才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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13.選択科目のあれこれ 上

 イシュカとの楽しい時間をすごしたわたしたちはその後、厨房に寄り道してから元の時系列に戻り、すぐさま寮で就寝した。

 

 そして翌朝。もはや慣れたもので、純血の新入生のお世話を(なぜか今年からパンジーと一緒に)しながら過ごしていたところに、いつも通り新聞が届けられた。でもって、ほぼ同時にざわめきが起きた。

 

 何事かと思ってわたしも新聞を見てみれば、一面には「日本のプリンセスがホグワーツに!」って見出しがデカデカと飾られていた。写真はホグワーツ特急に乗り込みつつ、カメラ目線で皇室スマイルを浮かべるかわいらしいニコ殿下をばっちりとらえたものが採用されてる。

 まあその子は女の子(プリンセス)じゃないんですけどもね?

 

 いやていうか、写真の完成度たっか。露出少ないだけでこれ、グラビアって言い張れるんじゃない? こんなの新聞の一面記事に載せるなよ。

 見なよ、新聞購読してるスリザリン以外の男子たちを。あいつらの大半、スクラップノート作る勢いだぜ。新聞を購読してない男子なんて、めちゃくちゃ悔しがってる。

 

 そしてその様子を、スリザリンの生徒たちがかわいそうなやつを見るような目で見てる。

 

 うん。今のところ、ニコ殿下が男の娘ってことを知ってるのはスリザリンだけだもんな。あの賑わいがいつまで続くのか、楽しみだ。逆にそれでもいいってブレーキをぶっ飛ばすやつも出てくるだろうけど。

 

 まあそれはともかく。

 

 いつも通り隣にいるダフネと身体を寄せ合う形で一面記事を読んでみれば、内容としてはおおむね昨夜知った通り。

 

 記事が言うには、ニコ殿下がホグワーツに来ることになったのは日英魔法界の交流のためらしい。そのためにわざわざ宮家の一つがイギリスに来て、臨時とはいえ家まで構えたっていうんだから、すごい力の入れようだ。お金もめちゃくちゃかかってそう。

 

「国際親善の一環、ですか。無難なお題目ですわね?」

 

 記事をざっと読み終わったダフネが、半目でわたしを見た。信じてないです、って書いてある顔だ。

 

 実際、その可能性は結構あるよね。

 だって本当に国際親善だけが目的なら、もっと早くから話題になってるはずでしょ。木寺宮家の渡英が、新年度まで一切明らかにされなかったのはおかしい。噂すらまったく出回ってなかったんだから、どう考えてもヘン。

 これはギリギリまで秘匿されてたに違いない。あるいは、マジでギリギリになって決まった話なのかもだけど。

 

 だから何かしらの思惑があって、イギリスに来てることは間違いないはずだ。たとえばわたしの様子を見るためとか、そういうのがさ。

 

 いやー、純粋に商売のためとか、そういうのであってほしいなぁ。一応ニコ殿下を念のため魔眼で視たけど特に何もなかったし、本当にそうであってほしい。

 それか、来年度に行われる三大魔法学校対抗試合にマホウトコロも参加したいとか、そういうのならいいんだけど。

 この際贅沢は言わないから、わたしやわたしの好きな人たちが妙なことに巻き込まれたりしなきゃもうそれでいいよホント。

 

 まあ、現時点でそこら辺を判断するのは早いか。こっちから下手にリアクション取って悪いほうに転がっても困るし、当面は臣下としての立場は崩さず適度な距離を維持するしかないかな。

 

 ……ところでこの記事を書いたの、リータ・スキーターでちょっとびっくりしてる。原作での彼女の動向を知る身としては、随分と大人しい記事な気がするんだけど……ひょっとしてなんかやらかし済みだったりする? 

 まあニコ殿下の記事に続く形で、ホグワーツ特急内にディメンターが入り込んだ件について取り上げられてて、国際問題かつ魔法省の大失態ってあげつらってるから、完全に大人しいわけでもないんだけど。

 その件については、実際大問題なのは間違いない。ファッジがこの件をどうするのか、お手並み拝見と行こうじゃないの。

 

 なお、話題の中心であるはずのニコ殿下はまだ起きてこない。そして彼のルームメイトは、既に全員大広間にいる。なんなら一番乗りしてたまである。

 ルームメイトをほっぽって何を、って思われるかもしれないけどどうか察してあげてほしい。そして慈愛の心で見守ってあげてほしい。何せ彼ら、三人が三人ともめちゃくちゃ眠そうにしてたからね。

 

 そう。彼らこそ、またの名をニコ殿下と同室になった哀れな犠牲者たち。すぐそばで、どこからどう見ても清楚な美少女が無防備に眠ってるなんて、思春期男子にとって生き地獄が過ぎる。きっと一晩中眠れなかったに違いない。

 大人なら、酒で一時的に忘れるとかできるんだろうけどね……かわいそうに……。それしか言葉が見つからない……。

 

「……どうしようもなくなったら、スネイプ先生に相談するよう言っとくか……」

 

 とりあえず、こういうときに頼るべきは寮監だ。部屋を変えてもらうのがベストだろうけど、スネイプ先生はポーションマスターだ。ベストじゃないかもだけど、いい感じの薬を調合してもらうって手もあるはずだから。

 

「んもう、みんないけずやわぁ。うちだけのけもんにして、先にご飯に行くやなんて」

「ご、ごめん」

 

 なお彼らは、起きてきたニコ殿下にちくちく言われてものすごく真っ赤になってた。怒りとかではなく、羞恥とか好意とかでだ。

 そりゃな……。文字だけだと嫌味だけど、言葉にそこまで怒りは乗ってなかったし、何よりぷっくりほっぺを膨らませてずいと身体を近づけるニコ殿下のかわいらしいご尊顔を、真正面からたたきつけられたら何も言えるわけないもんね。

 

 ──だが男だ。

 

 朝一から繰り広げられ、恐らくはこの先向こう7年は続く可能性のある光景を憐れむ目で見やりながら、わたしは一時間目の授業に向かうことにした。わしらには救えぬものじゃ……。

 

 ただ、その前にハーミーと合流して、今日の予定についてちょっとだけ話し合う。

 

「ハーミー。一時間目についてなんだけど、2コマ目に受けるのはマグル学にしてほしいの。そのあとはタイムターナーを使わないで、しばらく一緒に行動ね」

「? どうして?」

「選択科目全部取ってるから、何度も午前中をやり直すことになるでしょ。でもお昼ご飯は決まった時間にしか出てこない。わたしたち、内訳は違っても今日は午前中に4コマ受ける予定なわけだけど、ご飯抜きで4コマ連続授業受けて耐えられると思う?」

 

 スリザリンとグリフィンドールで時間割が違うから、この辺りはちょこちょこすれ違うこともある。必須科目も選択科目もいくつかは合同で受けるものがあるけど、全部がそうってわけじゃないからね。

 だけど共通して、時間を何度も遡ってたくさんの授業を受ける必要があるのは変わらない。それをすぐに理解できたハーミーは、一瞬大きく目を見開いた。

 

「……無理ね。一日くらいはなんとかなるかもだけど、毎日ってなると……」

「でしょ。だから追加のお昼休憩が必要になるわけ。ハーミーもそこは一緒でしょ?」

 

 深刻そうな顔をして、こくりと頷くハーミー。原作でもそうだけど、そこらへん想定してなかったっぽいな。

 原作だと、これに加えて途中からハグリッドのアニマルクエストのために追加の調べものとかしてたってマジ? そりゃあハーミーでも完全なオーバーワークってもんだし、実際に限界迎えてパンクしたのも当然だ。

 

 でもわたしがいる以上、そんなことさせやしない。そしてホグワーツでは、助けを求めるものには必ず救いが差し伸べられるのだ。

 そうだね、必要の部屋だね。

 

 まあ細かい話はそこでするということで、今は一旦授業に専念しよう。

 

 ハーミーは今日の一時間目、3つの授業が被ってる。二時間目は1つだけど。

 対するわたしたちスリザリンは、全科目受講した場合の時間割は一時間目、二時間目がそれぞれ2つ被ってる状態だ。あーもうめちゃくちゃだよ。

 

 でもこれについてはどうしようもない。そうなってるものはなってるし、これをどうにかする手段があるからこそそうなってるってのもある。魔法ってのは、本当にできないことはあんまりないのだ。

 

 ということで、一時間目。わたしとダフネが最初に受けるのは、古代ルーン語学だ。

 

 習うのは、ルーン文字を石とか地面とかに刻んで何かを発生させる魔法……みたいな風に思う人もいるかもだけど、残念ながらまったく違う。

 それはもしかしたら、現代日本のオタクの発想かもね。日本のアニメとかには、そうやってルーン文字が使われる作品が結構あるし……っていうか、まさにわたしがここまで何度か使ってる呪符がそういうのだもんなぁ。

 

 だからわたしも教科書見るまでは、古代ルーン語学はヨーロッパ流の呪符的な授業って思ってた。だけどそんな文化、イギリスにはそもそもなかったっていうね。

 

 じゃあ何する授業なんだよ、ってなると思うけど、これが要するに日本でいうところの古文とか漢文なのよ。あくまで昔の本や記録に当たるために必要な知識を身に着けるための、現代ではほぼ死んでる言葉を学ぶ授業なわけ。

 

 どうしてそんなことになったのかと言えば、そもそも文字文化を持たなかったブリテンで最初に普及した文字が、このルーン文字だから。かつてブリテンに住む人々は、ルーン文字を文語に使っていたんだね。

 

 ただ9世紀くらいからは、ラテン文字……要するに現代日本人がアルファベットって言われて思い浮かべる文字に取って代わられる形で、徐々に廃れていった。少なくとも、11世紀の中ごろにはもう完全に使われなくなってるはずだ。

 

 そしてこの文字の変遷は、魔法界にも当てはまる。何せその時代は、マグル界と魔法界に分断はなかったからね。

 

 つまりホグワーツ以前のイギリス魔法界で、魔法に関する文献といえばみーんなルーン文字で書かれてるわけ。

 なんならホグワーツの成立は10世紀後半だから、開校当時のホグワーツの教科書もルーン文字で書かれてるやつのが多い。これは当時から生きてるイシュカに聞いたから間違いない。

 

 わたしはイシュカに翻訳してもらうって手段が使えるけど、普通の人がそんな時代の文献に当たろうと思ったら、そりゃあルーン文字に関する知識が必須になるのは当然でしょ?

 だから、ホグワーツの選択科目に古代ルーン語学を入れる必要があったんですね(構文

 

 とはいえ、日本人でも中高の古文漢文の授業を「なんでこんなのが必要なんだよ」って思う人がそれなりにいるように、ホグワーツでもそう考える生徒は一定以上存在する。それが選択科目なんだから、そりゃあ人気が出ないのも無理はない。

 

 ただわたしたちには、ダフネの呪いを解くっていう大きな目標がある。そのためには古代の文献にだって当たらないといけない可能性がそこそこあるわけで、この授業については乗せられて全科目受講する羽目になる前のダフネも、最初から受講予定だった。

 それはわたしやハーミーもで、だからわたしたちは教室に一番乗りした。

 

 ……ちょっと早く来たのはそういうやる気があふれた結果じゃなくって、ニコ殿下に性癖を歪められる哀れな新入生の姿を見たくなかったからっていうのは、めちゃくちゃ締まらないけどね。

 

*** 

 

「いい授業でしたわね」

「うん、勉強になった。やっぱ独学より先生がいたほうがはかどるね」

 

 いやあ、古代ルーン語学、マジで普通に語学の授業だった。冗談抜きに古文漢文みたいな感じだった。おかげで妙に懐かしさを感じたよね。

 

 前世では大学時代、第二外国語の教授直々に語学の才能がないって喝破されたわたしだけど、今世では違う。イザナミ様から授かったあふれんばかりの才能のおかげで、授業はすべてきちんと理解できた。

 なんていうか、いただいた才能のすごさを久しぶりに実感したよね。これだけ言語ができるようになってるなら、せっかくだし他の言語も覚えたいなぁ。来年度は国外からお客さんも来ることだし。

 

「ええ……それはちょっと……」

「なんでさ」

 

 まあ、ダフネにヤバいやつを見る目で見られたけど。いい目でした。もっとそういう目で見てもらって構わないよ!

 

 と、それはともかくそんな話をしてるうちに目当ての部屋にたどり着いた。隠し部屋ではないけれど、普段人が寄り付くこともない、そんな場所にポツンと存在する部屋だ。

 

「確かにここなら人目にはつかないですわね」

「だね。教えてくれたクィレル先生に感謝しなきゃ」

 

 この部屋を教えてくれたのは、クィレル先生だったりする。彼は昨夜の夕食後、寮に移動する直前にハーミーとダフネそれぞれにタイムターナーを使うのにちょうどいい部屋のリストを持ってきてくれたんだよね。

 どの授業のあとでも使いやすいように、色んな部屋をわざわざピックアップしてくれたのは、素直に嬉しいしありがたい。きっと夏休み中にホグワーツ内をくまなく歩きまわって、色々調べてくれたんだろうな。

 

 それもわざわざ地図つきでだ。クィレル先生いい人すぎるし、普通にすごい。

 何がすごいってこの地図、恐らくわたし以外誰も把握してなさそうな部屋がいくつか記載されてるんだよ。さすがに古代魔法の素質がないと見つけられない、地図の間みたいなところは載ってないけど……それでも十分すぎる。

 

「い、色々せ制約もある道具ですが、ゆ、有意義な品でああることにか、変わりはないです。み、みなさんの勉学が、よ、よきものでありますよう」

 

 とのこと。マジでいい人。彼の人柄に触れれば触れるほど、お辞儀死すべし慈悲はないって気持ちを新たにするんだよね。

 

 まあそれはそれとして、クィレル先生がピックアップしてくれた部屋の中の一つは、まず間違いなく生徒には見つけられないだろうから、えっちな部屋に改装しようかなって思ってるわたしもいるんですけどね。

 それはそれ、これはこれって便利な言葉だと思いませんか。

 

「では()()ますわよ」

「おっけー」

 

 それはともかく、わたしたちは早速2時間分過去へ遡った。次に向かうのは、予定通りマグル学だ。

 

 はてさて、マグル界との距離が近い日本魔法界を見てきたわたしたちにとって、満足できる内容の授業なんだろうか。

 そんなことを考えながら、わたしとダフネは教室に一番乗りした。ほとんど同じタイミングに、ハーミーも合流してきた。

 

「ハーミー、こっちこっち」

「リン! ダフネ!」

 

 そう、マグル学は合同授業だ。それも全寮合わせての授業になる。

 これは単純に、マグル学を受講する人間が少ないからだね。魔法族の大半はマグルに興味がないし、マグル生まれにしても今さらマグル界の何を学ぶんだって思うんだろう。

 

 わたしにしてみれば、魔法族の視点でマグルを見るのは絶対に面白いって思うんだけど……この辺は感覚の違いだろうなぁ。

 特に大体の純血旧家とか、マグルなんて下等種族くらいに見下してるから余計取らない。せいぜい12フクロウを目指す人が、義務的に受講するくらいか。

 

 ちなみにマグル学以外にも、人気がなくて受講者が少ないからこそ合同になってる授業はある。さっき言及した通り、古代ルーン語学だ。

 

 逆に占い学や魔法生物飼育学は、受講者が多いから合同にせざるを得ない科目だ。合同にしたうえでタイミングを分けないと、満足に授業ができないんだね。

 この辺りは、科目によっては受講者がいない年もあるだろうから仕方ない部分もあるかなぁとは思う。

 

 ただもう一回言うけど、あーもうめちゃくちゃだよ。ほんと、もっとやりようあっただろって思っちゃう。

 

 イシュカなんて、授業のために生徒へタイムターナーを貸し出すことについて、

 

『もっとしっかり授業の時間を調整せんか! そんな危険物、子供に持たすでないわ!』

 

 ってぷんすかしてたからね。圧倒的正論。蛇に正論をかまされるホグワーツェ……。

 

 とはいえ、どっちにしてもわたしたちにとっては好都合だ。寮が違うと授業の時間割も違うから、必要の部屋に行く前にどう合流するかがネックなんだけど、合同授業があればその辺りをスキップできるからね。

 ふふふ、二人の驚く顔が今から楽しみだなぁ!

 




ここから少しの間、授業関係の話に触れつつタイムターナーを使ったドMの新しい学園生活を紹介していく感じの話が続きます。
ドMのあたおかエピソード少な目な、ちからをためている回に・・・なってる、はず、です・・・たぶん・・・。
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