才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
呪いのせいで秘密の部屋についての情報がなかなか集まらない中、秘密の部屋の噂だけはホグワーツを駆け巡っている。ダンブルドア先生も含めた教師陣がその存在を否定するけど、噂だけは消える気配がない。
そして噂はずっと独り歩きしてるのに、誰もそれを本気で探そうって姿勢を見せない。呪いをかけた人はすごい人だったんだろうな。お辞儀方面のすごさだから、なんにも尊敬できないけど。
ただ、継承者探しのほうはわりと過熱してる。今のところホグワーツ生から継承者候補ナンバーワンとして名前を挙げられてるのは、パンジーだ。
そりゃ、大勢の前であんな空気読まない発言したらそうもなるっていうか。でも本人はそんなつもりはなかったからか、不満そうにしてる。
ぶしつけな視線や下世話な噂の対象になるのが気にくわないらしくて、おかげで最近はわたしへの折檻が復活した。わたしにとってはご褒美なので、パンジーには悪いけどもうちょっとだけこの流れ続かないかなって思ってる。
とはいえ、パンジーは継承者そのものも気に入らないみたいだ。秘密の部屋を開けたなら、なんで猫なんか石にしただけで終わらせたんだってぷんすかしてる。
「どうせやるなら猫なんてほっといて、フィルチを殺しとけばよかったのよ! まったく中途半端なんだから!」
彼女はそう言い切って、四つん這いにさせたわたしのお尻にフリペンドをたたきつけてくれた。
最高です。今後ともぜひこの調子でお願いしたい。
ただその、わたしが言うのもなんだけど、継承者の噂を否定したいなら寮内とはいえ人前でこういうことするのはやめたほうがいいかなって……。
ドラコはあんまりこういうこと好きじゃないから、ドラコと結ばれたいならやめたほうがいいよ。どうしてもやりたいなら、密室で、二人きりでやりましょう。
わたしはいつでもOKです。予定空けとくんで!
パンジー以外だと、やっぱり継承者候補に挙がってるのはみんなスリザリン生だ。さすがにスリザリン唯一のマグル生まれってことになってるわたしは候補になってないけど、この継承者候補の噂が今のホグワーツの断絶を表してるよなぁ。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ。
それもこれも、お辞儀とかいうハゲが悪い。あいつがいなかったらもっと平和な学校生活があっただろうに。
とはいえ、新しい話題が出てくればものすごい勢いで流されるのがホグワーツ生。良くも悪くも移り気な彼らの興味は、すぐにクィディッチに移っていった。本当に魔法族はクィディッチに狂ってる。
初戦はいつも通り、スリザリンVSグリフィンドール。そしてこれもいつも通りって言うべきか、ハリーが事件に巻き込まれる原作イベントの日でもある。主人公は大変だ。
わたし自身はクィディッチに大して興味がないし、ダフネも似たようなものだ。因縁の対決だから普通なら応援に駆り出されるんだけど、今回はダフネが体調を崩したフリをして寮にとどまってくれたから、その看病って名目でわたしも寒い中に外でクソゲーに熱中するフリをしなくて済んだ。正直ダフネの気遣いでこれが一番嬉しいまである。
寮で美少女が二人っきり。何も起きないはずがなく……って言いたいところだけど、さすがにそういう状況にはまだならない。あわよくばって狙ってるけどね。
じゃあ何をしてるのかって言えば、わたしが日本から持ち込んだ呪いに関する書籍とその内容の紹介、そして要約だ。もちろんと言うべきか、ダフネに求められてやってる。
普通なら本をそのまま貸せば事足りるんだけど、日本語の本だからね。普通のイギリス人にはちょっと難しくって。空いた時間に並行して訳文を書き込み続けてるけど、追いついてないのが現状で、要約ってのはそういう意味。
つまり今クィディッチ観戦をサボタージュしてるのは、別にダフネの気遣いでもなんでもないのね。こんなことしてるから、秘密の部屋の調査が進んでないとも言えるんだけどさ。
でも現状、秘密の部屋の被害者は猫だけで、その症状も石化って「だけ」だ。だからダフネにとっての優先度は呪いのほうが圧倒的に上だし、そもそもわたしたちが三人集まったのはそれがきっかけ。おかげで秘密への意識が簡単に逸らされるんだよね。
部屋の情報がなかなか集まらないのはそのせいで、改めて秘密の部屋にかけられた人避けの呪いの強さを実感してるとこ。わかっていてもこれなんだから、本当に呪いとしては最上級なんじゃないかな?
まあこれのおかげで逆に呪いに関する調査はバリバリ進んでて、スリザリンの書斎にあった呪い関係の資料は大体調べ終わったけどね。
レガ主が進めてた解呪用魔法の開発資料が見つかったのと、色んな呪いの情報が手に入ったことから、今後はこの魔法の開発を引き継ごうってことでハーミーたちとは合意してるよ。
「……なるほど。日本では呪いを、肉体による対躯型と魂による対魄型、あるいは両方による複合型という三つに大別しているのですね」
「はい。そして対躯型の定義する『肉体』とは何も生き物に限った話ではなく、場所も対象になるようです。秘密の部屋にかかっている呪いはこのタイプかと思われます」
「どうかしら? こちらに書かれている、名前を通した概念的に呪うタイプの対魄型かもしれませんわよ? あるいは複合型とも読めますわ」
一通り説明し終わったあとは、質疑応答よろしくあれやこれやと呪いに関して話し合う。
改めて他人に説明する中で思ったけど、日本は本当に呪いの研究が盛んだ。イギリスよりかなり進んでる。対抗する手段も豊富にある。
個人が魔法でなんでもできるがゆえに横の繋がりが希薄な魔法族にあって、日本魔法界は特殊だ。前にも少し触れたけど、日本魔法界では1300年以上の歴史を持つ血族を中心にまとまってるからね。
言うまでもないだろうけど、その血族っていうのは皇室だ。マグル界同様に皇室が日本魔法族統合の象徴になっていて、彼らを戴くことで一つのまとまり、社会として機能してる。
なんでそんなことができたのかって話は機会があればいつか話すけど……そんな皇室が、なんと12世紀の半ばに血の呪いを受けてしまったという。これこそが呪い研究が盛んになったきっかけで、だけど今に至るまで解呪には至ってない。だからこそ、日本は今も昔も呪い大国なのだ。
「それで行くと、血の呪いというものは恐らく種類を問わず複合型、なのでしょうね」
わたしが英語でまとめたノートを手元に置いて、ダフネがため息をついた。
今さらだけど、ダフネはわたしだけでなくハーミーに対しても血の呪いのことを説明済みだ。彼女が察してたからってのももちろんあるけど、一番は愛する妹のためならなりふり構わないって姿勢の表明なんだろうね。
ダフネが語ったところによれば、グリーングラス家が持つ血の呪いはシンプルに虚弱体質になるものらしい。去年からよく体調を崩すダフネを思い出せば、なるほどって納得できる話だ。
だとすると、既に彼女は発症してるってことになる。そりゃあんな世を儚んだ顔してるわけだよ。
今年入ってから……正確には、レガ主に会ってからはだいぶ明るくなったし、暗い顔をしてることは減ったけどね。やっぱ希望があるって大事なんやなって。
それにしても、これは何型の呪いなんだろう。複合型だとしたら厄介だ。
何せ日本の研究によれば、複合型の呪いを完全に解呪する方法はまだ一つも確立されていないから。
……っていうか、解呪方法が確立された呪いはすべて対躯型だ。それ以外の呪いは寛解させることはできても解くことはできなかったり、せいぜい進行を止めるのが精いっぱい。複合型に至っては、それすらできないものがほとんどっていう……その、難易度ルナティックですねって感じの状況でして。
まあそれはそれとして、えっちなことして呪いを解こうっていうアプローチなんかもあって、わたしとしてはまずそれが一番興味を惹かれるところなんですけどもね。さすが日本、HENTAIの国だぜ。
でもちんちんが必要な儀式魔法だから、基本男性にしか使えない(意味深)のがネック。いや女性でも使えるようにする手段はあるんだけどさ。
なんでって? 日本だもん、そりゃあるよ。こちとら江戸時代には生えてる女の子や触手プレイを扱ったエロ絵が存在した国やぞ。日本魔法界だってあるに決まってるやろ。
いやさすがに触手プレイしてくれる魔法生物はいないんですけどもね。生やすくらいはね。
まあどっちにしてもこの魔法、対躯型用だからダフネが使ったところでどれくらい効果があるか疑問だけど……色々だまくらかして使いたいところですね。もちろんわたしは相方をします(鋼の意志
一方レガ主が開発しようとしてた解呪魔法は、今のところ対魄型用に見える。複合型にも使えるようにしたいところだけど、ホントに古代魔法でなんとかなるのかなぁ。なんとかなってもらわないと困るんだけどさぁ。
「まああれこれ言っても仕方ありませんわ。今はできることをしましょう」
とはいえ、ダフネは今のところ悲観している様子はない。もしかしたら内心ではすっごく焦ってるのかもだけど、少なくとも見た目には出してないんだから大したものだよね。わたしがダフネの立場だったら、絶対怯え散らかしてるよ。
そんなダフネだから、わたしも助けてあげたいって素直に思えるんだよねぇ。
「今度のクリスマス休暇、わたくしは家に戻って血の呪いに関する資料を集めてきますわ。今まで我が家がやった実験や試した魔法薬などの情報もありますから、色々と参考になるかと思いますのよ。ミス・レガシーにも読んでもらって、色々と見解を伺いたいですわね」
「そのときは精査や仕分け、お手伝いいたしますね」
「お願いしますわ。……ゼンポウジは日本には帰らないのですわよね?」
「魔法があっても日本はさすがに遠いですし、出入国に関する手続きが煩雑でして……。ほしいものはたくさんあるんですが」
暗に「冬休み中に日本に帰って、日本で売ってる対呪いアイテムを買い込んでこい」って言うダフネにわたしは頭を下げる。
さっきも地の文で言ったけど、日本の呪い研究はイギリスよりも豊富だ。リトマス試験紙みたいな呪いの簡易検査呪符とか、呪いを
でもそのために必要な材料には日本固有の動植物由来のやつが結構あって、今のところイギリスじゃ作れそうにないんだよね。当然、完成品も日本に行かないと基本的に手に入らない。
あと、迂闊に買うわけにはいかない事情もある。というのも、解呪用となると大体のものは特定の呪いに対してしか効果がないっぽいんだよね。
考えれば当たり前の話だ。マグルの薬にしたって、基本は特定の症状に対して狙い撃ちして治療するんだもの。呪いだって対処方法としては同じ感じになるよね。
簡単な呪いであれば、フィニート・インカンターテムみたいに効く万能薬があるみたいなんだけど……血の呪いはたぶん、上から数えたほうが強い呪いだ。そうなると、数ある対呪いアイテムの中からどれを選べばいいのかが現時点ではわからないんだよね。無暗に使って逆効果になっちゃ本末転倒だし。
それとその手のアイテムは特に魔法薬の類で顕著なんだけど、消費期限が短いことが多い。とりあえず買うだけ買って保管、ってのが難しいともなれば、簡単に手は出せないのはわかってもらえるかと思う。
「……まあ、仕方ありませんわね。これについては、あなたが魔眼を制御できるようになるまで保留といたしましょう。制御さえできれば調査も研究もはかどるはずですし、それまでの我慢ですわ」
「はい、お任せください」
「……頼りにしておりますわよ」
「……っ、はい!」
なんだい、急にデレないでくれないかい。我慢できなくなっちゃうじゃないか。
「さて……思ったより早く終わってしまいましたわね。試合はまだ続いているのかしら? クィディッチは終わるタイミングが予想できないのが難点ですわよね」
やれやれとため息をつきながら、ダフネはベッドに横になった。実は今までも、ずっとベッドに腰かけた状態だったんだよね。
だって調子が悪いってごまかしてクィディッチ観戦をブッチしてるんだから、それっぽく見せないといけなかったんだ。人が戻ってきたとき、おかしいなって思わせないためにもしばらくはベッドの住人に専念するしかないっていう。
とはいえ今日は具合が悪いわけじゃないから、常に傍に控えておく必要はない。それでも傍にはいるけど、普段よりはわたしも退屈だ。
そこら辺を察してくれたのか、ダフネから無茶ぶりが飛んできた。
「退屈ですわ。ねえゼンポウジ、わたくしに何か面白い話をしてくださらない?」
「ええと、わたしができるような話は主にマグルの話になりますけど……」
「今さらでしょうに。どのみち今はわたくしたちしかいないのですから、少しくらい構いませんわ」
「そういうことでしたら……ええと、こういうのはいかがでしょうか」
わたしがそう言いながらスーツケースから取り出したものは、漫画本だった。背中でJCのロゴが躍るこの漫画は、何を隠そうジャンプコミックスだ。この世界にもきちんとジャンプはあったのだ!
夏休み中、いくつか買ったって言ってた漫画がこれね。だって魔法界、娯楽がなさすぎるんだもん。
魔法の勉強や練習も十分すぎる娯楽だけど、それだけじゃ足りないっていうか。去年必要の部屋でそういうことやってるとき、息抜きと称してそういうことヤっちゃってたのはそこらへんもあると思っててぇ……。
あ、ゲームはさすがに日本に置いてきたよ。ホグワーツだと電化製品使えないし。
ともかく、怪訝な顔を隠そうともしないダフネに、漫画の説明をする。ただ中身は普通に日本語だから、通訳は必要だ。わたしはダフネの隣に寄り添って、中を見せながら紙芝居みたく状況とセリフを聞かせていくことになった。
で、結論としては。
「『おれは
「なんてことを……! このディオという男、本当にどうしようもない男ですわね!」
イギリス魔法族にもジョジョはキく。スゲェや荒木先生!
今やダフネは完全に前のめりで、漫画を持ってるわたしにがっしりしがみついてる。完全に密着してて、わたしとしてはお胸が腕に当たって大変嬉しいんですが、そんなに気に入ってくれたんですかダフネさんや。
いやその、19世紀のイギリスが舞台ってこともあって、他よりウケはいいかなと思ったのは事実なんだけど、まさかこんなにのめりこんでくれるとは。
おかげで催淫魔法を使う余裕なかったよ。むしろわたしも途中からすっかり熱が入っちゃって、鍛え上げた演技の技術も駆使して情感たっぷりに語っちゃってたもんね。
なんでって、そんなの決まってるでしょ。前世からオタクの身としては、オタクに理解のある子とか好きになっちゃうし気持ちに応えたいって思っちゃうんだよ。
「……! グリーングラス様、どうやらみなさんが戻ってこられたようです」
「こんないいところでストップなんて!? 生殺しではありませんの!」
「ご自愛ください。いつでもお付き合いいたしますので、今は……」
「もう! 仕方ありませんわね! 絶対ですわよ、約束ですわよ!?」
「はい、もちろんです」
慌ててダフネから距離を取り、漫画をしまって看護の体勢に戻る。ダフネもぷくりと頬を膨らませながらもベッドに横たわった。
そして直後、室内にパンジーたちが戻ってきた。あからさまに不機嫌なその様子に、ああ原作通りにスリザリン負けたんだなと思う。
「おかえりなさいませ、皆様」
「おかえりなさいパンジー。……その様子だと、試合は負けてしまったのかしら」
「ええそうよ、負けたわ! でもそんなことより、あのロックハート! あいつ、やっぱりダメよ! 最近見直してる人が多いけど、あんなやつ信用できないわ!」
どうやらそこも原作通りになったみたいだ。つまり、ハリーはドビーの操るブラッジャーを食らい、おまけにロックハートの適当な施術で骨抜き(比喩ではない)にされたってことなんだろう。
パンジーは元々授業でロックハートに恥をかかされたって思ってるから、今でも当たりが強かったんだけど、こんな失敗をしたロックハートをますます嫌いになったみたいだ。今学期が始まる前のパンジーに言っても、きっと信じないだろうけど。
同じことを思ったんだろう。ダフネはわたしのほうをちらりと見て、苦笑して見せたのだった。
血の呪いについてですが、調べた限りどうも遺伝する呪いであること以外はあんまりはっきりとした設定が出てないみたいなので、開き直ることにしました。
そのため、出産に耐えられないだろうと言われ実際に耐えられなかったアストリアから逆算して、グリーングラス家の血の呪いについてはマレディクタスではなく、極度の虚弱体質として本作では設定しています。
正確には虚弱ともまた少し違うんですけど、そこは追々ということで。
同様に、本作オリジナルの要素である日本魔法界と、その中心にあると定義した皇室が受けている血の呪いも、マレディクタスではないということにしています。
この皇室が呪われている、というのは時代が時代なら不敬罪間違いないですが、日本魔法界が呪いへの対策を重点的に研究してるって設定を引き寄せるには、これくらいの一大事がないと根付かんやろと思って・・・。