才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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19.招く、葬る

 儀式魔法、招魂(しょうこん)のすべてを記憶に焼き付けるためにメモ帳を手に取ったわたしの前で、ルーナが舞を踊り始める。

 

 手にした神楽鈴を一定の間隔で鳴らしつつ、緩やかに舞うルーナの姿は美しかった。

 踊りに応じて彼女の身体から魔法力が解き放たれ、それが音と動きに合わせて足元の魔法陣を励起させていく。起動に合わせて魔法陣がかすかに燐光を放ち、地下聖堂をほのかに照らす光景はまさに「神事」だ。

 元から浮世離れした雰囲気を持つルーナがそれをすると、神秘的と言うしかない。美しい光景に、この場に居合わせるわたしたちの誰かが感嘆の声を漏らす。

 

 そういう意味でも、ルーナに儀式魔法の担い手になってもらう選択は大正解だったと言えるだろう。

 

 ……儀式魔法はその性質上、儀式を完了させないと魔法として成立しない。魔法としては時間と労力、捧げものに使う金銭的なコストなどなど、費用対効果に見合わない魔法がほとんど。だからこそ廃れたわけだけど、中には命脈を保ってる魔法もある。

 

 でも今ルーナがやってる魔法は、そうじゃない廃れた魔法の一つ。死体に魔法で干渉し、現世に残された魂の痕跡を世界に焼き付けることでゴーストを人為的に生み出す儀式魔法。招魂とはそういう魔法だ。

 ゴーストを鎮め、あの世へと送り返す儀式魔法、葬魂(そうこん)とはセットの関係。魔法界の用語で言うところの反対呪文で、どちらもかつて都落ちした公家の魔法族が生み出した魔法になる。

 

 この魔法を今こうやって見ていると、なんだか運命めいたものを感じる。

 なぜならこの二つの儀式魔法の本質は、今ルーナがやっている通り神への祈りであり、死と魂という、人が関与するには分不相応とも言えるものに踏み込む魔法。

 

 そして死と魂とは、日本においてイザナミノミコトがつかさどるものだ。実際、葬魂と招魂の中には彼女に向けた祝詞が存在する。

 

 ……まあルーナはそこ、わたしの名前に置き換えてるんだけどね。たぶん普通はそれやると魔法は失敗するんだと思うけど、わたしのことだからなぁ。たぶん成功するんだろうなぁ。

 だってイザナミ様に直接謁見した経験があって、イザナミ様の温情で第二の生を授かって、イザナミ様の似姿を授けられてこの世界に生まれたのがわたしだもん。直接わたし宛てにしても、まあ発動するだろうなっていう謎の確信がある。

 

 あまつさえ、この魔法がわたしにとって大切な人の呪いを解くカギになるかもしれないとなれば、そりゃあ運命の一つや二つ感じるってもんよ。

 

 なんてことを、魔眼(もちろんレベル1)で儀式を見守りながら思うわたしです。

 

 その魔眼の視界の中では、実に興味深い光景が広がってる。今までまったく視たことのない構造の魔法だ。同じ儀式魔法って分類であるはずの現夢(うつつゆめ)とも全然違う。

 共通する部分もないわけじゃないんだけど、マジで最低限。つまりそこ以外のすべてが、魂に関与する効果を生み出してるはず……ということで、わたしの目はルーナにずっと向いてるけど、魔眼としては魔法の構造部分に釘付けだ。できれば魔眼レベル2で視たかったところではあるけど。

 

 とはいえ、これはまだ招魂だけ。早く葬魂とも見比べたいな……と思い始めたところで、無事に魔法は完成された。舞を締めくくる言葉を一言告げるとルーナから魔法力が注がれ、魔法陣が完全に起動した。

 すると魔法陣から魔法の力があふれ、魔法陣の前に安置されていたネズミの死体(スキャバーズじゃないよ)を包み込む。

 

 そして数秒後。ネズミの死体から半透明のネズミがふわりと浮かび上がった。

 よし、成功。人間以外にも魂があるはずだから、いけるって踏んだんだけど予想的中だ。我ながら冴えてるぜ。

 

 一方空中で起き上がったネズミのゴーストは、しばらく状況を確かめるように周りをきょろきょろする。

 だけどすぐにわたしを目にとめて──なんとわたしに一直線に近づいてきたかと思えば、周囲を楽しそうに駆け回り、挙句の果てにわたしの肩に昇って頬ずりをする始末。

 ゴーストと言えばわたしを避けるものなだけに、これにはハーミーもダフネもびっくりだ。

 

 かくいうわたしもびっくりはしたけど、なんでそうなったかっていう推測はできるからそんなに驚きはしなかった。

 だってルーナ、先にも言った通りイザナミ様じゃなくて、わたしに向けて祈り捧げてたもん。通常のゴーストとは違う挙動をしても、それくらいならあり得るかなって感じだよね。

 

 あと、びっくりしたのは単純にもっとびっくりしたものがあるからでもある。

 

 というのも、ネズミのゴーストが発生すると同時に、その下に真っ黒な穴みたいなのが空いて、何か光のようなものが吸い込まれていったのね。

 で、直後わたしの頭上に同じような穴ができて、光のようなものが降り注いできて。わたしの身体に取り込まれたんですよね。

 

 しかもなんか、ちょびっとだけど力が増したような感じがするんだよ。そりゃびっくりするってもんでしょ。

 

 おまけにこの謎の光、わたしにしか見えてないっぽい。誰もまったく反応してないから、たぶんそう。

 

 ……どっちだろう。古代魔法関係か、イザナミ様関係か。

 モノとしての見た目だけなら、古代魔法関係に見える。古代魔法ゲージためるときに吸い取る、白い光によく似てたから。

 

 でも直感として、違うだろうなって確信もある。なんていうか、力の質が違うんだよなぁ。リンゴと梨くらい違う。

 

 ……まあ、今はそこは考えないでおこう。ともかく、招魂は無事に成功だ。

 

「神様、どうだった?」

「うん、ばっちり。きちんと魔法も成功してるし、思ってた以上にうまくできてたよ」

 

 この言葉におべっかは一切ない。高精度の魔法が発動したからこそ、あのネズミのゴーストは人間のゴーストにも劣らない存在感がきちんを確保できてるんだからね。

 

「がんばったね、ルーナ。さすがわたしの巫女だね」

「ン……いっぱいがんばった。ぇへ」

 

 よしよしと頭をなでてあげれば、ルーナは嬉しそうに微笑んだ。その顔には他にも、およそ3分近い神事をやり切った疲労感を覆うようにして、やり切った達成感と高揚感がはっきりと浮かんでた。

 そんな彼女によくできましたと褒めてあげれば、それはそれは嬉しそうにはにかんでくれるものだから、好きになるに決まってるんだよなぁ。はー、かわいいかよ。

 

「……でも、まだ全部は終わってないよ」

「そうだね。次は葬魂を見せてくれるんだよね?」

 

 わたしの問いにルーナはこくんと頷いて、改めて二つ目の魔法陣の真ん中へ戻っていく。

 彼女に応じるようにして、わたしはゴーストのネズミくんに所定の位置につくように声をかけた。好感度がカンストしてるのか、怯えることなく素直に従うネズミくん。

 

 何気なくやったけど、これわりとガチにすごいのでは? ゴーストにこうやって指示まで出せるとか、諜報活動とかにめちゃくちゃ有用では?

 

 なんてことを考えるわたしをよそに始まった二つ目の儀式魔法、葬魂は招魂と対をなすだけあって、儀式の内容的にも魔法の構造的にもかなり似通っていた。杖魔法でも反対呪文は構造が似てるんだけど、儀式魔法でもそれは当てはまるらしい。

 似てるけど完全には同じじゃない。むしろ真反対な部分もあるからこそ、魔法の解析がしたいわたしとしては参考になりまくりだ。魂に関わる魔法の知見が高まっていくぅー!

 

 何はともあれ儀式はつつがなく終わり、魔法は完成したわけだけど……ここでもさっきと同じ現象が起きた。

 

 魔法が発動しきり、ゴーストのネズミくんが魔法陣に浮かび上がった穴のようなものに吸い込まれて消えたんだけど。その穴が消えると同時にわたしの頭上に同じような穴ができて、そこから何かしらのエネルギーの塊が降り注いできたんだよね。

 わたしの身体に吸い込まれた上に、直後わたしの身体の力が増したのを感じたのも、招魂のときと同じっていう。

 

 今度は身構えてたから、魔眼レベル2を使う余裕があった。もちろん魔眼レベル2は危険だったけど、一瞬だけできればそれでよかったからギリなんとかなった。

 

 で、一瞬とはいえその魔眼レベル2で視たからこそ、何が起きたか理解できた。つまり、わたしはルーナからの信仰を捧げられたんだこれ。

 

 日本における神とは、信仰をよりどころにした存在という解釈がある。大勢の人から信仰を集めればそれだけ強力な神格となり、信仰を失った神格は零落して怪異に至る、的な。今二つの儀式魔法によって捧げられたのは、それが具象化したものだ。

 

 はい、神様案件確定です。わたしの身体は神様の似姿で、ルーナは祝詞の中のイザナミ様に該当するフレーズをすべてわたしに替え歌してたもん。条件は整っている。

 

 つまるところ、祈りを捧げる系の儀式魔法で対象の神をわたしに変えると、わたしに信仰が集まる。今の感じからすると、それは集めたら集めただけわたしの力になる可能性が高い。

 

 なるほど。古代魔法との組み合わせで神としての力というか、才能を拡張することを考えてたけど、神としての才能は本来こうやって伸ばすのか。文字通り、信者が多ければ多いほどわたしの力になるのかも。

 まあ今のところルーナしかいないし、いちいち長い上にコスト割高な儀式魔法を使うのは割に合わないから、伸ばすにしても簡単な話じゃないけど。

 

 何かいい感じに使えそうな魔法って、なかったっけ。あとで調べてみるか。えっちを伴う魔法だとなおよし。

 

「はあ、はあ……どうだった?」

「やっぱりルーナは最高なんだよね! こんな短期間でここまで仕上げてくるなんて! がんばってくれてありがとう!」

「んん……照れるよ」

 

 二回連続の儀式魔法を終えて、疲労困憊のルーナが、わたしの言葉を受けてにこりと笑う。彼女にしては珍しい、満面の笑みだった。コーカソイド特有の白い肌が、運動によって紅潮した顔がまぶしい。

 おまけに長いダーティブロンドはやや乱れてる。そのそばで肌を伝う汗はルーナの様子を普段より健康的に魅せていて、呼吸も現状整ってないとくれば……それはそれはもう、エロい以外の感想があろうか? いや、ない。

 

 そしてわたしの思考は、二つの儀式魔法の感想や考察を話してるハーミーたちをよそに、加速する。

 

 わたしが今以上に信仰を集めたら、どうなっちゃうんでしょう。本格的に神様になっちゃうんだろうか。可能性は正直あると思う。

 なったとしても、わたしにそんな大それたことができるとは思えないけど。せいぜいがエロをつかさどる神様くらいが関の山でしょとも思う。

 

 でもそれはそれで、きっとわたしはおいしく楽しめる。

 前にも言ったけど、っぱ……神様の力を持ったからにはね……やりたいよね……人の子など孕みとうないプレイ……!

 

 うん、そうしよう。もしも本当に神様になっちゃったら、最終的には信仰心の欠片もない人に快楽堕ちさせられて神様の立場から引きずりおろされることを目標にしよう!

 

 いやあ、また一つ人生に目標ができてしまったな!

 生きるって、楽しいね! セ・ラ・ヴィ!!

 




当たり前ですが、祈りを捧げる系の魔法で対象を神様の名前から人間の名前に変えても、普通は発動しません。
ドMが神様の似姿だからこその魔法改造で、だからこその信仰の獲得になります。
直後にえっちに引きずりおろしてもらおうとか考えだすのは、もうなんていうかそういう生態なので・・・。
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