才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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47.ハリー・ポッターとアズカバンの囚人with転生者 上

 わたしからの連絡を受けて、ダンブルドア先生はクィディッチが始まる前にもかかわらず、急いで駆けつけてくれた。並の魔法族なら試合を見てからってなるかもだけど、さすが今世紀最も偉大な魔法使いは格が違うね。

 

 そしてわたしたち五人は、揃って校長室であれこれと事情聴取を受けることになった。これがまあそれなりに時間がかかりましたね。

 

 わたしとドラコは当事者だし、やっぱりグルだったアストリアとニコ殿下も当事者だから当然ではあるけど、その場に偶然居合わせただけのダフネについては完全にとばっちりだよなぁ。去年のことがあるからか、別に嫌そうにはしてなかったけどさ。

 

 で、聞き取りが終わった頃にはクィディッチも終わってて、すぐにハリーとロンが校長室に呼ばれることになった。

 現れた二人は、一応自制してる様子はあったものの、明らかにテンションが高い雰囲気だったから、こりゃ試合はグリフィンドールの勝ちかな。ドラコが渋い顔だ。

 

 わたしたちほぼ校長室にずっといたからそんな彼らを出迎える形になったんだけど、二人はダンブルドア先生を見て表情を引き締め、ドラコを見て顔をしかめ、ついでわたしを見てきょとんとして、最後にグリーングラス姉妹とニコ殿下を見て首を傾げた。

 気持ちはわかるよ。二人からしたら、どういう集まりかわからないと思うもん。ただのスリザリンの集まりじゃない、ってことくらいはわかるかもだけどさ。

 

 あ、ちなみにスキャバーズはダンブルドア先生の指示で元の場所に戻してある。そのうえで、ロンに連れてきてもらうって形を取ってる。だから彼は今、籠をわきに抱えてる。

 きちんと手順を踏んで、今の飼い主であるロンに連れてきてもらうのが筋だろう、ってことでね。ドラコはめんどくさそうにしてたけど。

 

 そのスキャバーズは、籠の中ですべてを受け入れる覚悟を固めた死刑囚のような、凪いだ表情で立っていた。

 一匹だけ画風が違う。ここだけジャンルが変わったみたいだ。原作とはえらい違い。

 なんか君、原作と色々違わない? なんかあった?

 

 で。ダンブルドア先生に勧められるまま、用意された椅子におずおずと座ったハリーは、おずおずと問いかけた。

 

「あの、校長先生……? 僕たち、一体どういう理由で呼び出されたんですか……?」

 

 隣で同じく座ったロンが、これに応じるようにしてうんうんと何度も頷いてる。

 

「うむ。今巷を騒がせておる、シリウス・ブラック氏の件で進展があったのでな。当事者のハリーには聞いてもらわねばなるまい……ということで、わざわざ足を運んでもらったのじゃ」

 

 この説明に、ハリーとロンはますます首をひねった。この説明じゃ、ロンまで呼ばれてることはカバーされてないから、仕方ない。

 だけどダンブルドア先生はこれについてはひとまず触れず、話を進めていく。

 

「彼がどういう人物か、ハリーはどこまで知っておるかのう?」

「えっと、ピーター……ピーターなんとかさんと、マグルをたくさん殺した人ですよね? ヴォル、例のあの人の部下で……それで、例のあの人を倒した僕を恨んでいて、殺すために脱獄したって聞いてますけど……」

 

 困惑した様子で、ところどころつっかえながらも話したハリーを見るに、シリウスが父ジェームズの親友で、彼を裏切ったっていう世間の言説までは聞いてないみたいだ。それを知ることがないようにわたしは立ち回ってたけど、成功してるようで何よりですね。

 ここでハリーが、シリウスに対して復讐心をたぎらせてるようだと話がややこしくなる。誤解だって言っても、最も身近な家族の死に関わる話だもん。簡単に解いてもらえるはずがないもんね。

 

 だからだろうか。ダンブルドア先生はまるで安心したとでも言いたげに、微笑んだ。わたしも同じ立場ならそうしてたかもね。

 

「うむ、世間のものはみなそう思っておるじゃろうし、魔法省もそう判断しておる。なんならわしも、つい最近まではそう思っておった」

「……?」

「じゃが、そうではない可能性が出てきた。つまりの、シリウス・ブラック氏は無実の可能性がある。そういう話なのじゃ」

「「えぇっ!?」」

 

 そして告げられた言葉に、ハリーとロンは揃ってのけぞりながら、大きな声を上げた。息ぴったりだなぁ。

 

「わしがそれを知ったのは偶然じゃ。過去の出来事を垣間見ることができる人物から、たまたま知る機会を得てのう」

「そ、そんなことあるんですか!?」

「これがあるのじゃよ。魔法界はまこと不思議に満ちておる。とはいえわしも百年以上生きておるが、まだ二人しか会ったことがない。珍しいのは間違いないじゃろうな」

 

 ダンブルドア先生のこの言葉に、ドラコの視線がちらっとよこされた。こいつみたいなのがまだ一人いるのか、って感じの目だ。

 

 いるんですよ。いたんですよ。

 方向は違うけど、度し難さについてはどっこいの二人ですね。

 

 お前はアバダで! 俺はスケベ! そこに何の違いもありゃしねぇだろうが!

 

「そんなわけで、わしはシリウスに会わねばならんと考えた。もしこの話が事実だったなら、わしらは無実の人物をアズカバンに十二年も収監していたことになる。それはあまりにも、むごい仕打ちというものじゃ……」

 

 アズカバンには、ディメンターが看守としてわんさかいる。そのことを知らなかった人も、今年度の初めにはみんな知ったはず。だからそんな場所に十二年もいることがどんなことかは、誰だって理解できる。

 ハリーもロンも理解が及んだようで、同情するように顔をしかめた。

 

 これを見て、わたしはダンブルドア先生のネームバリューすげぇなって改めて思った。ハリーもロンも、既にシリウスが無実らしいって思ってるぞこのリアクション。普通の人がここまでの話をしても、簡単には信じてもらえないだろうにねぇ。

 

「じゃがおりしもシリウスはアズカバンを脱獄していて、どこにいるかはわからない状況じゃった。とはいえ無実であろうとなかろうと、彼はホグワーツまで来るとは思っておった。であれば、やってきた彼を出迎えればよいかと思い、わしはディメンターどもの対処を優先していたところでな」

 

 この言葉に、これまで既知の話ばかりで退屈そうにしていたドラコが目をかっぴらいてダンブルドア先生を凝視した。まさか、って顔だ。

 

 どうやら、ディメンターの数が減ってる理由に思い至ったらしい。さすがドラコ。きっと心の中で、父上に報告することが増えたってつぶやいてるんだろうなぁ。

 対するハリーたちは、不思議そうな顔をダンブルドア先生に向けてる。どうやらドラコの様子には気づいてないみたいだ。

 

「ふむ。なぜ無実の場合でも、シリウスがホグワーツまで来ることになるのかわからない……と言いたげじゃのう? 答えは簡単じゃよ。シリウスはの……ハリー、そなたの魔法界における後見人なのじゃ。要するに彼は、ハリーにとって家族ということになる」

 

 そのハリーの不思議そうな顔は、続けられた説明を受けて驚愕に染まった。

 

 無理もない。ハリーはここまでずっと、孤独に生きてきた。誰も味方がいない中、唯一のよすがが自らを虐待する伯母一家だけ。

 そんな人がいたなら、どうして自分はわざわざマグル界で虐げられながら生きてなきゃいけなかったんだって、思ったりしていもおかしくないよね。

 

「なん、なんで……どうしてそのシリウスさんは、アズカバンに!? 冤罪なんですよね!?」

 

 案の定、ハリーは顔色を変えて勢いよく立ち上がった。椅子ががたんと鳴って、倒れかかる。

 突然のことに、ロンが手にした籠の中で、スキャバーズが驚いた様子で小さく飛びあがった。

 

「それがのう……なんとシリウスは、逮捕後に裁判を受けておらんのじゃ。状況証拠があまりにも揃っておってな……戦後すぐでゴタゴタしていた時期だったこともあって、彼の裁判は省略されてしまったのじゃ。本人が大人しく捕まった上に弁解らしい弁解もせなんだこともあって、余計にのう」

 

 これにはハリーも絶句。ロンも同じく。

 初見ってわけでもないダフネもアストリアも、ニコ殿下も、なんならドラコですら顔をしかめてる。マグル界とは色々と常識が異なる魔法界だけど、それでも裁判をスルーされるってのはさすがにあり得ないらしい。

 

 まあこれについては、実際に裁判を省略した当時の魔法省側にも言い分はあるだろう。急にお辞儀がいなくなったものだから、どっちの陣営もしっちゃかめっちゃかだったろうし、戦後処理ともなれば魔法省の職員たちにはとんでもない負担がかかってたはずだ。

 でも、ダフネたちはみんな戦争当時を知らない世代だもんねぇ。意見が隔たるのはある意味当然かもしれない。

 

 ……ダンブルドア先生なら覆せただろってツッコミは、あえてスルーさせてほしい。擁護できなくはないかもだけど、今その話は蛇足になりかねないからね。

 

「じゃがシリウスは己の無実を信じ、アズカバンでの獄中生活に耐え抜いた。さらには見事脱獄してみせ、ここホグワーツでドラコはじめニコ殿下たちに保護されておったのじゃよ。そして今日という日、わしは彼と顔を合わせることに成功した、ということでな」

 

 と、ここでダンブルドア先生は視線をニコ殿下に向けた。

 ニコ殿下は心得たとばかりに頷くと、ずっと傍に置いていた彼のスーツケースを開錠する。

 

 留め具にあしらわれた菊の紋章(もちろん天皇家の十六葉八重表菊とはちょっと違う)が部屋の明かりでかすかにきらめく中、開いたスーツケースから一人の男性がゆっくりと姿を見せた。

 ケース内に設けられた階段を上がってきた彼に、ニコ殿下がうやうやしく手を差し伸べる。

 

「紹介しよう。彼がシリウス・ブラックじゃ」

 

 現れたのは、一目で超一流とわかる仕立てのスーツを身にまとった壮年の男だ。ウェーブのかかった髪の毛には艶があり、健康状態は良好。かつ、きちんと整えられてることがわかる。

 それはヒゲも同様で、口ひげ以外の無精ひげなどは一切ない。唯一残る口ひげはカイゼルヒゲっぽく整えられていて、時を重ねてもなお麗しい彼の顔を、年相応に渋く際立たせている。

 

 もちろん所作に瑕疵なんてあるはずもなく、優雅かつ気品のある立ち居振る舞いは、誰が見ても貴族の紳士だって理解するだろう。

 ニコ殿下を伴うようにして床を踏みしめる立ち姿はすらりと高く、二度の人生を経験したわたしからしても、これ以上のイケオジにはなかなかお目にかかれないって感想を抱かざるを得ない。

 

 彼が、彼こそがシリウス・ブラック。かつては英国魔法界の王族とも言われたブラック家、最後の生き残りにして唯一の直系男子だ。

 

 彼の突然の登場に、ハリーもロンもあっけに取られてぽかんと口を開いてる。これはスキャバーズも一緒だ。

 とてもアズカバンを脱獄してきた重罪人には見えないいで立ちだもんね、無理もない。

 

 そんな中、ハリーに向けてシリウスが声をかけた。恐る恐る一歩を踏み出すような、緩やかな口調だった。

 

「……初めまして、って言ったほうがいいんだろうな。ハリー、ようやく会えた。私がシリウスだ」

 

 そう言い切ったシリウスの顔は、微笑みを浮かべながらもやや歪んでいた。感無量だと言いたげに、今内心を駆け巡っている感情を必死に抑えつけるように、かすかに涙を浮かべながら。

 




いやあ長かった・・・まさかシリウスの登場が47話目になるとは。書き始めた当時はまったく思いもしなかったんだぜ。
半分くらいで終わるだろうって・・・思ってたんですけどね・・・。
一体なぜこんなことに・・・。
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