才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
ところで、わたしの前には今一つの問題がある。週が明けてから始まる飛行訓練に向けて、それ関係の本を読み漁るというハーミーと別れたわたしが手にしている本についてだ。そう、ここからはちょっと真面目なお話をするよ。
今まさに借りてきたばかりのこの本のタイトルは、魔法理論概説。著者の名前はエリエザー・フィグ。およそ百年前、ホグワーツで魔法理論の教鞭をとっていた教師だ。
そしてこの人、ハリポタ原作には登場しない人物である。彼の登場作品は、ゲーム「ホグワーツ・レガシー」。アルバス・ダンブルドアすらまだ入学していない、19世紀末のホグワーツを舞台にしたゲームにおける主要人物だ。つまり今わたしがいるこの世界は、ホグレガ要素を含むということになる。
これの何が問題って、わたしは神様じきじきに
実際、古代魔法の痕跡は既に発見している。天文棟の地下深く、恐らくダンブルドア先生も含むすべてのホグワーツ関係者がただの行き止まりだと思っている場所で、古代魔法の光が見えた。あれに触れたら、恐らく隠し階段が出現して地図の間に踏み込むことができるようになるはずだ。
古代魔法の才能は十五歳になるまで開花せず、通常の魔法の力もそれまでは目覚めないんじゃないかって考察もネット上にはあったかと思うけど……まあそこは神様謹製の才能だから、問題なく共存してるってことなんだろう。
あのゲームも遊んだことがある身としては、もちろん興味深くはある。いずれ復活するヴォルデモート対策の手段の一つとして、間違いなく有用だろうってことも理解している。投げた噛み噛み白菜がノーコストで増えるとか、敏速とか。あとシンプルに魔法の才能の拡張ができるのも地味にヤバい要素だと思う。
けどそれはそれとして、少し扱いを間違うだけで大変なことになる劇物であることも間違いないんだよなぁ。百年前に大暴れしたランロクが取りこみきれなかった古代魔法の力の塊が、城の地下に眠っている可能性だって十分あるんだし。
そういうわけだから、見えているからにはいつか手を出さないといけないのかなぁと思いつつ、それは少なくとも今ではないだろうと棚に上げている状態だ。
何せ今年度のホグワーツには、ヴォルデモート本人が潜伏してる。それも教師の身体に憑依した状態で。
つまり迂闊なことをすると、古代魔法の存在がヴォルデモートにバレる可能性がある。それだけは絶対に避けないといけない。
だから関わるとしたら来年からだろう、って思ってる。ふたを開けてみたら特に何もなかったですってのが一番なんだけど、はてさて鬼が出るか蛇が出るか。
ただ、ホグレガ要素が存在するのも悪いことばかりじゃない。最大の利点は、必要の部屋の中で必要の部屋の模様替えができることがほぼ確定していること。
必要の部屋は存在を知ってる転生者にとっては御用達なチートアイテム(?)で、わたしも例に漏れず使い倒す予定だから、わざわざ出入りの回数を増やすようなマネをせずとも使い続けられるのは大きい。
そして今借りてきた、フィグ先生の著書も利点の一つだ。何せハリポタ原作において、魔法理論という授業は存在しない。
この本を読む限り、魔法理論とはその魔法がどうしてその名前なのか、どういう機序で発動しているのか、と言ったまさに魔法の仕組みを理屈によって導き出す学問になっている。
それはつまり、魔法理論を熟知すればオリジナル魔法を創るハードルがぐっと下がることに繋がる。魔法のない世界から来た身にとって、これほどロマンあふれる話もなかなかないと思わない? いや、マジでなんで原作に存在しなかったんだこの授業。高等教育に分類されるとかそんなか?
ちなみに図書館の蔵書を見る限り、今読んでいる魔法理論概説の他に魔法理論詳説という専門書もあるらしい。早いところ読み込んで、魔法の可能性を広げていきたいな。前にちらっと触れたオリジナル魔法も、これをしっかり理解すれば完成させることができると思うんだよね。
そのためにも、誰にも邪魔されない拠点は必要だ。そしてこのホグワーツでは、必要なものは必ず手に入る。
ということでわたしがやってきたのは、ホグワーツの八階。バカのバーナバスと題される絵画が飾られている廊下だ。
ここにあるのは、さっきちょっと触れた必要の部屋。ただし普段はその扉は存在しないので、一見すると壁があるだけに見える。
けれどここで必要なことを考えながら三回行き来することで、その通りの部屋へと姿を変えた部屋に入る扉が現れる仕組みになっている。その人にとって今まさに必要なものと出会える場所だから、必要の部屋というわけさ。ネーミングが神。
今回出現させる部屋は、シンプルにわたしだけが出入りできる個室にする。ただ勉強用の椅子と机さえあればそれだけでいい、というような。
そうして周りに誰もいないことを確認してから、出現した部屋に入れば……まさに要望通りの部屋がそこにあった。殺風景な、決して広くない白いだけの部屋に、ぽつんと机と椅子が置かれている。
要望通りの部屋が現れたことに満足しつつ、わたしは次に実験をすることにした。さっきも触れた、必要の部屋の中で必要の部屋の模様替えをする、というものだ。
確かゲームの様子だと、かなり強く念じることで部屋の内装を変えていた。魔法はやっぱりイメージが大事ってことなんだろうな。
ということで、本を胸元で抱きかかえながら、レガ主にならうようにして意識を集中させる。自然、目を閉じる形になったわたしはしばらく、変えたい部屋の内容を思い浮かべることに専念した。
その状態のまま、どれくらい時間が経っただろう。気づけば、いつの間にかあちこちから何かの音がたくさん聞こえてくるようになった。
成功したのかな? と思って目を開けてみると……そこにあったのは、どこからどう見ても日本のアパートのそれだった。しかもわたしが死ぬ前に住んでいたやつ。
「……うん、成功だ。今日も才能をくれた神様に感謝しなきゃね」
思わずつぶやく。ありがとうイザナミノミコト様、あの世でバトルトーナメント開いてくれてありがとう。
わたしが想起したのは、まさにわたしが前世で住んでいた部屋だった。わたし以外は誰も出入りできない、という条件はそのままに。かつて住んでいた部屋を、記憶に残る限りすべて再現することを目指した結果がこれ。そして無事、見た目だけなら間違いなく2020年代の日本のアパートが再現することに成功したのだ。
ただ少し調べてみた結果、パソコンやテレビといった電子機器はすべてただのインテリアだった。本棚に入れていた漫画とかも同様で、白紙の束どころか手に取ることすらできない状態だ。仕方ないとはいえ残念だなぁ。
たぶんだけど、いかに魔法とはいえそこまでは再現できないってことなんだろう。パソコンなんて特に、この世界じゃまだ黎明期だし。わたしの想像力が足りないだけって可能性もなくはないだろうけどさ。
逆に、魔法によって機能を再現できるものは軒並み問題なく使用可能だった。この場合はキッチンとか冷蔵庫、お風呂とか……あとは……そう、大人のおもちゃとか、ね……。
まあうん、こっちは素直にありがたい。どこでどうやって調達すればいいのかわからなくて、最悪自作しないといけないかもって思ってたから。それこそ必要になったら、ありがたく使わせてもらうとしよう。
わたしはそう考えながら、ピンクローターを手に取った。ぶいいいいん。
「……最後にもう一つ、実験と行こうかな」
次にわたしはそうつぶやくと、今となっては大きすぎるゲーミングチェアに飛び乗るようにして腰かけて再び目を閉じる。もう一度模様替えに挑戦だ。
ただし、今回は内装や条件等は変えない。ただ一つ、設定を追加するだけだ。
何を追加するかって? そんなの決まってる。
「ここを精神と時の部屋とする!」
わたしは誰もいない部屋の天井に向かって、そう宣言した。
はい、真面目なお話はここまでです。
***
結論から言えば、わたしの目論見は四分の一ほど成功した。
どういうことだってばよ、って思われるだろうから具体的にどういう結果になったかを端的に言えば、室外の24時間が室内では36時間になる程度の効果が得られた。本来の精神と時の部屋は室外の一日が室内では一年になることを考えると、めちゃくちゃナーフされてる。
でもこれはナーフって言うより、精神と時の部屋とするとか言っておきながら、完全に再現しようって気がわたしの中にないからだと思う。
だって精神と時の部屋って、一日で一年って効果だけが独り歩きしてるけど、実態は白一色の何もない空間なんだぞ。そんな場所にずーっといられるほどわたしは悟れてない。
あと、本来の精神と時の部屋って空気が地上の四分の一程度だし、重力も地球上の十倍だし、気温も五十度~マイナス四十度の間をランダムに変動するしで、過酷どころか一般的な地球人にはまず生きていけない空間なんだよね。
ついでに言うと、中で二年分……外での二日間を中で過ごすと、二度と外に出られなくなるなんてエグいデメリットもあるわけで。
そこらへんの不都合な要素をオミットして外より時間の流れが早いって要素だけをわたしの部屋に適用しようとした結果、色々と引っ張られて半日が一日になる程度の効果しか得られなかったんじゃないだろうか。知らんけど。
とはいえ、これでも破格な効果ではある。余分に使える時間が十二時間分増えると考えれば、やれることはたくさんあるもんね。
「……ふぅ。いかんいかん、ちょっと羽目外しすぎちった」
たとえば
いやあ、今までずっと人目があったからなかなかできなかったんだけど、完全に独立したわたしだけの部屋となれば、羽目も外れるってもんさ。
おかげでなんか気づいたら夕食の時間が終わってた。いやだってさ、神様が与えた才能はこっち方面でも効果覿面らしくてさ……その、すごくすごかったのだ。
「あと男の頃と違って、体力が続く限り無限にできちゃうのもまずいな……。ヤりすぎるとこすれて痛いとか起こるけど、そういうのは魔法でどうとでもなっちゃうし、こんなんオルガじゃなくてもとまるんじゃねぇぞってなるでしょ」
火星に向かって風評被害を飛ばしながら頭をかく。とりあえず、これからはきちんと自重しないとな。
そう決めて、わたしはくいっぱぐれた夕食を求めて厨房に向かうことにしたのだった。
初手必要の部屋をかます転生者の鑑。
こんな感じで、ホグレガ要素もおいしいところを狙ってちょこちょこ拾っていきます。
まあはっきり触れるのは当面先なんですが、そこまで連載が続くかどうかは、ボクにもわからないので・・・(目逸らし