才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
まあなんのかんの言いはしたけど。
結局のところ、日本魔法界がどう動くかでわたしの動きも変わってくるわけで。
それならわたしにできることは、色んなケースを想定してそれぞれに備えておくくらいしかない。こっちから積極的に絡みに行くつもりはないんだから、必然的にそうなる。
とりあえず最悪の場合に備えて、姿現しとポータスは覚えておいたほうがいいかな。誰かが使ってるところが見たいな。魔眼で視れば解析して、独学で覚えられるはず。
今年はタイムターナーも使えるし、去年度みたく危険な事件もほぼないからレベリングがはかどるぞぉ。
とはいえそれは、ホグワーツじゃないとできないこと。未成年が魔法を使っちゃいけないのは日本でも同じだから、練習なんてできないんだよね。
だから今のわたしたちにできることと言えば、夏休みを満喫することしかないってわけ。
てなわけでやってきた玄武大路は、普段にも増して活気に満ち溢れていた。
「わあ、すっごい人! こんなに人がいるところ、初めて見たのです!」
行きかう大勢の人たちを見て、アストリアが歓声を上げる。
きらきら笑顔がとってもまぶしい。思わずみんな揃ってほっこりしちゃう。
この笑顔をわたしやハーミーにも向けてくれるようになった辺り、クリスマス休暇のときに見せた警戒はすっかり解いてくれたみたい。言葉遣いもよそ行きのじゃなくなったもんね。
……一応言っておくと、これはアストリアが素直ないい子だったからであって、わたしが例の催淫魔法をぶちかましたわけじゃない。これだけは真実をはっきりとお伝えしたかった。
「本当ですわね。日本魔法界は人口が少ないと伺っておりましたけど、お祭りとなるとやっぱり違うのですね」
「日本人は食事とお祭りに命かけてるところあるからねぇ。それはマグルでも魔法族でも変わらないっていうか」
「確かに、滞在二週間弱でそう思う機会はちょくちょくあったわね……」
アストリアに続けてわたしたちも、魔法界としては珍しい様子にあれこれと言葉を交わす。
そう、今日の玄武大路はお祭りの日。七夕祭りが開催されるのだ。
七夕って言えば7月7日。7月も後半に差し掛かった今ってのは厳密には正しくないんだけど、そこは色々と大人の事情がね。
正確に言えば、7月7日から七夕キャンペーンって感じで色んなイベントがあるんだけどさ。今日はその中でも普通の人にも有名な、
このイベントこそ本来は7月7日にやるべきなんだけど、これが大人の事情でね。いやぶっちゃけると子供中心のイベントになってるからか、マホウトコロが夏休みになってすぐのタイミングに合わせてるんだよ。
だから今日の玄武大路は、子供がたくさんだ。わたしたちもその一部ってことになる。
だけど今日のわたしたちは、一味違う。何が違うって、そう。みんな浴衣を着てるのだ!
はー、みんなかわいい!! みんなすき!!
ハーミーはグリフィンドールを思わせる、赤めの暖色中心にまとめた浴衣。ダフネは逆に、スリザリンを思わせる緑中心にまとめた浴衣になってる。アストリアも、ダフネと合わせた形。
じゃあわたしはって言えば、下手にお揃いにすると不満が出るかもってんで、白地を基本に色んな色の花が散らされた
今「は?」って思ったやつ、夜のトロフィールームに来るように。決闘だからな。
まあわたしはさておいても、イギリス美少女が着こなす浴衣ってのはそれだけで趣深いものだ。髪の毛もそれに合わせてまとめ上げてるから、白いうなじが見えてて……んんんんん、実にえっちですねぇ!!
着付けしてる最中も、ちらちら見える鎖骨とか裾からのぞく太ももとか、えっちすぎてなかなか集中できなかったもんね。
これでコトに及ぼうものならね。少しだけ脱がせかけた浴衣からまろび出る瑞々しい四肢を想像しただけで、おかずとしては十分すぎる。
いや本当、和服って女の子を性的に魅せる世界一の民族衣装だと思うよわたし。アストリアにすら興奮するところだったもんね。ダフネの手前、全力で我慢したけどさ。
誰か助けてくれ、このままだとわたし恋人の妹にも手を出しかねない。
この煩悩を鎮めるためにも、ハーミーやダフネとはぜひとも今夜このまま浴衣えっちとしゃれこみたい。せっかくの機会なんだし、年度末にシたみたいにまた3Pしたいな3P!
「お祭りに浮かれるのはいいけど、気をつけるんだぞ」
「そうですよ。迷子になったらいけませんからね」
後ろからやってきたギャレスさん、アクィラさんも当然浴衣だ。こちらは全体的に落ち着いた色合いだ。それもあって、大人の色気って感じがする。
いやまあ、ギャレスさんは20代前半だしアクィラさんに至っては二十歳になったばっかりなんだけどさ。やっぱこう、なんていうか、なんだかんだで10代前半とは色々違うなって感じはするよ。
とはいえ、今回は魔法界でのお祭り。二人は保護者として同行してるわけで、二人の言うことは基本的に絶対だ。
わたしたちは4人揃っていい返事をして、けどテンション高めにお祭りの輪の中に飛び込んでいくのだ。
「まずは玄武大路の真ん中にある笹のところまで行こう! あそこでお願いごとをするんだよ」
七夕と言えば、短冊にお願い事を書いて笹に飾り付けるってあるよね。それをやるんだよ。
とはいえここは玄武大路で、魔法界だ。魔法界の七夕は当然魔法がかけられてて、この短冊にお願いごとも一種の儀式魔法として機能してる。
効果のほどは、決して強くはないけれど、一種の自己暗示的な効果だ。つまりこういう風になりたい、ああいうことがしたい、とかそんな願い事を書くと、書いた人が思いつく範囲や実行できる範囲での努力をしやすくなる、って魔法なんだよね。
お願いごとを書かなくても、他の飾りをつけることで何かしらの効果が出ることもある。たとえば折り鶴を飾れば、健康になれるとかね。
これも儀式魔法の一環だから、マジでちゃんと効果がある。もちろん劇的な効果はないけど、ゼロじゃないからね。
「じゃあ、アストリアはお姉さまが健康でいられますようにってお願いするのです!」
「あら、嬉しい。ではわたくしは、アストリアが健康でいられますようにお願いしますわね」
「えへへ、お揃いなのです!」
それを聞いて、グリーングラス姉妹はお互いの健康を願うことにしたようだ。てぇてぇ。
「私は学業成就よ。今年はリンに勝つんだから」
「ふふん、今年も負けないよ。受けて立つもんね」
「……あなたたちはまあそうでしょうとも」
一方わたしとハーミーは成績アップだ。そりゃね、って感じ。ダフネも苦笑してた。
わたしとしては、性生活の充実をお願いしたいところではあったんだけど……こういう場所でそれを書くのはさすがにね。わたしにだって世間体を気にするだけの人間性はあるのです。
「ねえリン、このタンザクってやつ、英語で書いても通じるかしら?」
と、そこで一つ問題が。短冊に記入する場所で筆を渡されたハーミーが、眉をへにゃってしながら顔を向けてきた。は? かわいいかよ。すき。
でも言われてみれば確かに。ダフネたちはダフネたちで折り紙に苦戦してるけど、そもそも筆記具の問題があったな。わたしの影響で多少の日本語はわかるけど、筆はさすがにね。
よし、それじゃ代筆してあげよう。と思って筆を受け取ろうとしたとき、向かい……つまり運営側の人がいるところから声がかけられた。
「英語でもかまへんよ。ほい、これなら慣れてはるやろ?」
多少訛りはあるけど、ちゃんと英語だった。そして差し出されたのは、ホグワーツでも使い慣れてる羽ペン。
「あ、ありがとうございます!」
「ええんよ。神様は日本語やないとアカンなんて、そんなこまいこと言いひんからね。好きなようにしてくれたらよろしおす」
ハーミーに羽ペンを渡してふふふと微笑むのは、衣冠束帯に身を包んだおじさんだった。運営側の人たちはこれが正式な行事だからか、公家としての正装である衣冠束帯なんだけど……公家って時点でマグルとしても魔法族としても歴史ある名家だ。
だけどそのおじさんの顔に、わたしは見覚えがあった。
「……あれ? 白亀屋のおじさん?」
そう、その人は玄武大路の入口に当たる宿屋で、よく受付をしてくれてるおじさんだった。
「お、気ぃついた? ふふふ、見違えたやろ?」
「はい、最初わからなかったです。おじさん、実は結構すごい人だったんですね」
「……あっ、受付の人!」
その事実に、少し遅れてハーミーも気づいた。今日まで何回か玄武大路には来てるから、ハーミーもおじさんとは顔見知りなのだ。
おじさんは持っていた勺で口元を隠しつつ、ハーミーにウィンクをする。い、イケオジ……!
「いつも暇してる冴えない宿屋の受付は、世を忍ぶ仮の姿……ええやろ? 上様リスペクトや」
「えっ、余の顔見忘れたかって言えるご身分ってことですか……?」
続いた言葉は英語だったけど、日本のカルチャーに即したものだったせいか、ハーミーは首を傾げる。
だけどわたしは、ちょっと心穏やかじゃない。
上様をリスペクトしつつ、実際にそういうことができるってことはそれ相応の身分ってことだ。もしかしてこの人、世が世なら殿下とか呼ばれる人なんじゃ……?
冗談……だよ、ね……?
「ふふふ、さてどないやろね? ……お、嬢ちゃんたち折り鶴できたみたいやね。うんうん、ようできてはるよ。初めてとは思えへんなぁ」
けれどおじさんは、わたしの疑問に答えることなくダフネたちが作ってた折り鶴に話題を移した。一生懸命作った折り鶴を、故国の言葉で褒められたアストリアがすごく嬉しそうにしてる。
「出来上がった飾りは、あっちの笹に取り着けておくれやす。……ほれ嬢ちゃん、イギリスのお友達やろ、きちんと案内したり」
「は、はい、わかりました」
結局わたしはおじさんに促されるまま、そこを離れることになった。煙にまかれた気分……。
でもまあ、後ろがつかえてたし仕方ないか。おじさんとはこれからも会う機会あるだろうし、今日のところはこれくらいにしといてやろう。
ということで笹に短冊や飾りを取り着けて、お願いごとをして。
あとはお祭りを楽しむだけだ。玄武大路のあちこちに並ぶ出店を、みんなで巡るんだ!
出店のラインナップは、マグルの夏祭りとほぼ変わらない。何せこの手の出店は、スクイブの収入源だからね。彼らはマグル界のお祭りでもこうやって店を出してて、マグル界の文化を色々と持ち込んでくるんだよ。
日本魔法界は血の呪いのせいでスクイブが多いから、彼らもきちんと社会の構成員として活躍してる。ていうか彼らからだって魔法族は生まれ得るんだから、常に人口との戦いがあるこの国じゃ放置なんてできるはずないんだよね。
結果として、日本は魔法界とマグル界の文化的垣根がわりと低くなってるってわけ。その分、魔法界特有のトンデモアイテムを扱ってる出店はほとんどないんだけどね。
「お姉さま、お姉さま! 見て見て、とってもかわいいのです!」
と、そこでアストリアが指さしたのは、昭和のお祭り定番のひよこ売り。色とりどりのひよこが並べられていて、ぴよぴよとかわいい鳴き声が響いてる。
ぱたぱたとその前に駆け寄ったアストリアは、しゃがみ込むと目を輝かせてひよこたちを眺め始めた。その隣に、ダフネも並んで微笑んでる。
「あんな色のひよこ、あり得ないわよね?」
「そうだね。……ハーミーのことだから、動物虐待なんじゃないかって懸念してるんだと思うけど、大丈夫だよ。ちゃんと品種改良でそういう色になるようになってるから」
「そ、そう? なら、いいのかしら」
まあ、マグル界で売られてるカラーひよこはこの品種改良ひよこのパチモン。あっちのはただ染料で着色されてるわけで、ハーミーの懸念は外れってわけでもないんだけど。ここは魔法界だからね。
ただ、わたしもそれ以上のことはわからない。去年もこのお祭りは来たけど、ペットを飼うつもりなかったからひよこ売りには関わらなかったし。
ってことで、お店の人に解説をお願いしてみた。アストリアたちのためにもそのまま英語に通訳していこう。
「ここで売られてるひよこは、品種改良で羽毛の色が違う種類なんだって。ただ色が違うってだけじゃなくて、魔法生物ともかけ合わせてるから他にもいろいろ普通のニワトリと違うところもあるみたい。
羽毛の色によってできることが違うみたいで、たとえば赤い子はいたずらっ子。小さいものなら操ってぶつけて来たりするんだって」
「グリフィンドール生みたいなニワトリですわね」
すごい言い草だ。否定できないけど。これにはハーミーも苦笑い。
「黒い子は、ニワトリだけど飛べるんだって。成鳥になったら、大人一人くらいなら吊り下げて飛んだりできるみたい」
「不死鳥みたいなことができるのね? すごいわね」
「あと緑の子は壁とかを歩けるみたいだね。青い子は水の上を歩けたり」
「すごいのです……! ……あ、あっちの白い子はなぁに?」
「白い子は……へぇ、ヒーリング効果。愛情を注いで育てた子と触れ合ってると、心身の疲労に効くみたいです」
白いひよこ……ニワトリも種類によっては白いけど、このひよこは成長したらどうなるんだろう。
……わあ。掲載されてる成長後の写真、すごいな。なんか光を振りまいてて、神聖な鳥って感じする。ニワトリにしてはかなり細身だし、まるでラーミアみたいだ。
いやでも、そういやかつて日本ではニワトリって神聖視されてたっけ。その名残かもしれない。
そしてその解説が、決め手になったらしい。アストリアが声を上げた。
「あのあの、この白い子がほしいのです。その、お姉さまに元気でいてほしくて……」
なんて健気な子なんだろう……。ダフネなんて感極まってるぞ。
だけど、ダフネにとって一番元気でいてほしいのはアストリアだろう。だからか、彼女は財布を取り出しながらこう言った。
「では、二人でお世話しましょう。今年度からアストリアもホグワーツですものね、そうすれば一緒にいられますわ」
「はい! えへへ……」
わたしがアグネスデジタルじゃなくてよかった。彼女だったら絶対死んでる光景だ。なんててぇてぇんだ……。
「……ホグワーツで飼えるペットって、フクロウと猫とカエルだけじゃなかったかしら……」
ハーミー、言うとは思ってたけど、その指摘は野暮ってもんだぜ……。
お祭りでひよこ売り、と言われてもピンと来ない人のほうがもう多いんだろうなぁ・・・(積極的に自傷していくスタイル