才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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31.そんな日もある

 普通に夕食が終わり、普通にみんなでえっちして、普通に寝て、普通に次の日の朝が来た。

 

 ……前回に引き続きもう一回言うけど、あれぇ??

 シリウスさん? シリウス・ブラックさーん? いませんかー?

 

 なんてすっとぼけたことを頭の中でつぶやいてみても、現状は何も変わらない。いつもの平和なホグワーツの朝だ。

 うーむ。クルックシャンクスの援護がないと、こうなるの? あの猫の存在意義って、実はかなり大きかったんだな……。

 

 でも考えてみれば、ある意味当然かもしれない。何せアズカバンを脱獄したシリウスは、杖を持ってないはず。いかに腕のいい魔法使いでも、杖なしで魔法を使えるのはまれだ。

 特にイギリス魔法界では。これがアフリカなら、むしろ杖を使う人のほうが少数派なんだけどね。

 

 今のシリウスにできることと言えば、せいぜいアニメーガスくらいだろう。その状況で、ホグワーツに外から侵入するのはまず無理……ってことなんだろうな。

 

 さてどうしたもんだろう。ダンブルドア先生が何か手がかりをつかんでればいいんだけど、朝食を食べてる彼からはそういうのがあったようには見えない。

 

 ホグワーツの近くまでは来てると思うんだけど……やっぱり探しに行かないとダメかな? ディメンターなら対処できるし、わたしが探しに出る分にはそこまで大きな問題にはならないだろうし……。

 時間はないけど、なんとか捻出するしかないかぁ。シリウスが無罪ってことは伝えてあるし、ハーミーたちにお願いすれば手伝ってもらえるだろうか。

 ディメンターがうろついてる中で手伝ってもらうのは危ないか? でも彼女たちも守護霊使えるようになってるし。

 

 ……ああでも、ディメンターと対面した状況で過不足なく有体の守護霊を出せるかどうかわかんないか。やっぱやめたほうがいいかも。

 

 と、そんなことを考えながらも、身体はてきぱきと純血の皆様方への給仕とお世話という日課をこなす。

 前世からやりたかった仕事の一つだから、ここで手抜きはしない。朝一に来て誰よりも早く食事を済ませてから臨んでるくらい、わたしはこの仕事が気に入ってるのだ。

 だからクラッブもゴイルも、毎朝本気で心配してくれなくてもいいんだぞ。気持ちは嬉しいけど。

 

 なんて思ったところで、視界の端で大広間の扉が開いてパンジーが飛び込んできた。

 なんだか慌ててるみたいだけど、どしたん? 話聞こか? もしかしてシリウスに遭遇でもした?

 

「ゼンポウジ!」

 

 はいご指名入りました。わたしはすぐさまパンジーのもとへ飛んでいく。

 同時に、スリザリンの人たちがじろりとパンジーに視線を集めたのも感じた。今年度始まってから、ずっとパンジーがわたしをいじめやしないか気にしてくれてたから、久々の「ゼンポウジ!」に警戒したんだろうな。気にしなくていいのにね。

 

 ただ、わたしがそうやってのんきしてられたのはここまでだった。

 

「はい、こちらに。お呼びでしょうか」

「ダフネがすごい熱なの! 医務室に運ぶのを手伝いなさい!」

「!? はい、ただちに!」

 

 パンジーの言葉に、わたしは気を引き締めた。

 

 ダフネが急に体調を崩すことは、そう珍しいことじゃない。去年もそうだったし、夏休み中もそうだった。

 だから対応自体はもう慣れたものだけど、毎回緊張はするよやっぱ。血の呪いが進行したんじゃないかって、不安になるんだ。

 今年度入ってからの体調不良は今回が初だし、余計に思っちゃう。

 

 そう考えながら急いで寮に戻ってパンジーたちの部屋に飛び込めば、そこにはうなされているダフネが。

 ベッドに近づきながら、魔眼を起動。視界に飛び込んできたのは、今までと変わらない、うっすらとした白い光に包まれてるダフネだった。

 

 思わずほっとする。よかった、どうやら今回も呪いの進行はないみたいだ。

 

「ダフネ様、大丈夫ですか? 意識はおありですか?」

「……とてもつらいですわ……」

 

 うわ、ひどい声。横光三国志ごっこができるなら案外大丈夫かもって一瞬思ったけど、そんなことない。これは普通に偶然同じセリフになっただけなやつ。血の呪いの進行はないけど、症状としてはなかなかだな。

 

 パンジーもいる手前、失礼します、と声をかけて額に手を当ててみれば、聞いてた通りすごい熱。これはガチなやつっぽい。鼻づまりとかがなさそうだから、風邪ではない、かな?

 

 とりあえず冷気の呪符を何枚か、額をはじめ身体のいくつかに貼ってダフネの身体を冷やしつつも、守護霊(イザナミ様)に医務室まで飛んでもらってマダム・ポンフリーに受け入れの準備を整えておいてもらう。さらにウィンガーディアム・レヴィオーサでベッドごと浮かべて、移動を開始だ。

 

 なお、ここまですべて無詠唱である。ダフネの不調とあらば、全力を出さざるを得ない。

 

 とはいえこれもいつものこと。パンジーも慣れたもので、特に驚くこともない。

 ただ、今回は今までとちょっと違った。道中の扉を開けたり障害物になりそうなものをどかしたりと、率先して手伝ってくれたのだ。

 

 去年までは心配はしてても具体的に何をすればいいかわからなくて、おろおろと遠巻きに眺めてるだけだったのに。

 パンジーにとって、ダフネはちゃんと友達なんだなって思える一生懸命な仕事ぶりだ。成長してるなぁパンジー。

 

「来ましたね。お二人とも、ミス・グリーングラスをこちらへ!」

「はい!」

 

 そうしてホグワーツ内を決して走らず急いで歩いて医務室にエントリーすれば、すぐさまポンフリーの声が飛んできたのでそれに従って行動する。

 まあ、ある程度のことをやったら医務室から追い出されるんですけどね。ポンフリー、本当に看護のバーサーカーだから……。

 

 一応、追い出される直前に診断の結果だけは教えてもらった。扁桃炎だって。

 軽症ではないけど、魔法薬でなんとでもなるから心配するなと言ってくれたので、これで一安心かな。

 

 魔法族は、マグルよりも丈夫だ。それは病気に対してもそうで、マグルがかかる病気にはあんまりかからない。かかっても、魔法薬があればすぐ治る。

 それに扁桃炎は、ダフネが体調を崩したとき一番かかってることが多い病気だ。ポンフリーにとってもいつもの病気だから、スムーズに対処してくれるだろう。ここまで来ればもう安心だ。

 

 ただ、これがいつまで続くかはわからない。ダフネがかかってる血の呪いがこの先進行すれば、もっと重篤な病気にかかる可能性はどんどん増えていくんだから。

 願わくば、血の呪いを解く手段を確立できるまで呪いが進行しないでほしいところだけど……それはさすがに難しいだろうなぁ。さすがにもう一、二段階くらいは進行するかも、って身構えておいたほうがいいんだろうなぁって最近思ってる。

 

「よかった、いつものすぐ治せる病気で。ダフネには悪いけど、ほっとしたわ……。早くよくなるといいんだけど……」

 

 医務室から追い出されて授業に向かう途中、パンジーはずっとそうやってダフネを心配していた。

 そこには普段の高飛車な感じとか、高圧的な様子は一切ない。普段のパンジーもかわいいけど、そうじゃないときもかわいいなぁ。

 

 え、お前は心配じゃないのかって? そりゃ心配だけど、ポンフリーが大丈夫って言ったならまあ大丈夫でしょ。

 実際、扁桃炎なら今までも半日から一日程度で治ってるからね。これが破傷風とか狂犬病とかだったら、さすがにわたしも取り乱すと思うけど……その辺のマグル界で死の病って言われるものでも、魔法薬なら大体治るしな。

 

 もちろん必要な知識がないと診断と、適切な魔法薬の処方はできないけど、ホグワーツにいる間はその辺は気にしなくっていい。信頼と実績のマダム・ポンフリーは、そこらへんちゃんとした知識と能力がある人だし、わたしも彼女の腕を信じてるから。

 

 ちなみにだけど、この手の知識をパンジーがポンフリーに教わってるって聞いたときはちょっとびっくりした。なるほどそれで色々動けたのか。

 なおわりと身内には優しいからか、意外にも筋はいいらしい。ただ知識を詰め込むのがやっぱりそこまで得意じゃないみたいで、合格点には程遠いとか。

 

「だって、何かあったときダフネのこと、助けてあげたいじゃない」

 

 帰り道、わたしのほうを見ずそう言ったパンジーの姿はただただかわいかった。友達想いなところ、本当に大好きだよ。

 これでヒーラーを目指してるとか、ポンフリーの後継者になりたいとかじゃない辺り、スリザリンだなぁとも思うけどね。徹頭徹尾、親しい誰かのためってのがもう……ね。

 

 そんなパンジーだけど、道中周りを少し見渡して誰もいないことを確認したあと、耳打ちしてきた。

 

「……ゼンポウジ、今回は例の呪いは……?」

「大丈夫です、まだ進行していません」

 

 わたしの答えに、パンジーはあからさまにほっとして息をついた。これも毎回のやり取りだ。

 そしてこの後に続くやり取りも、ほとんど毎回だ。

 

「ねえ、いい加減なんとかなんないの? まだ成果ゼロなわけ?」

「申し訳ありません、まだ……。あれこれ調べたり薬を調合したりしていますが、せいぜい呪いの症状を弱めるのが精一杯です。それも、それなり以上のお金を払って素材を集めないといけません」

「……はあー……」

 

 使えないわね、とでも言いたげな目とため息だった。

 これもいつものことで、最初のうちはこれに興奮してたわたしだけど……今はさすがに、そんな気にはなれない。

 

 だって、ダフネの解呪の研究があんまり進んでないのは事実だもん。わたしだって、不甲斐ないって思ってるんだよ。仕方ないだなんて言いたくない。

 だから神妙に謝罪したわたしに、パンジーは大広間に戻る直前、扉を開く前に、これまたいつものようにわたしのほうに向きなおった。

 

「……いい? お金なら私も出すわ。コネも貸したげる。だからなんとかして、ダフネの呪いを解く方法を見つけるのよ」

「もちろんです。今後も全身全霊を賭して、ことに当たります」

「ならいいわ……」

 

 そうして彼女は、次の瞬間顔を上げて扉を開けた。大広間に入る頃には、いつもの態度に戻っていた。

 

 だけど直前、わたしは彼女のつぶやきを耳にした。

 

「……お金を出すしかできないなんて」

 

 それは無力感に打ちひしがれてる声だった。いつも強気で勝気なパンジーにしては、すごく珍しい声色。

 

 だけど、彼女はスリザリンだ。同胞愛に満ちたスリザリン。友人の悲報に対して、思うところがあるのは当然なのだ。

 こういうところがあるから、パンジーのこと大好きなんだよな。元々たくさんいじめてくれるから好感度高いんだけど、たまに見せてくれるスリザリンらしい優しさの発露が本当に不器用で、愛おしくなる。

 

 それに実際、パンジーの(これはどっちかっていうとパーキンソン家かもだけど)資金力には助けられてるんだよね。わたしが自由にできるお金は、最近になるまであんまりなかったもの。

 今はなんとかなってるけど、それ以外にもパーキンソン家のネットワークを借りられるのは大きい。彼女の助けがあって手に入った素材もあるからね。

 

 そんなパンジーのためにも、絶対にダフネを助ける。グリーングラス家にかかった血の呪いを、解呪してみせるんだ!

 

 駆け寄ってきたアストリアと彼女に付き添うニコ殿下──あとついでに、無関係っぽく振る舞いながらも耳をそばだててるスリザリンの皆様、およびハーミーにも聞こえるよう──に、ダフネの容体を説明しながら、わたしはそう思ったのだった。

 




ダフネ回に見せかけたパンジー回。
穢れた血以外、特に友達にはちゃんと優しいパンジーです。
まあその穢れた血は、優しくされないほうが喜ぶんですけどね。
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