才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
「おや、ミス・ゼンポウジではないですか! こんなところでどうしましたか?」
ある日のこと。イシュカとの楽しいひと時を終えて秘密の部屋から出て、寮に戻ろうとしたところでロックハートに呼び止められた。
振り返ればそこには、いつも通りやかましいイケメンフェイスを輝かせるロックハートが。
事件のあとに変わったことの三つ目が、これだ。やたらとロックハートに絡まれるんだよね。
まあ開心術で内心を読めば目的は一目瞭然で、わたしの功績を狙ってるわけだ。
具体的に言うと、トロフィーの一つみたいな感じ。俗な言い方だけど、こんなすごい女も俺のものだぞ、的な。
大々的に功績を公表されてるから、まるごと奪って記憶デリートってやり方は考えてないみたいだけど、そこまでして功績がほしいのかアンタ。確かに秘密の部屋に関しては、教授陣で唯一ロックハートに何も共有されてなかったけどさぁ。
あとハーミーもなんやかんや声かけられてるらしいけど、それを聞いたときはさすがにギガデインったろかいってちょびっと思いましたね。ちょびっとだけね。
まあわたしにしてもハーミーにしても、こいつになびくことなんて天地がひっくり返ってもありえないわけだけど。わたしとハーミーは将来を誓い合った仲だぞ。お前ごときが百合の間に挟まりにくるとか、身の程を知れ。
ちなみにこの功績に関しては、ハリーにはノータッチ。さすがに「生き残った男の子」に仕掛けるのはまずいってわかってるんだろうな。
まあどっちにしても、懲りないやつだよホント。低学年からは人気の教師、ってポジションで満足しておけばいいのにね。
「どうしたもこうしたも、トイレで用を足したところですけど……あの先生、女の子相手にそういうのはどうかと思います」
「おっと、これは失敬! ですがここ最近、あなたをこの近辺でよく見るという話を耳にしましてね。何か……そう、サプライズの一つでも仕掛けているのではないかと思ったのです!」
「はあ……そういうのは本当にないので、お気になさらず」
適当にロックハートをいなしつつ、わたしは魔眼をオンにした。
わたしの視界が様変わりする。魔力の形や流れ、仕組み、構造が映し出される極彩色の視界の中で、ロックハートには真っ黒でおどろおどろしい蛇のような魔力が巻き付いている。
これもある意味で、変わったことに含まれるのかな。でもこれ、秘密の部屋とは関係ないしな……。
「おやおや、私をそんなに見つめられても困りますよ。君が魅力的なレディであることは間違いないが、教師と生徒でそういう話はご法度というものです!」
じっと見つめてるわたしに、勘違いしたロックハートがキザったらしく微笑むけどそこはどうでもいい。わたしの興味は、ロックハートにまとわりついてる邪悪な気配だけだ。
この気配、実は似たものを見たことがある。すごく近しい色を、わたしは秘密の部屋で見た。
そうだね、分霊箱だね。
つまりこれは、ヴォルデモートが関係した何か。ヴォルデモートとロックハートの共通点って言えば、あれしかないよね。
そう、防衛術の教授職にかけられた呪いだ。
防衛術の教授が、必ず一年以上継続しないってのは有名な話。そしてこれが、防衛術の教授職を志すもダンブルドア先生にキッパリ断られたヴォルデモートが腹いせにかけたものってのも、ハリポタを知ってる人にはわりと有名な話。
器のちっちぇ男だ。そんなだからお辞儀って言われるんだよな。
それはともかく、この呪いによって、防衛術の教授になった人は必ず何かしらの被害を受けて退職する羽目になっている。
被害の形は色々で、物理的な被害もあれば社会的な被害もある。とにかく、教授を継続することができない状況に追い込まれるのだ。
こうやって魔眼で視認するとよくわかる。防衛術の教授職っていう概念が呪われてるから、就任することで概念を受け取る教授に呪いが注がれるんだね。
そしてゆっくり一年をかけて呪いが教授に蓄積していき、閾値を超えたところで牙をむく。そういう仕組みなんだろう。実際、クリスマス休暇明けの段階ではロックハートはここまでヤバい状態じゃなかったもの。
それでも今はまだ三月だから、呪いは完成しきってない。だけど年度末間近ではあるから、こうやってあからさまにヤバい感じになってるんだろうね。見えるのは今のところわたしだけだけど。
イシュカを解呪した魔法──フィニート・アナテモースなら、この呪いは解けるだろうか。見た感じ、対魄型っぽいから行けそうな気はする。
事件の日以来、安定して使えるようにはなったから一応完成ってことでいいのかなぁとは思ってるんだけど、なんだかしっくり来ないんだよね。まだ何かやれるような気がしてさ。
あれかなぁ、今のところ古代魔法の要素が強すぎてわたししか使えないからかなぁ。誰もが使える魔法に落とし込まないと、完成じゃないってことかしら。
まあそれはともかく、お辞儀の呪いの正式な対象はあくまで防衛術の教授職という概念であって、教授本人じゃない。今ここでフィニート・アナテモースがロックハート相手に成功したとしても、一時的に呪いの影響からは解放されてもすぐに呪いの影響は溜まっていくだろう。
今の完成度では、そこまで遡って解呪できそうな気がしない。対症療法の範囲でとどまりそうなんだよね。
と、ここまで考えて、わたしは一つ腑に落ちた。わたしがこの魔法をいまだに完成したと思えていなかった、違和感の根本にたどり着いた気がしたんだ。
大本まで辿って解呪できるようになったら、本当の意味でこの魔法が完成したって言える。たぶん、無意識にそう思ってたんだ。はー、すっとした。
ま、どっちにしてもロックハートを助けてやる義理はないけどね。どうせこの魔法を使って助けるなら、それはルーピンのがいい。それをやると四年次に偽ムーディが来なくなる恐れがあるから、やるかどうかはまだ決めかねてるけど。
ああでも、忠告くらいはしておいてあげてもいいか。パンジー相手の忠実なしもべごっこをさせてもらえたのと、フィニート・アナテモースに対するもやもやの答えにたどり着けた恩義くらいは、返してあげてもいいよね。
「……ロックハート先生」
「はい、なんでしょう? 質問ですか? それともサインでしょうか。あいにくと今のところサインはやっていないのですが、あなたがどうしてもと言うのなら……」
「先生、『例のあの人』に呪われてますよ。このままだと危ないです。どうかお気をつけて」
「……え?」
「おすすめは、年度内に辞職することです……それではわたしはこれで」
わたしは言うだけ言って、くるりときびすを返した。
さて、原作と違ってもう事件は解決しちゃったけど、ロックハートは学期末にどんな末路を辿ることになるんだろうね?
***
「神様」
ロックハートを振り切って寮に戻る途中、物陰から声をかけられた。
わたしを神様なんて呼ぶのは、この世に一人しかいない。そっちに顔を向ければ案の定、ルーナが柱の陰で身体の半分だけを見せた状態でたたずんでいた。
ちょっとびっくり。なんでそんな登場するのよ。
「どうしたの?」
「色々あって遅くなっちゃったけど、きちんとお礼言いたくて」
でもま、らしいっちゃらしいのかも。そのまま特に何もツッコまないで返事をすれば、ルーナはどこか嬉しそうに、独特のリズムを感じさせる歩き方で近づいてきた。
「ジニーを助けてくれて、ありがとう。やっぱり神様は神様だった」
そして彼女はまっすぐにそう言うと、イギリス魔法界の最上礼を取ってきた。
普段自分が人にやってる仕草を、自分がされるっていうのはなんだか妙な気分だなぁ。
何はともあれ、ルーナの個人クエストをクリアしたことで、信仰心が完全に根付いちゃったみたいだ。
やっちまったぜ。でもまあ、もう仕方ないかって思ってるわたしもいる。
「……ええと、どういたしまして?」
「それと、クリスマスプレゼントでもらった本にあった魔法だけど、一つできるようになったよ。その報告も。……おかげでお礼に来るのが遅くなっちゃったんだけど、ごめんね」
「えっ、もう? ゆ、有能……!」
これだもんね。原作での描写からして、有能なのは知ってたけどここまでとは。
これだけ有能な子が、わたしのために魔法を覚えてくれるなら信者になるくらいまあええか……。
いやね、いくらわたしが才能に自信ネキとはいっても、一人でできることには限界があるからさ。やりたいこと、やらなきゃいけないことが山積みな現状、人に任せられるものは任せちゃいたいのが本音ではあるのよ。
中でも儀式魔法は、その事前準備と手順の煩雑さから、時間泥棒の側面があるからさ。前にもちょっと触れたけど、外注できるならしちゃいたい。
あわよくばルーナには手を出してほしいけど、そういう性格の子じゃないからどうしたものかなって思ってるところ。
「……ちなみにどれ覚えたの? 一応、いくつか優先順位はつけたはずだけど」
「えっとね……」
ルーナが懐から取り出したのは、まぎれもなくわたしが彼女に贈ったクリスマスプレゼントだった。
これが儀式魔法が載ってる本ってのは言ったかと思うけど、具体的には指南書だ。特に神様が関わる魔法が多く載ってる逸品で、簡単で使いやすい杖魔法に押されて廃れつつある今、なかなかのお値段だったのを覚えてる。
まあ載ってる魔法についてはピンキリっていうか……。儀式魔法って性質上、いたずらが主目的みたいなしょうもない魔法はないんだけど、逆にその性質上、雨ごいだったり豊穣だったり治水だったり、農業に関係する魔法が全体の約8割を占めてるのはご愛敬。
日本固有の魔法だから、そういうこともあるさ。さすがの魔法族も、自然には勝てなかったんでしょう。
古代魔法ならできたんだろうけどね。儀式魔法じゃあそこまで劇的な効果は得られない。そういうガッカリ感も、廃れつつある原因なんだろうなぁ。
ともあれそんな本をプレゼントにするに当たって、わたしが覚えてほしい優先順位をつけたのは残る約2割のほう。つまり、儀式っていう面倒な手順を踏んででもこの先使いたいって思うだけの効果がある、って判断した魔法だ。
たとえば、都落ちした公家の魔法族から広まったっていう鎮魂の儀式魔法は、めちゃくちゃ興味ある。ゴーストを苦痛なくあの世に送ることができる、って言うね。
今となってはゴーストにもある種の人権があるってのが主流になってるから、使われる機会はほぼないみたいだけど……でも気になるじゃない?
あと、これに対をなすゴーストを生み出す儀式魔法なんてのもあった。D&Dにある死者との対話みたいな魔法で、死体から魂の痕跡を抽出して世界に焼きつけることでゴーストを作る仕組みらしい。死の瞬間の証言とかが得られるから、推理小説泣かせな魔法だよね。
ゴーストになる気がなかった人からしたら尊厳破壊もいいとこだとは思うけど、たぶんゴーストをあの世に送る魔法はそのためにあるんじゃないかな。卵が先かニワトリが先かは知らんけど。
でもどっちにしても、魂に干渉することができる魔法なのは間違いない。
儀式なだけに色々と面倒ではあるんだけど、一度でいいからぜひ見てみたいよね。魔眼で解析すれば、魂に対する知見が得られるかもしれないし。
あとは、えっちな儀式魔法とかね……とても興味ありますね……ええ……。
……まあ待ってくれ。やれやれこれだからお前は、って言われそうだけどちがわい。わたしがいつでもどこでもえっちなことしか考えてないって思ったら大間違いだぞ。
何を隠そうえっちな魔法の中には、前にダフネとあれこれやってるときに言及した、ちんちんを使う解呪魔法があってだね。ただえっちなだけじゃないんだって主張も、本当ではあるんだよ!
だってしょうがないだろ、えっちしたときに出る白い物体(直喩)を通じて呪いを体外に放出させる儀式魔法とか、興味あるに決まってるじゃん!
えっちしたら解呪できるんだぞ!? そんなエロ漫画みたいなこと、やってみたいに決まってるじゃん! あわよくばヤってみたいだろ!
まあ他にも? 恐らくは天岩戸伝説をモチーフにしたと思われる、儀式の担い手が裸になっていくストリップショーみたいな儀式魔法なんかもあって、そっちも気になりますけどね?(くもりなきまなこ
ええ、もちろん優先順位つけた魔法の中に入ってますが、何か?(くもりなきまなこ
「これ」
「おお、
「ん」
話を戻して、ルーナが覚えたと言ってきた魔法は、夢を明晰夢化するものだった。
これ自体は別に、神様に捧げる魔法じゃない。渡した本の中では数少ない、神事に関係しない魔法だね。
とはいえマグル界での学術用語である明晰夢って言葉を使ったけど、厳密には違う。あくまで「夢を夢だと認識したうえで、自分の魔法力が及ぶ範囲で夢を制御できるようになる」って魔法なの。その効果を伝えるためにわかりやすい言葉が、わたしの語彙の中じゃ明晰夢しかなくってね。
この魔法自体は、別の夢に関する儀式魔法の基礎だ。この魔法を第一段階にして、その魔法に繋げるっていう。ぶっちゃけコンボ用だね。
だけどだからってショボいなんてことはなくて、たとえば日本魔法界じゃ現夢は睡眠学習に使われることが多い。
要するに、夢の中で勉強したり特訓したり、そういうことに使えるわけ。便利な杖魔法が普及して儀式魔法が廃れつつある現代でも、比較的簡単にできることから例外的に使われる頻度の高い儀式魔法の一つらしい。
わたしとしても、夢の中で現実に限りなく近い自由時間を確保できるこの魔法は、シンプルに使いたい魔法なんだよね。
ま、その分睡眠が浅くなるから、使いすぎは健康によくないらしいんだけど。
「今は
「……そう来るだろうなとは思ってたよ。夢の中で……でしょ?」
「ん。これを使えば神様ともっとお話しできるモン」
そして共夢というのが、現夢から繋げる儀式魔法だ。
こっちは神様に捧げる儀式になってて、より儀式感が強い。そこそこ長めのダンスパートがあるし、神事に使う鈴とか色々道具も必要になる。
ではその効果はっていうと、これが他人と夢を共有することができるっていうものでね。
つまり他人の夢の中に入って同じ夢を見る魔法なんだけど、熟達者が使えば遠い場所にいる人の夢にだって入ることができる。ルーナはこれを使って、普段接点が少ないわたしと交流したいって言ってるわけ。
うふふふふ、わたしもおんなじ気持ちだよ。夢を通じてもっと仲良くなりたいよね……(意味深
ちなみに共夢。かなり歴史の古い魔法だったりするんだけど、魔法が秘匿されてなかった時代、魔法族がマグルに対して夢枕に立ったふりをして行動を誘導するために作られたものって説があるらしい。
そんな魔法が、最低でも古事記の時代からあるってのは……なんていうか、魔法族の無意識なマグル軽視が垣間見えてうすら寒い。遠距離恋愛中の魔法族が開発したものだ、って説を推したいところだよ。
まあ、ルーナと二人で夢の中へするのはまだ先の話だ。今はひとまず、現夢だね。
「共夢が使えるようになる日を楽しみにしてるよ。次の夏休み中に、儀式に必要な道具揃えておくからさ」
「ん、がんばる」
「……それはそうと、せっかくだから現夢を試してみてもらいたんだけど、今って大丈夫?」
「大丈夫、行けるよ」
「じゃあ、頼んじゃおうかな」
ということで、早速魔法を施してもらうことになった。
いやあ、ワクワクする。胸が高鳴ってきやがるぜ。
だってだって、わたしにとって明晰夢って大きな意味があるんだよ。なんでって、多少制限はあっても夢の中で夢を自由に操作できるわけじゃん?
つまりそう! 夢の中なら!!
現実には存在しないエロ触手を呼び出して触手プレイができるはず!!!!
「それじゃあ神様、ご奉仕するね」
儀式に必要な道具(手作り)を取り出しながら、ルーナは使命感に満ちたキリっとした顔を向けてくれた。かわいいね。すき。
そんなルーナに申し訳ないとちょびっとだけ思いつつ(あとご奉仕って言葉えっちだよねって思いつつ)、期待に胸を膨らませたわたしが返してたのは、テンションゲージマックスなにこにこ顔だったと思う。
そしてこの日の夜。想定通りに夢の中でねっちょりぐっちょりと触手プレイを楽しむことができたわたしは、翌朝ぐしょ濡れのベッドの中で目を覚まして非常に不快な思いをする羽目になったのでした。
消音の呪符、使っといて正解かなぁこれは……。
色々考えた結果、現実であれこれやるのが難しいなら夢の中でやればいいじゃないという結論に達しました。
ルーナ逃げて超逃げて。ドMが手招いているよ(魔王のノリで