才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
「先生、例のものをお持ちしました」
「おお、無事じゃったか。大事なく何よりじゃ……うむ、よくやってくれた」
さらにこの日の夜。わたしはダンブルドア先生に、キズ一つないリドルの日記を手渡すのに成功していた。
……うん、わかってるよ。自分でもわかってる。あんだけフラグ立てといて、普通に成功する奴があるかって言いたいんでしょ。
しょうがないじゃん、成功しちゃったんだもん! 普通にグリフィンドール寮に侵入して、そのまま普通にジニーの部屋に入って、そのまま妨害もなく日記を取ってくることに成功しちゃったんだからしょうがないじゃん!
いや本当、成功させといて言うのもなんだけど、なんで成功したんだろう……。トムくんのことだから、罠の一つや二つくらいあってもおかしくないと思ってたんだけど。
魔眼はもちろん、プロテゴ・レフレクティスまで展開して警戒マックスで当たったのに、マジでなんにもなかった。強いて言えば、分霊箱が放つ闇の気配をプロテゴ・レフレクティスがはじいてくれてたくらいか。
わざわざ作った魔法が効果を発揮してて嬉しいんだけど、拍子抜け感はぬぐえないっていうか。そんなに自分の存在が露呈するって思ってなかったんだろうか……。
いやまあ、原作でもトムくんは物語終盤まで分霊箱の秘密がバレてるって思ってもなかったみたいだし、あり得るのか? わりと慢心するとこあるしなあの人……。
ともかく、こうして事件の黒幕はダンブルドア先生の手に渡った。無傷だし、分霊箱の調査もこれではかどるんじゃなかろーか。
魂を吸い取られる経験はしておきたかったけど、さすがにそれは許してもらえないよなぁ。
ま、あとはバジリスクをどうするかだけだ。でもその前に、一応聞いとこう。
「……そのノートの詳細については、聞かないほうがよろしいですか」
「そうじゃな……それを知ってしまったら、わしは本当に君を利用するしかなくなってしまう。今さらではあるが、だとしてもそれは避けたい」
ダンブルドア先生は、ため息まじりに「フィグ先生になるのは難しいのう」とこぼした。
声色はおどけた調子だったけど、その表情はものすごく苦々しい。わたしにはそれが、何よりも自分こそがこの世で一番信じられないのだと言っているように見えた。
「わたしは利用していただいて構いませんよ。先生の個人的な事情に巻き込まれるのはさすがに困りますが……そう、たとえば去年のようなことであるなら。わたしやわたしの大切な人の未来にかかわる話ですし」
だからわたしは、自然とそう言っていた。
とはいえ、善意100%ってわけじゃない。こう言っておけば大丈夫だろう、って打算も入ってる。
打算込みの発言ができたのは、もう下手なことは起きないだろうって判断したからだ。去年の段階ではダンブルドア先生の手駒にされる可能性や、原作知識の漏洩を心配していたけれど、去年よりも近い位置でダンブルドア先生と関わり続けたことで彼のスタンスはある程度把握できたからね。現時点では、手駒にされる可能性はほぼないと見ていいと思う。
わたしがあくまで善意の協力者であり続ける限りは、教師としての先生の良心が、生徒からの善意の申し出があったとしても日ごろから便利使いするわけにはいかない、って理性を利かせてくれる。
「おおリンや、これ以上このおいぼれを誘惑せんでおくれ。そのような提案をされてしまっては、心の弱いわしはそれにすがってしまいそうになる……」
ほらね。
ただ勘違いしてほしくないけど、別にダンブルドア先生を曇らせたいわけじゃないんだ。これだけは本当なんだ。先の発言には善意だってちゃんと入ってる。
えっちなことになると見境がないわたしだけど、それ以外のことに関してはちゃんと人並みの倫理観と道徳心は働くんだ。でもえっちなことだけはなんとか大目に見てください。
まあそれがなくとも、彼にとって「大恩ある先輩」であるレガ主と同じ肩書の持ち主。つまり百年ぶりの古代魔法の使い手というジョーカーを、ただの手駒になんてできるはずがないだろうけどね。
情報の漏洩については、去年の時点では内心を守るすべを持っていなかったこその懸念だし。去年一年間、そして今年も序盤のうちに必要の部屋で重点的に訓練したこともあって、わたしの閉心術は既に一流の水準に達してるのだ。
具体的には、開心術をかけてきた相手に偽りの内心を見せられる程度で、スネイプ先生並みの腕前と言えば相当のものだとわかってもらえるだろう。要するに作中でも最高クラス。めっちゃがんばった。ぶい。
まあ実際にそれを試す機会は今のところ来てないから、本当かどうかはわかんないけどさ。その日の体調とか食らうタイミングで上下はあるだろうし。
ただ少なくとも、必要の部屋に出現した訓練用の開心術グッズはどれもできてるって判断したから、たぶんできるんだろう。
「……ともかく、そういうわけじゃ。これを解析すれば、真犯人のこともわかるはず。それについてはわしに任せて、君はハリーと共に課題に取り組んでおきなさい。よいかな?」
「はい、かしこまりました」
その課題、わたしは既にクリアしてるんだけどハリーはまだだから、あえて言う必要はないかな。
だからわたしはぺこりと頭を下げて、校長室を辞したわけだけど……。
「リン! 校長室の合言葉教えて!」
翌日の放課後、夕食ももう間もなく、って頃合い。血相を変えたハリーにそんなことを言われて、首をひねることになった。
「昨日の時点ではショートケーキだったけど……」
「ありがとう!」
ハリーはそれだけ言うと、これまた血相を変えて校長室に向かって走っていった。
「リン、こっちこっち!」
どうしたんだろう、って改めて首をひねってたところにハーミーの声が聞こえてきた。素直にそっちに向けば、ロンと一緒に手招きしてるのが見える。
ますますわからなくて、わたしは頭上に大量のハテナマークを浮かべた。
「……蛇がハリーを呼びに来た?」
ここじゃなんだからってことで、人目のないところに移動して説明を受けたわたしは顔をしかめるのをとめられなかった。
「そうなんだ。ハリーがプロテゴを成功させたところだった」
「リンがアドバイスした通り、好きな女の子を守るって気持ちで使ってみたら一発で成功させたのよ。ハリーは誰を想定したのかしらね?」
「僕はまだ認めないぞ! ……じゃなくて、とにかくそこに蛇が来て……」
あのアドバイスで成功したんだ? 愛じゃよハリー……ってコト!?
いやそれは置いといて。ハーミーとロンが交互に説明してくれたところによると、プロテゴの成功にわいてるハリーたちのところに現れた蛇が、ハリーに語り掛けたらしい。
で、その途端にハリーは血相を変えて一人駆け出した、と……。
「蛇語は私たちわからないから、とりあえずその蛇を捕まえてここまで来たところなのよ。リンなら何を言ってるかわかるだろうと思って」
「まさかハリーもリンのところに来てたとは思わなかったけど。なんで校長室の合言葉なんて知ろうとしたんだろうな?」
「わからないわ。……ともかくそういうわけだから、通訳をお願いしてもいいかしら?」
そこまで話し終えたところで、ハーミーはぷかぷか浮いてる蛇を見せてきた。
否はないし、ウィンガーディアム・レヴィオーサが活躍してるみたいで何よりだけど、あまりにも絵面がアレ。
今まで触れないでおいたんだけど、そういうことなのね。ここまでの道中、なんだアレって思われてただろうな……。
『こんにちは。あなた、ハリーになんて言ったの?』
『王様に伝言を頼まれたんだよ。じにー? とかいう女の子を預かったから、返してほしかったら誰にも言わず校長室から日記帳を持って一人で秘密の部屋に来いって。あ、あと、早く来ないと命の保証はしないぞって』
「……っ!?」
だけどその蛇から経緯を聞いた瞬間、わたしにあった気のゆるみは消し飛んで、思いっきり驚いた。
そんなバカな!? だってリドルの日記はもうダンブルドア先生に渡したはずなのに! ジニーはもう影響から逃れたんじゃないのか!?
影響が残ってて、まだジニーに手が出せる状態? それとも、他に共犯者が……? ダメだ、わからない! 蛇に詳しく説明を求めても、蛇に命令したのはバジリスクらしくてその先にいる誰かの情報はちっとも見えてこない。
「ど、どうしたのリン? 蛇は何て言ったの?」
「あ……う、うん。……二人とも、落ち着いて聞いてほしいんだけど……」
無理だと思いつつもそう前置いて説明すれば、案の定二人はすごいリアクションをした。
特にロンは、妹の一大事に顔を青ざめさせて立ち尽くしてしまう。今回ばかりはわたしも同じ気分だけど、それを見ていたら少しだけ落ち着いてきた。
……落ち着け、よく考えろ。日記帳が奪われたことは、向こうも把握してるはずだ。取り戻したいってのが一番の目的のはず。じゃなかったら、ジニーと日記帳を交換なんて話を持ってくるはずがない。
どうしてそれができてるのかはわからないけど、少なくともジニーはまだ無事なはずだ。人質ってのはそういう存在だもの。
あと、もう一つ確かなことがある。それは、犯人とジニーは秘密の部屋にいるってこと。そこは間違いない。と思う。そういうことなら!
「二人とも、わたしは今すぐ秘密の部屋に行く。ハリーはそこに向かってるはずだし、ジニーもたぶんそこにいるから」
「!? わかった、すぐに行こう!」
「……から、先生に伝えてって言おうと思ったんだけど」
「ご冗談! ハリーは僕の友達だし、ジニーは僕の妹だ! 行かないなんてありえないね!」
「私も行くわ。大丈夫、少なくとも魔法を避けるのだけはそこそこ得意だもの」
「ハーミーまで」
これだからグリフィンドールは! そういうところが好きなんですけどもね!
でもまいったな、今回の敵には魔法が効かない。本体を破壊しないと倒せない、ラヴォスコアとかデスタムーアとかそういうタイプのやつだ。そんなのを相手に、二年生が来て何ができるっていうんだ?
……可能性があるのは、グリフィンドールの剣か。あれを抜けるのは、グリフィンドールに認められる勇気の持ち主だけ。今の二人なら、抜けてもおかしくない。
ああでも、グリフィンドールの剣が日記帳を破壊できたのはバジリスクの毒を吸収してたからだ。それがなかったら、グリフィンドールの剣でも分霊箱は破壊できないはず。どうしたものか!
とりあえずダンブルドア先生に連絡だけはしないと。ああでも、校長室は遠いな……それなら!
「エクスペクト・パトローナム!」
わたしは杖を振って呪文を唱えた。
パトローナス・チャーム。幸福な記憶を呼び水に、自らの守護霊を呼び出す魔法。守護霊自体に力はほぼないけれど、ディメンターはこれがないと退けられない。
そしてもう一つの使い方は……ダンブルドア先生が編み出した使い方。
それは守護霊にメッセージを託して、離れた場所にいる人へ伝えられるというものだ。習得難易度に対して随分とささやかな効果だし、実際伝言を持たせる使い方自体の難易度も低かった。
だけど障害物を貫通して移動するし、かなり遠くまで飛ばせるから、伝言役としてこれほど優秀な魔法もなかなかない。今回は、これでダンブルドア先生にメッセージを送る。
さて、突然ですがここでクイズです。そんな魔法で呼び出される、わたしの守護霊とは一体何でしょうか?
答えは~~~~。
「……ねえリン……私の見間違いじゃなかったら、今飛び出してった守護霊……」
「う、うん……どう見てもリンだったよな?」
はい、わたしの守護霊はなぜかわたしです。
……違ぇんだわ。たぶんだけど、それわたしじゃないんだわ。
たぶん、っていうかほぼ間違いなくだけど、あれイザナミ様なんだよなぁ!!
うん、最初成功させたときは本気でびっくりした。呼び水にしたのがアレすぎる妄想だっただけに、余計に。
でも理解したらすぐに納得はできたんだよね。わたしはまさに、イザナミ様から特典をもらって転生してるんだから。わたしの守護霊が彼女なのは、何もおかしくはないなって。
そしてわたしの今の身体は、彼女の似姿なので……。守護霊が一見するとわたしに見えるのも、それは当然と言えば当然っていう……なんだこれって状況が成立しちゃってるわけ。伝言任せたら、当然わたしの声でしゃべるからみんなそう思うだろうなぁ……。
ただ、それってつまり、わたしのことは今も彼女に見守られてるってことにもなりますよね? めちゃくちゃえっちしてるし、これからもしていく所存ですけど大丈夫ですか!? これアカウント的な何かBANされたりとかしない!?
あと改めてですけど、あなたの姿でえっちなことしまくってて本当にごめんなさいね!! これからもします!!(クソデカボイス
「守護霊の細かいことなんて今はいいでしょ? っていうか、わたしだってよくわかんないし……。それより、二人とも防衛術はどう? 自信ある?」
「授業中はわりとうまくできるけど、実戦で使えるかはわからない。でも、さっきも言った通り回避にはちょっと自信があるわ!」
「ハリーほどじゃないけど、僕だって結構大したものなんだぜ? まあプロテゴはまだ使えないけど……練習は一緒にしてたから、本番でなんとかするさ!」
「オーケーそれじゃみんな自衛重点、いのちだいじにでお願いね!」
とりあえず話を守護霊から逸らしたわたしは、半ばヤケクソ気味に声を上げた。
足りねぇ~~! リドルの日記に込められたトムくんと戦うには全然足りねぇ~~~~!
ロックハートの授業とハリーとの自主練習でなまじ多少防衛術ができるようになってるからか、二人とも退く気配がない。こういう生半可な状態が一番危ないんだよなぁ!
頼むから、下手に突撃とかはしないでくれよ……! わたしの隣にいる分には、プロテゴ・レフレクティスで守れるはずだから……!
急転直下。いよいよ秘密の部屋編も佳境です。
そしてこのタイミングで明らかになる、ドMの守護霊。
察していた方もいらっしゃるかもですが、その正体は自分・・・ではなく、イザナミノミコトでありました。よくよく考えれば道理だったかもしれませんね。
ちなみにさすがにアニメーガスはちゃんと動物です。一般的にアニメーガスと守護霊は一致することが多いらしいですが、ここはさすがに。
まあ、リンがアニメーガスになる選択をするかどうかは現状未定なんですけどね。