才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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45.鬼のいぬ間に

 もうちょっと時間が進んで、二月。もう一時間半ほどでグリフィンドールVSレイブンクローの試合が開催されようという、朝のことだった。

 

「ねえリン、グリフィンドール寮の合言葉ってわかりますこと?」

 

 朝食を終えて、さて今日も必要の部屋であれこれするために準備しよう、と思って寮で教科書類を整理してるときのこと。ダフネからそう聞かれたわたしは、首を傾げた。

 

「今のはわからないけど、調べようと思えばすぐに調べられるよ。でもそれ知ってどうするの?」

「アストリアが、他の寮に入ってみたいと言っておりますのよ。リンも去年、入りましたわよね。あのときは危険だらけでしたけど」

 

 後半をやや咎めるような言い方で締めくくったダフネに、わたしはいやあと苦笑い。

 

 確かにそれはそうなんだけど、あのときはそれが最善だったわけでして。大目に見ていただきたいなぁ、なんて思ったりして。

 

「……ああ、だから今日なんだ」

「ええ。クィディッチの試合中なら、まず大半の生徒は競技場でしょう?」

「個人主義者が多いレイブンクローはともかく、グリフィンドールの人はみんな出払ってるだろうね」

 

 クィディッチに関して熱狂が過ぎる魔法族の性質は、大体みんな共通だ。中でもお祭り騒ぎが大好きなグリフィンドール生は、その傾向が強い。

 ましてや自分たちのチームがやる試合となれば、全員観戦に出てる可能性はかなり高そうだ。ハーミーも、さすがにこういうときばかりは現地で観戦するもんなぁ。今日もハリーの応援に行くって言ってたし。

 

 ちなみにハリーの箒は、結局わたしの昴48式になった。ファイアボルトはまだ戻ってきてない。原作と違ってマクゴナガル先生への発覚が遅れた分、試合に間に合わなかったらしい。

 

 ファイアボルトさえあれば……とは言ってたけど、わたしがたくさん改造した昴48式も悪い箒じゃないはず。

 少なくとも、カタログスペックはニンバス2000くらいあるはずだから、心置きなく勝ってもろて。

 

「クィディッチにそこまで熱狂する人の気持ちはよくわかりませんけれど、チャンスなのは事実ですからね。せっかくだからリンもいかがです?」

「誰もいない、って思ってるところに誰かいても困るね。わかった、ついてく」

 

 わたしがそう答えれば、ダフネは嬉しそうににっこり笑った。

 

「えっえっ、あのお姉さま、合言葉だけ教えていただければアストリアたちで行きますので……」

 

 ところが、わたしとダフネも一緒に行くと知ったアストリアが目に見えてうろたえたのを見て、わたしの中のメガネの小学生が「妙だな……」と声を上げた。

 

 彼女との付き合いは、まだ一年にも満たない。それでも交流の頻度は相応で、それだけあれば彼女がどういう性格なのかはおおよそわかる。

 アストリアという女の子は、嘘がヘタクソなんだよね。すーぐ顔に出る。なんだろう、めっちゃ素直なんだよ。

 

 この辺は、良くも悪くもスリザリンっぽくない。組み分け帽子が他の寮も提示したのもわかる気がするし、ルーナにあてられるような形でわたしを拝みかけたのもわかる気がする。

 

 要するに、純粋培養の箱入り娘。この辺はダフネがずっと大事にしてきたからなんだろうなってわかるんだけど、だからこそ今目を泳がせてるアストリアが何かを隠してるっぽいぞってくらいの推測は簡単にできるんだよね。ダフネは筋金入りのシスコンだから、気づいてないみたいだけど。

 

「まあまあリアちゃん、ええやないの。何かあったとき、お姉様や先輩もいてくれはったほうがうちらも気楽やない?」

「そ、それはそうだけど……」

 

 なおアストリアの隣には、もうすっかりセットみたいになってるニコ殿下もいる。

 彼はいつも通りのはんなりした京美人って感じだけど、その笑顔はいつもよりなんか胡散臭い。こっちはこっちで何か隠してそう。

 京言葉だから余計にそう感じるんだろうか……って言ったら、京都の人に遠回しにボロカス言われそうだな。

 

 そんなことを考えてるわたしをよそに、ニコ殿下がアストリアに何やらささやいた。これを受けて、アストリアもようやくうんと頷いたわけだけど……はてさて、何を吹き込んだことやら。

 まあいいや。何かたくらんでても、そのときはそのときだ。

 

 ということで、生徒はおろか先生までクィディッチ競技場に出払ってるおかげで、めっちゃ静かなホグワーツ城内を歩く。

 

「太ったレディには、スリザリン生ということがバレないよう隠れて入ったほうがいいと思いますが、アストリアもニコ殿下も目くらまし呪文は使えますの?」

「はいな。まあその、この手の魔法はそんなに得意やないんですけども」

「え、えーっと、その、えへへ」

 

 ダフネの問いに微笑むニコ殿下に対して、アストリアはごまかすように笑った。うーんこの。

 

「アストリアは素直ないい子ですから、この手の魔法は苦手かもしれませんわね……」

 

 対するダフネのリアクションよ。本当にこのお姉ちゃんはよ……。

 

 というか、得意不得意以前に日本の魔法学校、マホウトコロはホグワーツと違って7歳から入学できる。

 ましてや皇族のニコ殿下だ。11歳とはいえ、既に何年も魔法を学んでるだろうから、アストリアとは魔法の腕前に差があるのは当たり前だと思うよ。

 

「……妹様。目くらまし呪文は覚えておくに越したことはないですよ。いたずらするときとかにも便利ですし」

「はぁい、がんばって覚えるのです!」

 

 わたしの忠告に、ぎゅっと手を握って応じるアストリアはかわいい。

 

「今日のところはうちがリアちゃんにもかけます」

「うー、ニコちゃんいつもありがとなのです」

「気にせんといてな。うちとリアちゃんの仲やないの」

 

 そしてそんなアストリアの手を取って、にっこり微笑むニコ殿下もかわいい。傍目には、ロリ二人のてぇてぇに見える。

 

 ──だが男だ。

 

 久々にそんなことを考えつつ、グリフィンドール寮の入口近くまでやってきた。

 改めて全員が姿を隠したのを確認しつつ、わたしは魔眼を解放しつつ、太ったレディの前で杖を振る。

 

「レベリオ。……ん、おっけーわかりました。じゃあ開けま……す、ね……」

 

 魔眼が即座に合言葉を見抜いたから振り返って、みんなの了解を取ろうとしたところ。わたしの魔眼はみんなの後ろにたたずむドラコの姿をとらえてしまって、思わず言葉に詰まった。透明マントかぁ。

 

 わたしと目が合ったことに気づいたんだろう。ドラコは慌てて口に人差し指を当てるジェスチャーをしてきたので、何か考えがあってのことだとは理解したけど。

 

 同時に、それが何なのかを考えてしまって、わたしは一瞬気が遠くなった。

 自身もクィディッチ選手であるドラコが、クィディッチの試合を見ずにグリフィンドール寮に入ろうとしてるとか、絶対何かあるやつじゃん。

 

 ただこのタイミングで彼がこんなことをするとなると、わたしは()()()()()……って思わざるを得ない。だけど、それが本当にあり得るのかとも思っちゃうんだよな。

 

 まあ、ここであれこれ考えてもしょうがない。とりあえず、中に入っちゃおう。

 ここまでの思考時間、約一秒。わたしは改めて、太ったレディに合言葉を告げた。

 

「ワンプスキャット」

 

 するとあっさりと扉が開き、わたしたちはグリフィンドール寮へと踏み込むことに成功した。

 寮内には、人の気配がない。どうやらマジで全員競技場にいるみたいだ。まあここで大差つけて勝っておかないと、今年度のクィディッチ優勝には届かないもんな。応援にも力が入るってものだろう。

 

「ふあー、ここがグリフィンドールの寮……」

「スリザリンと比べると、全体的に暖色系ですわね。それも赤いですわ。やはり赤がシンボルカラーなだけはありますわね」

 

 そんな寮の様子を見て、グリーングラス姉妹が興味深そうに口を開く。

 わたしもなんだかんだで、きちんと談話室を見るのは初めてだな。今まで侵入したときは毎回夜だったし、しっかり観察する時間もなかったもんなぁ。映画のシーンは覚えてるんだけどね。

 

 ただ、スリザリンの談話室に慣れた身からすると、ちょっと明るすぎる気もする。日中とはいえ、もう少し光量落としてもいいんじゃ?

 

「わたしは……スリザリンの談話室と比べると眩しく感じちゃうかも……」

「こうして見ると、スリザリンとはほんまに向いてるほうがちゃうんですね。でもうち、こういうんも好きですわぁ」

 

 そんなわたしに対して、ニコ殿下は好意的に受け止めてるみたいだ。なんだかやけに嬉しそうにニコニコしてるみたいだけど、そんなに気に入ったんだろうか。

 

 ちなみにわたしのセリフに対して、ドラコが無言でうんうんと頷いてた。先祖代々スリザリンだろう彼はまあ、そうでしょうとも。

 とはいえ、ドラコが談話室にとどまってたのはわずかだった。彼はほどなくして、寝室のほうに足を向けたのだ。一体そっちに何の用があるんでしょうねぇ……。

 

 相変わらず彼の目的がつかみきれない中、視界の端をそっと移動してるドラコの足元に転がってたブラッジャーらしき鉄球(動いてないから違うかも?)を、無言呪文でそっと移動させておく。

 あれはほっとくと踏んづけてすっころぶルートだったと思う。他のメンツは談話室内のあれこれに目が向いてたから、運よく目撃されることはなかった。

 

「……ダフネちゃん、わたしちょっと寝室のほうに行ってくる」

「何かありましたのね? わかりましたわ、ここはわたくしが引き受けますわ」

 

 そして談話室から脱出したドラコの背を見送ったわたしは、こっそりとダフネに声をかける。返事は即座に任せろ、だった。

 いやあ、さすがにここ二年間行動を共にしてきただけのことはあるよね。詳細はわからずとも、わたしが無駄なことするはずがない、わたしがやることには何かしら意味があるって信じてくれてる。

 

 そういうことならありがたくお言葉に甘えて、わたしはそっとドラコのあとを追いかけた。ドラコは男子寮の部屋の前を一つずつ確認しながら進んでたから、幸い追いつくのはすぐだった。

 その彼に、声をかける。

 

「マルフォイ様、こちらにはどのようなご用件で?」

「来たか。ま、バレた以上は来ると思ってたよ」

「恐縮です」

 

 彼は大して驚くことなく、鷹揚にこちらを見た。

 そのままふんと小さく鼻を鳴らした彼に、頭を下げる。どうやらお見通しだったみたいだ。

 

 だからか、彼はいつものようにわたしに声をかけた。いつも通りの、貴族がしもべに指示を出す口調でだ。

 

「ゼンポウジ、ウィーズリーの寝室を探せ。僕はこちら側を調べる。お前はそちら側を見ていくんだ」

「……かしこまりました、ただちに」

 

 その指示に了承を返しながら、わたしは内心で結構な大声を上げたよね。

 

 これは、これはもしかして、()()()()()()なんじゃあないですかぁ!?

 だとしても一体全体、何が起きてるんだってばよッ!?

 




QFK(急にフォイが来たので)
次回から、今章の答え合わせです。
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