才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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16.スリザリンを追え

 事件から数日。レベリオの調査も終わって教授陣から解放されたわたしが最初に向かったのは、スリザリンの書斎だ。

 一人じゃ入れないだろって思われるかもしれないが、心配ご無用。一度立ち入った人間には何らかの資格が付与されるのか、出口からも入れるようになるんだよね。ここもホグレガ通りだ。

 

 この出入口、スリザリン寮入口のマジで目の前にあるから入るタイミングには気をつけないといけないんだけど、それはともかく。

 

 どうしてここに来たかと言えば、ハーミーとダフネが昔の資料をあさってるからだ。もちろん目的は秘密の部屋についてで、わたしが参加できない間二人で調べて回ってくれてたってわけ。レガ主にいろいろと聞けるしね。

 

 レガ主は地図の間でも会えるけど、あそこはわたしがいないと入れない。何せ古代魔法で、人を寄せ付けないように結界というか呪いというか、そういうのが張られてるからね。

 これを潜り抜けられるのは古代魔法の使い手と、使い手の同行者だけだ。それを突破できたとしても、扉を開くには古代魔法の素養が必要になる。

 

 でもスリザリンの書斎はそうじゃない。資料もこっちのほうが豊富にある……ってことで、時間があると二人はここに入ってあれこれ調べてるってわけ。

 

 ハリーたちはハーミーが図書館にいるって思ってるらしいけど、残念ながらそうじゃない。

 そしてそういう風に思ってるってことは、自分から図書館には行ってないわけで……こう、自分で何かを調べるって習慣がマジでミリもないんだなって思うよね。原作だと、本当に一切の誇張なしに調べ物はハーミーだけがしてたんだろうなって……。

 

 今回の事件はハーミーもハリーと並んで一応の容疑者だし、たまたま秘密の部屋が今関わってるスリザリンの書斎と関係があるから調べてる。でもそうじゃないとき、果たしてこの世界のハーミーはハリーたちに協力するだろうか。

 ……ハリーが巻き込まれる事件、もれなく殺意高いから何かしらの協力はするか。本当、ホグワーツは地獄だぜ。

 

 いやー、嬉々として通ってるわたしが言うのもなんだけど、こんな学校に子供通わせたくない。時限イベントなのが救い……救いかなぁ?

 

 まあそれはともかく、書斎に入ったわたしは、並んで本や書類をさばいてるハーミーたちに声をかける。

 

「お待たせ、やっと手伝えそうだよ。進捗どう?」

「まだ全部は調べられてないけど、芳しくないわ。ダフネのほうは?」

「こちらも目立った成果はありませんわ。ただ、やはりスリザリンが秘密の部屋に何らかの魔法動物を残していて、それが解き放たれていることは間違いないかと思いますのよ」

 

 手を止めずに速読を続けるハーミーに対して、ダフネはそう言いながら羊皮紙を差し出してきた。

 

 受け取って読んでみれば、そこにあったのはスリザリンと思われる人物の手記。ゴドリックという人物との決別と、ホグワーツを去るしかないという決断。

 そしてとある生き物を自身の思想を受け継ぐものに託すといった旨がつづられているそれは、ホグレガに出てきたスリザリンの手記に違いなかった。

 

 なるほどと頷くわたしに、ダフネはさらに続ける。

 

「それに、ミス・レガシーも『秘密の部屋は必ず存在する』と」

「……ミス・レガシーの言葉は事実だと思います。中に何か危険な魔法生物がいるということも間違いないでしょう。ですが、この手記はスリザリンのものではないかと」

「……どういうことですの?」

「言葉って生き物なんですよ。時代ごとに変わるんです。口語も文語も。なんなら文字すら変わります。魔法族は長生きなのでマグルに比べたら変化は緩やかでしょうが、さすがに千年単位になると明確に別言語のようなものなはずですよ。

 記録上最も長く生きているニコラス・フラメル氏でさえ、生まれは14世紀です。彼からしてもスリザリンの時代は300年以上前の遠い過去で、そんな時代の文章をただの二年生が、三人とも揃ってすんなり読めるなんておかしいと思いませんか?」

 

 わたしの持論に、ダフネは絶句した。けど、すぐに首を振りながら口を開く。

 

「……悔しいですが、その通りですわね。わたくし、実家にある呪いに関する資料を色々と調べましたが、古いものになればなるほど読めなくなりましたもの。一番古い資料なんて、今とは異なるアルファベットが使われていて、何が書いてあるのかまるでわかりませんでしたわ」

「言われてみれば確かにそうだね。百年前にそれを見つけたとき、スリザリンってやべーやつだったんだなって思ったけど……育ちのよくないボクが『ちょっと古い書き方だなぁ』って思う程度には普通の英語だったなぁ」

 

 彼女に続いて、肖像画からも声が聞こえた。そちらに顔を向ければ、スリザリンローブの幼女がいる。今日は特殊なものは何もつけてないみたいだ。ごくごく普通のホグワーツの制服。レガ主の場合、それが逆に違和感あるけど。

 

 ……っていうか二桁すら行ってなさそうな見た目なんだけど、なんか日を追うごとにスリザリンのレガ主小さくなってない……? このまま赤ん坊まで行くとかないよね?

 

「だとすると、この手記は……まさか、ゴーント家の誰かが?」

「可能性は高いよね。秘密の部屋にかけられた呪いといい、本当すごい家柄だったんだねぇ……」

 

 と、その幼女レガ主が聞き捨てならないことを言った。

 

 呪い? 秘密の部屋に? どういうことだろう。そう思って聞いてみたところ、彼女の返事はこうだった。

 

「オミニスが言うには、秘密の部屋を探そうっていう気がどんどん減っていく。そんな呪いがかかってるんだって。だからホグワーツの見取り図をミリ単位で調べたような人の著書にも、『あると思う』程度しか書かれなかったんだってさ。この影響を受けないのは、呪いをかけたゴーント家の人間だけ。ボクも探そうとはしたんだけど、気づいたら別のことやってたんだよね」

 

 改めてなるほど、と頷くわたしだ。

 

 いや本当、なるほどだ。そんな呪いがかかってるなら、原作でダンブルドア先生をはじめとした優秀な教師陣がまったく何も解決に向けて行動できていなかったのも、納得できる。

 

 たぶんだけど、方向性としてはマグル避けみたいなものだと思う。地図の間入口周辺にかかってるのと似たようなやつかもしれない。

 魔法族避けって言ったらいいのかな。その純血性と、スリザリンの直系であることを誇っていたゴーント家がかける呪いとしては、いかにも「らしい」じゃん。

 

「オミニス様の証言であれば、確度は高いですね。うーん、どうするのがいいでしょうか……」

 

 と、ここでわたしはあえて「わたしが知るはずのない情報」に応じて見せた。ダンブルドア先生にそういうポーズを取ったから、同じような現象は他にもあるって見せといたほうがいいかなって。

 

 そして、そういう違和感に最初に気づくのはいつもハーミーだ。彼女はそれまで話に参加せず、ずっと本や巻物を調べていた手をとめてわたしに顔を向けた。

 

「待って。なんでリンがオミニスさんのこと知ってるの?」

「……? え? あれ、そういえば……なんでだろ……」

 

 ということで茶番を挟みつつ、なんかそういう現象が起きてるってことを二人やレガ主にも共有しておく。これがどういう意味を持つかは、今のところあんまりよくわからないけどやっておいて損はあんまりないはずだ。

 

「ああ、あるよね! なんでか知らないはずのこと知ってるんだよ。ボクも色々あったっけなぁ。大体はどうでもいいこととか遠い未来のことがほとんどで、いざってときになんでこれを打破できるものを知らないんだよってやきもきさせられたもんさ」

 

 どうやらダンブルドア先生が言っていた通り、レガ主には知らないはずのことを知ってる経験があるらしい。

 よかった。ないとは思うけど、ダンブルドア先生が騙しにかかってきてる可能性もゼロじゃないかもしれないって思ってたから。

 

 わたしと同じく古代魔法の担い手だったレガ主から、同じ経験があるって聞けたのは大きい。これでわたしは、原作知識を披露する大義名分を得たと言っても過言ではないよね。どっちにしても、原作知識とか下手に言えることじゃないけどさ。

 

 まあ、これでハーミーたちからはわたしが予見者って確実視されることになったけど。予見者であってもいつでも好きなように視れるわけじゃないし、多少はね?

 

「ねえミス・レガシー。そのオミニスさんは、秘密の部屋を探そうとはしなかったの?」

「残念ながらまったく。オミニスってば、ゴーントの出身だけどゴーントのことがだいっきらいだったから。闇の魔法にだって絶対関わりたくないっていつも言ってて、秘密の部屋のことも関わりたくなかったんだよ。ボクにも危険なことはしないでくれっていつも言ってたし、秘密の部屋にも関わるなって言ってたくらいだから」

「そんな聖人のような方がゴーント家にいらっしゃいましたの!?」

 

 そしてハーミーに請われるままにレガ主が話したオミニス評に、大きな声でびっくりしたのがダフネだ。その声にわたしとハーミーがびっくりしたよ。

 

 でも言いたいことはわかる。遊びでマグルにクルーシオしてキャッキャしてた家だもんねぇ。

 この話は噂って前置いてからダフネも説明してくれたけど、ハーミーはドン引きだしわたしも改めて引いた。ゴーント家は断絶して半世紀以上経つけど、それでもヤバい家ってことが、歴史のある純血の家系に今でも伝わってるのは相当だよなぁ。

 

「いたんだよねぇ。ボクにとって直接知ってるゴーントの人ってオミニスだけだから、あんまり信じられないけど。

 ……そのオミニスが言ってたよ。秘密の部屋はホグワーツにトイレが設置された大改修工事のとき、ゴーントの人間の手でより綿密に隠されたって。だからこのまま詳細が見つからないようなら、トイレを総当たりするしかたぶん方法はないと思うよ」

「それは……あんまりやりたくはないですわね……」

 

 それはそう。でもそう言いながら、わたしに視線をよこすってことはそういうことですね?

 いいでしょう、お任せくださいとわたしは胸を張る。ダフネがそれでいい、って言わんばかりに頷いた。でもちょっと気になることがある。

 

「グリーングラス様のリアクション、トイレ探しが嫌なのかそれとも呪いの影響なのか、判別できないのは厄介ですよね」

「あ……言われてみれば。これもその一環なのでしょうか? いえ、あちこちのトイレに入り浸るのは本気で嫌ではあるのですが」

「なるほど、こうやって意識が逸れていくのね。魔法ってすごいものだけど、同時にすごく厄介だわ」

 

 些細なことをきっかけにして、そっちに意識や興味がすり替わるようになってるのかな。

 単純だけど効果的だ。自分自身の興味や好奇心が発端だから、違和感も全然ないだろうな。言ってみれば目の前の興味に飛びついただけなんだからね。

 

「あとは……そうですねぇ。やっぱりスリザリンの秘密の部屋となると、そこも出入りには蛇語が必要なのでしょうか?」

「その可能性は高いねぇ。君たちもそう思うだろ?」

「ええ、同感。例外ってことはないと思うわ」

「わたくしもそう思いますわ。ですがそうなると……」

 

 ここで改めて、わたしに視線が集中した。ですよね。

 

「……もうちょっと、蛇語の練習がんばりますね」

 

 ということで、わたしの蛇語集中講座はもうちょっと続くことになった。

 

 必要の部屋行きてぇ~~。けど、事件のせいで集団行動推奨されてるからなかなか行けないんだよなぁ~~!

 

 これから先、生徒に被害が出て完全に単独行動が禁止される前に、できるだけ行っておきたいんだけど、こういうときに限ってドラコを中心にしたわりとわたしを好意的に見てくれてるグループが、さりげなーく気にかけてくれてるんだよな……!

 クラッブとゴイルがガードマンしてくれるんだぜ? 本人にそのつもりはなさそうだけどさ。さすがスリザリン、結束の寮だよね!

 

 ……はあ。必要の部屋に行く時間がないときとかは普通にありがたいし、気持ちはすごく嬉しいんだけどさ。加減って難しいね……。

 




ホグレガでスリザリンの書斎にあったスリザリンのものと思われる手記ですが、ボクは本作で書いた通りスリザリン本人の手記ではなく、ゴーント家の誰かが捏造したものという解釈でいます。
理由もまた本編中にリンが語った通りで、常識的に考えて900年近く前の文章をパッと見ただけで普段使ってる文章と同じように読めるはずがないでしょ、っていう。

そもそもの話、スリザリンが純粋な魔法族だけに教育を施すべきだと主張したという設定は事実でしょうが、字面通りの解釈をしている原作中の純血主義者たちの主張は違うだろうと思ってます。
マグル生まれをホグワーツから排除しようとしたのは事実でしょうが、その理由はきちんとしたものがあったはずです。
当時の時代背景や文化、政治情勢などから導き出された結果だけが先走って、どうしてそういう結論を下されたのかという経緯が完全に失してるというのがボクの考えになります。

また、その辺りのことが伝わっていない、伝わっていなくとも議論もろくにされていないのは、イギリス魔法界が歴史学を軽視してきた積み重ねじゃないかなとも思っております。
最後の歴史学云々は妄想に近い願望のようなものではありますがね。
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