才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
あっという間にクリスマス休暇も終わって、ロンドン発のホグワーツ特急。今年の真クリスマスプレゼントであるお揃いのマフラーを着けて列車に乗り込んだわたしとハーミーは、そのまま二人でコンパートメントに落ち着いた。
ダフネは来れない。純血の子たちとのお付き合いがあるんだってさ。口には出してなかったけど、心底めんどくさそうなふてくされたような顔が彼女の心境を雄弁に語ってたよね。
事情が事情だけに仕方ないけど、この間あんな風に三人の関係が動いたのに、それ以来ダフネとあまり触れ合う機会がないのは残念だ。ハーミーとは、えっちなことはしてなくてもキスくらいはしてるんだけどねぇ。
「……寮に戻ったら、いっぱい甘やかしてあげなさいよ」
「うん、そうする」
そんなことを話しながら、わたしは先ほど視たものとその考察を書き殴ったメモを眺めてあれこれと考えていた。
駅のホームで、ダフネと再会して予定通りアストリアを魔眼で見ることにしたんだ。ついでに、ギャレスさんも。
誰? って聞かれるかもしれない。ダフネとアストリアの叔父さんね。お母さんの少し歳の離れた弟さんらしい。
ダフネとアストリア姉妹には、両親がいない。お母さんは血の呪いに蝕まれて亡くなっていて、お父さんは行方不明だ。血の呪いを解く手段を探して世界中を飛び回っていたらしく、冒険の果てに……ってやつらしい。
一応公式にはまだ死亡扱いじゃないらしく、ギャレスさんは現在グリーングラス家の当主代行って立場って聞いてる。二人の後見人でもあるとか。
現状、グリーングラス直系の人間で健在の男性はギャレスさんしかいない。そんな彼のことを、比較のためにも視てほしいって事前にダフネから聞いてたから、二人分を視ることになったってわけ。
正確には、ギャレスさんは奥さんと一緒に来てたんだけど、奥さん……アクィラさんはグリーングラスの血筋じゃないそうだから、視る必要性はかなり低くてね。まあ高かったとしても、そっちまで視てる余裕はたぶんなかったと思うけど。
で、二度目の診察となったアストリアだけど、やっぱりその様子はダフネと違った。相変わらず、パッと視ただけだと呪いの影響はまったくないように視えるのね。
ダフネは前にも言った通り、全身をうっすらと覆うような形で呪いが宿っていて、それがかすかに光っているように見える。それは今も変わらないんだけど。
ダフネの話では、まだアストリアは病弱な様子はないらしい。庭先で跳んだり走ったりできるくらいには元気ってことだから、アストリアが呪いを発症させてないことは間違いない、って思っていいんだろうか。
くそっ、それにしても服が邪魔だ。脱いでほしい。
そう言ったら、ハーミーとダフネから頭をはたかれました。なんでさ。ダフネだって脱いでくれたじゃん。
それとこれとは別? ほなしゃぁないか……。前科あるしな……。
でもアストリアを狙うつもりはないんだけどな……。
話を戻そう。
ギャレスさんのほうも、呪いの詳細はわからない。元々グリーングラス家の呪いは女性にしか発症しないらしいから、彼に呪いの影響が視えないのはそういうことなんだろうけど……遺伝することを考えると、男であっても何もないってことはないと思うんだけどなぁ。
あ、ギャレスさんは裸にならなくていいよ。おじさん(まだ20代前半)の裸はそこまで見たくないので。
そんなことをハーミーと話し合いながら、ああでもないこうでもないと頭をひねってるときだった。ノックの音がした。
人と会う予定はなかったけど、息抜きにもなるかと思って応じたところ、入ってきたのは不思議ちゃんことルーナだ。
なんやかんやでずっと忙しかったから、ルーナと交流する時間は取れないでいるんだけど、中庭とか船着場とかで一人歌と踊りの練習をしてるやべーやつがいるって話は聞いてる。それ聞いたときは、絶対わたしに捧げる歌と踊りなんだろうなぁ……って思っては目を遠くしたよね。
まあだからこそ、これは使えるかもって思って、クリスマスには日本の儀式魔法の本をプレゼントしたんだけど。
がんばって英訳を書き込んだお手製だ。これを読み込んで、歌と踊りへの情熱を儀式魔法に向けてほしい。
……原作でも大概だったのに、この世界だとわたしの影響でより奇行が増えてるからガチめのいじめとか受けたりしてないか心配ではある。一応こうして直接対面する限り、変わりはないみたい。そこは安心かな。
「久しぶりだね、ルーナ。どうしたの?」
「……やっと会えた。神様、助けてほしいんだ」
ところが開口一番そんなことを言うものだから、思わずハーミーと顔を合わせて首を傾げた。
神様云々はともかく、助けてほしいってのは穏やかじゃない。やっぱりいじめられてるのかな。単純に勉強がわからないくらいならいいんだけど。
「あ、でもその前に。クリスマスプレゼント、ありがと。大事にするね」
「どういたしまして」
このやり取りに、ハーミーが首を傾げる。そんな彼女に顔を寄せて、歌と踊りを捧げようとしてくるルーナに宛てて、そういうのを使う儀式魔法を中心に載ってる本をプレゼントしたんだって耳打ちする。
この本自体は夏休み中に二人で見てたから、覚えてるんだろう。ハーミーはああ、って納得した顔を見せた。
納得の半分くらいは、わたしがその本に英訳を一生懸命書き込んでた理由を理解したからだろうけどね。クリスマスの二日前まで翻訳作業してたから……。
まあそれはともかく。ひとしきりクリスマスプレゼントに関する話を終えて、ルーナは神妙な顔で本題に戻った。
「ジニーの様子がヘンなんだ」
ルーナが語ったところによれば、ハロウィンを過ぎた頃からジニーの様子がおかしい。一見するといつも通りに見えるけど、人目のないときには疲れたような様子で、いつも寝不足みたいに見えるんだ、と。
ハーミーはそんなジニーを見たことがないみたいで、しきりに首を傾げてる。だけど原作との比較のためにジニーを定期的に観察してたわたしには、心当たりがあった。
まあジニーを定期的にウォッチしてましたとかここで言ったら、この間あんなことがあったばかりなことを考えるとハーミーに思いっきりキレられそうだから、言わないけどさ。
ともかく、誰かと一緒にいるとき……特にハリーと一緒にいるときのジニーは、実際普段通りだ。ハーミーがグリフィンドールで行動を共にするのが一番多いのがハリーとロンってことを考えると、ハーミーがジニーのおかしなところを見る機会がないのはある意味当然かもしれない。
「ジニーはなんでもないって言うけど、そんなことないと思う。きっとラックスパートに取りつかれてるんだよ」
「ラックス……なに?」
「ラックスパート。耳から入って、頭をぼーっとさせる魔法生物だよ。見たことはないけど」
「……見たことはないけど、存在はしてる……? セストラルみたいに、見るのに何か条件が必要な生き物なのかしら」
ルーナとそのお父さんが言う魔法生物って、一般的に与太話扱いで誰も信じないんだけど……ハーミー普通に信じちゃったな。魔眼で色々見えるわたしがいるからかしら。
まあ不思議なものごとにあふれてる魔法界だ。大半の魔法族には見えないだけで、本当に存在してる可能性だってゼロではないし別にいいか。
「だから、神様にお願い。ジニーがこれ以上悪くなっちゃう前に、なんとかしてあげてほしいンだ。何もなければそれがいいけど……なんだかヤな予感がして……」
それにしても、マジでただの勘なんだろうけど、今ジニーに起きてることを大体言い当ててる。すげぇや。これが本物の予言者トレローニー先生も絶賛する占い学の才能ってやつ?
ともかく、ルーナにここまで言われちゃ断れない。人情的な話じゃなくって、わたしの魔眼を知ってるハーミーが同席してる場で言われた以上、「じゃあとりあえず視てみましょう」って流れになるのが確定的に明らかだからね。
それに魔眼も順調に使えるようになってきてる今、これ以上ジニーに負担をかけたままにするのはちょっとなって思うし。
何より、必要の部屋に行けない状況が続いてるのも地味にストレスだし、アクロマンチュラとか忘却呪文逆流とかへの対策が結局見つからないままだから、秘密の部屋事件はもういっそ早めに終わらせたいんだよね。
「わかった、調べてみるよ。教えてくれてありがとうね」
「ありがと。お礼に、歌と踊りを披露するよ。あたし、一杯練習したんだ」
ということでわたしは快諾。ルーナもこれには嬉しそうににっこり笑った。
奇行が目立つだけで、ルーナも結構きれいめな顔立ちをしてる。そういう風に笑うと、本当に絵画みたいな美しさがあるよね。
それはそれとして、歌と踊り自体は別段そこまで嬉しくはないっていうか……。その情熱を歌とか踊りとかを使う儀式魔法に注いでほしくて、本を贈ったんですよこっちは。ぜひそっちを披露してほしい。
「わ、わあ、嬉しいなぁ。えっと、でもここでやるのはちょっとね。周りの迷惑にもなるかもだし、だからね、ホグワーツに着いてからってことで、ね?」
「ン、わかった。いつでも言ってね。あたしなんでもするから。例の魔法のほうは、もうちょっと待って。がんばって覚えてるところなんだ」
「うん、そのときはお願いするよ」
そんなこんなでルーナとの話は終わったけど……あの感じ、儀式魔法とは別に絶対普通の歌と踊りも披露されるよなぁ……。
儀式魔法を覚えてもらって、信仰心はそっちで解消してくれないかって思惑は、残念ながら失敗かな。まあ、儀式魔法を外注できるようにしたいって思惑もあったから、完全には失敗じゃないんだけど……ううーん、どうしよう。
とはいえこういうとき、事態を打開する意見は大体いつもハーミーから出てくるんだよね。
「いっそ歌も踊りも、リンの好きなやつをリクエストすればいいんじゃない? なんでもするって言ってたんだし」
「……ハーミー、天才じゃない……?」
そのときわたしに電流走る。
なんていうか、原作でハリーたちがハーミーにめちゃくちゃ頼ってたのもわかる気がした瞬間だった。必要な情報をいくつか渡せば、解決策を思いついてくれるんだもんな。
にしても、どうしてその発想ができなかったんだ。こちとらマンガアニメとHENTAIの国、日本の生まれだってのに。イギリスに長く住みすぎてそこら辺の感性が劣化してるんだろうか。
えっちなことしか考えてなかったからですね。はい。すいません。わたしはダメな子です。
待てよ、だとしたら歌とか踊りだけじゃなくて衣装も指定しちゃっていいんじゃないか。それこそコスプレとか。
……おおお? これはまじめに検討すべき案件だな??
まずは穏便に(?)巫女服とかいいんじゃないだろうか。イザナミ様の似姿を持つ身としては、やっぱそこ重要だと思うんだよな。
まあどうせ着せるなら正統派の巫女服じゃなくって、ちょっぴりえっちな感じにしたいとも思うわけだけど……受け入れてくれるかな。神様命令って言ったら行けないかな?
肝心の歌のほうは何がいいだろう。わたしの好きな歌ってなると、どうしてもマグルのになるけど。
個人的にはアニソンを歌ってほしい。歌って踊れるアイドル目指してポップスもいいのでは。
……まあでも、最初はやっぱり地元イギリスのやつが無難?
たとえばビートルズとか。イギリスならクイーンも外せない。ディープ・パープルもいいぞ。そこより時代は下るけど、クーラ・シェイカーも……いや、これはまだないんだっけか?
うーん、我ながらロックしか思いつくものがないや。
「……そういえば、魔法界で音楽とかってどうなってるんだっけ?」
「レコードがそれなりに普及してるみたいよ。CDはまだ……っていうか、難しいんじゃないかしら。あれって確か、電気信号でしょう? 電気が魔法と相性が悪いって説を聞いたことあるし、ホグワーツなんて電化製品を動かなくする魔法がかけられてるらしいわよ」
「そっか、レコードあるんだ。じゃあお父さんからいくつか送ってもらうのもいいかも」
「ああ、おじさんイギリスのロックバンド好きだものね」
「うん、わたしも好き」
元々前世でも音楽バンドアニメの影響で海外のロックバンドもそこそこ聞いてたんだけど、今世のお父さんがイギリスのロックファンでね。おかげでますます好きになったのさ。
……よし、やっぱりここはビートルズだ。お父さんには手紙を出して、準備だけでもしておいてもらおう。
あとは蓄音機も買わないとか。それも電気を使わない、昔ながらの機械式蓄音機。高いだろうから、お金をなんとかしなきゃだ。
空いた時間にちょっと禁じられた森に入って、売れそうな素材とか探しておこう。イギリスでは日本固有種の素材は貴重だけど、それは逆もそうだからね。結構な値段で売れると思うんだよ。
いやあ、なんか急に楽しくなってきたな。やっぱりこういう文化的な活動って大事だよね! えっちだけしてちゃダメだな!
ルーナ改造計画、始動。
本格的にかかわってくるのはアズカバンの囚人編からとは思いますし、現時点では細かいことは何も決まってないですけど。
あと、いつも通りグリーングラス家に関してはほぼ独自設定ですが、ギャレス・グリーングラスとその妻アクィラ自体は一応ゲームに登場する人物です。
ダフネたちとの続柄については独自設定ですけどね・・・。