才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話 作:ひさなぽぴー
ロンの寝室は、あっさり見つかった。大観衆のクィディッチ競技場にペットのネズミは連れて行かないだろうと思って、魔眼とレベリオを展開したらすぐだった。
それだけで答えを見つけたわたしは、なんでその魔法でわかるんだって言いたげな顔に促されるまま、室内に侵入を果たした。
「うわ、汚い部屋だな……まったく、これだからウィーズリーは」
その様子を見たドラコの第一声がこちらです。
ホグワーツの寮は基本相部屋だから、部屋が片付いてないのはロンだけの仕業じゃないはずなんだけどな。
でもドラコにしてみれば、とりあえずって感じでロン……っていうかウィーズリー家を罵倒するのは、もうそういう生態みたいなもんだからね。
ロンのほうも、マルフォイ家と聞けば一言目には悪口だから、お互い様ってやつだよ。
ただ、散らかった部屋に対してどこをどうするべきだとか、どういう風に教わったんだとか言うところは、普通にオカン適性高いと思うよ。そりゃあそんなあだ名も広まりますわ。
「僭越ながら、マルフォイ様? この部屋でどうなさるおつもりでしょう」
まあそれを見てても仕方ない。アストリアやニコ殿下をいつまでもほっとくわけにはいかないし、わたしはすぐに話を進めることにした。
やっぱり狙いはスキャバーズ? なんだかドキドキしてきた。
「あ、ああ、そうだな。……いいかゼンポウジ、目当てはネズミだ。ウィーズリーのネズミを持って来るんだ」
果たして、ドラコの目的はスキャバーズだった。その言葉を聞くと同時に、わたしはウッソだろと思いつつも、どこかでやっぱりなって思うところがあった。
うん、間違いないと見ていいだろう。この状況でスキャバーズを狙うとか、シリウスの依頼を受けてやってきたとしか思えない。
なんてこった。今年度、物語からフェードアウトしたクルックシャンクスの代わりにシリウスの協力者として動いてたのは、ドラコだったのか……!
状況的に考えるに、アストリアとニコ殿下もグルだな? そうじゃないと、こんな急にグリフィンドール寮に入ろうなんて話になるはずがない。
最近二人がスキャバーズをよく見てたのも、そういうことか。くそう、よくよく考えるとヒントあったんだな。
ていうか、いつからだろう。いつからグルだったんだ?
……そう言えば、10月かそこらに三人で行動してるときがあったような。ドラコがなんだか妙な反応してたような……。
まさかあのとき……!? あのときからか!? わりと初期じゃん!?
くっ、いやでも、まだ可能性は……そうじゃない可能性はあるはず……!
たとえばそう、クィレル先生の授業の影響でネズミ人気が高まってる昨今だし、普段の関係性からして、ロンへの嫌がらせって可能性もなくはない……はず……!
「アクシオ。……こちらでよろしいでしょうか?」
思わず天井を仰ぎたくなる気持ちを抑えながら、アクシオでスキャバーズが入った籠を引っ張ってくる。突然の出来事に、スキャバーズが籠の奥に身を寄せてわたしとドラコを警戒してる。
「うん、それだ。よくやったぞ」
「籠ごと持っていくと、何かあったと気づかれるでしょう。気絶させて、連れ出したほうがよいかと……」
「ああ、それでいい。任せる」
ということで、スキャバーズにはステューピファイをかけまして、と。どこか諦めたようなすすけた表情で、無抵抗に赤い光を食らったスキャバーズの姿がやけに印象的だった。
念のためインカーセラスで縛っておいて……中からスキャバーズを取り出す。ドラコに渡すに当たって、素手だと気にしそうだから薄手の手袋も一緒に渡しておこう。これくらいはなんなく作れる。
「相変わらず見事な腕だ。お前に気づかれたときはどうしたものかと思ったが、こうもあっさり済んだなら気づかれてよかったかもしれないな」
「恐縮です」
穢れた血を手放しに誉めるという、グリフィンドール生が聞いたら目と耳を疑いそうなことをしつつ、ドラコはスキャバーズをしげしげと見ていた。
その目は、どこか疑わし気だ。何をそんなに気にしてるのか……と思うけど、これはあれかな。スキャバーズの正体を聞かされていて、だけどそれが本当なのかは信じ切れてないって感じ?
少なくとも、スキャバーズの正体は聞いてそうだな。そうじゃないなら、ただのペットのネズミにそんな目を向ける理由がないと思うもん。
「……なんでこんなことをするのか、とでも言いたげだな?」
「それは。……その、恐れながら、はい」
そんなことを考えてたわたしにも、ドラコはちらりと横目を向けてきた。否定しようとも思ったけど、純血の彼の言葉を否定するなんてわたしにはできない。
まあ下手なことを言って勘気を被るのもそれはそれでアリなんだけど、ドラコの場合身内を害されない限りは完全にブチギレたりしないだろうし、素直に従っておいたほうが今の状況的にはいいんだろうな。
命拾いしたな。変態に目をつけられずに済んだぞ。
「詳しい話はいずれどこかで話すさ。僕にも事情ってものがあるんだ」
と、それはともかく。ドラコはそれだけ言うと、スキャバーズを懐にしまいながら手にしていた透明マントを改めて身に着けようとする。
「ただまあ……そうだな。これは僕の杖に誓って言うが、決して誰かを貶めるためにしてるんじゃない。自分で言うのもなんだが、ウィーズリーに対してすらそうだ。むしろ逆なんだよ。……と、今はそれだけ覚えておけばいいさ」
さらにキメ顔でそう付け加えた彼に、わたしはマジで本気でびっくりした。思わず目を丸くして、絶句しちゃう。
それは、あれか。貶めるの逆って、つまり、もしかして、ドラコはシリウスの冤罪を晴らそうとしてる……ってコト……!?
杖に誓う、って言葉の意味は結構重い。特に彼みたいな純血にとって、それは日本のマグルがやるような「指切りげんまん針千本……」なんかとは次元の違う、文字通りの約束を示す言葉だ。
マグル生まれの生徒がたまに冗談めかして使ってるところを見るけど、そんなのとんでもない話なんだよね。
それを他人に、しかもたかが穢れた血に向けて言うってことは、それだけドラコにとって決意と覚悟があることを意味してるはず。杖に誓って誰かを貶めるつもりはない、って言うなら、そこに嘘はないはずだ。
もちろん破れぬ誓いみたいな強制力があるわけじゃないから、純血であっても善悪の判断が弱い子供のうちは破ったりもする。
あと、酸いも甘いもかみ分けられる年齢になったら、そういうものでも普通に気にせず破ってくる人もいる。でも今のドラコは、まだそこまで擦り切れちゃいないだろう。
それだけのことを、ドラコが? グリフィンドールのシリウスにしてる? い、一体何があったって言うんだ……。
だけど、同時にこうも思う。もしドラコがシリウスのために行動してるなら、わたしはもう下手にあれやこれやしないほうがいいのでは? って。
だってわたしはシリウスの無実を知ってるし、わたしから報告を受けてるダンブルドア先生もそこはほぼ疑ってないはず。このまま彼らをダンブルドア先生に繋げちゃったほうが、色々と面倒も少ないんじゃない?
コンマの合間にそう考えたわたしは、よっしゃと気合を入れなおすと、透明マントをかぶりなおしたドラコに爆弾をぶちかますことにした。
「もしかして、シリウス様が関係しておりますか?」
「んぶっふぁ!?」
爆弾は無事炸裂し、ドラコは透明マントを取り落としながら思いっきりむせた。実にいいリアクションだ。
彼はそのまましばらくむせながらも、信じられないものを見るような目でわたしを見ていた。とりあえず一言断りを入れて、背中をさすってあげよう。
「な、なん、なぜそれを!?」
あ、言っちゃうんだ。この辺は、なんだかんだでドラコもまだまだだね。パパフォイなら、動揺はしてもうっかり口を滑らせることはなかったんじゃないかな。
「申し訳ありません、カマをかけさせていただきました」
「お、お前……! くっ!」
わあ、くっ殺みたいな顔するじゃん。
こういうとこ見ると、いじりがいあるなって思っちゃうな。あらゆる才能が内包するSの才能がうずいてる。
とはいえそれは表に出さず、わたしは話を続ける。
「シリウス様は無実なんですよね。真実は逆……あの日、ハリーのご両親を、シリウス様を裏切ったのは、ピーター・ペティグリュー。そうですよね?」
「……ッ!? な、お、お前……!? な、何を、どこまで知って……!?」
「わたし、たまにわたしが本来知るはずのないことを知ってるんです。過去現在未来、関係なく……不意にそれが『視える』。一種の予見者みたいなものだろうなって思っていますが……」
たとえば来年度、クィディッチリーグが中止になる代わりに三大魔法学校対抗試合が開催されることとか、と言えば、ドラコは目の色を変えた。すぐに真面目な顔に戻ったけど。
「いつでも好きなように見えるわけじゃないので、わからないこともあります。シリウス様がどうやってアズカバンを出たのかはわかりませんし、スキャバーズが今回の件でどうかかわって来るかもわかりません……状況的に推理はできますけど」
「……その先は言うなよ。わかってたとしても、だ。いいな」
「はい。……ですがマルフォイ様、わたしはこの知識を、9月にはもうダンブルドア先生と共有しておりまして……」
「は? ……は? え? だ、だとしたら……ダンブルドアは、知っているのか? あの人が、無実だってことを?」
「証拠は提示できていませんが、先生はそうだと見てくださっております。そして、証拠に繋がるものが見つかったら報告するように、とも指示を受けております。
なので……その……もしマルフォイ様が、シリウス様のために行動しておられるなら、ここはダンブルドア先生に話を持って行ったほうがよいかと……色んな意味で……」
そこまで説明したところで、ドラコは勢いよく天井を仰いだ。
さらに数秒後、やってられるかと言わんばかりに、そこらへんに転がっていた誰かのトランクを蹴っ飛ばした。
「……くそっ! それじゃあこの半年間、僕
なんてことを言いながら。
うーんなんだろう、両津にマジ切れしてる中川を見てる気分。角刈りのせいで全部パァになるだろうがって叫んでる姿がダブるダブる。
だけどやっぱりそうか、そういうことか。ドラコがシリウスをかくまってたのか。そりゃどれだけ探しても見つからないはずだよな。
慎重であれこれ考える性質のドラコなら、シリウスが勝手な行動しないようにするだろうしなぁ。深く考えることなくハリーに会いに行こうとするシリウスを、身体張ってとめてたんだろうなぁきっと……。
っていうか、シリウスめっちゃ近いところにいたんだな……。マジですぐそこじゃん……。灯台下暗しとはまさにこのことか……。
「おいゼンポウジ!」
「はい」
ひとしきり悪態をついて、地団駄も踏み終わったあと。ドラコはキッとわたしをにらみつけて、大声で指示を飛ばしてきた。
「ダンブルドアに連絡を入れろ! 今すぐに! あの考えなしで、穀潰しの、ダメ犬を! 引き渡してやる!!」
「ハイヨロコンデー!」
どうやら、めっちゃくちゃ鬱憤が溜まってるらしい。クラッブとゴイルのお世話でもここまでしないぞ。
……もしかしてだけど、ここ最近疲れた顔してるのが多かったのって、シリウスの相手にマジで疲れてたからか?
だ、誰にも知られるわけにはいかない苦労とドラマが、さぞかしいっぱいあったんでしょうね……。お労しやフォイ上……。
でも原作者直々に、閉心術の才能があるって言われてるだけはあるな。わたし、ドラコがそういうことしてるって全然気づかなかったし、そういう気苦労をずっとしてたこともわかんなかったよ。
え、ハーミーたち女の子しか見てなかったんだろって? それは……その……そ、そういうこともあるかもしれないね?
と、ともかくそういうことならと、わたしは早速守護霊ことイザナミ様を呼び出して、校長室に伝言を飛ばすのだった。
真相は、そういうことだ。
つまりドMはずっと空回りし続けてたってことになりますね。ありもしないものを探して右往左往するお前の姿は実に滑稽だったぜ!
その裏でシリウスをひたすら抑えてたドラコの気苦労よ。