才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
「うーん、これわざとかなぁ?」
8月半ば。イギリスに戻ってきてるわたしは、朝ご飯を食べながら日刊予言者新聞を読んで眉をひそめた。
ちなみに今読んでるのは今日の分じゃなくて、イギリスにいなかった間に溜まってたバックナンバーだ。
「何がよ?」
「シリウス・ブラック様脱獄の記事を読んでたんだけどさ。このニュースに埋もれる形で隅のほうに、ロックハート退職って記事が載ってて」
「ああその記事。びっくりよね、急すぎるから何事かと思ったもの」
うんうんと相槌を打ちながら、最後のトーストを口に運ぶわたし。うん、ごちそうさまでした。
「……そのくせ記事の内容がふんわりしてるよね。いかにも何か事情がありました、って感じの記事じゃない?」
「本当よ。……ああ、だから『わざと』ってこと? ロックハート先生の話題はなるべく大きくしたくない、みたいな」
「うん、なのかなぁって思って」
記事を読む限り、何かケガをしたみたいなんだけど。これを読んで真っ先に脳裏をよぎったのは、イシュカだ。
でもまさかね。ホグワーツの生徒たちを守るって使命を改めてダンブルドア先生から受領した今の彼女は、真面目にそれを遂行しようとしてる。意図的にロックハートを害そうとはしないと思う。
まあ、ロックハートが悪さをしようとしてた場合はその限りじゃないけど……夏休みはホグワーツに一人も生徒はいないし、その可能性は低いんじゃないかなって。
じゃあ何が理由なのかっていうと、心当たりがない。防衛術教授の呪いなのはわかってるけど、それが具体的に何を引き起こしたかがわからない。
……これについては、学校行くまで保留かな。
「まあ、ロックハートのことはどうでもいいでしょう。今はやはり、シリウス・ブラックですわ」
と、ここで今まで黙って(そして優雅に)朝食を摂っていたダフネがばっさりとロックハートを切り捨てた。
これには同感なので、うんと返しておく。ハーミーも消極的ながら同意してる辺り、ロックハートへの信頼のなさがうかがえるよね。
「お嬢様がた、お飲み物はいかがなさいますか」
「わたくしは今はいりませんわ」
「私も大丈夫。ありがとう」
「あ、わたしは紅茶おかわりほしいな。ミルクティーでよろしく」
「かしこまりました」
一人のハウスエルフが、わたしたちの回答に応じて紅茶を用意する。その姿は堂に入っていて、似たようなことをしてる身としてはとても勉強になる。さすが、純血の名家に仕えるハウスエルフは一味も二味も違うなぁ。
そう、ここはグリーングラス邸。わたしとハーミーはダフネの家にお泊りしてるのよ。
ちなみにアストリアはまだ寝てる。どうやら結構なロングスリーパーらしく、日本でも朝一で出かけようってときは起こすのが大変だった。
そして妹にだだ甘なダフネは、気持ちよさそうにすやすやと眠る妹を無理にたたき起こしたりはしない。ハウスエルフにしても、魔法族第一主義なので起こせと命令されない限りは起こしたりしない。
さらに言うと、ギャレスさん夫婦は基本別邸に住んでるので、今ここにいるのはわたしたち子供と一人のハウスエルフだけだ。おかげで色々とはかどってる。
何せアストリア、一度寝るとまず起きてこないからさ……夜のあれこれが、ね。それはそれははかどるんですよ、へへっ……。
まだちんちんを生やす魔法薬は再現できてないし、陰陽薬もそうなんだけど、それはなくても楽しめるものは楽しめるのですよ。手慣れたもので、二人揃ってわたしをとても高いところまであっという間に導いてくれるの。両側から別々に攻められるの、すごくすごくてとてもすごかったですね……。
ところで三人でシてるとき一つ発見があったんだけど、二人同時に催淫魔法ぶちかますとちょっと効果が変わるみたいですね。触れてる相手のわたしに対する性欲を増幅するのが本来の効果なんだけど、同時にぶっぱなすともう一人のほうにも効果が出るっぽいんだよね。
具体的に言うと、わたしを真ん中にして両側からハーミーとダフネがくっついてるときに催淫魔法を使ったら、ハーミーがダフネに。ダフネがハーミーに対して欲情する現象が起きたのね。
たぶんだけど、わたしがバイパスになってるんだと思う。その分わたしに欲情するより効果は薄いっぽいんだけど、これはこれでおいしい。
ハーミーとダフネがキスしたりまぐわったりしてる光景、とてもとても眼福でございましたとも。そのあとわたしを巻き込んで三人ぐちゃぐちゃに交わりあうの、わたしの語彙じゃ表現できないくらいとても幸せな時間だったよね。
終わったあと二人ともあれやこれや言ってたけど、二人とも楽しんでたんだからいいじゃない。
別に悪いことじゃないでしょう? わたしの恋人たちが仲良しでわたしはとても嬉しい。
これからも三人で沼に浸かろうね。沼の住人、これから増やしてくからいっぱいいっぱいえっちしようね……。
「シリウス・ブラックって私は記録でしか知らないんだけど、確か12人ものマグルを殺した凶悪犯よね?」
「ええ。それで戦後はアズカバンに投獄されていたのですが……今になってまさか脱獄とは」
「今まで脱獄した囚人はいないんでしょ? 一体どうやったのかしら……」
ピンク色の回想をするわたしをよそに、二人がまじめにシリウスについて話し始めた。仕方なくわたしも現実に戻ってくる。
「シリウス様は犯人じゃないよ。冤罪」
内心はおくびにも出さず、わたしはそれに待ったをかける。二人分……あ、違う。ハウスエルフもだ。三人分の視線が、わたしに一斉に突き刺さった。
「……断言しますのね?」
「ひょっとして、何か知ってるの?」
わたしが知り得るはずがないことを知ってる、って事情を知ってる二人は状況を察したらしい。わたしも否定する理由がないので、素直に頷いておく。
今世間に流布してるシリウスの話題に違うって言ったことからわかるだろうけど、わたしはシリウスを助けることにした。
やっぱね、最初からシリウスが無罪ってことになってれば彼はもっと動けたはずだし、その場合に対お辞儀陣営が得るメリットはかなり大きいだろう、ってんでね。
ただ、だからって彼がピーター・ペティグリューを殺すことに賛同する気はないし、手伝うつもりもない。
これはピーターを助けたいと思ってるわけじゃなくて、彼を助けない場合より助ける場合のほうがメリットが大きいって判断したから。
前提として、わたしはシリウスを助けることにした。彼の無罪のためには、ピーターの確保は必須になる。
その場合お辞儀の復活を助ける人がいないから、復活しない……ことには、たぶんならないと思うんだよね。残念ながら。
わたしも去年一年間色々考えてたんだけど、気づいちゃったんだよ。どっちにしても、1994年のクィディッチワールドカップでバーテミウス・クラウチ・ジュニアが解き放たれるじゃない。そのあとの彼がお辞儀を復活させるために動き出すのはとめられないと思うんだよね。
だって彼は12フクロウかつ、最後の最後までダンブルドア先生にすらほぼすべてを隠し通した超絶有能魔法使いだ。原作より進みは遅いだろうけど、やってのける可能性はかなり高い。
それを防ぐには、クラウチジュニアを監禁してるクラウチシニアにそれなり以上の影響を与えられる立場にいないといけない。だけどその立場は大体の場合、ピーターを引き留めることができる立場じゃない。
クィディッチワールドカップでクラウチジュニアに接触する、って手もなくはないけど……あのときのクラウチジュニアには常にハウスエルフがついてるから、下手なことできないんだよな。
ハウスエルフって、自発的に魔法族に従属してるからわかりづらいけど、魔法の使い手としては魔法族より数段上だからね。いくらわたしが同年代の中では飛びぬけて優秀とはいえ、仕える相手を守るハウスエルフに勝つのは容易じゃない。ましてやワールドカップ会場なんて、人目だらけの場所となるとちょっとね。
原作におけるお辞儀復活に一番寄与したのはクラウチジュニアだから、彼を引き込んだほうが阻止に繋がるかなって思うんだけど……そういうわけだから、今のわたしにはそれが難しいんだよね。
あとこれとは別に、そもそもの話あのお辞儀がただ潜伏してるだけなんてありえない。今のアイツはアルバニアの森にいるはずだけど、何かしらの形で森に人間を引き込んで、利用する方策は立ててるでしょっていう嫌な信頼がある。アイツはそういうやつだよ。
だからまあ、どうあがいてもお辞儀復活は近いうちに起こるんだって思えば、シリウスにピーターを殺させるのはもったいないだろって思ったんだよね。
シリウスは当然として、ピーターも仲間に引き込んだほうがいいじゃない、ってさ。
だって、ピーターってなんだかんだで優秀な魔法使いなんだよ。ジェームズやシリウスっていう比較対象が悪いだけで、学生のうちにアニメーガスに至れた人間が無能なわけがないんだよね。
そんな人を、むざむざお辞儀の手駒に行かせるなんてもったいなさすぎる。彼を助けてこっちの陣営に置けば、それだけで相手側の手札を一枚消せるんだから、そういう意味でも助けるメリットはあるじゃんって。
……原作の流れはもう知らん。三年目は事件のない平穏な年度にしてみせるぞ。
まずは手始めに、ハーミーには原作通りクルックシャンクスを購入するように誘導しよう。彼がいれば、シリウスが学校内に侵入するところまでは原作通りに進むはず。
それでシリウスの居場所を確定させたら、一気に動く感じかな。あとは流れで。
と、話を本題に戻そう。
「真犯人はピーター・ペティグリューのほうだよ。逆なんだ」
「逆って……ピーター・ペティグリューと言えば、その功績から死後に勲一等マーリン勲章を授与された方ではありませんか!?」
「シリウス・ブラックが殺したっていう魔法使いよね!? どういうことなの!?」
驚く二人に、わたしは説明する。
ハリーをお辞儀から守っていた忠誠の術の守り人は、シリウスではなくピーターだったこと。しかしピーターは親友を裏切り、これをお辞儀に知らせてしまったこと。ハロウィンの悲劇に至ったことを順番に。
ただし、シリウスの追跡から逃れるため、あるいは他の死喰い人からの追及から逃れるため、周囲のマグルごと自爆したことは話さない。
ピーターをシリウスに殺させずにどう助けるのかは、もう考えてある。あとあとのことを考えると、細かいところは喋るとまずいんだよね。
だから自爆したことは話したけど、どういう経緯でしたのか。どういう思惑があったのか。そして当人たちの間に何があったのかは、一切触れないでおく。
それができないところはぼかしたり推測という体で補ったりして、乗り切った。
「……それが本当なら、私許せないわ……。裏切るのもそうだけど、無関係な人を巻き込むなんて!」
「そうですわね、そこは本当に許されないことだと思います」
珍しく意見が完全に一致したな、と思ったけどよくよく見れば一致しきってはないな。
ダフネはうまくぼやかしてるけど、彼女が同意してるのは無関係な人を巻き込むことであって、誰かを裏切ること自体は最悪あり得るって考えてるなこれ。さすがスリザリンって感じだ。
「でも問題はそこだけではありませんわね。そのペティグリュー、もしかしてまだ生きているのでは?」
「え!? そ、そうなのリン!?」
「うん、わたしもそう思う。たぶんだけど、シリウス様が脱獄したのはそれが原因なんじゃないかな。ピーターがまだ生きてるってことを、何らかの手段で知ったとかそんなところだと思う。きっと復讐のために脱獄したんだよ」
「どうやって……? 長年アズカバンにいるのに、そんなことを知る方法なんて……」
「いえ、アズカバンも人の出入りが一切ないというわけではありませんのよ。ここ最近に立ち入ったどなたかから聞いたか、持ち込んだものを見たか……その辺りではないかしら」
「だ、だとしても脱獄はどうやって? 今までただの一人も脱獄した人はいないんでしょう?」
「そこもちょっとわかんないんだよね。全部が全部知ってるわけじゃないから……」
脱獄方法も話せないから内緒にしておく。アニメーガスについて説明しちゃうと、色々と動きづらくなりそうだし。
うなれわたしの演技力!
ちなみに、実は魔眼を使えばアニメーガスと普通の動物の見分けはつく。
でも普段から魔眼使ってるわけじゃないからね。魔法生物でもない相手に魔眼を使おうなんてそうそう思うことないから、気づかなかったって言い訳は通る。しばらくはそれでいいでしょう。
……とはいえ、わたしの説明そのものは、根拠も何もない。おまけに冷静に聞けば、ふわっとした説明ってことはわかるはず。
こんなの普通信じてもらえないし、なんなら聖マンゴにぶち込まれてもおかしくない話だ。実際、さっきからハウスエルフはわたしから距離を置いて、怯えてる。
だけど二人は、わたしを疑う様子なんて欠片もない。信頼が嬉しい反面、下手なこと言えないプレッシャーも感じるなぁ。
「あ、お、お嬢様。アストリアお嬢様がお目覚めになられました。呼ばれていますので、一旦失礼いたしますです」
重くなった空気の中、さて次はなんて言おうかって思ってたところに、ハウスエルフがおずおずと声を上げた。
ダフネはこれに一瞥をくれて頷くと、バチンという音と共にハウスエルフがこの部屋から消える。文字通り、逃げるようだった。なぜに。
その後もこれから先のことでシリアスな雰囲気が続いていたけど、寝起きのアストリアが現れたことでその空気は吹き飛んだ。
何せパジャマのまま、白ひよこのシロを寝ぐせのついた頭に乗せたアストリアが、ハウスエルフに手を引かれながらぽてぽてとやってきたんだ。そんなかわいらしい姿を見せられて、和まないやつがいるもんかって話よ。
「ふわぁぁ……おねえさま……おはようございましゅ……」
なんだこのかわいい生き物。きっとこのとき、わたしたちの心は一つになったと思う。
このあと、真面目な話は一度も出なかったことは言うまでもないだろう。かわいいは正義なんだって、それ一番言われてるから。
前章であれだけ引っ張っておいて、ナレ死したロックハートについてはシンプルにボクの力不足だなと実感しているところです。
いや死んではいないんですけどもね。
一応、どういう風にケガをしたのかについては、のちのち少し触れる予定ではあります。