才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
そして明くる日。ロンドンに向かうホグワーツ特急の中で。
「「ほんっとうに申し訳ありませんでした……!」」
わたしとダフネは、ジト目でこっちを見据えてるハーミーに思いっきり頭を下げていた。
コンパートメントには複数の施錠魔法と防音魔法が施されていて、万が一にもこの様子や会話が外にバレないようにしてる。わたしにも、浮気による痴話ゲンカを人に見聞きされたくないって言うプライドはあるのだ。
それを抜きにしても、純血のダフネがマグル生まれに平謝りしてるところは人様の耳目に触れさせるわけにはいかないしね。
「すべてわたくしの責任ですわ……」
「ちが、違うのハーミー。悪いのは全部わたしなの。わたしが無理を言ってグリーングラス様を……」
「いいえ、欲に負けて恋人のいる女性に手を出したのはわたくしですわ。ですから悪いのは……」
「わかった、わかったから。二人の主張はわかったからちょっと黙ってくれる?」
「「はい」」
昨夜はわたしが悪いって言ってたじゃん、と思いながらもハーミーがずどんと言ってきたのでダフネと揃って黙る。
うーん、思ってた以上にダフネが落ち込んでるな。まさかこんなに落ち込むとは思ってなかったし、こんなに正々堂々ハーミーに謝りに来るとも思ってなかった。
まあ、具体的にどう考えてたかって言われれば何も考えてませんでしたってのが答えになるから、わたしにこれ以上彼女を語る権利なんてないわけですけどね?
そんな考えなしのわたしをよそに、ハーミーはしばらく腕を組んでジト目を向けてたけど、やがてため息をついた。
「……まず、今の私の正直な気持ちを言うわね。いつかこんな日が来るんじゃないかって思ってたわ」
「えぇ……?」
「そ、そうなのですか……?」
まさかそんな、犯罪者に関するインタビューを求められた地元の人みたいなコメントが来るとは思ってなかったな。
「だって、リンってすごくかわいいじゃない。愛想もいいし、プライマリースクール……マグルの学校でも、リンはずっと人気者だったわ。男の子にも女の子にも。
そのくせ警戒感が全然なくって、スキンシップって言えばかなりきわどいところまで許しちゃうんだから、見てるこっちは気が気じゃなかったのよ」
あー……。それはその、なんていうか、ハーミーの気を引くためにわざと鈍感な女の子演じてたからですね……。
そうやっとくと、そのあと嫉妬でハーミーの距離感がバグって普段そうでもないのに向こうからぐいぐい来てくれるようになるからさ? こう、ついあれこれと。
同級生たちの性癖はボロボロになったかもしれないけど、そこはコラテラルダメージだようん。
「……ハーマイオニー、苦労されたのですね……」
「本当よ。スリザリン寮でもきっとそうなんでしょう?」
「ええまあ……ずっと忍耐力を試されている気分でしたわ……」
あー……。それはその、なんていうか、ご主人様候補をひっかけるために……最近は主にダフネの気を引くために、わざとえっちぽく見える言動や恰好を意識してたからですね……。
そうやっとくと、わたしを意識し始めたダフネに性欲を植え付けられるからさ? 催淫魔法の効果も上昇するってんでこう、ついあれこれと。
スリザリン生たちの性癖はボロボロになったかもしれないけど、そこはコラテラルダメージだようん。
あ、二人揃って呆れてる。なかなかの視線をいただきました。
「……そういうわけだから、誰かがリンに手を出すんじゃないかとは、ずっと思ってたのよ。私たちの関係は基本隠してるし、何よりそれくらい魅力的な女の子だって知ってるもの。それがダフネなのは、想定してた中では一番……そうね、あえて強い言い方をするけど、『マシ』な状況よ」
「わたくしが……一番マシ……? それはどういう……」
「だってダフネ、リンのことちゃんと好きでしょう? 独りよがりの一方的な気持ちをぶつけようとしたわけじゃなくって、ずっとリンを気遣ってるもの。手を出した自分が悪いって言うのもそうだし、私に対してこうやって誠意を見せてくれてるのもそういうことなんでしょ?」
ハーミーのストレート極まる言葉に、ダフネはちょっとだけ顔を伏せた。顔に赤みがさしていて、とてもかわいらしい。
その姿勢のまま、彼女はぽつりぽつりと話し始める。
「……はい。わたくしは、リンのことを愛しております。……愛してしまったのです。だって、仕方ないじゃありませんの。わたくしには今まで、妹しかおりませんでしたわ。この身に流れる血の呪いが、どうしても周りとの距離を作ってしまうから。パンジーはいい子ですし、大切なお友達ですけれど、それでもどうしても心理的な距離はありましたわ」
少しずつ、ダフネの様子が変わっていく。直前までの、いかにも恋する女の子みたいな表情から、恋という扱いの難しい感情に押しつぶされそうな、苦しげな表情に。
「けれど、リンだけはわたくしにずっと変わらず接してくれましたわ。わたくしが体調を崩したときも、普段と変わらず傍にいてくれましたのよ。何度もひどい態度を取っていたのに、ずっとずっと献身的に看病してくれましたのよ。
目が覚めたとき、そこに変わらずこの子がいてくれたことがどれほど安心したか。快復したとき、この子が本当によかったと微笑んでくれたとき、わたくしがどれほど嬉しかったか! こんなの、好きになるに決まっているではありませんか……!」
感情が高ぶってきたダフネが、ぎゅっと拳を握った。声も震えていて、涙ぐんでいるのが見える。
そ、そんな風に思ってたのか……。確かに体調が悪いときって心細くなるものだけど、そこまで効いてたとは思わなかった。
だってわたし、確かにダフネのことは心配だったし一生懸命看病したけど、その一方で不健全なことも考えてたし。そこまで思われてたとか、ちょっと申し訳ないっていうか……。
「でもそれを自覚したときにはもう、リンにはあなたがいて……。わたくしが入り込む余地なんてどこにもないくらい、お二人はとても仲睦まじくて……だからその、正直に申し上げますと、嫉妬したことだってありますわ。
それでも、ハーマイオニーを憎いと思ったことはありませんのよ。だってこの気持ちが育ち切る前にはもう、あなたもわたくしにとって大切な一人でしたもの。それまでまったく接点のなかったわたくしを介抱してくれて、それをからかうような輩はグリフィンドールの方であっても願い下げだと言い切ってくれたこと、本当に嬉しかったのですのよ。
リンと一緒に、本気で呪いを解こうとしてくださって、本当に本当に嬉しくて……。だから、ずっとこのことは表に出すまいと……この気持ちは、わたくしの中だけにとどめておかなければと、そう、思って……」
とつとつと語るダフネの言葉は、どこまでもまっすぐだった。それだけ真剣に、自分の気持ちと向き合い続けてきたことがわかる真摯な態度。
それがわかったからこそ、わたしは胸が痛い。その、ちょこちょこ性欲を煽るようなことしてすいませんっていうか……。催淫魔法ぶっぱなしてごめんなさいっていうか……。
わ、わたしだって人の心は持ち合わせてるんだよ。罪悪感だって抱くもん。
ばつが悪くて思わず顔を逸らしたわたしをよそに、ハーミーはうつむいて泣き始めてしまったダフネの身体を抱き寄せていた。
「言いづらいことを言ってくれてありがとう。その、たくさん言わせちゃってごめんなさいね?」
「いえ……いえ、いいのです……。あなたは何も……悪いのは意思の弱いわたくしであって」
「それは違うわよ。断言させてもらうけど、ダフネは何も悪くないわ! 意思の話をするなら、それこそリンなんてすぐえっちなことしたがるくらい弱いんだから、気にしたらダメよ!」
「はい……わたしはちょっとしたことですぐにえっちしたくなっちゃうダメ人間です……」
胸元でダフネを抱きしめた状態でハーミーが言い切ってくれたので、わたしは正座して平謝りする。ハーミーがキッとにらんできたのがわかったから、もっと頭を深く下げておこう。ジャパニーズ・ドゲザ・スタイル。
「そういうリンはどうなの?」
「え、わ、わたし?」
「ダフネはこんなに真剣にあなたへの想いを語ってくれたわ。あなたはどうなの? 昨夜のことは、ただ性欲に身を任せただけのことなの? それとも……」
おっと、ここで言葉は間違えられない。下手なこと言ったら、絶交だって顔に書いてある。
とはいえ、わたしの気持ちは決まってる。それを偽るほうが、たぶんハーミー的にはアウトだと思うな。
彼女はそういう子だ。年齢的にも物事を潔癖に見がちな年ごろだし、状況としてもわたしはすべてを偽らざることがマストなんだろう。
「……その、ハーミーのことは大好きだし、愛してる。ハーミーが言うなら、わたし何でもしてあげられるし、わたしのことは全部あげられるよ。グリーングラス様……ううん。ダフネちゃんに対する気持ちがそれと同じ気持ちかどうかって聞かれれば、違うんだろうなって思ってる」
これはわたしの本音だ。5歳から7年もずっと一緒にいて、一番最初に心を通わせたハーミーは、やっぱり特別なんだ。彼女には嫌われたくないし、彼女の中の一番はわたしでいたい。
この気持ちとまったく同じものをダフネにも抱けてるかと聞かれれば、答えはノーと言わざるを得ない。これについては間違いないと、絶対に断言できてしまう。
「でも……それとは別に、ダフネちゃんのことが好きって気持ちも、本当なんだよ。同じ好きじゃないけど、でも確かに好きなの。ずっと一緒にいたいって思うくらいには、大好きで……その、そうじゃなかったら、あんな姿自分から進んで見せにいかないよ」
だけど、好きなのも本当。きっかけはよこしまな考えからだし、昨夜も今も、えっちなことが思考の中心にあるのは何も否定できないけど、でもダフネのことはちゃんと好きだ。これも、間違いないって絶対に断言できることだ。
……まあ、最後に付け加えた部分はちょっと……本当のことを言ってない部分が、なくはないんだけど。
「……だから、その。世間的には普通じゃないかもだけど……で、できれば……三人で……一緒にいれたらいいなって、思ったりして……。だって今年、本当にずっと楽しかったから……」
だからってわけじゃないけど、別の本音をさらに付け加えておく。
……言ってから思ったけど、こういうところがスリザリンなんだろうな、わたし。
もうちょっとまっすぐ正面から当たりに……行けないんだろうなぁ。これは死んでも治らなかったもんなぁ。
組み分け帽子が言う通り、わたしは度し難い人間だ。わかってても、このサガはもうとめられそうにない。そこは本当にごめんなさい。
「……はぁー……」
ハーミーがため息をついた。タイミング的に、すごく呆れられてるように感じられて思わずびくってする。
彼女はさらに「あーあ」と、まるで悔しくないのに悔しく見せるような、わざとらしい声を上げた。
その声音に違和感があったのか、ここまでの間に落ち着いたダフネも不思議そうに顔を上げてハーミーの顔をまじまじと見つめている。わたしも似たような顔で、ハーミーを見ているに違いない。
「……そんなに言われたら、もう何も言えないわよ。二人とも、許します」
「え、えぇ……? その、わたくしが言うのもなんですけど、本当によろしいのですの?」
「そ、そうだよハーミー。無理してない?」
「本当によろしいし、無理だってしてないわよ! ……だって、しょうがないでしょ。ダフネとは同じなんだって、思っちゃったんだもん」
世が世なら閉廷! とか言いそうなハーミーだけど、付け加えられた後半には心当たりがあって、わたしは小さく「ああ……」と頷いた。
一方ダフネは当然わからない様子で、首を傾げてる。
「……私もそうだったの。寂しいとき、悲しいとき、つらいとき、いつでもリンが傍にいてくれたの。私、こういう性格だからずっと友達がいなくて……そんな私を、リンがいつもと変わらない態度で出迎えてくれたとき、本当に嬉しかったのよ。
だから、ああ、ダフネも同じなんだって思ったら……全部どうでもよくなっちゃったの。私と同じダフネなら、まあいいかって思えちゃったの!
リンの言ってることだってそう。三人でいて、ずーっと楽しかったのは私も一緒なの。今日だって浮気しちゃったって言われたときは確かにショックだったけど、思ってた以上に平気だったし、絶交だなんてちっとも思ってなかったのよ、私!」
ガーッと一気に言い切ったあと、説明させないでよ、と言いたげに逸らされたハーミーの顔は、恥ずかしさからか赤みがかっていた。かわいいね。
対してダフネは、目を丸くしている。言われたことをどうにか咀嚼しようとして、しきれなかった顔してるな。そういう顔、できたんだね。かわいいよ。
「そういうわけだから……お互いに独り占めはなしよ、ダフネ。それさえ守れるなら私はあなたがリンのことを好きでもいいし、その……そういうことをしても、何も言わないわ」
だけど改めてハーミーに言われたことを理解して、ダフネの顔は次第に緩んでいった。嬉しそうな顔に、目に、涙が浮かんでいる。
「……本当に、よろしいのですの? わたくし、あなたがたとこれからも、こうして一緒にいても……。リンのことを、諦めなくても……」
「そう言ってるわ! ……同じ人を同じように好きになった者同士、これから改めてよろしくね、ダフネ」
「ぅうう……! ありがとう……ありがとうございます……! わたくし、あなたのことも大好きですわ……!」
そうして、感極まったダフネがハーミーに抱き着いて。
ハーミーもまんざらでもなさそうに、抱きしめ返す姿を見て、わたしは思った。
てぇてぇな……と……!
「……それはそれとしてリンはこのままロンドンまで正座だし、クリスマス休暇中は
「えぇっ!? そんなあ!?」
今、全部許される流れだったじゃん!?
「そんなあ、じゃありません! リンはもうちょっとそういうことへの自制心を持ってもらわないと、何がどうなるかわかったもんじゃないもの!」
「は、はい……すいませんでした……」
……ちゃんちゃん、ってね。
反省してるように見えて、一応反省もある程度してるけど、やっぱり本質的には反省してないやべーやつがいるそうです。
一度痛い目見といたほうがいいとは思うけど、痛い目見てもそれはそれで気持ちよくなっちまうから本当に無敵の女すぎて困る。
ちなみにここまでほぼライブ感で書いてるので、この先どうヒロインを増やせばいいのか頭を抱えています。
特にパンジー。ハーマイオニーやダフネの恋愛スタイルと致命的に相性が悪すぎるのに、リンとは致命的に相性がよすぎるものだから、もう力業しかないかなって今考えてるところ。