才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
ルーナの儀式魔法お披露目会はその後、三つ目の
いやさ、
そんなのを連続で使ったうえで、さらには現夢までやればそりゃまあどっちもスッカラカンになるよねっていう。
現夢は複数人にかけられる魔法なんだけど、かける人数が多ければ多いほど必要な魔法力は増える。この場の全員にかけようとすれば、その負担は計り知れないわけで……要するにルーナが現夢を使ったところでばたんきゅーしちゃったのは、そこら辺を完全に失念してMOTTOMOTTOしたわたしが悪い。
本人は精進が足りないみたいな認識だったみたいだし、
それにこれらの魔法は対象者の身体の一部があれば使用できるんだけど、使い手の力量次第では百キロ以上離れた場所でも発動可能になる。その場合、魔法力の消耗がどれくらい差が出るかは本に細かく載ってなかったし、まだ試したことがないからわからない。
ただまあ、増えるんだろうなとは思う。遠距離発動はぜひとも試してみたいから、そういう意味でも、精進が足りないってのは間違っちゃいないんだよね。
とはいえ、初回でここまでできたら十分だろう。ましてやルーナはまだ12歳。成長の余地は十分すぎるほどにあるんだから、そこまで無理はしなくていいんだからねと色々と諭して、儀式魔法お披露目会は中断となった。
そのあとは、ルーナを休ませながらのお茶会だ。研究とか練習とかの話題はあえて避けて、学生らしい和気あいあいとした交流になった。素直に楽しかったです。
で、その日の夕方。お茶会を終えたわたしたちは調合中のジェネリック陰陽薬の状態をそろそろ確認しなきゃなぁってことで、地下聖堂を出てスリザリンの書斎に向かおうとしてた。
向かうに当たってルーナをどうしようかな……と思ってたんだけど、その道中わたしたちはスリザリンの一年生男子三人に、まるですがりつくようにして囲まれてるスネイプ先生を発見した。
鬼気迫る様子の男子三人に、何事かと近づくわたしたち。ただ、その顔ぶれがニコ殿下の同室の三人ってことに気づいてたわたしは、大体何が起きてるのか察したよね。
「お願いしますスネイプ先生! もう限界なんです!」
「殿下と僕たちを別の部屋にしてください! お願いします!」
「あ、アイツいいにおいがするんです! 男のはずなのに!」
「スカートからのぞくほっそりとした太ももが眩しいんだ……お、男のはずなのに!」
「ふとした瞬間漏れるちょっとした声とかめちゃくちゃえっちなんですよ、男のはずなのにィ!」
「しかもアイツ、たまにねぼけて僕らの前で普通に着替えようとするんですよ!?」
「半裸のアイツがそこにいるんです! こんなの頭おかしくなりますよ!!」
「それで『か、堪忍なぁ……?』って顔赤くしてうっすら笑うんですよ!? えっちだ……ってなるに決まってるじゃないですか!!」
「「「このままじゃ僕たちアイツのこと好きになっちまう!」」」
でしょうね(真顔
この数日ニコ殿下を見てたけど、マジで日々の何気ない仕草とか喋り方とか、完全に女の子ですからね彼。そんな特大の爆弾を同室に抱え込んだ彼らの苦労たるや、いかばかりか……。
とはいえ、思ってたより限界来るの早かったなって思いもある。今年度の初日は週の半ばだったから、一週間ももたなかった計算になる。
まあ我慢しろよなんて、思春期に入りつつある11歳の男子たちには酷なのはわかるから、これ以上は言わないけどね。わたしだって前世の11歳当時、ニコ殿下みたいな人と寮で同室になってたら確実に道を踏み外してただろうし。
ちなみにそことは別に、観察してた範囲でニコ殿下がわたしに探りを入れてきたりとかは今のところない。
まだ様子見してるだけなのか、本当に何もないのか……どうなんだろうなぁ。
ただ、八咫鏡を手に入れたときわたしが思いついた推測が正しいなら、日本魔法界には八咫鏡が複数存在するはずだ。その場合年度が終わって長期休暇に入ったあと、八咫鏡で振り返って確認するという方法が取れるわけで……なるべく下手なことはしないほうがいいんだろうな。
でもその場合、ニコ殿下自身は何も知らされてない可能性があるんだよな。
だって記憶がすべて余すことなく記録されるなら、当人は見てるだけでいいんだもん。need to know、知るべき人だけが知っておくべきというのは、有名な法則だし。
ううーん、悩ましい。なんで故国相手にこんな悩まないといけないんだ。ぶん投げてしまいたくなってくる……!
でもわたしが一人頭を悩ませていても、話は進む。
「……待って? ニコ殿下って男性なの……?」
「あ、言ってなかったっけ」
「実はそうなのですわ」
「嘘でしょ!? 信じられないわよ!?」
「まあそうなりますわよね。気持ちはわかりますわよ」
「日本には知らぬが花ってことわざがあってね……」
そんな話をこそこそするわたしたちをよそに、スネイプ先生はとってもめんどくさそうに首を振った。
「諸君らの言い分は理解できるがね。しかし軽々に彼一人を特別扱いするわけにはいかんのだ」
「そんなぁ!! あんまりだぁ!!」
「お慈悲は……お慈悲はないんですか!?」
「ホグワーツでは助けを求めるものには必ず救いの手が差し伸べられるんじゃなかったんですか!?」
まるで聖四文字に見放された敬虔な信徒みたいな激しいリアクションで慟哭する三人だけど、こればっかりはスネイプ先生の言い分もわかる。
そもそもの話、ニコ殿下のような人の扱いは難しい。本人はもちろんのこと、周囲にとっても無視できない話だ。
前者で言えば、心の話も絡んでくるから、下手に触れると大きな問題に直結しかねない。ましてや相手が子供となれば、どこに地雷が埋まってるかわかったものじゃないだろうし。
仮にニコ殿下を女性扱いして女子寮に入れることが許可されたとしても、後者……実際にそこにいる女の子たちがどう思うかわからないしね。どうあがいても殿下の肉体が男性である以上、そこには一種の緊張感が生まれちゃうだろう。
わたしが転生する前の21世紀にしたって、この辺りの問題は全然解決してなかったもんなぁ。色んな魔法があるからか、魔法界はその辺りのジェンダー論はマグル界より先進的だけど、少数派であることには変わりないしね。
だからこそ、肉体的に男であれば一律女子寮に入れないって設計になってるホグワーツは、ある意味で合理的だとも思うのよね。あくまで身体だけで判断する、ってのは余計な騒動を呼び込まないための措置なんじゃないかな。
ニコ殿下もその辺りは理解してるんだと思う。だから男子寮に配属されても文句は言ってない。……んじゃないかな。推測だけど。
それでも、めちゃくちゃかわいい男の娘が同じ部屋の中にいて、何かしらにつけて誘惑されてるように感じる男子三人の悩みは切実なものだ。大人なら割り切れることではあるんだろうけど、思春期の少年にとってそうじゃないわけで。
あと彼らがそっちの道にもし目覚めたとしたら、ニコ殿下の貞操が危ないって可能性もなくはない。そういう意味でも、ニコ殿下の処遇をどうするのかっては結構大きな火種だ。
何せ彼、他国の皇族だからなー……。
しかも日本魔法界は例外的に、皇族がマジで権威を持ってる魔法界だ。万が一彼の身に何かあろうもんなら国際問題待ったなしだし、だからこそ新聞にホグワーツ特急へのディメンター侵入をこき下ろされたファッジは、今火消しにやっきになってるわけだし。
これについては本当、下手したら戦争になりかねないもんね。
ただ、それは学校側も認識してる問題らしかった。スネイプ先生はこれ見よがしにクソデカため息をつくと、渋々といった感じで口を開く。
「……やれやれ。確かに、諸君らを不純
やめてくれカカシ、その術はオレに効く(震え声
心当たりしかねぇんだ。なんならほぼ毎日シてるんだ。余裕の致命傷だぞ。
あまりにも鋭すぎる言葉の刃に、わたし、ハーミー、ダフネの三人は思わず顔を逸らすしかなかった。
その様子にルーナは首を傾げてたけど、君にはいずれこっちに来てもらうから覚悟しておいてくれよな。
「殿下には部屋を移ってもらえるように交渉しよう。それでよろしいな?」
「は、はい!」
「お願いします!」
「ありがとうございます先生!」
「断られた場合のことは覚悟しておくように」
「ヒュッ」
「お、お願いします先生!!」
「お慈悲を……お慈悲をォ!!」
……スネイプ先生、あの上げて落とすやり方は楽しんでそうだな。
そういうとこやぞ、スニベルスくん。
***
で、その日の夕食後。学校側とニコ殿下との間で持たれた交渉は、無事に妥結したらしい。
わたしたちがジェネリック陰陽薬の失敗を確認(12時間じゃ少し足らなかったみたい。次は13時間かな)して寮に戻ったタイミングで、ちょうどニコ殿下の居室が男子寮の別の部屋に移ると発表された。
どうやら空き部屋に移るみたいで、最大四人が生活できる部屋を一人で、ってのは贅沢だなぁと思う一方、寂しい感じもする。
ただこの発表に、日々不眠に苛まれていた男子三人は歓声を上げていた。気持ちはわからなくはないけど、本人の目の前でそれはどうなんだ。
「……ま、そのうちこうなるとは思うてました」
ニコ殿下はいつものことだと言わんばかりに日本語でつぶやいてたけど、その表情と声は寂しそうだったぞ。
きっと今までの人生、似たようなことは何回もあったんだろうな……。魔性の男の娘に生まれてしまっただけでなく、殿下だもんなぁ。
そう考えると、組み分けの儀式のときにあだ名で呼ばれるのが夢だったって言ってたのは、冗談抜きの本音なのかもしれない。
だけどここはホグワーツ。助けを求めるものには、必ず救いの手が差し伸べられる。
「そこまでにしておけよ、一年」
ぴしゃりと怜悧な声が響いた。それを浴びせられた一年生三人は、顔を青くして硬直した。
声の主は、ドラコだった。
「お前たちの事情は一応、理解できなくもない。だが……だからと言って、本人の目の前でそのはしゃぎっぷりはなんだ? 失礼にもほどがある! 栄えあるスリザリンの一員なら、それに相応しいあり方というものがあるだろう」
それはまさに、人の上に立つべき人間の言葉だった。イギリス魔法界において今現在、トップに君臨していると言っても過言ではないマルフォイの次期当主の姿がそこにあった。ひゅう、かっこいい。
ドラコの指摘を受けて、一年生三人は慌ててニコ殿下に頭を下げて謝罪し始める。それを見届けて、ドラコはそれでいいとばかりに頷いた。
彼のそんな姿に、スリザリンの女子たちが熱視線を向けていた。その中にアストリアの姿もあったので、わたしはなるほどなぁと思うなどする。
まあ同時に、そのかっこよさをなんでハリーの前では出せないんだって改めて思ったけど、それはともかく。
そのアストリアが、事態をめんどくさそうに見守っていたスネイプ先生に対して手を挙げた。
「スネイプ先生、男子が女子寮に入るのはダメですけど、女子が男子寮に入るのはいいですよね?」
「それはそうだ。もちろん、節度というものはご理解いただけているかと思うが」
「じゃあ、私がニコちゃんの部屋に移るのはダメですか?」
それは一般的に、爆弾発言と呼ばれる類の発言だった。周りの生徒やダフネはもちろん、スネイプ先生すらもぎょっとしてアストリアに視線が集中する。
と同時に、スネイプ先生の瞳が不思議な輝きできらめいたのが見えた。
先生、先生! そんな簡単に女子生徒にレジリメンスるのはどうかと思いますよ!?(クソデカブーメラン
「……本気で言っているのかね?」
「はい! だって、ひとりぼっちは寂しいじゃありませんか」
君はどこの杏子なんだ。
だけどまあ、スネイプ先生に正面切って言い切ったセリフに、嘘はなんにもないんだろうなぁ。
なるほど? 組み分け帽子はアストリアをレイブンクロー以外のすべてに適性があるって評したらしいけど、これはまさにグリフィンドールらしい要素って言うべきかもな。
だけど彼女はスリザリンを選んだ。であるなら、その発言の本質は勇気ではないんだろうなぁ、なんてぼんやりと思う。
「……しばし待ちたまえ。念のため、校長の判断を仰ぐ」
これを受けてスネイプ先生は一時保留にしたけど、最終的にアストリアはニコ殿下の同室ということになった。
異例の事態ではあるけれど、ダンブルドア先生との直接面談の結果、ニコ殿下は身体は男だけど心は女だと判断されたらしい。アストリアとの同室は問題ない、という結論になったみたいだ。
ここまでの経緯から見れば、それぞれが妥協できる地点に到着したって言えるんじゃないだろうか。もちろん、部屋自体にも一定の守りは施されるようだ。
この結果に、ニコ殿下は嬉しさと困惑がないまぜになった表情で受け入れていたけど、やっぱり受け止めきれなかったんだろう。アストリアにおずおずと問いかけていた。
「なんでそないによくしてくれはるんですか……?」
「? だって私たち、お友達なのです。お友達を一人になんてできないのです!」
これに対するアストリアの返答は、こうだ。
何も疑問なんて差し挟む余地なんてないとでも言いたげな、まっすぐな目がそこにあったという。
「アストリアちゃん……おおきになぁ。ほんまおおきに! これからもよろしゅうなぁ!」
それがよっぽど嬉しかったんだろう。ニコ殿下はアストリアの両手を取ると、にぱーっとアストリアにも劣らない満面の笑みを浮かべた。
あまりにもてぇてぇ光景に、何人ものスリザリン生が目と脳を焼かれて撃沈したのは言うまでもない。
その様子をダフネと一緒に隠れながら見ていたわたしは、組み分け帽子の言葉を思い出していた。
──スリザリンではもしかして、君は真の友を得る。
ああ、本当にそうなのかもしれない。やっぱりスリザリンの本質は、同胞愛なんだろうなって。本当にうまいこと歌うものだよね。
なおそういうことなら自分も、と手を挙げたダフネは秒で却下されてた。
残当。妹と一緒にいたいっていうシスコン魂が、なんにも隠しきれてないんよ君は……。
初登場時にも触れましたが、ニコくんが女の子とくっつくことはありません。
なのでアストリアとのあれこれは、純粋な女の子同士(?)の友情です。まあそういう友情も、百合と呼ぶのかもしれませんが。
ドMのほうはなんか百合っていうかレズって感じですしね・・・。