才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

56 / 106
8.ディメンターの襲撃

 そこそこの期間グリーングラス家に泊まってたおかげで、魔法の練習とか研究もできた。いやぁ、充実した夏休みでしたね。

 

 ハリーがマージおばさんを膨らませて漏れ鍋に避難してくる流れとか、それに付随する諸々は大体原作通りに推移したっぽい。漏れ鍋滞在中のハリーにみんなで会いに行ったから、間違いない。

 

 ハリーおよびウィーズリー家と、アストリアが顔を合わせる機会にもなったんだけど、アストリアは普通に受け入れられてた。去年度の後半から一般的な純血主義をやめたからってのもあるだろうけど、一番はアストリアの人懐こい性格のおかげだろうね。やはりかわいい、かわいいはすべてを解決する……!

 

 まあ、ハーミーにクルックシャンクスを買わせるのは失敗したんだけど。

 この世界、ハーミーのペット枠は既にグレンジャー家専属のフクロウがいるからか、ペット欲がほとんどなかったんだよね……。

 

 考えてみればそりゃそうかって感じではあるんだけど、抜かっちまったなァって思ってる。

 シリウス、どうやって校内におびき寄せよう。最悪、わたしが直にやるしかないかもしれない。

 

 あ、ちなみにアストリアがペットにした白ひよこことシロは、律儀にダフネが許可申請しました。

 結果としては問題なし、ということで無事ホグワーツに連れ込むことができるようになってるよ。よかったね。

 

 話を戻そう。

 

 原作との違いってことで、実はもう一個気になることがある。魔法生物飼育学の教科書が、「怪物的な怪物の本」じゃなかったんだよね。去年までと変わらず、ニュート・スキャマンダーの「幻の動物とその生息地」……要するにファンタスティックビーストのままだったのよ。

 ってことは、魔法生物飼育学の担当教授はハグリッドじゃないってことになる。誰なんだろう。ケトルバーン先生は原作通りならもう教授職を退いてるはずなんだけど。

 

 いずれにしても、これまた微妙に原作と違う流れになってる。これだけなら大筋にはさほど影響はないから、リカバリーは利くけど……こういうのが積み重なって秘密の部屋の緊急着陸めいた決着に繋がったからなぁ。

 

 まあ教授については、ハグリッドの代理をこなしてたグラブリー=プランク先生が妥当なところかな。

 

 ううん、残念だ。ハグリッドだったら、ドラコをかばってヒッポグリフに痛めつけられる役目を勝ち取れたのに。まともな人が来たら、そんな事態にはならないだろうなぁ……。

 魔法生物から重傷負わされてみたかったんだけど……うん、まあ、そんなことになったらハーミーもダフネも心配するだろうし、ないならそれでよしとするかぁ。

 

 そんなわけでやってきた9月1日。プラットホームでダフネやアストリアと合流しつつ、そんなことを考えるわたしです。

 

「あ、神様」

「ルーナ。久しぶりだね」

 

 ハーミーも含め、合計四人で列車に乗り込んで空いてるコンパートメントを探してたら、ぼっちで過ごすルーナに遭遇した。

 ……一人でいたのは、シンプルに現在進行形で奇行の真っ最中だからだろうね。何せ彼女、レガ主みたいなドラゴン眼のメガネをつけた状態で、儀式魔法の練習(練習だからか太極拳みたくゆっくりとしたダンスになってる)をしてるんだもん。あからさまに浮いてるのよ。

 

 とはいえ、ルーナとは気心の知れた仲だ。ちょうど全員入れるし、ここにしよう。

 

「あの、神様って……?」

 

 まあアストリアは首をかわいくひねってたんだけど。それについては、深く気にしなくていいからね……。

 

「神様、色々ありがとね」

「気にしないで。ルーナは()()()()()()()()()から、色々施すのは当たり前だよ。あと、いつも通りでいいからね」

 

 しれっとルーナを身内扱いしつつ、わたしはえっへんと胸を張る。

 

 そこに、どういうこと? って聞きたげな視線が集まったので、ルーナにはこの夏休み中に色々とプレゼントを贈ったことを説明する。

 彼女には色んな儀式魔法を覚えてもらい、実際に使ってもらう必要がある。そのために、儀式に必要な道具一式や衣装、それらをしまっておくトランクをまとめて渡しておいたのだ。

 

 あと歌も覚えてもらいたくて、蓄音機やレコードも。

 蓄音機は玄武大路で買ったやつで、再生した音楽から歌唱部分だけをピンポイントで消すカラオケ機能つきだ。さすが日本、カラオケ発祥の国。

 

 総額はたぶん300ガリオンを超えてると思うけど、悔いはない。これは先行投資であり、ルーナにはそれだけの価値があるからね。

 

「そんなに!? どこからそんな大金が出てくるのよ!?」

「特許料……かな……」

 

 そしてそれらを買い支えた資金は、一年分のお小遣いやお年玉、日本に持ち込んだ禁じられた森産の素材売却もあるけど、ダンブルドア先生がやってくれた魔法ビデオカメラの特許料も大きい。

 

 魔法界には万眼鏡っていう、録画再生機能のある道具がもうあるけど、あれ基本一人用だからね。みんなで映像を音声込みで共有できる上に、その映像は写真を流用してるから量産もできる。それはつまり持ち歩けるってことでもあって、ならば交換なんかもできるわけで。

 

 これが魔法族にウケた。おかげでわたしの口座には、ジャンジャンバリバリお金が入り始めてるのだ。

 

「神様、すごい期待してくれてるんだよ。嬉しい。でも責任重大だ。あたしがんばるから」

「うん、期待してるよ。でも気負いすぎないでね。健康第一、学業優先でいいからさ」

「ン」

 

 そんな大量投資を、ルーナはそれだけ期待されてる証と受け取っている。最初はかなり恐縮してたんだけど、どうにかこうにか口説き落とした形だ。

 これに対して、両手でぐっと拳を作り、がんばるぞい、と言わんばかりに宣言してくれるルーナ。表情は乏しいけど、そういうところもまたかわいい。

 

 ちなみにルーナにそれだけ投資してもお金は余ってたから、わりと遠慮なく趣味にも使った。魔法方面で言えば魔法薬や魔法道具、マグル方面で言えば漫画やゲームだ。

 後者のラインナップはかなり充実してきてる。漫画に関しては去年同様、四次元スーツケースに入れて持ってきてるから、ホグワーツでも楽しめる。これにはダフネもアストリアもにっこりだ。

 

 で、そのあとはこの夏休みの間にルーナが覚えた儀式魔法について説明を受けた。

 どうやら彼女は、現夢(うつつゆめ)から繋げる先である共夢(ともゆめ)はすっかり習得したらしい。どれくらい離れた相手に対して使用できるかは試してみないとわからないから、まずはそこを検証するところではあるけど……これは大きい。

 

「夢の中でも勉強ができるなんて! 素晴らしい魔法だわ!」

「……それは、確かにそうなのでしょうけれど、わたくしは素直に同意できないですわ……もっと他にやりようがあるではありませんか……」

 

 二人の感想に、どっちもらしいなぁなんて思う。

 

「あとね、葬魂(そうこん)招魂(しょうこん)も覚えたよ」

「いいよルーナ、最高だよ!」

 

 思わず抱き着いちゃったよね。真顔のまま照れてるルーナは超かわいかったです。

 

 ……葬魂と招魂。これは前にちょびっと触れた、ゴーストに関係する儀式魔法だ。

 葬魂がゴーストをあの世に送る魔法、招魂が死体からゴーストを生み出す魔法になる。どっちも魂に関与する魔法で、これから先の魔法開発に生かせるんじゃないかって思ってた魔法だ。

 

 まあ、普通に生活してる範囲で死体なんて、そうそうあるもんじゃない。実際に招魂を使ってみたくはあるけど、そのためにはちょっと工夫が必要かな。まさか誰か殺すわけにもいかないしね。

 葬魂についても、仮に試すとなると()()()()()って問題もある。魔法界において、ゴーストは一定の権利が保障されてる存在だから……下手に消したら、殺人的な扱いを受ける可能性あるんだよね。

 

 そう説明したら、秒でダフネがこう言った。

 

「ビンズを消しましょう」

 

 わたしは大賛成だけど、他のメンツがぎょっとしたのは言うまでもない。

 

「ちょ、ダフネ?」

「血の呪いについて調べる手がかりがあるかもしれないと思っていた、わたしの純真な期待を返してほしいですのよ。リンから日本の魔法史学を聞いて、改めてそう思いましたわ。あいつの授業はほぼ無意味ですし、むしろ害でしょう。消しても誰も困らないでしょうし」

「待って待ってダフネちゃん、気持ちはわかるけどいきなりはまずいよ。そういうのはちゃんとアリバイを作って……」

「リン!? 今しれっと殺害予告してるのわかってるかしら!?」

 

 まあそう言いつつ、抜け道についてアイディアがあるから、うまく行けばどこにも被害出さずに済ませられると思うんだけどね。

 

 と、そんなどたばたもありつつ。どんどん悪化していく天気に反して、道中は平和な時間が過ぎていった。

 主な話題は、このメンバーだと日本になりがちだ。さすがに伊勢神宮でのできごとは、古代魔法にあまりかかわりのない人がいるところで言うわけにはいかないけどね。

 

 ルーナもいつかは日本に来て、本格的に儀式魔法を勉強したいって言ってる。わたしとしても大歓迎だから、いつでも案内すると約束した。

 

 あとは、ルーナにあげた蓄音機を取り出してみんなでマグル界の歌を聴いたりもしたね。

 予定通りビートルズのレコードをプレゼントしたんだけど、その予定を立てたときよりだいぶお金に余裕があったから、他にもいろいろ渡してるんだ。レコード以外にもボイトレの本とか。

 

 音楽に国境はない、ってのは本当みたいで、日本の曲なんかもいくつか紹介したんだけど、結構好評だった。マグル文化にだいぶ親しみ始めてるダフネたちも、素直に楽しんでくれて何より。

 

 あとそう、音楽と言えばなんだけど。曲と一緒にルーナが歌ってくれたんだけどさ。

 いやあ、ルーナすごいよ。めちゃくちゃ歌うまくなってたし、声も出るようになってた。

 

 きっとすごい練習したんだろうね。アストリアがアイドルに脳を焼かれたファンの顔してた。

 

 ただその、元来美少女のルーナにしっとりと「Killer Queen」を歌われると、なんか……その、だいぶえっちだなって……。

 

 ところでハーミー? ダフネもだけど、なんでサビの部分でわたしを見るの? 誰が女殺しの女王様だって?

 まあ指摘されたらされたでどうリアクションすべきか悩ましいから、突っ込まないけどさ。それはそれとしてため息交じりに首を振りあうの、完全にそういうやつ扱いじゃん。

 

 その通りだろって? うん、まあ、うん。

 

「でも好きなのよね……」

「ええ、悔しいことに……」

 

 わたしもだよ♡ いっぱいちゅき♡

 二人とも末永くよろしくね♡

 

「……速度が落ち始めたわね。そろそろ降りる準備しなきゃ」

 

 おっと、そうこうしてるうちに、どうやら今年度最初の原作イベントが始まりそう。

 

 窓の外を見れば、まだホグズミード周辺の景色じゃない。にもかかわらず列車が速度を落としてるってことは、そういうことだろう。

 原作通り、魔法省はシリウス・ブラックを逮捕できてないからね。ディメンターたちが来るんだ。

 

「おかしいですわね……まだホグズミードは見えませんわよ?」

 

 ダフネが雨が激しく打ち付ける窓に顔を近づけて、外を見ながら首を傾げてる。その隣で、アストリアがおんなじ動きをしてる。かわいいね。

 

 だけど、和んでる場合じゃない。わたしは既に杖を抜いて、身構えていた。

 そんなわたしを見て、首を傾げながらもハーミーも杖を抜いた。わたしに従うような形で、ルーナも。

 

 そしてその直後、列車が完全に停止するのと同時に明かりが消えた。途端に周りが暗くなる。

 

「「ルーモス!」」

 

 即座にハーミーとルーナが杖先に光を灯した。わたしも同じく……はせず、魔眼を解放してレベリオの才能拡張をしつつ、実際にレベリオを展開する。

 

 夏休み中に、レベリオの才能拡張は試してる。どれくらいわたしのリソースを使うのか、効果がどれくらいかはわかってる。今はこの列車の大部分とその周辺が、わたしのレベリオの効果範囲だ。

 

 だから視えた。列車の中に、ゆらゆらと揺れる人型に近いけどそうじゃない、黒い光がいくつも見える。

 

 黒。初めて見る反応だ。普通、赤か青か黄なんだけど。

 ってことはつまり、ディメンターはそれらのどれでもないってことなんだな。そりゃ普通の魔法じゃどうしようもないはずだ。

 

「お、お姉さま……なんだか寒いのです……」

 

 列車内に、冷気が入り込んできてる。

 気象から来るものじゃない。死の気配が伴ってる冷気だ。生き物にとって恐怖を呼び起こす、毒とも言える冷たい気配。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。無性にイラっとする。こいつらに、死を侮辱されているように感じてすごい腹立つぞ。

 

 ……言葉にしてから思うけど、死を侮辱されてる感じってなんぞや? 自分でもよくわかんないけど、なんとなく魂を不逞に扱うことへのいら立ちって感じがする。

 これもやっぱり、わたしがイザナミ様の似姿だからなんだろうな。こんなにはっきりイザナミ様を感じるのは、初めてだけど。

 

 あと、腹立つ以外の実害は一切ない。体調は普段通りだし、恐怖なんてみじんも感じない。うーん、さすが神様スペックってところか。

 

 とはいえ、それがなくってもわたしは先頭に立っただろう。今この中でディメンターに対処できるのは、守護霊の呪文を習得してるわたしだけだからね。

 

「みんな、下がってて。ここはわたしに任せて」

 

 震え始めたみんなに、できるだけ優しく声をかける。きっとわたし以外の全員が、既にディメンターに近づいたとき特有の恐怖を味わい始めてるはず。

 

 ディメンターからもたらされる恐怖は、根源的なものだ。特に、恐ろしい体験をしたことのある人間にはこれがよく効く。たとえば、両親を既に亡くしているグリーングラス姉妹とか。

 真っ青を通り越して白い顔のダフネが、ガタガタと震えてる。そんな姉を、ペットのシロと一緒に抱きしめるアストリア。ハーミーですら、彼女たちを気遣う余力がない。

 

「か、神様……あ、あたしも一緒に」

「わたしなら大丈夫。ルーナ、わたしの荷物の中にチョコレート系のお菓子がたくさん入ってるから、それをみんなに分けてあげて」

「う、うん。任せて」

 

 例外は、わたしへの信仰心で正気度ロールに成功したらしいルーナだけだ。そんな彼女でも、守護霊の呪文が使えない以上はディメンターとの戦いにはついてこれない。

 

 だから彼女には、わたしが入学前から愛用してるショルダーバッグからチョコレート出して、みんなに分けるように指示を出しておく。

 

「頼りにしてるよ、ルーナ」

「……任せて」

 

 わたしの期待に応えようと、力強く頷くルーナのかわいさよ。

 

 それにしても。わたしの大事な人たちをここまで怯えさせるなんて、許せるはずないよなぁ!?

 

「エクスペクト・パトローナム!」

 

 わたしは怒りを込めて、呪文を高らかに唱えた。すぐさま杖先から、銀色に輝くわたし……じゃなくてイザナミ様を写し取った守護霊が出現する。

 

 直後、扉が開いて一体のディメンターが顔を出した……瞬間。

 

 その顔……顔? があるだろう辺りに、守護霊の拳が思いっきり突き刺さった。

 まったく予期してなかっただろう一撃に、吹き飛ぶディメンター。列車の壁にぶつかり、大きくよろめくディメンター。

 その眼前に仁王立ちして、指の骨を鳴らす仕草をするわたしの守護霊。

 

 ……えーっと。えっと、ちょ、ちょっと待とうか。それはだいぶ想定外っていうか。

 

 あっ、ちょ、ディメンターに詰め寄って何する気……って、うぉわ、顔わしづかみ。ま……待って。待っ……待てって言ってんの!

 

 え? しゅ、守護霊くん……? あの、ほんと、君……あの、それ……普通にハメ技とかそういうやつでは……?

 だってそれ……それ、あれじゃん。どう見ても、アレだよ!?

 

 守護霊がぁ! (顔面を)捕まえてぇ!

 守護霊がぁ! 画面端ィ(の壁にたたきつけ)!

 守護霊がぁ! バースト(反撃)読んでぇ(回避)!

 まだ入るぅ(まるでオラオララッシュ)!!

 守護霊がぁ!! っつ近づいてぇ!!

 守護霊が決めたぁぁーーっっ!!(えぐりあげるアッパーカット

 

 そして床に倒れ込むディメンター。動かないディメンター。

 

 嘘だろ。こいつ、ディメンターを完全にノックアウトしよった。

 確かに守護霊って、ディメンターを撃退する唯一の手段だけど……こんな風にぶちのめせるわけじゃない……はず……なんだけど……。

 

 困惑するわたしたちをよそに、守護霊はゆっくりとわたしに振り返った。

 そして突きつけられる、勝利のドヤ顔ダブルピース。それはさながらキメポーズのようで……どこからともなく試合終了の音が聞こえた気がした。

 

「……いや、いえーいじゃないが」

 

 思わずツッコんじゃったけど、うん。これアレだね。

 

 こんなの守護霊じゃない。守護神だよもう。

 




神 降 臨
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。