才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
必要の部屋を使い始めた日曜日から、明けてホグワーツ生活二週間目。今週は原作イベントの一つである飛行訓練が始まる週だ。
と言っても原作イベントはこの初回のみで、あとは授業の描写はされないんだけどさ。
ともかく、魔法族にとって箒に乗ることはわりかし重要なことだ。魔法族がやたら熱狂するクソゲー……もとい、大人気のスポーツであるクィディッチは箒を使う競技だしね。
ホグワーツ内でも、クィディッチは寮の勝敗を分ける要素でもあるから、箒をうまく扱える人ほどヒーローになれる。マグルの小学校で運動できる子がモテる的なやつだ。
「……そういうわけで、僕は間一髪マグルどものヘリコプターをやり過ごしたってわけさ!」
たとえばそう、今まさに友人たちに自慢げに箒乗りの武勇伝を語るドラコのように。
……まあ、あれはどう考えても嘘なんだけど。ヘリコプターなんてクソうるさい乗り物、ニアミスするくらい近くに来るまで気づかないなんてありえないもん。
でも男の子ってのは見栄を張りたがる生き物だからね。仕方ないね。
それにヘリコプターの実態を知ってる人間が、魔法界出身者が大半を占めるスリザリンにいることはほとんどない。ドラコのかわいい嘘がバレることはまずないだろうし、わたしも指摘するつもりなんてない。なので生暖かい目で見守るだけだ。
「……おいゼンポウジ、なんだその目は。さては疑っているな?」
バレテーラ(死語
「まさか。わたしごときがマルフォイ様を疑うなど……」
「お前の浅はかな嘘なんてお見通しだ。本当のことを言え」
「……申し訳ありません、疑っておりました……」
「この僕を欺こうとは、お前も偉くなったものだな?」
「申し訳ありません……どうかお許しを」
「……ふん。言動には気をつけろよ。お前のような穢れた血、どうとでもできるんだからな」
「はい、肝に銘じます」
頭を下げたままそう言うと、ドラコは鼻を鳴らして席を立った。その背中を追ったパンジーの声が聞こえる。
「ドラコったら、優しすぎるわ! もっときちんと躾けてやらないと調子に乗るに決まってるわよ!」
ワイトもそう思います!!
いや本当、ドラコときたら優しすぎるんだよ。ここまで何十回も失敗して見せてるけど、ドラコには咎められたことはあっても、物理的にお仕置きされたことは一度もないんだよねこれが。パンジーなんてすぐ手が出るし、他の純血にしたってちょくちょく気持ちよくしてもらってるんだけど。
なんていうか、自分が痛いのも他人が痛いのも好きじゃないんだろうなっていうか……。屈折はしていても根っこの人の好さを隠しきれてないっていうかね……。
仮に男をご主人様にする場合、ドラコは第一候補だったんだけどな。この調子だと、そういう関係になったときマジでめちゃくちゃ大事にしてくれそうだ。……原作からして、アストリアとの関係はそうっぽいか。
でもそれはわたし、あんまり求めてないんだよなぁ。残念ながらドラコはご主人様としては不採用かなぁ。
貴殿におかれましては、今後ますますのご活躍をお祈りしております。
***
とまあそんな一幕もありつつ、いよいよ初めての飛行訓練の時間がやってきた。わたしたちスリザリンは、グリフィンドールとの合同授業だ。
周りには、空を飛べるとあってか、どっちも浮ついた空気が漂っている。特に男子なんか、普段仲のよろしくない二寮間であっても普通に会話を成立させられそう。
そんな同級生たちを遠巻きに眺めながら、わたしはこのあとのことに想いを馳せていた。
ネビルを助けるかどうかは既に決めている。わたしの魔法界におけるスタンス上、彼のことは絶対助けないといけない。何せ彼は聖28一族の純血だからね。
そういうのが関係ないときは、基本的にわたしが目的を達成するのにメリットデメリットがあるかないかで判断するつもりでいる。つまりわたしに都合がいいことが起こりそうなら原作に介入するし、そうじゃないならしないって感じだ。
だから逆に言えば、今夜にあるはずの決闘騒ぎにはまったくかかわらないつもり。例外は、わたしにとって大事な人にかかわるときくらいかな。
自分勝手って言われそうだけど、人間ってそんなもんでしょ。わたしは聖人君子のつもりはないし、なるつもりもない。そもそもハリーがかかわることにいちいち首突っ込んでたら、命がいくつあっても足りないしね。
……ハッフルパフに振り分けられるような人とかは、そこらへんすごく悩みそうだな。
とはいえ、わたしの優雅なペット生活に、マグルやマグル生まれ相手に散歩並みの気軽さでアバダるようなヴォルデモートとかいうハゲは必要ない。せめてクルーシオオンリーならわたしだってまだ少しは考えるのに。
だからお辞儀には退場してもらうほうが普通に都合がいいので、何かとハリーを手助けすることにはなるだろうなとも思ってる。
「もう授業が始まりますよ! 箒のそばに立って、さあ早く!」
そうこうしているうちに、飛行訓練を担当するマダム・フーチがやってきた。生徒たち、特にグリフィンドール生たちが慌てて並ぶ。
「右手を箒の上に突き出して、『上がれ!』と言います」
言われた通りにしてみ……ようとしたところ、声を上げるより早く箒が手に飛び込んできた。うーむ、さすが神様謹製の才能。ここでもバッチリってことか。
でもクィディッチはやりたくないから、箒についてはかなり手加減したほうがよさそうだな。
単純にスポーツとして興味がわかないってのもあるけど、部活で自分の時間が取られるのが嫌なんだよね。そうするくらいなら、トイレにこもって一人でハッスルしてたほうがまだマシ。
「うわああぁぁーーっっ!?」
なんてことをぼんやり考えてたら、いつの間にかネビルが箒で上空まで連れていかれるところまで進んでいたらしい。悲鳴の聞こえたほうへ顔を向ければ、ロデオみたいに空中を飛び回る箒に、必死になってしがみついているネビルの姿が見えた。
「こら! 戻ってきなさーい!!」
フーチが声を張り上げるけど、それができたら苦労はしないんだよなぁ。そもそも今のネビルに他人の声に返事する余裕なんてないし、なんなら目すら開けれてないのに。
ベテラン教師の姿か? これが……とか初めて映画見たときから思ってたけど、それは置いとくとして。
わたしは杖を抜くと、ネビルの真下周辺に向けて走り出した。そうして上を確認しつつ走りで位置取りを適宜修正し……。
「……っ、レヴィオーソ!」
遂に耐え切れなくなったネビルが空中に放り出されたタイミングで、浮遊呪文を放った。魔法の力が杖から放たれて、ネビルの身体に当たる。すると彼の身体は落下をやめ、ふわりと空中に漂い始めた。
ふう、一発成功。必要の部屋を使い始めてからというもの、ずっとやってた練習の成果が出たな。
原作では杖で触れたものにしか効果が出ないこの魔法を、ホグレガみたく光線を飛ばす形で遠隔に作用させるように身に着けたうえで、離れた場所でランダムに高速で動くものに対して命中させるのはさすがに一日じゃ無理だったもん。
それでも二日でほぼ完ぺきにできるようになったあたり、才能をくれた神様さまさまだ。
……って、感慨にふけってる場合じゃない。魔法は成功したけど、当のネビルはまだ空中にいるんだから。
「先生! 今のうちにロングボトム様を!」
「……っ! よくやりましたゼンポウジ!」
箒を放り出してここまで来たので、あとはフーチに任せる。ここまでお膳立てすれば、なんとでもしてくれるだろう。
実際ネビルは無事地上に下ろされ、わたしはスリザリンに十点をもたらした。そしてネビルはというと、念のためフーチ自らの手で保健室へ運ばれることに。
「私が戻ってくる間、動いてはなりませんよ。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらうことになりますからね!」
フーチはそんなことを言い残して、ネビルを抱えていったわけだけど……11歳の子供たちが、監督者なしで大勢取り残されて大人しくしてるわけがないんだよなぁ。
「あんなヤツ、助けなくてもよかっただろうに。まあスリザリンに点をもたらしたことを考えると、あの大間抜けに少しくらいは感謝してやらないといけないか?」
ドラコが心底ネビルをバカにした態度を隠すことなく、わたしにそう言ってきた。後半はただの皮肉だし、普通に嗤ってた。
ただわたしはそうは思わないし、わたしのスタンスを表明するちょうどいい機会でもあるから、控えながら返答する。
「ロングボトム様は、聖28一族のご嫡男にあらせられます。尊き純血の数が減っている今、何があってもお助けせねばならないと考えた次第でございます」
わたしが立てるのは、あくまで純血だけ。しかしそこにそれ以外の区別はない。例外は同僚のスリザリン生の優先ってくらいで、あとは魔法界の黎明期から魔法界を支えてきた古い血脈すべてを、一律に尊重するというのがわたしのスタンスだ。
スリザリンの人間ならそれをこの言葉だけで大体のことを理解するだろう(クラッブとゴイルは除く)し、グリフィンドールでも勘のいい人間は気づくことだろう。
そしてこの答えに、スリザリン・グリフィンドール双方が微妙な顔をした。前者は痛いところを突かれた、という顔。後者は……今しがた見直したばっかりなのに、という顔かな?
「……差し出がましいことを申しました。どうかご容赦を」
それを見て、わたしは頭を下げてその場に控えた。
実際、スリザリンにいる純血の多くはなんだかんだで魔法界の現状をわりあい理解している。
それもこれも、直接間接問わず敵対する人間を片っ端からアバダりまくったヴォルデモートとかいうハゲが悪い。ここまで強く思ってる純血はあまりいないだろうけどさ。
だからだろう。ドラコはわたしの言葉にふんと鼻を鳴らすと、わざとらしく話題を変えた。
「……あ。見ろよ、あれ。ロングボトムの婆さんが送ってきたバカ玉だ!」
そこから先は、原作とほぼ変わらない展開だったのでカットでいいだろう。
ネビルをバカにしつつ私物を取り上げようとするドラコを、ハリーが咎めて箒対決になる。ハリーが箒の才能をいかんなく発揮してスーパープレイを披露し、それをたまたま見かけたマクゴナガル先生がグリフィンドールチームのシーカーに大抜擢するって流れだけわかっていればいいと思う。
このあと夕食時にハリーは約百年ぶりの一年生シーカーとなり、それを見たドラコがケンカを売りに行ったのも原作通りだ。
そのまま原作通りに決闘を申し込まれ、ハリーとロンが売り言葉に買い言葉で了承していたから、今夜はハーミーとケンカしつつ、寮の合言葉を忘れて帰れなくなっていたネビルも巻き込んでの大冒険になるんだろう。
さっきも言ったけど、わたしはこのイベントに関わるつもりはない。参加したところで、わたしにメリットが何もないからだ。それにこのイベントで、ハリーたちが死ぬわけでもないしね。
……ああいや、最後はケルベロスと対面するから、そこだけ危ないけど。それにしたって、闇の魔法使いに襲われるほどじゃない。元はハグリッドが飼ってたペットなんだし。
「おいゼンポウジ。お前、ポッター相手に変な気は起こすんじゃないぞ?」
それに何より、ドラコにそう釘も刺されたしね。最初からその気がなかったわたしは、当然了承を返してかしこまる。
ドラコはそれでいい、と満足げに頷いた。そして、うまく行けばポッターのせいでグリフィンドールは減点だ! とほくそ笑む。
その夜のドラコは、終始機嫌がよさそうだった。わたしが適当な失敗をしてパンジーにまたお仕置きされていたところを仲裁してくれたくらいだから、相当上機嫌だったんだと思う。
あの調子ならきっと気分よく眠れたんだろうけど、どうせ機嫌がいいならパンジーと一緒になってお仕置きしてくれればよかったのに。お父上ならきっとそうしたぞ。フォイはもっとパパフォイのサディスティックなところを見習ってくれ。
こんな感じで、基本的に原作通りのところは遠慮なくカットしていく予定です。
まあ細かな改変が重なった結果、カットできるところはどんどん減っていくんでしょうけどね。