって有限のリソースだからね……。

 

「それでは、早速やってみましょうか」

 

 話を戻そう。

 

 そんなわけで、それぞれの燭台に向けて三人でインセンディオを使ってみることに。

 で、三つの燭台に火が灯った瞬間。壁の一か所が横にスライドして、隠し通路が姿を見せた。

 

「こんなところに通路があったなんて……」

「行ってみましょ。あの火がいつまでついているかわからないわ」

 

 そして三人で隠し通路に駆け込んだ。その数秒後、壁が元に戻る。

 閉じ込められた? とも思ったけど、出るときは普通に出られるみたいだ。センサー的な何かがあるんだろうね。

 

 ついでに言うと、出るときは外の様子が見えるようになってた。誰かと鉢合わせないための仕掛けだろう。ゲームにはなかったけど、隠し部屋に繋がってることを考えれば当然の措置だよね。スリザリンもそこは気を遣ったんだろう。

 

「……はあ、まだ階段ですのね」

 

 隠し通路の先にあったのは、地図の間への道を彷彿とさせる螺旋階段。

 あそこよりは短いみたいだからがんばりましょうとダフネをなだめつつ、下へ下へ。

 

 そうして下りきった先の通路の奥には、二匹の蛇が絡み合う意匠が施された扉。さらにその手前には、蛇に顔を向ける人の様が刻まれた壁画が掲げられている。

 

「扉よ! すごいわ、こんなところに創始者の遺産があるなんて……!」

「蛇がこれほどあるということは、間違いなくスリザリン関係のものですわね。これはミス・レガシーが仰っていた、スリザリンの部屋の可能性が高そうですわね……!」

 

 普段澄ましてるダフネの顔に、赤みがさしている。結構興奮してるみたい。美少女なんだから、普段からそうやって感情を強く表に出してればもっとかわいいのにもったいない。

 

 ああ、ちなみにミス・レガシーってのはレガ主のニックネームだ。ダフネがつけた。本名がわからなくて、たくさんの遺産を残してる(であろう)人だから、とのこと。

 ミスターなのかミスなのかわからない人ではあるんだけど、わたしたちの前では一貫して女性の姿を取ってたからミスを採用した。

 

「……それで? これ、どうやって開けますの? また地図の間のときのように、ゼンポウジの古代魔法で?」

 

 ところがどっこい、わたしたちはここで足止めを食らうことになった。扉はうんともすんとも言わないし、わたしが力を込めて杖を振っても何も起きなかったのだ。

 

「何も起こりませんわね……」

「古代魔法は関係ないってことかしら?」

「うう、お役に立てず申し訳ないです……」

「え、いやその、あなたは悪くありませんわよ? ええ」

「そうよ。それに、古代魔法とは関係ないっていうのも情報には違いないわ」

 

 二人はそう慰めてくれたけど、これはわたしも正直想定外だった。

 

 というのもこの扉、パーセルマウスじゃないと開けられないんだけどさ。パーセルマウスって多くの場合、先天性だ。後天的になることもできるけど、その難易度はすごく高いっていうね。

 だから神様から才能チートをもらってるわたしなら、開けられるって思ってたんだけど……ごめん、蛇語まったく聞き取れないわ。

 さっきから扉を開けるための言葉を問うてるっぽい声が、すぐそばの壁画からシューシュー聞こえては来るんだけど……無理。何か未知の言語で話しかけられてるっぽいな、って感じられる程度だ。

 

 どういうことなのかなぁ……って思ったけど、よくよく考えるとわたし、あらゆる才能をもらってるんだから七変化だって使えるはずなのに、できない。

 これはもしかしてあれなのかな。上限と成長速度が最大値なだけで、初期値は最低保証だけって感じなんだろうか。それが先天的なものが要求されるような技能だと、特に顕著になる的な。

 前世で触れたことのあるものは別だろうけど、魔法に関することは全部今世になってからだし……。

 

「……わたし、わかったかもしれません」

 

 まあわたしの転生特典に関する考察はさておき、このままここで三人雁首揃えてうなってたところで先には進めないわけで、ここはさっさと正解を出しちゃおう。

 

「スリザリンと言えばホグワーツの創設者ですけど、それとは別に彼にはある特徴がありましたよね。彼の直系子孫の多くが持ってたという……」

「ああ……! なるほど、パーセルマウスですわね!」

「そっか、スリザリンは史上最も著名なパーセルマウスだわ! それに蛇語は滅多に使える人がいないから、セキュリティとしての強度は他の言語の比じゃない……あり得るわ!」

「だとすると……困りましたわね。ここ半世紀ほどは、パーセルマウスといえば例のあの人くらいしかおりませんでしたわ。存命の方は……ちょっと心当たりがありませんわ。どうしたものかしら」

 

 頬に手を当てて、ダフネが顔をしかめてる。

 直近かつ身近なところに、ハリー・ポッターっていうパーセルマウスがいるんだけど、それは今のところ誰も(何なら本人すら)知らないからどうしようもない。そしてそれが発覚するのは、もう数か月先の話だ。それはちょっと待てない。

 

 であれば、ここはわたしの出番だろう。元々蛇語は習得したい技能の一つだしね。

 

「あの……わたし、蛇語はわからないんですが」

 

 ということで、おずおずと手を挙げて声を上げる。

 

「グリーングラス様、先ほどから何か言ってるような音がするのは聞こえていますか?」

「……? 何も聞こえませんわよ。グレンジャー、あなたはいかが?」

「ううん、聞こえないわ。……リン?」

「聞こえるんです、この壁画から。何を言ってるかはわからないけれど、知らない言葉で話しかけられてるんだなってくらいには、聞こえるんです」

「それって……!?」

「あなた、まさか……!」

 

 グリフィンドールとスリザリン、相反する寮の人間であるハーミーとダフネが、まったく同じ目でわたしを見てるのがおかしくて笑いそうになっちゃった。

 

 その感情をつとめて抑え込んで、わたしは二人に頷く。

 

「もしかしたら、わたし習得できるかもしれません」

「……あなた、どうしてマグル生まれなんですの? それほどの才能がおありなら、純血に生まれてしかるべきでしたのに。もしかして知らないだけで、先祖に著名な魔法族がいたりしませんこと?」

「残念ながら、12世紀遡ってもマグルしかいない家系ですね……。夏休みに調べたので間違いないです」

 

 ダフネがため息と一緒に思いっきり肩を落とした。そんなに残念がらなくっても……。

 いやでも本気で残念がってるあたり、わたしに対してそれなり以上に認めてくれてるんだろうな。この調子でどんどん好感度を稼いでいきたい。

 

 ちなみに例の家系図は、新学期が始まって早速ドラコやパンジーに見せた。ドラコは心底残念そうな顔を一瞬してから取り繕ったけど、パンジーはいいものを見たと言わんばかりに早速言葉攻めしてくれた。

 パンジーの対応にわたしはとても満足してます。ゾクゾクしてたまらなかった。

 

「グレンジャーにしてもそうですわよ。あなたたちがせめて半純血だったなら、もう少し付き合い方がありますのに……」

 

 ただ、残念がってるのがわたしだけじゃなかったのはちょっと意外だった。

 

「そんなこと言われても……。というか、今さら生まれなんて気にする時代じゃないでしょう?」

「それには同意しますけれど、わたくしにも立場がありますのよ。……あとグレンジャー、今の言葉わたくしは許しますけれど、他の純血……それこそドラコやパンジーの前で言おうものなら即座に最上級の罵倒が飛び出るでしょうから、やめておきなさい」

「あなたってもしかして、言うほど純血主義じゃないの?」

「……そんなことは今はどうでもよろしいでしょう」

 

 ぶんぶんと首を振って、ダフネは改めてわたしに向きなおった。そのまま、どこか幼さを感じる仕草でびしりとわたしに指を向けてくる。

 

「ゼンポウジ、命令ですわ! あなた、パーセルマウスになりなさい。できるだけ速やかに、ですわよ」

「かしこまりました、グリーングラス様。仰せのままに」

 

 だからわたしはその場にひざまずき、最上礼を取る。

 

 ダフネはこれに少しばかり不満そうに鼻を鳴らすと、静かに頷いたのだった。

 




ということで、スリザリンの書斎はもうちょっとお預けです。

そしてリンが持ってる才能について、ちょっとした補足な回。
前に感想返しで書きましたが、彼女が与えられたのは文字通りあらゆる才能なので、先天的な素養を必要とするものもすべて習得可能です。
ただしそれらは汎用的に習得可能な技能とは異なり、1からのスタートになります。蛇語が「なんか別の言語で話しかけられてるっぽい」程度の理解なのはそういうところになります。

そのため、現時点における彼女は古代魔法の実力でゲーム開始時のレガ主と同程度。蛇語や七変化、未来予知についてはハリーやトンクス、トレローニー先生には遠く及ばない、くらいの立ち位置になります。
ただし上限と成長速度は最高なので、このまま順当に成長するといずれはレガ主はもちろん、ダンブルドアやお辞儀すら凌駕する魔女になります。
でもたぶん、そうなっても「最強のわたしが取るに足らない雑魚に負けてよがらされちゃうシチュってイイよね」って言いながらわざと負けに行くと思います。
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