才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
ハロウィン間近の今、ホグワーツで一番ホットな話題はホグズミード休暇だ。特に初めて許可が下りる三年生の間じゃかなりの盛り上がりで、それはわたしたちも例外じゃない。
何せホグワーツの学期中に、外でデートできる唯一の機会だもん。これを逃す手はないってわけよ。
ただ、この数少ないおでかけデートの機会を、ハーミーはなんとすべてダフネに譲ってる。人によっては彼女の正気を疑う決断だろう。
でもこれは別に伊達や酔狂じゃなくって、彼女らしいフェアプレイ精神の発露だ。だって夏休み中、日本にロンドンにと、わたしとハーミーは何度もデートしたけどダフネとはできてないからね。
できるだけ二人の間の格差はなくしたい。それがハーミーの意向なんだよね。ルーナのこともあるし、来年度以降どうするかはわかんないけど。
そんなハーミー自身は、ルームメイトのラベンダーやパーバティたちと行くらしい。なんか、占い学の授業でラベンダーのペットが死ぬ占いを読み解いて命を救ったお礼に、バタービールを奢ってもらうらしいよ。
ハーミーはわたしから教わってなかったら何もわからなかったって謙遜してたけど、トレローニー先生の占いに怯えてたラベンダーを助けてあげたくて行動したのはハーミーだ。
誰かが困ってるのを見過ごせないハーミーは本当にグリフィンドールだと思うよ。わたしにはとてもできない。
ラベンダーも、そんなハーミーだからきちんとお礼がしたいんじゃないかな。
だからこそ、そういうのは素直に受け取ってあげなよってアドバイスした次第。
まあその結果、なんでかラベンダーにホグズミードのあちこちでファッションのイロハを教えてもらうことになった点については、めっちゃ困惑してたけどね。
ちなみに、ロンはルームメイトのシェーマスとかネビルとかと行くらしい。
原作とは色々と前提が変わってるから、ここが変わるのも当然と言えば当然。こればっかりはしょうがない。
ともあれそうして迎えた、初めてのホグズミード休暇。わたしとダフネは他のメンバーに少し遅れてホグワーツを出発した。
出発を遅らせたのは、わたしとダフネがイチャついてる様子を極力周りに見せないため。察しのいい人はわたしとダフネの関係を察してる人もいるかもだから念のためくらいのものだけど、表向き身分差があるからここはどうしてもね。
どのみちホグズミードに着いたら線を引かないとだけど、せめて道中くらいは恋人らしくありたい。
とはいえ、ただ遅く出発するためだけに時間を潰すのはもったいない。
ってことで、一人だけホグズミードに行けないハリーのために、みんなでジニーとの城内デートをセッティングしてあげてた。
いや、たまたまジニーから相談があってね。正確には、ハーミーを通じてわたしに流れてきた形ではあるんだけど。
二つ返事で応じたよね。愛し合う二人の気持ちは報われるべきだと思うし、そのためならわたしは協力を惜しまないつもりだ。
もちろん、ホグワーツ内でできるデートは小ぢんまりとしたものにならざるを得ない。それでも、できることやったつもり。
ジニーを厨房に案内して、手作りのお菓子の作り方をハウスエルフたちとレクチャーしたのと、二人だけでゆったり過ごせる場所を紹介してあげた。デートスポットには詳しいリンちゃんだよ。
まあそのスポットは、漏れなくえっちできそうな場所なのは言わなかったけど。二人には、もうちょっと今の年齢でしかできない健全なイチャイチャを楽しんで欲しい。
大丈夫、来年は二人でおでかけデートはできるはずだから。そういう方向に、なんとか着地してみせる。
「それじゃ、わたしたちも行こっか」
「ええ。操縦は任せましたわよ」
「うん、任せて」
一仕事終えたわたしたちは、手を繋いで城内のデートスポットに向かうハリーたちを見送ったあと、中庭で用意してた箒にまたがった。
箒は伊勢神宮に忍び込むとき、ハーミーと乗った昴48式だ。それを聞いたダフネがうらやましそうにしてたからね、わたしから誘いました。
こういうこともあろうかと、イギリスに来てから色々やりましてね。色々と改造済みでございます。
こうやって、あらかじめ用意しておいたタンデムシートを取り着ければ……この通り、二人乗りもバッチリ安全ってわけ。
なお、今は箒による飛行そのものの魔法も解析中だったりする。
箒なしの飛行、ロマンだよね。それはそれとして、今のところ実現できてるのがお辞儀とスネイプ先生だけってのがすごい癪ってのもあるけど。
ともかく二人で昴48式にまたがって、あとはウェラーレ・アモルテで透明になれば飛ぶ準備は万端だ。
「今日はいい陽気ですわね。わたくし、これくらいが一番好きですわ」
「暑くもなく寒くもなく、ちょうどいいよね。まあ次の休暇のときはもうがっつり寒いんだろうけどねぇ」
「暖気の呪符はあるのでしょう?」
「それはそうだけどぉ」
背中越しにダフネの体温を感じながら、駆け足より気持ち遅いくらいのゆるゆるとした速度で空を駆ける。
移動時間だって立派なデートの一環だからね、安全運転でお送りしております。全力で飛ばしたらニンバス2000並みの速度は出るんだけど、そんなことする必要はないのでね。
それにしても、空から見る景色はやっぱり格別だな。転生してよかったことはたくさんあるけど、これも間違いなくその一つだと思うんだ。
「今日はどこ行く?」
「三本の箒は外せないですわよね。あとは素材屋さんですか。そろそろ補充しないと、ジェネリック陰陽薬が作れなくなってしまいますわ」
通販でもいいんだけど、届くまでにちょっと時間かかるもんね。ホグズミードで買えるなら、それに越したことはない。
「味の研究のときに結構無駄にしちゃったもんねぇ」
「ええ。それとアレも外せませんわ。ミス・レガシーのお店! アストリアのための服を買いませんと!」
「その話覚えてたんだね……」
「当たり前でしてよ!」
一年くらい前、レガ主がニーズルの着ぐるみパジャマを着て登場したことがある。ちっちゃい子が着たら絶対かわいいやつだけど、思春期入ったら遠慮したくなるタイプのやつだった。
だからわたしたちはリアクションに困ったんだけど、アストリアにどうかって勧められたダフネがハッスルしちゃったんだよな。本当に姉バカのお姉ちゃんだよ。
でもまあ、それがなくともレガ主の店は探すつもりだった。ホグレガには、レガ主が店主になれるスポットがあるんだよね。絶対何かしらの遺産があると思うんだ。
「かわいい服がたくさんあるといいのですけれど。小物などもありますかしら?」
「どうだろう……ミス・レガシーの感性はちょっと常人にははかりきれないところあるからなぁ……」
あと仮にまっとうなものがあるとしても、たぶん半世紀くらい流行遅れな可能性はあるんじゃないだろうか。
世界中から自動で流行りの服を集めるみたいな魔法でもかかってない限り、その可能性はかなり高いと思うんだよね。
ダフネが楽しみにしてるから、言わないけど。
「……とりあえず、三本の箒は最後のお楽しみにしよっか」
だからわたしは、そう言いながら飛行高度を緩やかに下げていった。
***
ホグズミード。20世紀末現在、イギリスで唯一の魔法族だけの村。
ホグワーツの近くにあって、三年生以上は定期的に訪れることができる憩いの場所だ。
村はマグル界とは全然違って、前時代の趣を残してる。それに魔法ならではの看板だったり飾りだったりがあちこちにあって、そういう意味でもマグル界の集落とは全然違う。
ただ、休暇で大勢の学生がごった返してる賑わいだけは、マグル界の街並みと変わらないように感じた。やっぱり魔法族も社会性を持った人間、こういうときの雰囲気は似通うんだろうね。
そんな村の通りを、わたしとダフネは身を寄せ合って歩いていた。あんまり二人でくっついてるとあらぬ疑いをかけられそうではあるけど、思ってたよりも表通りの人が多くってね。
小柄なわたしは下手にはぐれるわけにもいかないから、こればっかりはしょうがないさ……ということにする。
「大阪の街に比べると、これでもまばらなのでしょうけれどね」
「比較対象が悪いよ。規模が違いすぎるって」
なんてことを話しつつ、適当にその辺りの店を冷やかしながらのんびりと歩く。店の位置関係を覚えるついでのウィンドウショッピングだ。これからもお世話になる村だもんね。
とりあえず三本の箒は目立つ場所にあるからいいとして、本屋、素材屋、魔法道具屋辺りは行く機会がありそうだからきちんと覚えとく。
あ、今呪文クラフトが並んでる棚が見えたな。あの店も要チェックかも。クィディッチ用品店? スルーだ。
ホッグズヘッドも場所を確認しておきたかったけど……あそこは確か、表通りから外れたところにあるから後回しかな。ヤギ臭いのがどんなものか、気にはなるけど。
「ぐるりと回って見た感じ、表通りにはなさそうですわね」
「あのミス・レガシーのお店ならそうだろうって感じするよね」
そして当然ながら、レガ主の店はここまで歩いてきた表通りにはまったく見当たらなかった。
とはいえ、ここまでレガ主関係のものごとは大体ゲーム通りだったことを考えれば、彼女の店も同じ場所にあると見ていいと思う。それなら大体の位置はわかるから、わたしに焦りはなかった。
実際、思ってた通りの場所にあったしね。
「たぶんあそこだと思う」
「どうしてそう思いますの?」
「看板に書かれた店名がころころ変わってるのは絶対あの人のお店でしょ」
「確かに」
そう、わたしが示した店の看板は、三種類の名前が気まぐれに変わり続けてる。
しかもその三種類いずれもが、わたしにとってはゲームで見たことのある店名だ。これは間違いないでしょう。
名前が常に変化してるのはどうせ、どれにするか決められなかったから全部にしよう、って感じだろう。レガ主はそういうことする。
「……入れますかしら。見た目だけだと完全に潰れたお店って趣ですけれど」
ドアの取っ手には一応、「営業中」って書かれた看板がロープで無造作に下げられてる。
だけどかなりボロボロな看板だ。書かれた文字がほとんど読めやしない。
建物はわりときちんと保全されてるっぽいだけに、ここだけギャップを感じる。中の様子も見えないし、これで営業中の店だとは思わないよなぁ……。
とりあえず取っ手を握って動かしてみる。看板の通り、きちんと問題なくドアは開いたけど……いや問題あったわ。一瞬ドアに古代魔法の紋様が浮かんだのが見えた。
だけど何かが起こる様子はない。普通にドアが開ききって、来店を知らせるベルがちりんちりんと鳴っただけ。
「……なんだったんだろう?」
「さあ……?」
首を傾げるわたしに応じて、ダフネも見えてないなりに首を傾げてくれた。
でもまあ、考えてもしょうがないか。ひとまず中に入ろう。
だけど開いた扉の向こう側は、昼間なのになぜか暗かった。店としてどうなんって思わなくもないけど、さっきの古代魔法の紋様を考えると、あるいはわたしを試そうとしてるのかもしれない。
だとしたら、ダフネにも最低限の覚悟はしてもらわないと……と思って顔を向けたところ、準備はできてると言わんばかりに頷かれた。頼もしい。
そんな彼女にわたしも頷き返して、手を差し出す。万が一ってこともあるからね。離れ離れにならないように、二人で手を繋いで中へと足を踏み入れた。
店の中は、外観同様にわりときちんと保全されてるようだった。埃っぽさは感じないし、蜘蛛の巣とかそういうものも見当たらない。ただ明かりがないからちょっと不気味かな……。
そう思った直後のこと。暗がりの向こうから、聞き覚えのある声が響いてきた。
「ボクのお店にようこそ! まさか休暇初回にいきなり見つかるなんて思わなかったなぁ」
声が聞こえたほうに目を凝らすと、そこには壁。そして肖像画。
額縁の中でにこにこしつつ、寿司ざんまい! みたいに両手を広げるのは、ハッフルパフローブの女の子。
ここまではいいんだけど。ローブの下に着てるのは、わりあい身体にぴったりしてる感じの……言ってしまえば全身タイプの水着っぽいもの。
っぽいっていうか、ほぼほぼ水着だコレ。19世紀の空気っていうか黎明期の雰囲気っていうか、とにかくそういう気配を感じるけど。
こんな格好をしてる人間がどれだけいることか。そう、レガ主だ!
「それから紹介するね。このお店を任せてるボクの友人で」
彼女はさらにそう続けて言った。すると直後、バチン、と特徴的な破裂音と共に、目の前に小柄な人影が現れる。
突然のことにダフネが小さく悲鳴を上げるのをよそに、その人影はうやうやしく頭を下げてきた。
「ようこそいらっしゃいました。ペニーはペニーと申します。ああ、こうしてお客様をお迎えするのは何年ぶりのことでしょう!」
ペニーと名乗った彼女は、大きな耳と目をしていた。小柄で細身で、みすぼらしい身体に、上等とは言えない服をまとっている。それからハンチング帽をかぶってる。
そう、ハウスエルフだ。そして彼女もまた、ホグワーツレガシーに登場する人物でもある。
あれから百年以上経ってるから、ゲームで見たよりも老けて見える。それでも立ち居振る舞いに老いは感じない。ハウスエルフの寿命は普通の人間よりもはるかに長いから、百年くらいは問題にならないんだろうね。
「初めまして、ペニー。リンだよ、よろしくね」
「ダフネですわ。よろしくお願いいたしますわね」
「はい! それでは、お二人様をご案内いたします」
ペニーが指を鳴らせば、店内に明かりがともった。店内の様子がよくわかるようになるのと同時に、壁や床、天井などなどあちこちから色んなものが次々と押し寄せてくる。
およそ半分は服飾関係みたい。ホグレガでもペニーに装備品を売るっていう体で出品してる感じだったようだし、これもある意味原作準拠って言えるのかも。
「ここはファッションのお店ということでよろしいですの?」
「んーや、何でも屋って言うのが正しいと思う。何せ基本的には、ボクが手に入れたものを好きなように売ってるだけだからさ。一応メインは二つあって、一つがミス・グリーングラスが言う通りファッション。もう一つが魔法生物由来の素材だよ」
レガ主のセリフを証明するように、服飾とは別エリアにずらずらっと並んだ素材は、種類も数もすごい豊富だった。
その様子にはちょっと驚いたけど、納得ではある。っていうか、原作通りって言ってもいいんじゃないかな。プレイの仕方にもよるけど、大量の魔法生物を保有できるもんね。
「……えっ!? あの、これ、もしかして不死鳥の羽では!?」
「はい、その通りです。ダフネ様はお目が高い」
「探していたのですわ……! ダンブルドア先生からなんとかして譲っていただけないか考えていたくらいで……あの、これおいくらですの?」
早速ダフネが素材に目を奪われてる。
不死鳥の羽、ジェネリック陰陽薬の改良に使えるかもって話してたもんね。
それ以外にも使い道ありそうだし、手に入るならほしかった。不死鳥自体が激レアすぎて、なかなか手に入らないんだよなぁ。
でもレガ主、ゲームでも実際に不死鳥も飼うことができた。羽がお店に並んでるのも当然だろうし、なんならそこそこ数がある可能性は結構高いと思われる。
「……さすがに日本の魔法生物のものはありませんのね」
「日本のとはあんまし縁がなかったねぇ。でもボクが飼ってた子は大体の場合保護した子たちだから、縁がなかったのはいいことではあるんだけどね」
レガ主は自嘲気味にそう言ったけど、ラインナップ見るにドラゴン各種はコンプリートしてるっぽいし十分すぎると思うよ。
サンダーバードとかホーンドサーペントまであるのも相当だ。ホグレガ終わったあとも、色んな冒険があったんだろうなぁ。
「リン、次に来るときはあのスーツケースも持ってきましょう。ここの素材、買い占めますので!」
「お買い上げありがとうございます」
「まいどありーってねぇ」
「ダフネちゃんが楽しそうで何よりだよ」
そういうことになった。
邪神のほのぼのデート回。
ふと思ったけど、シリアス回はともかく普通の回でえっちな話題が完全にゼロなのって、どんだけぶりだろう。
さすがに初ってことはない・・・はず。はず。