才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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32.ハリー・ポッターと秘密の部屋with転生者 下

 ハリーが中に入って数秒後、レベリオが唱えられた。ご丁寧に、対人間特化のホメナム・レベリオだ。

 やっぱりね。入るの遅くして正解。

 

 ただ、問題はそれを唱えた人。聞こえてきた声がジニーの声だったから、ロンもハーミーも目に見えてうろたえてる。

 それはもちろんハリーもで、しばらくはジニーとの問答の声が聞こえてくる。

 

 そぉーっと中を覗き込んでみれば、ハリーと対峙してるのは間違いなくジニーだった。魔眼を解放してみたけど、周りには誰もいない。せいぜい、奥にバジリスクが控えてるくらいだ。

 

 でもって、ジニーの様子はこないだグリフィンドール寮に忍び込んだ時に視たときと同じ状態だ。完全に乗っ取られてる。

 それでいて、日記帳との繋がりは希薄だ。ハリーが持ってるからなのか、距離がある程度開いてるからなのかはわからないけど……。

 

「どういうことだよ……!? なんでジニーが!?」

「操られてるんだわ……! 犯人はジニーの中にいるのよ!」

「そんな! そんなのどうやって捕まえれば……!」

 

 小声でささやき合う二人をよそに、ハリーとトムくんの会話は進んでいく。

 

「君は……君は一体誰なんだ!?」

「……ん? ああ……そういえば、まだ自己紹介してなかったね。これはこれは、仮にも生き残った男の子に対して失敬した。改めて名乗ろう……僕の名前はトム・マールヴォロ・リドル。君の宿敵さ」

 

 トムくんが慇懃無礼にお辞儀をして、さらに文字を空中に描き出した。アルファベットで、トム・マールヴォロ・リドル。

 そしてその文字が次第次第に入れ替わっていき、ある文章に変化していく。

 

 I am Lord Voldemort……私はヴォルデモート卿だ、と。

 

 この様子にハリーが、そしてロンとハーミーが同時に驚愕した。

 

「まさか、そんな!? ヴォルデモート!?」

「信じられないかい? 無理もない。本来の僕は君に打倒されているものね。実際、この僕は本当の僕じゃない。50年前、その日記に封じられた記憶なのさ」

 

 そこからトムくんは、色々と語り出した。勝ちを確信しているのか、得意げだ。君、そういうところあるよね。

 

 とはいえ、魔眼で状況を直視してなんとなく事態はわかった。たぶんだけど、ジニーには既にトムくんの魂の大半が取り憑いてて、日記本体が離れていても動くことができるんだろう。

 

 原作では、最終的にトムくんは日記帳どころか乗っ取る人間すらなしで単独行動できるまでになっていた。今はその前段階なんだと思う。

 視た感じ、原作みたく魂だけの状態で魔法をぶちかましまくるって反則はたぶんまだできない……んじゃないかな。

 

 にしても、協力者はなしと。だとしたら、これはもう長々とトムくんの自慢話に付き合う必要はないかな。さっさと日記帳を破壊してしまおう。

 魂チウチウ体験ができそうにないことは残念だけど、さすがに平和のためには受け入れるしかない。

 

「人の、ジニーの気持ちを何だと思ってるんだ……! そんなことして何が楽しいって!?」

 

 ハリーが気丈にも言い返す中、わたしは茫然としてるロンの身体を揺さぶる。

 

「ロン……やるよ」

「やるって、何を、どうやって!?」

「その剣で、あの黒い日記帳を壊すんだよ。あれがジニーに取り憑いてるヴォルデモートの力の源だから、それを破壊すれば」

「……! ジニーは、解放される?」

「たぶん。攻撃はわたしがなんとかする。だから安心して。……ハーミー、アクシオは使えるよね。あれを引き寄せられる?」

「見た目も名前もわかったし、たぶん。引き寄せてきたところを斬るのね?」

「うん。アクシオの勢いが乗ったところに剣をぶちかませば、バジリスクの毒もあって一気に破壊できると思うの」

「……わかった。それで行こう。あの野郎に一発ガツンと入れてやるよ」

「その意気だよ。……二人とも、心の準備はいい?」

「ええ」「ああ!」

 

 そうしてわたしたちは、部屋の中へ突入する。バレるところまでは、透明マントのままじりじりと。

 

「僕がスリザリンの使命を果たす。穢れた血をホグワーツから、魔法界から追い出し純粋な魔法族だけの世界を作る! ……ああ、来ているな?」

 

 するとすぐに、演説するかのように話を続けていたトムくんが動いた。無言で杖が振られると、透明マントがはじかれる。

 無言のホメナム・レベリオか。そりゃまあできるよね。でもそれは織り込み済みだ。

 

「やあこれはこれは、ハリー・ポッターと愉快な仲間のご一行というわけだ! そっちの穢れた血は、穢れた血の分際で蛇語が使えるんだったっけね。大方、あの蛇から話を聞いたんだろうが……二年生だけで、さて何ができるのか。お手並み拝見といこうじゃないか……そら、ディフィンド!」

 

 余裕たっぷりにトムくんが笑いながら、魔法を放ってきた。白い横一文字の刃が、まっすぐ高速でわたしたちに向かってくる。

 ふん、笑ってられるのも今のうちだい。

 

 反発するように小さく鼻を鳴らして、わたしは反射のバリアを展開する。オーロラを思わせる輝きが閃いて、わたしごと隣にいたハーミーとロンの身体も包み込んだ。

 

 直後、そこにディフィンドの刃がぶつかる。と同時に、甲高い音が響いて刃が跳ね返っていく。

 ただ跳ね返るだけじゃない。こっちに向かってきたときよりも明らかに速度を上げたうえに、刃は十文字にパワーアップしてトムくんに向けて飛んでいく。

 

「なに!?」

 

 それはこれまでの魔法界の常識では考えられない光景だろう。もちろん、50年前には影も形もない現象。その時代から取り残されてるトムくんにとっては、完全に未知の現象だろう。

 とはいえ、理屈はともかく状況は見ればわかること。トムくんも慌てて身を翻して、強化された刃を回避した。さながらローリング回避のよう。

 

「アクシオ、トム・マールヴォロ・リドルの日記!」

 

 だけど今はそれでいい。トムくんが回避行動に移った瞬間、ハーミーが呪文を唱えた。

 リドルの日記に向けて放たれたアクシオによって、ハリーの手から日記帳がはじけるように飛び立ち、こちらに引き寄せられてくる。その意図を察したのか、トムくんはローリングから体勢を立て直しつつも、舌打ちと共にアクシオを放った。

 

 直後、日記は空中で一瞬だけぴたりと止まったけど、すぐにすさまじい勢いでトムくんのほうへ引き寄せられ始める。

 こっちは完全詠唱、向こうは無言。なのに魔法の力は明らかにトムくんのほうが上だった。

 

「そんな!?」

 

 ハーミーが悲鳴を上げたけど、これは仕方ない。あっちは魔法の才能だけは過去最高クラスのトム・リドル。

 そして記憶とはいえ、今のあいつは16歳。才能だけじゃなくて年齢差もあるっていうなら、この結果は当然とも言える。

 

 だけど、ここにいるのは一人だけじゃない。一人でダメなら、二人でやればいい!

 プロテゴ・レフレクティスが、一度使ったらしばらく残るタイプの魔法でよかった。じゃなかったら、これはできなかった!

 

「アクシオ、トム・マールヴォロ・リドルの日記!」

 

 わたしが杖を振る。放たれた魔法の光が、空中でせめぎ合う日記に直撃した。

 二つのアクシオを受けた空中の日記は、その場でピタリと静止する。そして再び、こちらのほうへじりじりと引き寄せられ始めた。

 

 愛じゃよ、トム!

 

「ちっ、穢れた血の分際で! 『バジリスク、出番だ! この穢れた血どもを殺せ!』」

 

 二人がかりのアクシオにギリギリ競り負けていることを悟ったトムくんが、立ち上がりながら蛇語で声を上げた。すると背後のスリザリンの像が開き、そこからバジリスクがのそりと姿を見せ始める。

 

 だけどその瞬間を狙って、ここまでずっとチャンスをうかがってた二人が動いた。

 ロンは剣を構えて、バリアの中から飛び出した。ハリーは杖を振るった。

 ハリーが振るった杖から発せられたのは、原作でも彼の代名詞だったあの呪文。

 

「エクスペリアームス!」

 

 ただでさえアクシオを使って引張相撲をしていた上に、バジリスクを呼ぼうと意識が逸れた瞬間の一撃だった。

 トムくんの手に、赤い閃光が吸い込まれるように突き刺さる。魔法はその効果を十全に発揮して、杖を大きく弾き飛ばした。

 

 その瞬間のトムくんの顔は……ジニーの身体を使っていることもあってか、やたらと幼く見えた。ぽかんとした、今の状況が信じられないといった顔。

 

 だけど事態は動いていく。トムくんが杖を失ったことで、わたしとハーミーの共同作業(アクシオ)を妨げるものはなくなった。

 日記帳が。ヴォルデモート最初の分霊箱が、わたしたちの元へすさまじい勢いで引き寄せられてくる。

 

 そこに、

 

「おりゃああぁぁっっ!!」

 

 ロンが、思いっきり剣を振り下ろした。うす暗い闇の中、アクシオの光に照らされたゴブリン銀の刀身がほのかに輝いて、飛び込んでくる日記帳をとらえる。

 見事な一閃だった。それはさながら、ゴドリック・グリフィンドールのよう。

 

「バカな!? なんだその剣は!? なぜ僕の日記が、ただの剣なんかに!!」

 

 真っ二つに切り裂かれた日記に手を伸ばして、トムくんが悲鳴を上げる。

 日記帳が破壊されたことで、既にその身を保てなくなっているのだろう。魔眼で視れば、ジニーの身体を汚染していた魔力がどんどんと失われていくのが視えた。

 

 だけど、今はそれよりもやらないといけないことがある。わたしとハーミーは同時に目を閉じた。

 そしてわたしは、ハーミーをかばう形で前に出る。それに合わせるように、ハーミーが声を張り上げた。

 

「みんな目を閉じて! バジリスクが来てるわ!」

 

 身体を操っていたトムくんが消えたことで、その場にくずおれるジニーの横をバジリスクが通り過ぎてくる。

 

『よくも継承者を殺してくれたな!? 殺してやるぞ、穢れた血どもめ!』

 

 バジリスクが吠えながらこちらに一直線に向かってくる。ハリーと、それに最大の実行役とも言うべきロンには目もくれてないのは、最後に受けた命令が「穢れた血を殺せ」だったからかな?

 

 それなら都合がいい。わたしはさらに前へ駆け出した。

 大丈夫、目は閉じてるけど周りは見える。この魔眼は周りの魔力を読み取ってくれるから、どこに何があるかはこのままでも大体わかる。

 

 そしてこの魔眼が、バジリスクの邪視をプロテゴ・レフレクティスがはじいていることを知らせてくれた。威力が強すぎるからか明後日の方向に乱反射してるし、バリアにはヒビが入り始めてるけど、少なくともまだ少しだけもつことはわかる。

 

 だからわたしは、あえて目を開けた。この魔眼で、わたしは遂にバジリスクの姿そのものを正面から受け止める。

 

 ああ、ようやくあなたを視ることができた。

 視ることができたから、確信できる。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 恐らくは、インペリオかそれに類似した何か。ゴーント家の人間が、代々かけてきたんだろう。それはきっと、ゴーント家にとってそのままのバジリスクでは都合が悪かったから。

 

 だからわたしは、この魔法を使う決意をする。まだ完成したとは思えないけれど、それでもダンブルドア先生のおかげで完成度はかなり上がってる。成功さえすれば、バジリスクを死以外で解放することができる。はず。

 

 お願い、レガ主。そして、この魔法をきっと待ってたであろうアン、セバスチャン。わたしに力を貸して!

 

「──呪いよ終われ(フィニート・アナテモース)!」

 

 わたしの杖から放たれたオーロラのような輝きの閃光が、バジリスクの身体を一直線に貫いた。

 

 バジリスクの動きがびたりと止まる。まるでペトリフィカス・トタルスか何かでもかけられたみたい。

 だけどその身体には、魔法の効果は残っていない。魔眼の視界の中で、バジリスクから感じるのはバジリスク本人が持つ魔力のみ。

 

 よかった、成功した。バリアが砕け散る甲高い音を聞きながら、わたしは深く息を吐いて安心した。

 

『……妾は……? 妾は、なぜあんなにも、マグル生まれを憎んで……?』

 

 同時に、バジリスクが声を上げた。困惑しきりの声色。態度もそんな感じで、きょろきょろと周りを見渡している。

 また、その目からはもう邪視は放たれていない。それ、オンオフできたんだ。

 

 とはいえ、邪視が使われていないならちょうどいい。ダンブルドア先生に終わったって知らせよう。この状態なら、たぶんバジリスクも暴れたりしないはず。

 そう考えて、わたしはフォークスに頼んで先生を呼んできてもらうことにする。

 

 みんなにももう大丈夫だろう、って声をかける。これを受けて、ハリーとロンはバジリスクに警戒しながらも、気絶して倒れているジニーに駆け寄った。

 

『おお小僧ども、大丈夫か? その娘は……生きておるようじゃな。よかった……』

 

 その二人に、バジリスクが声をかけた。今までわたしが聞いたバジリスクの声の中でも、いっとう優しい穏やかな声だった。

 

 これにはハリーも驚いて、あんぐりと口を開いてる。

 蛇語がわからないロンが小突きながら通訳を頼んでるけど、ハリーはそれより思わずって感じで返答していた。

 

『よかった、って……君は』

「……呪いで操られてたんだよ。たぶん、この部屋を呪ってまで隠してたゴーント家の誰かに」

「操られて……? それって」

「うん。話すと長くなるんだけど……」

『……むむ? 待て、貴様……その声は……』

 

 あ。

 

 ちょ……ちょっと待って。バジリスクくん、なんか親の仇でも見つけたみたいな顔でこっち見てるけど、待って。

 わたし、これから色々と解説しなきゃいけないんだけど、その先を口にするのはどうかやめてもらいたいなって!!

 

『覚えておるぞ! 貴様、あのとき交尾していた小娘じゃな!? よくもまあ、ぬけぬけと妾の前に顔を出せたな!?』

『あああああそれは言わないでよぉ!!』

 

 とはいえ、バジリスクが襲ってくる様子はなかった。その代わり、吼えメールもかくやな勢いで猛然とわたしをしかりつけてくる。

 周りからはシューシュー言ってるだけにしか聞こえないだろうけど、ハリーには、ハリーには聞こえるんだよ……!

 

『よいか小娘! 別に愛し合うなとは言わんがな! 場所と時間をわきまえんか! 深夜のどこともわからぬ隠し通路の中でとか、頭おかしいのか!』

『はい……』

『おまけに妾に襲われておったろうに! 正気の沙汰ではないぞ!? いや襲っておった妾が言うのもなんじゃが! だとしてもこう、なあ? あるじゃろ!? 節度というものが!』

『はい……はい……すいませんでした……』

 

 思わずその場に正座して、しわしわピカチュウ顔をするわたしです。

 

 何? その……これ、なに……?

 

 と、そこに炎が突然出現した。その中から、フォークスを伴ってダンブルドア先生が現れる。

 

「みな、よくやってくれたのう……おお、一体全体、この状況は何事かね?」

 

 こうして秘密の部屋事件は、あまりにもぐだぐだな感じでひとまずの幕を下ろしたのでした。ちゃんちゃん。

 




バジリスクは夜に交尾にいそしむバカがいることは認知していても、その容姿をすべて視認したわけではないので、パッと見ただけではリンがそのバカであることはわからない状況です。
ただ声は覚えてるので、無事お説教されることになりましたとさ。
バジリスクにガチのお説教されるやつとか、たぶん世界でもそうそういないんじゃないだろうか。

なおトムくんはハリーに対して、
・日記帳がいきなりジニーから奪われたことに驚いたこと
・ダンブルドアが検証のためにちょびっとインクを垂らした結果恐らく校長室にいて、ダンブルドアの手の内に落ちていると気づいたこと
・既にジニーの身体は制御下に置いていたから、囮にしてハリー自ら日記を取ってくるようにしたこと
・そのついでに興味の対象にしていたハリーと対峙しようとしたこと
などを嫌味たっぷりに語りましたが、ドM的にそこらへんは大して重要な情報じゃなかったので、本文中には言及すらされませんでした。かわいそうに。
むしろ懸念事項は全部杞憂だったとわかっちゃったので、RTA的思考で最速の解決を求められてしまった模様。
つまり敗因は、余裕こいて演説をかまして日記帳を返してもらうのが遅れたせい。
最初に日記帳を回収してればこんなことにはならなかった。
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