才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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31.ハリー・ポッターと秘密の部屋with転生者 中

 秘密の部屋の入口……マートルのいる女子トイレに到着した。

 その入口手前で、わたしは思わず足を止める。つられて足を止めた二人の前で、わたしは床に転がっていた残骸の前で膝をついた。

 

「……なんだいそれ?」

「リンのカメラじゃないの、それ?」

「うん、ダンブルドア先生に貸してたんだ。ここに出入りする人を監視してたんだよ。……ダメだね、完全に壊れてる」

 

 それは前に少し触れた監視カメラだった。ただし、無残にもボロボロになっている。わたしのカメラェ……。

 

 いやでも、これは……壊れたところもあるけど、半ば溶けてる感じ?

 だとすると……そう思って、わたしは魔眼を解放する。

 

「……バジリスクの毒だ。バジリスクにかまれて壊されたんだと思う。二人とも触らないように気をつけて」

 

 ひぇっ、っていう小さな悲鳴がロンから上がった。ハーミーも息を呑んでる。

 

 濃密な死の魔力が、ズタボロのカメラに残っていた。なのに邪悪な気配はしない。

 すごい。なんて純粋で、力強いんだろう。これが生物に生まれつき備わってる身体機能の一つだなんて、信じられない。

 

 でも邪悪さを感じないのは、だからこそなんだろうな。ディメンターみたいな、成り立ちからして邪悪なものではない生き物から生まれるものだからこそ。バジリスクが邪悪かそうじゃないのかってところは、諸説あるとは思うけど。

 

 それにしても……こうして視るとわかる。これ、その強さとは裏腹に、構造的にはそこまで複雑じゃない。いやもちろん大半の魔法に比べたら複雑なんだけど、効果から見ると全然って感じなのね。

 

 うわー、覚えておきたい! この光景を覚えておきたい! なんとかして再現できないかなこれ!

 

 でも今は魔眼を使い続けるわけにはいかない。この先に待ってるものを考えれば、消耗するものは温存しておかないと。

 だから魔眼をオフにする。普通に戻った視界の中で、カメラの残骸にはうっすらと光る液が見えた。

 

「リンに怯えてあんまり会話にならないけど、マートルが言うにはハリーはまだ来てないそうよ」

「校長室に寄ってからここまで来るのは結構手間だもんな。どうする? 僕たちだけでも先に入っちゃうかい?」

「わたしたちだけで突入なんてとんでもない! 人質がいるんだよ?」

 

 そうは言ったものの、実際のところはわたしもノープランだ。このまま突っ込んだところで無意味ってことがわかるくらいで。

 

 さてどうしたものかと考えようとした瞬間だった。わたしたちの目の前で、突然炎が巻き起こった。

 思わずうわっと声を上げて数歩下がったハーミーとロン。でもその炎の中から、小さくてあんまりかっこよくない鳥が現れたのを見て、困惑してる。

 

 一方で、わたしだけはよっしゃって内心でガッツポーズしてた。お前を待ってたんだよ!

 

「な、なにこのブサイクな鳥?」

「見たことのない鳥だわ。飛べはするみたいだけど……なんだか不格好ね」

「不死鳥だよ。ダンブルドア先生のペットのフォークス。そっか、そういえば燃焼日はクリスマス前だったね」

「「不死鳥!?」」

 

 そう、現れたのはフォークスだった。ただし、燃焼日からさほど時間が経ってないこともあってか、まだ若鳥って感じだ。

 この状態でも不死鳥特有の、人間が使う姿現しとはまた異なる仕組みの瞬間移動はできるんだね。でも飛ぶ姿はぎこちなくて、頼りになりそうにないってのはきっとみんなの意見だろう。

 

 そのフォークスが一声鳴くと、彼がくわえていた組み分け帽子がぼとりと床に落ちる。これもわたしの要望通りだ。

 

「……なんで組み分け帽子?」

「さあ? とりあえずかぶってみるかい?」

 

 首を傾げるハーミーをよそに、ロンはおどけた態度で組み分け帽子を取った。そのまま、かぶってみるかいって聞きながら普通にかぶっちゃった。

 

「……あいて! ……なんだこれ? 剣?」

「なんでそんなものが組み分け帽子から!? 大丈夫?」

「わーお」

 

 そうして出てきたものに、わたしは思わず間抜けな声を上げるしかなかった。

 

 いやうん、出てくるとは思ってたよ。さっきのタンカ切ったロン、かっこよかったし、それを期待して組み分け帽子持ってきてもらったんだし。

 思ってはいたけど、まさか本当に出るとは……。

 

 ま、まあ、これは予定通りってことでよしとしよう。

 

 これとは別に、予定外なことが一つ。というのも、ここのカメラがバジリスクの毒で破壊されるなんて思ってなかったんだよね。

 

 さてみなさん。今ここに、グリフィンドールの剣があります。ゴブリンの銀でできてるので、剣にとって不利になる効果は効かないし、剣としての効果……つまり殺傷力を高める効果だった場合は吸収すらします。

 

 あとはわかるな?

 そう。本当ならバジリスクとの戦闘中か撃破後にやる予定だったことが、ここでできる! これはでかいですよ。

 

「ロン、その剣の刀身でカメラについてる毒を触って」

「え? な、なんで?」

「いいから!」

「わ、わかったよ。……これでいいのかい?」

 

 ロンがグリフィンドールの剣で壊れたカメラについてる毒に触れるのを、わたしは魔眼を解放して見ていた。

 わたしの視界の中で、グリフィンドールの剣にバジリスクの毒が吸収されていく。正確には、そこに宿る毒の力が魔法的に再現されながら剣に付与されていく。

 

 ……なるほど? その毒、そういう構造で再現するのね? ということは、あの魔法の理論を組み合わせれば逆に消すこともできるか……?

 いやぁ、ゴブリンの銀、すごいな。魔法使いたちがみんなほしがるはずだよ。

 

「……これ、どういう状況?」

「刀身には下手に触らないでね。バジリスクの毒が付与されたから」

「うえっ!?」

「どういうこと!?」

「ゴブリン銀の剣ってそういうものだから……」

 

 そのままわたしが黙って剣をじーっと見て動かなくなっちゃったから、ロンは下手に動くこともできずハーミーに顔を向ける。ハーミーは小さく首を振ることでこれに応じていた。

 

 と、そこに今度は守護霊の不死鳥がやってきた。壁を貫通して現れたそれは、ダンブルドア先生の声で話し始める。

 

『残念ながら、わしは同行できんようじゃ。犯人から直々にハリーだけで来いと言われている以上、下手に動くこともできぬ。そこでリン、君には組み分け帽子とフォークスをつけようと思う。うまく使い、陰からハリーを助けてはくれんじゃろうか』

「……そうこなくっちゃね!」

 

 ロンは剣を掲げて誇らしげだけど、ダンブルドア先生はきっと一人で苦い顔してるんだろうな。結局子供だけで行かせる羽目になってるんだし。

 

 でもハリーとの距離の近いロンたち、それにパーセルマウスのわたしなら、来るなって言われても勝手に行ける立ち位置ではあるんだよな。トムくんはわたしたちのことを想定に入れてるんだろうか。入れてるんだとしたら、より慎重な行動が求められるけど……。

 

「……あ、ハリーが来たみたいよ!」

「えっと、陰からってことは隠れたほうがいいのか?」

「ううん、とりあえず今はその必要ないよ」

 

 と、いよいよハリーがやってきた。だけどわたしはダンブルドア先生の方針に反して、正面から彼を出迎える。

 

 どういうことだって言いたげな視線が左右から突き刺さる。

 だけどはからずも今、今年の事件を解決するために必要なものがすべてここに揃ってるんだ。わざわざトムくんが待ち構えてるであろう秘密の部屋に行く必要なんてほとんどない。

 

 まあ万が一。本当に万が一、秘密の部屋にいるのがトムくんじゃなかったとき、もしくはトムくん以外にも誰かがいたときのために、石橋を叩いて渡るけどね。

 

「みんな! ダンブルドア先生が来るだろうって言ってたけど……本当についてくる気?」

 

 トイレの前まで来たハリーは、案の定リドルの日記を抱えてた。校長室から持ってきたんだろう。さっきの守護霊の伝言を聞く限り、直接やり取りをしたうえでもらったんだと思う。

 そんな彼の言葉に、頷かない人はここには一人もいなかった。

 

「……わかった。でも、僕だけで来いって言われてるのに、どうやってみんなで……」

「その件についてなんだけどね」

 

 その寮の名に相応しい、覚悟を固めた顔で神妙に言うハリーをわたしは遮る。三人分の訝し気な視線をそのまま受け止めながら、わたしの頭に乗って大人しく待機している賢い不死鳥を示す。

 

「フォークス……不死鳥は姿現しが禁じられてるホグワーツ内でも姿現しができるんだ。だからまず、ハリーの部屋まで透明マントを取りに行こう」

「……フォークスってそんなことできるの!?」

「さっき炎と一緒に出てきたのって、そういうことなのね!?」

「マーリンの髭! こんなブサイクなのにすg……痛っ、あいたっ!? やめ、つつくなって! 僕が悪かったよごめんって!!」

 

 余計なこと言ってつつきまわされる羽目になったロンは、とりあえず置いとくとして。

 

「わたしたちは、透明マントで隠れてハリーについていく。で、スキをついてジニーを助ける。ただ、今年はレベリオが学校内でたくさん使われてることを考えると、わたしたちは念のため少し時間を置いてついてく感じで……」

「いいんじゃないか? こっそりってのはちょっとだけ気にくわないけど……今はジニーのためだ。僕は賛成だよ」

「……それしかないかしら。時間があればもうちょっと案も出るんでしょうけど」

「早く行かないとジニーが危ないもんね。わかった、それで行こう!」

 

 こうしてわたしたちは、一旦グリフィンドールの寮にワープすることになった。たまたま部屋にいたシェーマスと鉢合わせてめちゃくちゃびっくりされたけど、今はそれどころじゃないからってんで彼はほぼスルーされた。

 

 ごめんよ。細かい話は終わってからハリーたちに聞いておくれ。

 

「思ったんだけど、この透明マントをダンブルドア先生に使ってもらうのはどうかしら」

「ダンブルドア先生ほど長身の人が使うにはちょっと……ううん、だいぶ丈が足りないかなぁ」

「ああ確かに……。ううん、いい案だと思ったんだけどな」

 

 そんな会話をしつつ、再びフォークスのワープでマートルのいるトイレにとんぼ返り。

 

「……よし。みんな、行こう!」

 

 そしてわたしたちは、ハリーの声に応じてトイレの中に入った。

 

 ……わたしやハーミーはともかく、ハリーとロンは見た目がね。女子トイレだから、この場面だけ見るとひどい変態に見えかねないのがなんかもうかわいそう。

 それもこれも、みんなゴーントってやつのせいなんだ……!

 

「いやああぁぁぁぁ!?」

 

 どこからともなくマートルの悲鳴が聞こえてきて、大慌てでここから遠ざかっていく気配がした。はいはい、どうせわたしは冥府の女神の似姿ですよ。

 イザナミノミコト様、そんな怖い神様じゃないんだけどな……。むしろ親しみやすい方っていうか……。

 

『開け』

 

 一人遠い目をするわたしをよそに、ハリーが蛇語で扉を開けた。

 扉っていうか穴みたいなもんだけどね。なんていうか、去年を思い出す。

 

「……これ、やっぱり飛び降りないとダメかい?」

 

 きっと同じことを思ったんだろう。ロンがひきつった顔で言ってきた。ラドンもそうだそうだと言っています。

 

 もちろんダメなんてことはない。何せここにはフォークスがいるからね。

 ということで、頼み込んで穴の底まで運んでもらうことに。子供とは言え、四人を持ち上げた状態で緩やかに下りていくフォークスはすごい。

 

 フォークスっていうか、不死鳥の能力なんだろうけど。これでさらに涙には治癒効果もあるってんだから、すごいよね。わたしも飼いたい。

 

「……これ、ひょっとして全部バジリスクが……?」

 

 降りた先。フォークスに律儀にお礼を言っているハリーをよそに、周りをきょろきょろ見渡していたロンが、ドン引いた声でつぶやいた。

 

 ならう形で見渡してみればなるほど、周りには大量の白い骨。大きい小さいはあるけど、どれもこれも妙な生々しさがある。レプリカなんてことはまずないだろうね。

 

「でも見た感じ、人間のものはなさそうよ。犬とか猫とかはそこそこあるみたいだけど……」

「それなら安心だ……ってなるとでも思うかい?」

「思わないけど、気休めくらいにはなるでしょう?」

「それはおありがたいことで」

「あの、二人とも? わたしを挟んで言い合うの、ちょっとやめてほしいかなって……」

 

 原作でもそういうとこあるけど、言い合い始めるとこの二人本当にぽんぽん言い合うなぁ。しかも結構言葉が強いから、間で聞いてるとハラハラする。

 それでも同時にごめんって言ってくる辺り、相性は悪くないんだろうな……悔しいことに。

 

 ハーミーは渡さないぞって決意を胸に彼女と腕を絡ませたいところだけど、ほぼ戦場にいる状況だからさすがに自重した。杖は構えておかないと、とっさに反応できないもんね。

 

「うわっ!? みんな見ろよ、あれって!」

「蛇の抜け殻だわ。大きい……!」

「そんな……スリザリンのバジリスクって、こんなに大きいの……!?」

 

 少し進んだところで、蛇の抜け殻があった。バジリスクも蛇は蛇だから、脱皮はすること自体はおかしくないんだけど……いやあなんていうかその、本当、すごく……大きいです……。

 

 わたしは深夜の冒険(意味深)で大まかなサイズを知ってるから、さほど驚かずに済んでるけど……二人にとっては初見なわけで、そりゃ驚くよね。ただでさえ生理的に無理って人もそこそこいる蛇なのに、全長が10メートルを余裕で越えるんだもん。

 

 マグル界で一番大きい蛇って、アミメニシキヘビだったっけ? あれが確か、5メートルは超えるはずだけど……さすがにこのサイズのはいないわけで。魔法界でも、たぶんこのサイズはそうそうあるもんじゃないと思う。10世紀も生きてるなら、そりゃあねって感じだ。

 

 まあ、問題はこれからそいつと戦闘になる可能性が大ってことなんですけどもね。どうしましょうね。

 とりあえず、最悪目が合っても死なないようにメガネだけはしておきましょうか。伊達だけど。メガネキラーン!

 隙間から直視しちゃう可能性あるから、できればゴーグルがいいんだろうけど。これでもあるとないとじゃ違うはず。

 

「……この抜け殻、採取できないかな」

「こんなときに君は何を言い出すんだい……」

「いやその、魔法薬とかの材料になったりしないかなって思って」

「ああ……確かにバジリスクの抜け殻なんて、すごく貴重な素材よね」

「ウッソだろ。あとにしよう? な? そういうのはあとにしようぜ!?」

 

 そんな小粋なやり取りを挟みつつ先に進むことしばし。

 

 遂に見えたのは、壁だった。真ん中に大きな蛇の彫刻があって、大口を開けた意匠になっている。

 そしてその口の奥に、見覚えのあるデザインの扉が鎮座していた。書斎に繋がる隠し通路にあった扉とよく似てる。なるほど、スリザリンだ。

 

「……あれも蛇語じゃないと開かないんでしょうね」

「だろうね。……みんな、準備はいい? 僕はいつでもいいよ」

「モチのロンさ!」

「わたしもOK」

「私もよ」

 

 そして頷き合ったわたしたちは、扉が開いたとき部屋の中から見えない位置に移動してから、三人で透明マントをかぶる。

 見えなくなったわたしたちに対して一度だけ頷いて、ハリーが扉に向き直った。

 

『開け!』

 

 かくして開いた扉の先に、ハリーが肩で風を切って進んでいく……。

 




半ばRTAめいてきた。
これができるから秘密の部屋編は原作から逸らせないんだよなぁ。
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