才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
今回の話の中に、FF4のネタバレが含まれております。
ご注意ください。
ダフネたち姉妹が購入した白いひよこは、シロと名付けられた。日本語で白、である。
日本との関係を強めようとしてるってことを強調する目的もあるらしく、日本語で白はなんていうんだって聞かれましてね。で、それがそのまま名付けられた形ですね。
今は日本での仮宿である善宝寺家で飼ってるけど、さすがに魔法界の生き物らしく賢くて手がかからない。
いやマジで、賢いってレベルじゃない。魔法使った品種改良ヤバい。
だって鳥類なのにトイレのしつけまでできるんだもん。マジでマグル界の常識が通用しない。鳥類って身体の構造上、排泄を我慢する機能がないはずなんだけどな……。
……待てよ。そういえば、フクロウもホグワーツの建物内で排泄してるところ見たことないな。大広間にフクロウが飛び交う朝とか、絶対どこかにフンが落ちててもおかしくないのに一切見ない。そういう品種改良がされてるのかもしれない。
あと飼育の手引書も一緒に買ってきたけど、食事はフクロウの餌と同じでいいらしくって、そういう意味でも手がかからないみたいだ。イギリスに戻っても、餌に困ることはなくてこれにはダフネたちも一安心。
そして今のところ、アストリアは新しい家族であるシロに夢中だ。いつもシロと一緒にいて、楽しそうにお世話をしたり一緒に家の中を歩き回ったりしてる。
わたしたちはそんなアストリアを微笑ましく見守りつつ、たまにギャレスさん夫妻に任せてダフネと抜け出し二人の時間を作ったりしてる。これについては素直にラッキーって感じ。
何せ家族で来てるダフネとは、ハーミーと違って日本でイチャつく時間がなかなか取れなかったからね。アストリアも、恋愛云々はわかってなくてもダフネをわたしに取られたって感じてるっぽい節、ちょこちょこあるし。
だからえっちする時間もあんまり取れてないんだけど、こればっかりはしょうがない。そもそもダフネの体力的な問題もあるから、あんまり長期戦はできないしね。えっちの時間が少ない点については、二人とも納得してる。
なお、ハーミーは既にイギリスに帰国済みだ。元々最初の一週間はグレンジャー家のみ、間の一週間は両家と一緒に、最後の一週間はグリーングラス家のみってスケジュールだったからね。今は彼女たちの日本旅行最終週ってわけ。
で、そんな中ダフネたちと何をしてるかと言えば……これが観光じゃなかったりする。
もちろん観光もしてるよ。玄武大路を中心に、日本魔法界の観光地をちょこちょこっと。
でも本当にちょこちょこっとで、メインはどっちかっていうとマグル側の文化だったりする。
きっかけは言うまでもないと思うけど、あれですよあれ。去年度、ダフネにジョジョを見せたことで彼女はすっかり漫画にハマっちゃったんだよね。
おかげで漫画を買ってきては読み聞かせて、って感じの時間が全体的に多い。いやあ、まさか魔法族のお嬢様二人を大阪日本橋に案内することになるとはね……。
まあ1993年の大阪日本橋はまだオタクの街にはなってないんだけど、片鱗はちょこちょこある。ゲームを売ってる店だって探せばちゃんとあるし、実際去年買ったゲーム類はここで買ってるもんね。
そして家にゲームがあるってことは、宿泊中のダフネたちの目にもとまるわけで。
「『だいじょうぶだ・・・おれはしょうきにもどった!』カインはそう言い放つと、セシルを殴りつけ闇のクリスタルを奪ってしまいます」
「カイン? カイン! あなた全然正気に戻ってないじゃありませんの!? しっかりなさいな本当にもう!!」
「ふええ……服従の呪文怖いのです……」
結果、漫画を含む日本のサブカルに姉妹揃ってどっぷりはまり込んでしまいましてね?
ええ、ご覧の通りFF4の実況プレイをさせられておりますわたし。ちゃんと英語でやってるから、わたしマジでがんばってると思う。
転生してからの人生と、漫画の読み聞かせで鍛えに鍛えた演技力も光り輝いてる。ちょっと演技力に磨きがかかりすぎた上に、演技しまくってたらなんかわかんないけど男声を普通に出せるようになったのは、想定外も想定外だけど。
いやー……自分の身体ながら、このロリボディから納〇悟朗さんの声が出たときはマジで飛び上がるくらい驚いたんだよね。
うん、なんていうか、山ちゃんもびっくりな七色のボイスになりましたわたし……。
なんでそんなことができるようになったのかよくわかんないけど、もしかしたらこれ、七変化の才能かもしれない。
七変化、つまり自由自在に姿を変えることができる能力。これも先天的な才能だけど、ありとあらゆる才能をもらってるわたしもできるはずなんだよね。
初期値が最低値っぽいから、今までろくにできなかったけど……まさかこんな形で発現することになるとは。この調子で鍛えていきたい。
まあそれはともかく、おかげさまでゲーム実況の臨場感はバッチリ。パロムとポロムの「ブレイク!」に号泣するグリーングラス姉妹が見れたし、二人ともヤンの「楽しい旅であった!」にも大泣きしてくれましたね。そしてカイン二度目の裏切りもご覧の有様よ。
今からラストバトルの導入部分が楽しみだな……なんて思いながら、とりあえずセーブを済ませるわたしだった。
「……ねえリン、わたくし思ったのですけれど」
「どしたのダフネちゃん、急に」
ゲームも終えて、午後のティータイムの時間。優雅に紅茶をキメるダフネがその話題をぶち込んできた。
「このてれびげーむというものを、なんとかして魔法界に導入できないかしら」
「過去一レベルで難しいこと言うね……」
そもそも電化製品を魔法界で使うことがどれだけ難しいかって話よ。
「娯楽として画期的だと思いますのよ。色んな娯楽がありますけれど、物語の中にそのものずばり没入するという体験は他ではできませんわ」
「それはまあ、確かに。物語に没入するのはRPGの特徴だけど、そうじゃなくても主体的に入り込むってのはゲームじゃないとできないかもね」
「はいっ、アストリアはカービィさんが好きです!」
「まんまるでぷくぷくしていて、かわいいですわよね」
シロを胸元に抱いて無邪気に笑ってるアストリアの頭をなでて、ダフネも微笑む。
その顔のまま、彼女はきりりとした口調と共にわたしのほうを見た。
「というわけでなんとかしたいのです」
「妹様が絡むと、ダフネちゃんってとたんにIQ下がるよね。いや、言わんとしてることはわかるけどさ」
「何か問題でも?」
すました顔で紅茶をキメなおすダフネに、わたしは苦笑するしかない。
ま、問いかけについてはためらうことなく首を振るんですけどね。
「ぜんぜん。そんなダフネちゃんもかわいいもんね」
「お姉さまはいつだってかわいらしくて美しいのです!」
「それは本当にそう」
と、まあ脱線はこのくらいにしておいて。
「要するに布教だよね。自分が好きなものを広めたいっていう。で、あわよくばそれで利益もほしい……って感じでよかった?」
「さすがリン、完璧ですわ」
「それはそれとして利益も追及するの、スリザリンだよね。
……でも、実際問題めちゃくちゃ難しいと思うよ? ホグワーツじゃ電化製品は使えないし、そもそも魔法って電気と相性がよくないらしいって聞いたことあるし。
導入するなら専用の魔法道具を作る必要があるけど、ゲームの具体的な仕組みはわたしだって知らないし、それを魔法に変換するにしてもどうやってやればいいか……」
「ええ、その通りですわ。でも、最近あなたと一緒にああでもないこうでもないと、魔法薬を作ったりしているときとかに、思うのです。物を作るのってこんなに楽しいのね、って」
「ああ、そっちもあるんだ。うん、それはすっごくわかるな。モノづくりって楽しいよね」
これについては前世の最終職業でもあるので、わからなくはない。単純に完成したときの達成感はもちろん、難しいのに挑戦してうまくいったときの達成感はわりとそれだけで達せるよね。
ただ、今は陰陽薬の再現をはじめ色々と手を出してるところ。そこにさらにまったく別ジャンルの魔法道具を、ってなるとかなり厳しいのが正直なところだ。学業だってあるわけだし。
「そうなのですよねぇ。リンたちに乗せられて、うっかり全科目受講することになってしまいましたし……」
「全科目なんて、お姉さますごいのです……!」
去年度の科目選択のとき、ハーミーと一緒におだてまくって全科目受講させたんだけど、これに頷いたことをちょびっと後悔してるらしい。半目でじと……ってにらまれちゃった。ゾクゾクする。
いやまあ、気持ちはわかるんだよ。全科目受けるって普通は不可能で、タイムターナーを使うことでようやくできるようになるんだけど、それにしたって大変だもんね。
言うなれば毎日6時間くらい残業するようなもんだから、子供の身体には絶対つらい。おじさんの身体でもつらかったんだからね……うん……。
ただ、それについてはやりようはある。むしろ三人での時間を確保するって意味でも、三人全員で全科目受講してタイムターナーを貸してもらったほうが、確実に充実するはずなんだよね。色々と。
そう、色々と……ね。
「まあでも実際問題、テレビゲームを魔法道具として再現しようとすると、たぶんほとんど全部の科目の知識が必要になると思うよ。だから全科目取るのも、間違ってなかったんじゃないかな」
新しいものを作るには、ほんっとー……に幅広い知識が必要になる。魔法ってふんわりしてるようで、案外ロジカルなところもあるからね。
わたしが発明した魔法ビデオカメラだって、本当ならものすごく広い知識が必要になったはずだ。わたしは魔眼で色々スキップできるから簡単にできただけの話なんだよね。
そしてこれは、色んな新作を常に作り続けてるフレッドとジョージも同じこと言うと思う。
だからこそ、テレビゲームを魔法界に導入するっていうのは、それくらい勉強が必要になる。なんなら、12フクロウどころか12イモリくらい目指す気概があったっていいくらいだ。
それはダフネもわかってるんだろう。反論はなかった。
ただわかってはいても、すぐ目の前で見えてる困難に、愚痴を言わずにはいられないんだろうね。でもわたしとしては、むすっと唇を尖らせるダフネには何とも言えないかわいさがあっていいと思うんだ。
「……だいぶ先の話になりそうですわね」
「そうだね。その頃にはゲームももっと進化してるし、媒体も変わるから三歩進んで二歩下がる、みたいなこと連続しそう」
仮に10年かかるとしたら、それは2003年の話になる。PS2の時代だ。
PS2の媒体はDVDだけど、その間にはCDを使うPSもある。そしてどっちも、SFCとは技術体系が違うもんなぁ。やりがいがあるのは間違いないけど。
まあわたしたちの場合、その前にお辞儀をなんとかしなきゃだけどさ。
「気が遠くなりますわね。……でも、最近思いますのよ。わたくしも少しくらい、先のことを考えてもいいのかなぁって。そう思えるようになりましたのよ」
明後日の方向に思考が飛びかけたわたしだったけど、その言葉に現実に引き戻された。
思わずダフネに顔を向ければ、彼女は嬉しそうに微笑んでいる。瞳に浮かぶ恋慕の色は、確かにまっすぐわたしに注がれていた。
「あなたが思わせてくれましたのよ。だからこれからも、一緒にいてくださいまし」
「……うん、もちろん。死がふたりを分かつまで、あるいは死んでも一緒にいるよ」
なんだか照れくさくなって、でもそれを上回る嬉しさがあって、わたしもふふって笑う。
血の呪いに怯え、生きることを諦めて厭世的だったダフネが、将来の夢を語ることができている。それがすごく嬉しいんだ。それをわたしがやったんだって思うと、誇らしい。
「……むぅー。最近のお姉さま、リンさんのことばっかり。アストリアだってずっと一緒なのです!」
と、そこにかわいらしい嫉妬でほっぺを膨らませたアストリアがインターセプト。その物言いもかわいらしく、わたしとダフネは顔を見合わせて笑う。
「どうして笑うのです!? んもうっ、お姉さまもリンさんもキライなのですっ!」
「ごめんなさいアストリア、あなたがあまりにもかわいくて……」
「つーんです。知らないのですっ」
「あらあら、知らないですって。困りましたわね。……ではリン、二人でお話しましょうか。そういえば、先日玄武大路で随分とたくさん紙を買っておりましたわよね? あれはなんでしたの?」
「え? え、うん、呪符作りに必要な特殊な和紙なんだ。あの紙に、特殊な筆と墨を使うことで呪符になるんだよね。なんやかんやであると便利だから、イギリスでも作りたいなって思って、それで……」
「んもうっ! 二人ともそうやってアストリアをのけ者にして! ズルいのです! アストリアももっとお話したいのですー!」
あえてアストリアを無視するような振る舞いをダフネがした直後、アストリアはぷんすかしながらダフネの身体に飛びついた。慣れてるのか、ダフネはそれを受け止めてそのままハグに移行する。
アストリアはこれを受けて、嬉しそうにきゃあきゃあと笑ってる。ダフネも同じように嬉しそうだ。
いやあ、本当に仲のいい姉妹だなぁ。姉妹百合も……いいものだよね!
本作では冗談抜きに珍しい、連続ほのぼの回。
なんで珍しいんやろなぁ(すっとぼけ