才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
大混乱のスリザリン寮だったけど、ひとしきり落ち着いたら出てくるのは「本当にこいつは男なのか?」という疑問。
これに対して、ニコ殿下がおちんちんを見せることはさすがになかった。でも女子寮に進入しようとしてはじき出されるっていう、男じゃないと起きない現象を起こしてくれたので、男であることが確定した。
ついでにもう一回、スリザリン寮内は大混乱だ。ダイコンランです、ダイッコンッラーンです。
それでも信じないって言ってる人がかなり多くいたけど、わたしの目は吹っ飛ばされた直後にスカートの中にある古き良きしまぱんをバッチリとらえたので、彼は男で間違いないと思う。ちゃんとふくらみがありましたのでね、ええ。
まあそれはともかく、あと問題になってくるのはニコ殿下の性自認だろう。ふとした瞬間言動の端々ににじみ出てる立ち居振る舞いは、どう見ても女の子なんだけど……世の中にはハードなプレイの竿役を担う男の娘ってジャンルもあるしなぁ。
はてさて、ニコ殿下は心まで女の子なタイプの男の娘なのか。それとも心はバッチリ男なタイプの男の娘なのか……。
前者だとしたら、男子寮にいるのは危ない気もするけど、うーん?
「驚きましたわ……まさかあの見た目で男性だなんて」
「まあそんなこともあるよね」
「驚いてませんわね……日本では珍しくありませんの?」
「まさか。ただ、そういう子が出てくる漫画とかはあるからね。概念を知ってるっていう慣れはあるよ」
「……日本って、すごいですわね……」
「多様性の国って言ってほしいなぁ」
ともあれ、地獄絵図のスリザリン寮を抜け出したわたしとダフネは今、そんなことを話しながら秘密の部屋への通路を歩いていた。
早速ルール破ってんのかよ、と思われるかもしれないけど待ってくれ。今はまだ消灯時間じゃない。
「それにしても……本当にいいのですか? タイムターナーをいきなり勉強以外のことに使うだなんて」
「だって使ってみたかったでしょ?」
「ふふふ、もちろんですわ」
わたしのからかうような確認に、ダフネはにまりと笑って応じた。
そう、わたしたちは早速タイムターナーを使って、過去に来てる。
今はまだ、組み分けの儀式が始まった直後くらいの時間。生きてる人はみんな大広間に集結してて、わたしたちを気にするものは誰もいないからね。
なんでそんなことをしたかって言えば、まずはタイムターナーを試したかったってのが一つ。これは効果を実感するのもそうだけど、魔眼で視たかったってのも含まれる。
時間に関する魔法も気になってたから、少しでも多く解析する機会がほしかったんだよね。
まあめちゃくちゃ複雑かつ緻密な魔法で、一回視ただけじゃほとんどわからなかったんだけど。選択科目を全部受講してる間は使えるわけだから、長い目で見ていこうと思ってるところ。
それから理由はもう一つ。こっちが大きいんだけど……。
『開け』
いつものスリザリンの扉を開いて中に入れば、そこにいるのはそう。
『イシュカー! 会いに来たよー!』
とぐろを巻いて一人読書にいそしんでいた大蛇。バジリスクのイシュカだ。
彼女はわたしの声にびっくりして顔を向けてきて、ちゃんとここにわたしがいることに気づいてもっとびっくりした。
『……っ、なん、えぇ? 今は組み分けの儀式の時間じゃろ。なんでこんなところに……』
『イシュカに会いたかったから! 久しぶりー!』
わたしはそんな彼女に突撃すると、その瑞々しい鱗に覆われた胴体に抱き着いた。
『……ば、バッカじゃないのか貴様……。だからってそんな、わざわざ組み分けの儀式を抜け出すやつがあるか愚か者』
『大丈夫だよ。あっちにはあっちで、わたしたちちゃんといるから』
『はあ? 何を抜か……まさか、タイムターナーか? な、なおさらじゃろ!? 貴重品の極みぞ!? 妾みたいな危険生物に会うために使っていいもんじゃないじゃろ!』
『相変わらずまじめだなぁ、イシュカは。それに、いちいち悪ぶらなくっていいんだよ。イシュカは危険なんかじゃないもん。いたずらに暴れまわったりしないって、みんなちゃんとわかってるんだから』
ふふん。わたし、わかってるんだぞ。さっきわたしを認識した瞬間、一瞬だけどイシュカ、すごく嬉しそうな顔したでしょ。
それに、バカじゃないのかとか言いながら声が弾んでる。蛇語だからわたしにしかわからないけど、逆に言えばわかる人にはすぐにわかるくらいには喜んでるんだから、もっと素直になればいいのに。
んふふ、照れ屋さんなんだから。寂しかったんでしょぉ?
かーわいいんだぁ。そんなイシュカのことが、わたしは大好きだよ。
うーん、このすべすべした肌触り。人肌とはまた違って、だけどこれもまたいいものだ。
『まったくもう……。……で、ええと、確かそっちはダフネじゃったか。大方巻き込まれた口じゃろ?』
鱗に頬ずりするわたしにため息をつきつつ、そのまま尻尾でそっと身体を包んでくれたイシュカがダフネに顔を向ける。
その顔には目隠しはないけど、オンオフが可能な邪視がダフネを襲うことはない。ダフネもそれがわかってるから、わたしの通訳を受けてすぐ、ひるむことなくイシュカに応答した。
「ええ、その通り。お久しぶりですわねイシュカ。現代の英語はわかるようになりましたか?」
『おう、大体覚えたぞ。早口でしゃべられるとまだ少し危ういときはあるが……貴様の喋り方はいいな。聞き取りやすくて助かるのじゃ』
「ふふ、光栄ですわね。わたくしも蛇語ができればいいのですが……」
『こればっかりはほぼ生まれ持った才能次第じゃからなぁ』
わたしの通訳を挟みつつ交わされる会話に、よどみはない。どうやら申告通り、イシュカはばっちり英語を習得できたみたい。
直前まで彼女が読んでた本も、よく見れば魔法史の授業で使われてる教科書だった。リスニング、リーディングともにばっちりってところか。めちゃくちゃ頭いいなぁ。
対するダフネのほうも、イシュカに対して一切気後れしていない。流れるようにイシュカの身体に抱き着いて、そのままわたしと一緒にくるりと長い胴体に包まれたかと思えば、ひょいと持ち上げられてイシュカの胴体の上に腹ばいになる。
さすがにダフネまでロールプレイはしないよ。だから大トトロとメイちゃんスタイルだ。わたしは引き続き締め付けてもらいたいところだけど、寝そべるのも悪くない。
こうすると、より近くで二人を感じられるんだよね。イシュカは身体が長いから、この状態でも上からのぞき込んでもらえれば至近距離に彼女を感じられるしね。
だから快感はないけど、満足感はちゃんとあるの。スキンシップ、いいよね。すき。
まあそんなダフネも、初対面のときはめちゃくちゃ緊張してたけどさ。話してみれば、イシュカが真面目でいいリアクションするいい子ってことはすぐわかるからね。打ち解けるまでそんなに時間はかからなかった。
とはいえ友達どうこう以外にも、二人を会わせたのにはちゃんと理由がある。
何せ、イシュカはスリザリン時代から生きてる。10世紀前のことを知ってる生き証人なわけで、現代には伝わっていない知識を持ってるかもしれない。
血の呪いを解くために、そういう失われた知識が必要になるかも……って思ったら、紹介しないって選択肢はなかったんだよね。
進展があったかって言うと、微妙なところではあるんだけど……でもそれは、昔のこと過ぎてイシュカが覚えてないから。記憶を映し出す八咫鏡を入手した今、そこらへんの問題は解決できるはず。これからもちょくちょく時間を見つけて遊びに来たいところだ。
そのときは、ハーミーも連れてこよう。呪いを解く手がかりを探すためにってのもそうだけど、勉強熱心な彼女ならホグワーツ創設当時の話は是が非でも聞きたいだろうしね。
一応イシュカのお世話は今学期もわたしとハリーで交代交代って話になってるけど、別に当番のタイミングじゃなくっても顔出すくらい構わないでしょ。友達に会いに行くのに、大した理由なんているもんか。
……あ、ちなみに操られてたイシュカに襲われてるさなかに壁一枚挟んだ場所でえっちし始めたことに関して、ダフネが追及されたことはない。
えっちのときは基本わたしがネコ。大きい声を出すのも基本わたしだ。だからあのときも、イシュカが聞いた最中の声はわたしのものばっかりなわけ。
おかげでえっちの相手がダフネってことを、イシュカは知らないままだ。相手が同性ってことは察してるけど、そこどまり。
だからダフネがイシュカにお説教されることはなく、済んでるってワケ。これこそまさに、不幸中の幸いってやつだね。
まあそれはともかく、今日はそういう真面目な話はしないつもり。久しぶりに友達にあったんだから、積もる話はいっぱいある。この夏の間、何があったのかをメインテーマに、楽しくだべるといたしましょう。
あ、あとイシュカにもお土産があるんだよね。お口に合うかどうかはわからないけど、お酒を買ってきたんだ。ご丁寧に蛇系の魔法生物向けのやつが作られてたから、それを買ってきたの。
ちなみにチョイスは、お店で飼われてた蛇くんたち(あからさまに魔法生物)のおすすめを三種類だ。うわばみって俗語がある日本では蛇は酒を飲むものとされてるんだけど、どうやらこの言葉は正しいらしい。
幸いイシュカのお口にも合ったようで、すごく喜んでくれた。
まあ、うっかり酔っぱらって邪視や毒で万が一にも誰かをケガさせるわけにはいかないからって、自制してたけど。そういうところ、ホントに真面目だよねイシュカ。
『そうそう。妾も貴様に……土産、というわけではないのじゃが、ちょっとしたプレゼントがあってな』
受け取った酒瓶を、寝どこになってるスリザリンの像の中にいそいそとしまったイシュカは、そう言いながら入れ替わりでいくつかの瓶を持ってきた。
とりあえず受け取ったけど、中に入ってる液体は明らかにヤバそうな黒。プレゼントって言うには、ちょっと過激すぎないかしら。
『アクロマンチュラの毒じゃ』
『あなたは最高だよ、イシュカ!』
が、正体を教えられて即座に手の平を返すわたしです。
改めてハグするわたし。まんざらでもなさそうに鼻を鳴らすイシュカ。かわいいね。
一方ダフネはというと、その正体を聞いて思いっきり引いていた。それはそう。
「あ、アクロマンチュラの毒? なんでそんなものがこんなにたくさん……」
『夏休み中、連中をぶち殺す仕事に従事しておってな。その副産物というわけじゃ』
イシュカはそう言ったあと、えっへんと得意げに胸を張りながら夏休み中の成果について語ってくれた。ダフネはなんで禁じられた森にアクロマンチュラが大量に住み着いているのかについて首を傾げてたけど、それはともかく。
禁じられた森の中に築かれた、アクロマンチュラのコロニー。その殲滅のためにイシュカはダンブルドア先生と、それから特別ゲストのニュート・スキャマンダーの三人で何度も森に出入りする夏休みを過ごしたらしい。
ニュートはもう引退して一線を退いてるけど、母校のすぐそばで大繁殖してるアクロマンチュラの群れは見過ごせなかったみたいだ。まあ、ダンブルドア先生に呼ばれて秒で来たらしいから、1000年生きるバジリスクに会いたかったってのが理由の大半だとも思うけど。
ともかくそんなわけで、ドリームチームで始まったアクロマンチュラ狩り。主戦力はもちろん彼らの天敵であるバジリスクのイシュカで、その前評判通り去年度は大勢を畏れさせた死を招く邪視が、彼らには大層有効だったらしい。
死の邪視が正常に機能した場合、アバダと同じく死体に異常は出ない。おかげで多くのアクロマンチュラを無傷のまま殺すことに成功し、損傷のない死体からは毒が大量に手に入ったって寸法だ。
『貴様、欲しいって言っとったじゃろ。ダンブルドアに頼んで、ちょこちょこっとな』
『覚えててくれたんだ? 嬉しい……! 大好き!!』
『ふ、ふん、どうせ妾には必要ないものじゃ。有効活用できるやつに渡すほうがいいじゃろっ』
「……通訳なしだと何を言ってるかはわからないですけど、それでもハーマイオニーに報告すべきことが増えたことだけはわかりますわね……」
ホントにね! これは大きな成果ですよ!
うふふ、隅から隅まで解析しよう。きっと何かに使えるはずだ。
とはいえ、すべてのアクロマンチュラがただ無双の雑魚キャラみたくやられてたわけじゃなくって、追い詰められた彼らの多くは決死の反撃をしたという。いかにダンブルドア先生とニュートがいたとしても、さすがにイシュカも無傷ではいられなかったらしい。
『えっ、大丈夫なの?』
「ケガは……見たところ残っていないようですが」
『ニュートが手を尽くしてくれたんじゃよ。おかげで見ての通り、今は万全じゃ!』
人間なら力こぶを作るような感じで、イシュカは長い尻尾を波打たせた。いちいち仕草がかわいいの、ずるいんだよな。
『そんな状況じゃったから、毎日出撃というわけにはいかんかった。不甲斐ない限りじゃ……。おかげでまだ何匹か森に残っとるはずじゃが……新学期が始まってしまったからのう。次の夏まではお預けじゃろうな』
「まだいるんですの……嫌すぎますわ……」
本当にそれな。
……あ、それとちなみになんだけど。
『そういえばいつだったか勝手についてきて、アクロマンチュラどもの波みたいな群れに飲み込まれて聖マンゴに担ぎ込まれたあの男、どうなったんじゃろか。確かロック……ロックなんちゃらっていう、やたら顔のうるさいやつ』
「……ロックハートの辞職理由って」
「うん……そういうことなんだろうね……。新聞に詳しいことが載らないはずだよ」
「禁じられた森でアクロマンチュラの群れに襲われました、なんて知られたらとんでもないことになりますものね……」
ダンブルドア先生とニュートが揃って森に出撃したのを見て、偉業の匂いをかぎ取ったんだろう。
どっちも多大な功績を上げた英雄だ。彼らについていけば、自分も彼らみたいな英雄により近づけるって思ったのかな。
なんていうかあれだなぁ。著作の内容から察するに、ロックハートはいわゆる勇者的な偉業を達成したいのかなぁ。
下級生に人気の防衛術教師で満足できなかったのは、そういうところなのかもしれない。去年度あいつがやった功績って、どっちかっていうと学者的なことだし。
お察しの方もいるかもしれませんが、ダフネが言う「ハーマイオニーに報告すべきこと」とドMが認識してる「報告すべきこと」の内容には認識のズレがあります。