才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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22.邪神に捧げられた少女

 ジェネリック陰陽薬が完成した、記念すべき日の夜。わたしは前日と同じく、夢の中で覚醒した。

 

 目を開けて最初に飛び込んできたのは、質素な板張りの部屋。わたしはその床の上に敷かれた三枚重ねの畳の上に立っているっぽい。

 その畳を見るために視線を下げて、同時に視界に入ってきたのは裾の長い色鮮やかな和服。夢の中だしってんでちょいと鏡を出して見てみれば、どうやら今のわたしは十二単を着てるらしい。

 

 おまけに現実よりも髪の毛が長い。昔あったアジ〇ンスのCMもびっくりな輝くような黒髪が、床近くまで垂れてなびいてる。

 なびいてる、ってのは比喩じゃなくってさ。風もないのに、なんか神聖っぽい感じのオーラが身体から出ててそれでなびいてんの。これならわたしを見た人の何割かは、神様って思いそうじゃん?

 

「……よし、成功」

 

 そんな自分の様子を一通り観察して、わたしは一度大きく頷いた。

 

 要するに、これは意図してのこと。つまり、明晰夢状態の中でわたしの意思を使って引き起こした現象だ。

 

 今のわたしの状態がどうなってるかは、皆さんお察しいただけるかと思う。

 そう、今のわたしの姿は、あの世で異能力バトルトーナメントを終えたあと、謁見したイザナミ様がしてたのと同じ格好だ。髪の長さも含めてね。

 服は確か、「特別正装ってわけでもないけど、イメージとしてよく想像されるから正装ってことにしてるやつ」って言ってた。本人はジャージとかスウェットでいたいとも言ってたっけ。めちゃんこ似合ってるのにもったいない、って思った覚えがある。

 

 あと、実はわたしだけじゃなくて、周りもそう。和一色ながら、神道系の宗教色をぬぐい切れない、これまた質素な調度品の数々。これもあの世でイザナミ様に謁見したときの場所だ。

 どっちも細部は覚えてなかったけど、そこは八咫鏡で解決だ。前世やあの世でのこともこれで見直せるから、イメージを固めるのにすごく役に立った。こんなことに使っていいのか? って疑問は考えないことにするとして。

 

 念のため部屋の外も確認してみたけど、そっちもばっちり。そこにはあの世で見た、イザナミ様の神域が広がっていたのだ。

 

 ただ、あのとき感じた神聖さはほとんど感じない。同時に、あの世らしい不穏な気配もないんだけど。

 とにかくどこにでもある……っていうには大規模だけど、伊勢神宮とか熱田神宮とか、そういういかにも神社な景色がそこには広がってる。この辺はシンプルに、わたしの力不足かな。

 

 え、なんでここまでしてるのかって?

 いやうん、確かにわたしは今まで神様扱いには基本不本意ってスタンスだったから、そう思うのもわかる。

 

 でもさ、今回はルーナの信仰心を受け止めてあげたくってさ。

 ありていに言えば、今までずっとがんばってくれてたルーナにご褒美をあげたかったの。

 

 普段は神様としてめちゃくちゃ持ち上げられるの、あんまり受け入れてあげられてないから、夢の中でならしてもいいかなって思ったんだよ。そのために、まずは形から入ろうと思って。

 幸いわたしには、マジモンの神様と顔を合わせた経験がある。その記憶もしっかり残ってる。だからそれをお手本にしたってわけ。

 

 とはいえ、これはあくまで見た目だけ。結局わたしがわたしであることには代わりがないから、応対は普通にわたし。見掛け倒しで失望されないといいけど。

 

「神様」

 

 一人で内心どきどきしながら疑似神域の様子をぼんやり眺めてたら、後ろから声がかけられた。振り返ればそこには予想通り、ルーナの姿が。

 その恰好は、恐らくベッドに入ったときの恰好とは違うだろう、巫女服だった。千早まで装備してるから、儀式魔法をするときの彼女なりの正装と同じだ。

 

「わたしの神域へようこそ、ルーナ」

 

 そんなルーナを目の前にしてわたしの口から出たのは、普段と違って神様っぽく聞こえるなかなかに威厳のある感じの声だった。

 

 がんばった。現実でもできるようになった七色の声色を使ってちょびっと低くしつつ、今まで磨いた演技の合わせ技だ。なんとか神様っぽく演出で来てるんじゃないでしょうか。

 

「わ。これが、神様の本当の姿……」

 

 できてるみたいです。ルーナはいい感じに驚いてくれた。

 

 これに気をよくして、ついついイエスともノーとも言わない顔で曖昧にドヤって見せちゃうわたしです。化けの皮が剥がれるの早すぎでしょ……。

 

 ま、まあでも、イザナミ様だってそういうところあったし……。わたしが参考にしてる神様ムーブが主に彼女ってことを考えれば、別に何もおかしくはないし……。

 

 なんて風に内心で自己弁護してたわたしだけど、ルーナがシームレスに正座から五体投地に移ろうとしたものだから、慌てて止めに入った。

 

「待って待って、そこまでしなくていいからねっ?」

 

 そう言ってルーナの身体を抱き起すわたし。そんなわたしを、きょとんとした表情で見つめるルーナ。

 

「……よかった、いつもの神様だ」

 

 けど彼女は、次ににこっと……とても嬉しそうに微笑んだ。なのでわたしの残機は無事に1減りました。

 

 前々から──それこそ前世で映画見た頃から思ってたけど、ルーナは自分がかわいいって自覚が足りなさすぎるんだよね! そんな無防備なままで、よく最終的にきちんと結婚して子供まで作れたなって思う!

 

「いつもの、って……?」

 

 だけどそんな荒ぶる内心は隠して、わたしは抱き起した状態のままルーナに対して首を傾げる。

 

「うん。偉ぶらなくって、優しくって、気遣い上手で……あと、昨日今日色々話せて、一緒にいて楽しい神様って思ったかな」

「そ、そんな風に思ってくれてたんだ……」

 

 ルーナはストレートに言ってくれるよなぁ。照れるじゃん。

 

「だからさっきは、ちょっと違うって思ったの。オーラすごいし、声もなんだか違ったし……もしかして、いつもみたいにしてくれないのかなって思って……」

「あー、なるほど? それでわたしが普段通りの反応したから、安心したんだ」

「うん。あたしの知ってる神様でよかった、って思った」

「うーん。そういうことなら別に、気合入れなくてもよかったかな……周りもそうだけど、普段の感じに戻そっか」

 

 わたしとしても、ぶっちゃけ十二単は動きづらいし。

 

 ということで、パチンと一発フィンガースナップ。するとたちまち周りの景色が、スリザリンの談話室のものへと変わっていく。同時にわたしの姿も普段のものに戻り、服装もいつもの制服に変わった。オーラも消える。

 その様子を、ルーナはほえぇと感心するように口を開けて見渡していた。

 

「……すごい。こんなあっという間に夢を書き換えるなんて」

「? これくらいは普通じゃない?」

「ん-ん。あたしも現夢の練習で色々夢を変えてみたけど、こんなにすぐには変わらなかったよ」

 

 え。あ、そ、そうなんだ? 普通はもうちょい苦労するの?

 ってことは、ここでも神様謹製の才能が力を発揮してるのか。

 

 ほんと、あっちこっちで恩恵あるなぁ。もらえるチート、これにして本当によかったなぁって……。

 

「やっぱり神様はすごいンだ」

 

 そしてルーナは、わたしが感慨にふけってる間に、わたしへの尊敬を深めていた。うん……いつも本気で称賛してくれるから、気恥ずかしいんだよね。

 

 だからわたしはそんな気持ちを吹き飛ばすように、ルーナをソファに誘った。現実だとドラコとかがよく使ってるやつで、クラッブとゴイルの三人でちょうどいい感じになるくらいのサイズ。

 

 つまり結構大きいソファで、わたしとルーナなら余裕をもって座れるやつだ。

 なんなら横にもなれる。そこに二人並んで腰かけた。もちろん、物理的に距離は縮めていくスタイルだ。

 

「わ。ふかふか」

「でしょ。これはいいものなんだよ」

 

 ドラコも自慢げにしてたから、そこはガチなやつのはず。そもそもの話、スリザリンの談話室に置かれる調度品が、ショボいやつのわけはないだろうしね。

 

 とここで、ルーナは自分の恰好が変わってることに気づいてまじまじと服を両手でつかんで持ち上げた。そのせいで、ルーナのお腹が見えた。

 余計な肉も脂もない、ほっそりとしたお腹だ。わたしが見たことのある女の子の中でも、一番薄くて細いんじゃないかな。え、もしかして誘ってる?

 

「スリザリンの制服だ」

 

 だけど当のルーナは全然気にしてない。無頓着っていうか、無防備っていうか……。

 

 まあ、これはわたしと二人っきりだからってのもあるとは思うんだけど。

 っていうか、そうであってほしい。誰の前でもこんなだったら、ルーナの貞操が心配だもん。

 

「そうだよ。せっかくだし、お揃いにしてみたんだ。思ってた通り、緑もよく似合うよ」

「本当? 嬉しい」

 

 とはいえ、ルーナも女の子だ。見た目を褒められたらそれなりに嬉しいらしい。

 

 ……まあ彼女の場合、わたしに褒められたのが嬉しいだけって可能性もかなりあるけど。

 

「スリザリンの談話室はどう?」

「綺麗。ちょっと暗めだけど、だからか余計に光が映えてる感じする。あの窓の向こうは、もしかして湖?」

「そうだよ。スリザリン寮は地下にあるからね。湖の様子が見えるんだ。たまーに巨大イカとかマーピープルが横切るのが見えるよ」

「面白いね。レイブンクローの談話室もいいけど、こっちも興味深いな」

 

 夢だからなんでもあり、ってんで紅茶とスコーンをぽこじゃか出現させながら、世間話を始める。

 

 ……ちょっとスコーン出しすぎたかな?

 まあいいや、色々と味変しとこう。イギリス人的には邪道かもしれないけど、こちとらグルメ求道者の国日本の生まれなんで許してくれ。

 

 お茶会スタイル自体はルーナも経験済みだから、何も言わずとも素直に応じてくれる。二人して床に足が届いてなくて、ぷらぷらさせながら両手で紅茶を飲んでる様は、ロリコン諸氏には垂涎ものかもしれないね。

 

「今回初めて共夢をしたわけだけど、やっぱり便利だなぁ。これを最初に覚えようとしたルーナの慧眼が光るねぇ」

「んん、それほどでもないよ。それに、今のままだと二人しか夢の中に入れられないし……」

 

 ルーナが言う通り、今回の共夢にはわたしたち二人しかいないんだよね。ハーミーたちはお留守番だ。

 何せ共夢は、魔法力の消耗が激しい魔法。そもそも前提として使う必要がある現夢もそれなりに重い魔法なのに、それよりもなお重い魔法を繋げる必要があるから、負担はかなりのものになるんだよね。

 

 だから迂闊に複数人に使うと、どうなるかわからなくって。ひとまず様子見ってことで、二人だけで使ってみたのが今日のお昼ってわけ。

 

 でもそれで正解だったよ。何せ二人だけに絞ったのに、魔法を使ったあとのルーナの消耗はかなりものだったからね。ルーナが言う通り、今のままだと二人までが限界だろう。

 だからわたしは、しょんぼりするルーナに対して、共夢ができてることがまず大きな成果だからとよしよしする。言葉だけじゃなくて、物理的にもね。

 

「そうそう。今夜はね、そんながんばってくれてるルーナにご褒美をあげたくって」

「ご褒美?」

「そう。授業についていくのに勉強もしなきゃだろうに、わたしのためにあれやこれやがんばってくれて、本当にありがとね」

「どういたしまして。でも、これはあたしがやりたくてやってることだし」

「それでもだよ。ルーナはわたしの巫女なんだから、わたしに仕えてくれてる人が出した成果にはきちんと報いてあげないと」

「ヘンなの。神様は神様なんだから、もっと強引に『やれ』って言えばいいのに。……でも、うん。そういう神様だから、あたしもがんばろうって思えるのかも?」

 

 小さく首を傾げながら、その状態でまっすぐこっちを見つめるルーナ。かわいいね。

 

 ドMとして純血の皆々様にお仕えしてる身として、ルーナの言い分はとてもよくわかる。

 でもそれとこれとは別で、上に立つからには下にいる人に対してすべきことはしないとなんだよね。

 

 だからこそ、わたしもドラコたちが主導しているパンジーへの牽制に否とは言わない。あれは彼らなりの、わたしへの報酬だからだ。

 問題はわたしがそれを望んでないことなんだけど、これについては絶対服従の立場としては否と言えないのがちょっと面倒なところ。

 

 まあ、なんとかする方法は考えてる。遅くとも年内にはなんとかなると思う。

 

 と、それはともかく。

 

「そういうわけだから、ルーナにはご褒美をあげたいんだけど……何がいい? 大体のものは用意できるはずだけど」

 

 望んだものが与えられない落胆をよく知ってる身としては、やっぱりご褒美はきちんと確認してから渡したい。わたしはどっちかっていうとサプライズ否定派です。

 

「ううん……。うーん……今ほしいものは特には、ないかも……」

 

 ところがどっこい、このリアクションだよ。ううん、まいったな。

 

 ……というのは、ウッソー。想定済みだったりする。ルーナ、元々そんなに物欲あるほうじゃないのはわかってたから。

 だからわたしは言い換える。

 

「ものじゃなくてもいいよ。わたしにしてほしいこととかあれば、それでも」

「んんんー……」

 

 これも反応が芳しくない。だけどこれも想定内だ。

 

 とはいえ、すぐに答えを出しちゃうとあとあとちょっとアレなので、数回押し問答をして時間を稼ぎ、さらにちょびっと考える振りも付け加えておく。

 

 そこまでやって、初めてわたしはそれを口にした。

 

「もしすぐに思いつかないなら、わたしがそのうちルーナに()()()()()()()をしてもいいかな?」

 

 そう。すべてはここに繋げるための、これしかご褒美として与えられるものはないんだと示す布石……!

 

 ふふふ、我ながら完璧な作戦を思いついてしまったものだぜ。まだ12歳でそっち方面には疎いだろうルーナに、性欲とかそういうのがここからどう出てくるのか想像もつかないルーナに、そういうことを自主的にしてもらうのはハードルが高い。

 だけど、彼女は学習能力に定評のあるレイブンクロー生。であれば何はともかく、実際に(ここは夢の中ではあるけど)体験してもらうのが一番だろう、という寸法さ!

 

 それにここでルーナに対してわたしがタチに回るのは、巡り巡ってハーミーたちを抱くときの練習にもなる。一石二鳥の作戦なのだよ。

 ルーナを実験台にするのかって思われるかもだけど、テクニック自体は一年以上に渡る百合えっちの経験から保証できる。わたしだって、百パーセントネコだけをしてたわけじゃないんだよ。

 

 だから練習って言っても、最終確認くらいの感じかな。主に挿れる側としてのね。

 そのために、あらかじめルーナには寝る前に消音の呪符も渡して使っておくように言っておいたしね。普通の夢より寝言を言う可能性が高いから、使っておいたほうがいいよって、アドバイスの体で。

 

 ちなみに、寝言の件については嘘じゃない。なんか前回触れた初現夢で、ハーミーが寝言で「愛してる」て言ったらしくてね。それも結構な声で。

 

 おかげで朝からずっと、グリフィンドールの女子たちに散々からかわれてた。赤面して逃げ回るハーミーはかわいかったけど、それでわたしのところに来て一緒に逃げる姿を見せたら普通に逆効果だと思う。

 わたしとハーミーの距離が物理的に近いのは、初年度からみんな知ってることだし。なんならバレててもおかしくないんじゃないかな。思っても口にはしなかったけど。

 

 話を戻そう。今はルーナだ。

 

「してほしいこと?」

「そう。わたしからはご褒美でしてあげるんだけど、ルーナにも覚えてもらいたいんだ。いつか奉仕って形でわたしにもしてほしいから」

 

 わたしに対する奉仕になることであれば、わたしがご褒美としてルーナにしてあげても違和感はないはず。それだけの価値のあることなんだ、って思ってもらうにはこれが最適だろう。

 多少のガバがあっても関係ない。何せここは夢の中だからね。ある程度までは夢を操作することでゴリ押せる。

 

 ま、それは必要ないだろうとも思ってるけどね。何せルーナにとって、わたしは神様だから。普段上に立つのは得意じゃないけど、今回ばかりはこの上下関係を最大限に利用させてもらう!

 

「ン、わかった。あたし、がんばって覚えるね。たくさん教えてほしいな」

 

 よし来た。思わず心の中でコロンビアのポーズを取ってしまったよ。

 

「んふふ、期待してる。……それじゃ、早速始めるね」

「お願いします」

 

 そうしてわたしは、ルーナの唇を奪った。

 

 ここから先は……見せられないよ!

 




策士ドM。
今回の話のサブタイの邪神とは、要するにそういうことだ。
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