才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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7.ドラゴン騒動

 冬休みが明け。ホグワーツに戻ったわたしたちは、ハリーから謎の人物から送られてきた透明マントやみぞの鏡を巡る深夜の冒険を聞かされた。

 当たり前のようにハーミーは、規則破りや誰から送られてきたのかわからないものを安易に使うなんて、って声を上げたけど、夜の徘徊中にクィレル先生を脅しているスネイプ先生を目撃したという話を聞いて鎮火した。

 

 授業中に限らず、いつもおどおどしているクィレル先生はほとんどの生徒から舐められている。吃音症ってだけで、言ってること自体はめちゃんこわかりやすいのにもったいない。子供にはわかんないかなぁ、あのわかりやすさ。

 

 いやまあ、彼にヴォルデモートが憑依してることを考えれば、どこまでが彼でどこまでがヴォルデモートなのかは、見た目だけじゃわからないんだけど。

 

「み、ミス・ゼンポウジは、ほほ、本当にゆ優秀ですねぇ」

 

 それでもマンツーマンレッスンの合間合間に、そう言って朗らかに笑っていた姿は彼本来のものだって信じたい。

 

 そう、わたしは先生の部屋の常連だ。おかげで習得できた魔法は多いし、例の魔法の研究だってめちゃくちゃはかどった。これで魔法界では軽視されがちなマグル学やトロールに傾倒してなきゃ、他の子供たちも見る目が違っただろうに。

 

 ただ彼に近づくってことは、ヴォルデモートに近づくってことでもある。当初はハリーたちや原作イベントに関わる気がなかったから避けてたんだけど、クィディッチでの騒動以来巻き込まれるのは避けられそうにないのが確定的になったから、以降は開き直って関わりまくってる。利用できるものはラスボスだって利用してやるのがスリザリン精神ってモンだろう。

 

 だからなのか、クリスマスにはクィレル先生からもプレゼントが来てた。すわプレゼント爆弾かと警戒したけど、中身はわたしがまだ持ってない魔導書だった。普通に超ありがたかった。

 特に少しとはいえ、ギリギリ闇の魔術扱いにならないグレーな魔法が載ってたのが大きい。要するに体のいい闇の魔術の入門書だったわけだけど、普通の魔法だけじゃできないこともあったから正直かなり助かった。

 

 お礼には、英国王室御用達のお菓子詰め合わせを贈っといた。こいつでマグル学教授としての心を思い出してくれ。

 

 ちなみにハーミーへのクリスマスプレゼントはお揃いの杖ホルダーで、彼女からのプレゼントはお揃いのしおりだった。お互いにどっちも選択肢だったことがあとあと発覚し、考えることは一緒だねと笑いあったのはいい思い出。

 

 だいぶ話がそれたけど、ともかくそんなわけで子供にバカにされがちなクィレル先生は、今回も近いうちに脅しに負けるんじゃないかってロンに心配される始末だった。

 でも実際はクィレル先生こそが犯人だから、ハリーたちはまんまと騙されてるっていうね。言わないで神妙な顔して頷いておいたけど。

 

 これを受けて第二次スネイプ先生包囲網が発足することになったけど、その活動はハグリッドの所業で吹き飛んだ。ハグリッドときたら、休みの間に得体の知れない誰かから譲られたドラゴンの卵を孵化させようとしていたのだ!

 

 ……犯罪である。一部のファンの間ではハグリッドのアニマルクエストなんて揶揄されるくらい、ハグリッドは毎年何かしら魔法動物関係の問題を起こす。そしてその大半は、普通に犯罪だ。

 

 今回の件もその一つ。ドラゴンの無許可飼育は法律違反なので、バレたらアズカバン行きの確率は高い。

 まあ仮に犯罪じゃなかったとしても、未成年の子供たちが大勢いる学校という場所に、魔法使い殺しとも言われる危険生物を連れ込むなんて許されるはずがないんだけども。当然そんなの見過ごせるわけがない。

 

 ただ、一年生でそこまで頭の回る生徒はなかなかいない。法律違反だと知っているかどうかっていうよりは、違反行為、犯罪というものに対する危機感の薄さやバレてもなんとかなるだろうっていう楽観が強いからね。子供ってそういうものだ。

 特にハリーは、孤独な生活から魔法界に連れ出してくれたハグリッドを慕っているので余計に。

 

 実を言うと、わたしは主にスネイプ先生の監視役を任されていたから、実際にその場に居合わせたわけじゃない。だからその日、緊急で会いたいってハーミーから手紙が来て初めて「あ、もしかしてドラゴン騒動始まってる?」って思った。

 

「リン、大変よ! ハグリッドがドラゴンを飼おうとしているの! 私、それは犯罪よって言ったんだけどハグリッドったら取り合ってくれなくって……ハリーたちもなんだかんだ言って手伝おうとするし、このままじゃ何が起きてもおかしくないわ!」

「お、落ち着いてハーミー。そんなに一気に言われても困っちゃうよ。それに声のボリュームも落として……誰かに聞かれたら大変なことになるし。ほら、深呼吸して? それで順番に話してよ」

 

 顔を見てすぐにまくしたてるように言う彼女をなだめつつ、話を聞いていけば原作通りの展開だった、ってわけ。

 

 ただ、わたしの影響で原作よりミス堅物度合いが高い彼女は、ドラゴンのお世話には一切かかわらないと言い切ったらしい。

 なおこの表現はわたしがオブラートに包んだもので、実際には「私、犯罪に加担する気はないわ!」と相変わらずストレートな正論パンチをかました模様。それでこそわたしのハーミーだよ。

 

「……それで、ハーミーはどうしたいの? ハグリッドをクビにしたい? それともアズカバンに入れたいとか?」

「そこまでは言ってないわよ!? 確かに困った人ってことはわかったけど……でも、ちょっと話しただけでも、性根は優しい人だって大して親しくない私にだってわかったもの。良くも悪くも難しく取り繕ったりなんてできない人だって。だからそんな……第一、初犯の人をそこまでしようなんて!」

 

 初犯ではないんだよなぁ……という言葉を飲み込むのに、わたしはそれなりの努力が必要になった。ヒントは50年前。そして禁じられた森。現在進行形……と、それはともかく。

 

「もしアズカバンなら、わたしからマルフォイ様たちに上奏すれば一発だろうけど。そこまではしなくていいって思うのね? ハーミーがしたいのは、ひとまず穏便に終わらせたいってことでいい? ハグリッドの罪がどうこうっていうよりは、ハリーたちをはじめ学校の友達にケガしてほしくないとか、そっち方向?」

「そ、そう……ね。……ええ、そうね。ごめん、ありがとう。考えがまとまってきたわ」

 

 ここでようやく落ち着きを見せたハーミーは、深いため息をついた。気持ちはわかる。

 

「うん。私……私、誰にもケガをしてほしくない。特にリンが大ケガさせられちゃうかもって思ったらゾッとするわ!

 ……それに、もしそういうことが起きたときにきっとハグリッドは落ち込むわ。自分が悪かったんだって。それはその通りだし、仮にそうなったら反省はしてもらわないといけないけど……でも、何も起きないほうが良いに決まってるもの。誰もケガなんてしないうちに、きちんと大人として良識ある行動をしてほしい!」

「ん、わかった。それじゃあ……こういうことを報告するなら、マクゴナガル先生かな?」

 

 そういうことになった。

 

 ただ、ハグリッドがドラゴンを孵そうとしていると言っても、普通はそう簡単に信じてもらえるものじゃない。ドラゴンの卵なんて簡単に手に入るものじゃないし、良識常識で考えてもあり得ない所業だ。子供のいたずらって考えたほうが、まだ可能性は高い。

 マクゴナガル先生がまったく取り合ってくれないってことはないと思うけど、ハロウィンの日のことを考えるとちょっと危ないかも……って思いがある。だから念には念を入れて、わたしたちはまず証拠集めを優先することにした。

 

 ハーミーいわく、孵化にはまだそこそこかかるとハグリッドは言っていた、とのことで。とりあえず少しの間は大丈夫だろう。

 

***

 

 実はわたし、入学直前にカメラを買って持っている。

 なんでそんなものを買ったんだって? 決まってるでしょ、ハメ撮りのためだよ。他に何があるって言うんだ。

 

 ……いやごめん、さすがに盛った。ちゃんと他に用途はある。研究用だ。

 

 というのも、魔法道具の研究にも手を出したくてさ。カメラは手ごろな題材だったんだ。魔法道具、確かに1990年代初頭基準では便利なものが多いんだけど、2020年代半ば基準で見るとさすがにちょこちょこ不便なものあるからさァ……。

 

 あ、でもあれだ。ハーミーと付き合い始めてからはよく二人で写真を撮ってるよ。スマホの自撮りのノリで。

 最初は重くて大変だったけど、研究の結果ひとまず軽量化には成功してる。今はデジカメみたいに撮影即確認がしたいのと、動画撮影もできるようにしたくて、息抜き中とかにいじくりまわしてるところ。

 

 それがまさか、こんなところで使うことになるとはね。人生、何が役に立つかわからないものだ。

 これも本来の使い方? ごもっとも。

 

 まあ撮影したときの音とかが気になるけど、そこは消音呪文を使えばいい。シレンシオじゃなくてクワイエタスのほうね。

 あと見た目については、シンプルに目くらまし術で解決だ。これも初期の頃に習得した便利系魔法だね。ステルス迷彩は男のロマンなんだ。誰が何と言おうとロマンなんだ。オタコンもそう言ってる(言ってない

 

「ええ……? リン、もうそんな魔法が使えるの? 確かそれ、一年生の範囲じゃないわよね」

「生活に便利なやつは優先的に覚えたんだ。純血貴族の方々がコツを教えてくれたよ」

 

 嘘です、教えてくれたのは主にクィレル先生です。

 でも純血の彼ら彼女らが気まぐれに、親から教わった魔法を自慢したくて使ったりコツを語ることはあったから、百パー嘘ってわけではない。本当だよ。本当のことを言ってないだけ。

 

「負けてられないわ……! すぐに追い越して見せるんだから!」

 

 そしてこれに対して、まっすぐにそう返せるハーミーは本当にいい女だと思う。追いつく、じゃなくて追い越す、ってところが最高だよ。

 

 ともあれそんなやり取りはあったものの、証拠の写真はわりと簡単に撮れた。ハリーたちがいないタイミングを狙ったし、ハグリッドは卵に向かって胎教よろしく声掛けを続けてたから、シャッター音が鳴っても聞こえなかったかも。

 

 正直一番大変だったのは、ドラコたちスリザリンの同僚たちに一切会わないで最後までやり抜くことだったまである。彼ら、特にドラコに知られようもんなら、絶対ハリーを貶めるための策に使われてただろうから……ね。

 

 とはいえ、マクゴナガル先生に提出できればこっちのものだ。この世界におけるドラゴン騒動は一件落着である。

 ハグリッドは特大の雷を落とされたけど、誰かが死んでからじゃ遅いしね。残当ってことで。

 

 ただし、孵化寸前まで行った卵はそのまま孵化するまで育成されることにもなった。東アジアのほうには孵りかけの卵を使った茹で卵料理が存在するから、文化圏によっては違う考え方をするんだろうけど……少なくともイギリス魔法界の面々は、孵りかけの卵を放置するのは倫理的にアウトだと考えたらしい。

 

 結果、正式に魔法省から許可を得て、その成長過程を臨時授業の扱いでホグワーツ生全員に閲覧する権利があるとされた。

 魔法生物飼育学をまだ受講できない下級生たちは遠くから眺めるのみにとどめられたけど、それでもほとんどの子供たちは大喜びだった。やっぱドラゴンは魔法族にも人気なんだなって。ま、災い転じてなんとやら、で済んで何よりである。

 

 このために数人のドラゴンキーパー(うち一人は原作同様ロンの次兄チャーリーだった)がホグワーツに派遣されてきたので、ホグワーツの話題は一時期それ一色だった。

 ハグリッドと一緒に卵を無断で孵そうとしていたハリーとロンが、二人で合計50点という失点を食らったうえで夜の罰則を言い渡されていたけど、魔法界でも珍しいドラゴンの孵化と育成が間近で見られるというセンセーショナルな話題でかき消されていた。

 

 原作だと150点もの失点を食らって針の筵状態だったわけだから、彼らには感謝してもらいたいところさん。

 

「うっ、うぅっ……! なぜ……なぜ俺ァあそこにおらんのだぁ……!」

「うん……こればっかりは仕方ないって思うぜハグリッド。なあハリー?」

「はは……その、まあ、うん……そうだね。ごめんハグリッド、これはさすがにロンの言うのが正しいよ……」

 

 なおハグリッドへの罰則は、途中まで手塩にかけて育てた卵を無関係のドラゴンキーパーによって孵され、おまけにイチャついているところをハンカチをくわえて眺めていること、とされた。

 もちろん意訳で、実際には孵化と育成に関わったドラゴンキーパーたちは赤ちゃんドラゴンからたくさん傷をもらってた。ただやっぱドラゴンとのかかわりを生業に選ぶような人たちは大体ハグリッドの同類みたいで、みんな嬉しそうだったからさ……。そういう意訳が一番適切かなって……。

 

 まあ、きちんとした手順を踏んでればあそこにいたのはお前だったんだぞ、っていうハグリッドへの無言の圧力も感じたけど。見方次第ではNTRめいたものを感じて、人の心ないんか案件に見えなくないし。

 

 ただ彼の前科を考えれば十分すぎるくらい有情なんだよなぁ……と、生まれたばかりで早くも暴れまわるノーベルタちゃん(メス)を遠巻きに眺めながら、わたしは思ったのだった。

 




クィレル先生の授業が、吃音はともかくちゃんと聞けばわかりやすいってのは完全に独自設定です。
彼の実力はどれだけ盛ってもいいものとされている(されてない)から・・・。
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