才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

52 / 106
4.八咫鏡

「そんな感じで手に入れたのが、こちらの八咫鏡の形代になります」

 

 すべての説明を終えたあと、冗談めかして販売員風の節回しで赤い鏡を手のひらで示したところ、ダフネは何はともかく絶句した。

 

 そう、伊勢神宮に訪れてから今日で二日が経過してる。グリーングラス家は無事に合流して、今は一時的に善宝寺家の人口がキャパ限界に達してる。

 ダフネは無事グリーングラス家の面々を説得できたみたいで、純血主義者であったはずのギャレスさんやアクィラさん、それにアストリアはマグルであるうちの両親や、ハーミーパパママとも和やかに会話できてる。少なくとも表面上は。

 

 で、食後にグリーングラス家の面々(ほぼアストリア)の許可をもらって、わたし、ハーミー、ダフネの三人でお風呂スーツケースの居住スペースで車座になって近況報告をしてるところ。今回ばっかりは古代魔法が絡むから、他の人には聞かれるわけにはいかないんだよね。

 

 ということで、外宮からワープした先の内宮でも試練を無事にクリアしたわたしたちは、この鏡をゲットしたって話をし終わったところってわけ。

 

 試練の内容? ハーミーの懸念通り、箒で全スキップだったよ。おかげで特に語るところがなくて、一話分すっ飛んださ。

 なんなら終わったあと、内宮での古代魔法集中点巡りのほうがよっぽど時間かかったくらいだよ。

 

 最後の最後で、伊勢神宮の御神体である八咫鏡(本尊)が出てきたときはさすがにビビったし、試練の報酬が外宮の試練で作られた鏡に八咫鏡の力を転写して形代にすることだったのにはもっとビビったけどね。

 そこのフロア、儀式終わるまで出られない状態になってて、鏡をもらう以外の選択肢がなかったから受け取ったけどさ。

 

 でも試練が終わったあと、せっかく形代じゃない本尊の八咫鏡をこの目で見る機会に巡り合えたんだから、カメラ持ってきてたらよかったのにって慟哭しながらその場に崩れ落ちたよね。

 

 まあわたしはともかく。

 

 要するにあの試練、三種の神器の一つで伊勢神宮にまつられてる八咫鏡の本尊から形代を分祀する、一種の儀式でもあったんだと思う。

 だからたぶん、マグルが知らないだけで三種の神器は魔法界に複数あると思われる。古代魔法が使えた皇族の数だけ存在してるはずだから、結構な数で。

 現存してるのがいくつなのかまではわからないけど、今魔法界に残ってる宮家が普通に一つずつ持ってても驚かない。

 ……不要になったら全部破棄してた、ってのはないと思いたいな。こんな貴重で便()()()もの、それをすてるなんてとんでもない案件だもん。

 

 だとすると、草薙剣が置かれてる熱田神宮にも同じ仕掛けがあるのかな? だって、三種の神器をこうやって各地から手に入れるって、天皇の継承者が受けるべき試練って感じするじゃん?

 ぜひ行って確かめてみたいなぁ。()()()使えそうじゃない?

 

 そう、色々と。

 

 まあそれはともかく。

 色々すっ飛ばしてもちゃんと効果が発揮される鏡ができたのは、アマテラス様懐深ぇなって感心すると共に、古代魔法やべーなともなる。

 

 ええ、そうなんです。わたしは三種の神器の一つを入手しちゃったの。

 あくまで形代で、大昔から引き継がれてきた本尊ではないんけど……そもそも皇位継承の際に用いられるのだって、本尊じゃなくて形代なんだ。だとしたらわたしは今、皇位継承に片手をかけてるって言っても過言ではないわけで。

 

 ……まあ、実際に天皇になるには複数の儀式を経る必要がある。即位とか践祚(せんそ)とか、そういうのだ。

 前世の皇室でもあったこれらの儀式は、この世界に於いては魔法的に皇位を確定させるものになってる。これをしないと天皇にはなれないんだよね。

 

 そしてその手の儀式のことは、前に触れた通り現状天皇家だけが継承している。当然秘匿されてて一般人に知るすべはないから、勝手に名乗ったところでどうにかなるものじゃないんだよね。

 そういう意味じゃ、わたしのことがバレても天皇に昇らされることはないと思う。仮にそうなったとしても、段取りつくまでかなり時間かかるだろうから逃げる暇くらい……あるといいなぁ。

 

 話を戻そう。

 

 今しがた「説明を終えた」って言ったけど、実はここまで説明したのはわたしじゃない。ハーミーでもない。じゃあ誰か?

 

 答えは簡単、鏡くんです。上を向いてテーブルに置かれた鏡が、わたしの記憶をホログラム映像として空中に投影してて、何も言うまでもなく全部説明してくれたのね。

 なんとこの鏡、手にした人間の記憶を映像として再生する魔法道具なのだ。ね、便利なものでしょう?

 

 この場合の「手にした」ってのは、入手したわたしじゃなくて鏡に触れてる人間のこと。セキュリティはかけられるみたいだけど、そういうわけだからわたし以外の人間でも、基本的に誰だって自分の記憶を見返すことができる。

 

「これ、映像だけじゃなくて再生ボタンとかを空中に出してくれるのすごく便利よね。ビデオデッキはちょっと覚えるのに時間がかかったけど、これなら直感的に操作できてすぐに覚えられたし」

 

 たとえばハーミーは今、そんなことを言いながら空中に投影された操作画面をタップしたり、スワイプしたりして自分の記憶を色々確認してる。中には彼女自身も忘れてるだろう、小さい頃の記憶もバッチリっていう高性能さよ。

 

 ていうかその操作画面、どう見てもスマホとかタブレット端末の画面を空中に出してる形なんだけど、時代の先取りしすぎか?

 でもあれ、感覚的に操作しやすいインターフェースだから、ハーミーもわりと簡単に適応したみたいだ。

 

 うん……明らかにこの時代には存在しないインターフェースが使われてるのは、どう考えてもおかしい。これは未来から来た人間がいる!

 

 ……わけじゃなくって、たぶんだけどこの鏡がわたしに合わせる形でカスタマイズされたからだろう。内宮での試練をクリアして鏡に魔法効果が転写される際、開心術によく似た魔法の気配を感じたからね。

 たぶん、わたし個人に合わせたカスタマイズをしてくれたんだと思う。無駄に対応が細やかなのは、アマテラス様が配慮してくださったんだろうか。これから祈る対象増やしたほうがいいスか?

 

 でもだとしたら、皇室が保管してる八咫鏡はもうちょっと使い勝手が悪いかもしれない。

 

「翻訳機能まであるのも最高よね……。やっぱり日本語って難しいから、なかなか覚えられなくて……」

「翻訳できるのは鏡に触れてる人が使える言葉に限るっぽいけどね」

 

 それはそれとして、このわたしの八咫鏡が本当に便利すぎてな……。

 

 今言った通り、習得してさえいれば色んな言語に対応するんだよ。自動で翻訳してくれるの。

 

 たとえばわたしが触ってれば、日本語と英語と蛇語をきちんと翻訳してくれる。これで声はもちろん、文字まで対応っていう神仕様。イキュラス・エルランかな?

 

 でもこのおかげで、日本のエンタメを過不足なく紹介できる。誇張抜きにとんでもなく素晴らしいものを手に入れてしまったのよね。

 

「それに記憶も種類ごとにチャプターって形で分けられてるのも、調べやすくて助かるわ。検索機能なんて便利すぎて、どうしてこれが今まで図書館とかになかったのかって目からうろこが落ちた気分よ! これがあれば復習も簡単だし、あくまで記憶の再生だからうっかりド忘れしちゃった情報なんかも簡単に思い出せるもの!」

「旅行の思い出なんかを見返すのにも便利だよね。だからこそこうやって、伊勢神宮でのあれそれもダフネちゃんと共有できたわけだし」

 

 用途で盛り上がるわたしたちだけど、実を言うとこの鏡、わたし向けなだけあってアレなところがある。

 

 わたしとハーミーは使い勝手の点で笑い合ってるけど、二人とも知ってるんだ。鏡くんが自動でカテゴライズしてくれた記憶の中に、「えっち」っていうカテゴリが存在してることを。

 いずれバレるにしても、今はダフネには秘密にしておきたいって利害が一致した結果それを黙ってることを。

 

 わざわざそんなお節介をしてくれるあたり、この鏡くんは間違いなくわたしに向けてしっかり調整されてるよねっていう。

 

 しかもこの再生機能、記憶なのに当人視点じゃなくて俯瞰視点で展開されて、ちゃんと全方向から視聴可っていう謎に高性能な機能を持ってる。周囲の景色も一定範囲は再生されるし、一時停止もズームアップも自由自在。

 さらに映像は4Dもびっくりの超高画質、おまけにモザイクは当然ないと来た。マジで配慮が緩いイキュラス・エルランって感じだけど、こんなのわたしにしてみればただのハイテクAVグッズなんよ。

 

 ダフネと合流する前に一回、ハーミーと二人で年明けにシた「裸リボンでプレゼントはわたし♡」からの8連戦を見返したんだけど、マジで一財産築けるレベルの超品質和洋ロリ百合AVでしたからね。

 

 当事者が言うのもなんだけど、えっちすぎた。鑑賞後は流れるように再戦になったのは言うまでもない。とてもきもちよかったです。

 

 あとこの鏡くんな、他にも二つほどヤバいカテゴリがあって……まず一つ目はですね、「夢」です。

 

 うん、そう。この鏡くん、夢で見たものもばっちり抽出できちゃうの。ただの夢ならところどころ不備もあるだろうけど、明晰夢の場合その限りじゃないわけで。

 

 ええ、きちんと再生されましたとも。わたしが夢の中で展開した触手プレイ。

 ただのAVじゃ絶対に再現できない映像なわけで、これも控えめに言って神でしたね。あまりにもわたし得がすぎる。さすがにハーミーには見せてないけど。

 

 こんな素晴らしいものを手に入れることができて、いいんですか!? わたし、前世でそんなに徳を積んだ覚えはないんですが、本当にいいんですかイザナミ様!?

 

 ……え、いいの!?(幻聴

 ありがとうございます! これからも毎日たくさん祈らせていただきますッ!

 

 ……で、もう一つのヤバいものは……これが特大にヤバいんだけど。

 

 その、あれなんだ。カテゴリの中にさ、「前世」ってのもあるんだ。わたしが触れてるときだけ出現するカテゴリなので、お察しいただけるかと思う。

 

 これただの前世だけじゃなくて、あの世でやった異能力バトルトーナメントの記憶まで再生されるの、マジでガチにクソヤバ案件だからな。

 こんなの世界の真理の暴露動画だし、神様のご尊顔まで拝めるとなると、宗教問題にすらなりかねないのよ。

 

 とはいえこれについては鏡くんもまずいと思ってるのか、他人に見られたくない記憶については当事者本人じゃないと再生できないようになってるし、隠したいときはそもそも一切表示されないようになってるから一応安心ではある。

 

 そしてこの見えないようにする機能は、当事者の閉心術の腕前で範囲や規模が変わるみたいでして。

 おかげさまで去年無事に閉心術に自信ネキになったわたしは、触手プレイはもちろん前世やあの世の記憶も隠すことに成功してる。セーフ。

 

 いやぁ、このときばかりは早いうちに閉心術の習得に打ち込んだ過去の自分に全力の感謝を捧げたよね。

 マジでよくやった、過去のわたし。本当にありがとう。お前のおかげでわたしは救われた。

 

 いやもう、わたしの前世とか誰得だよって話だからさ。ドMのおじさんが風俗で女王様相手に野太い嬌声上げてるシーンとか、絶対にハーミーたちに見られるわけにはいかない。絶対にだ。

 

「見られたくない記憶は見れないようになってるのもいいわよね。やっぱり誰だって知られたくないことってあるもの。プライバシーへの配慮は絶対必要だと思うわ」

「……う、うん、そうだね」

「閉心術を覚えれば見られたくない記憶の設定が色々できるようになるなら、この鏡を閉心術の練習台に使うというのもできそうよね……使わせてもらってもいいかしら?」

「うん、大丈夫だよ!」

 

 ああ、純粋にプライバシー対策とか、閉心術の特訓相手として見てるハーミーがまぶしい。どうかそのままの君でいて。

 

「待って待って待って、待ってくださいまし! 本当に大丈夫ですの!? だってその、日本魔法界の秘宝ではありませんの、それって!」

 

 おっと、ここでようやくダフネが復活した。

 そして正論である。超がつく正論。これに勝る正論は、去年度のイシュカのお説教くらいしかないだろうってくらい正論。

 

「……正直わからないんだ。今のところ日本魔法界のほうで動きはないように見えるけど、そもそもわたしの拠点は今こっちじゃないから細かいことはわからないし」

 

 だからわたしも、真面目にそう答えた。

 

 日本魔法界の新聞も購読してるけど、結局は報道機関を通じた情報しかわからない。上層部の水面下の話とかが下々に漏れ聞こえてくることなんてそうそうあるものじゃないし、伊勢神宮でのわたしたちの行動がどう影響するかは現状本当にわからないとしか言いようがないんだよね。

 

「……それで叔父様ですのね」

「つい昨日までは、そういうつもりなんてまったくなかったんだけどね」

 

 だからダフネには、ギャレスさんの協力を仰ぐために協力してほしい。

 

 ギャレスさんは血の呪いを解くために、そのカギになるかもしれない日本固有の素材を手に入れるために、日本魔法界との貿易を始めようとしてる。

 そのためには、当然日本魔法界に踏み込んであちこち出向く必要がある。今回来日したのも、主にそれが理由だ。

 

 彼が顔を出す中には、きっと皇室や呪いに詳しい旧家もあるはず。あるいは古代魔法についても、何らかの情報を知ってるところもあるかもしれない。

 そういうところに出入りすれば、わたしについて日本魔法界が何か知ってる。あるいは動いてる、とかを知ることができるかもしれないじゃない? 虎穴に入らずんば……ってやつだよ。

 

 大丈夫、わたしが直接出向くつもりはない。ギャレスさんにはあくまで、商談のついでとして日本魔法界の最近の情報を仕入れてもらうだけだ。

 それくらいは商人としてはむしろ当然の行為だろうから、怪しまれる可能性は低い。危険はそんなにない……んじゃないかなぁ。

 

「私は通訳とかでついていったほうが情報は手に入るって思うんだけど……私にできることはないし、リンの負担も大きすぎるから」

「うん。さすがに危険だろうから、折衷案ってことでこんな感じ。どうかなダフネちゃん」

「……それでもあなたの存在が露見したらどうしますの?」

「どういう出方をしてくるかにもよるけど……まあ、最悪の場合はイギリスに亡命かなぁ」

 

 日本のことは捨てがたいけど、別にイギリスで生活していけないわけじゃないもんね。一番のネックになるお風呂問題はもう解決してるし。

 

 わたしとハーミーの意見に一定の意義を見出したのか、ダフネは仕方なさそうにため息をついた。完全には納得してないらしい。

 だけどわたしの行動が、自分たちのためであることも理解してるからだろう。最終的には、協力を約束してくれた。

 

 ありがとう。わかってくれて嬉しいよダフネ。とりあえずその見返りとして、わたしはわたしの身体を差し出すとしよう。いっぱい抱いてくれていいからね♡

 

 ……え? 結局わたしだけが得してる?

 ふふふ、それは言わないお約束だぜお客さん。

 




?????「ちょっとお母様ァ!? お母様が連れてきた子、800年ぶりに来た使い手だから私ウッキウキで出迎えたのに、試練全部スルーしよったんだけど!?
いやそれはいいのよ、それくらいは。抜け道見つけて利用するのはそれはそれで才能だもの。
けどさァ!? せっかく作ってあげた八咫鏡も、えっちなこと見るのにしか使わないのはどうなってるわけ!? なんなのあの子!? 教えはどうなってんのよ教えは!?」
ドM「熱田神宮にもたぶんあるよね? 行きたいなぁ。草薙剣もえっちなことに使えるといいなぁ」
?????「くんな!!!!」
????「ええんやで」
?????「キエエェェェェァァァァ!!!!」
なお母と姉のやりとりを見て爆笑する弟がいたらしい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。