才能に恵まれすぎたドMが魔法界で百合逆ハーレムを目指す話   作:ひさなぽぴー

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49.ハリー・ポッターとアズカバンの囚人with転生者 下

「逃げずに俺の前に出てきたことは誉めてやろう」

 

 ピーターをにらんで、シリウスが吐き捨てるように言う。いやそれ悪役のセリフぅ。

 

 にしても、美形がすごむといやあ恐ろしいこと。ニコ殿下は目にハートマーク浮かべて見つめてるけど。

 

「……もう逃げちゃダメだって、思ったんだよ。これ以上はウィーズリー家の人たちに迷惑かけちゃうしね……」

 

 対するピーターは、力なく笑うと肩をすくめた。すぐさま「どの面下げて言うんだ」って返したシリウスの言葉は、まあその通り。

 だけどそのシリウスを制して、ダンブルドア先生が声をかけた。

 

「……ピーターよ。シリウスが見せた記憶は確かかね?」

「……確かです。ぼくは確かに……」

 

 と、ピーターはここで言葉を切った。それからハリーに目を向けて、申し訳なさそうに顔を歪める。

 だけどそのまま黙ることはなく、言葉を続けた。

 

「……ジェームズや、リリーのことを例のあの人に教えました」

 

 素直に己の非を認める言葉だった。これにシリウスが言葉を投げつけようと口を開いたけど……。

 

「……なんで……」

 

 それより早く、ハリーが言った。きっと意図してのものじゃないんだろう、本当につぶやくような、小さな声だった。

 だけどそんな声が、今この場ではやけに大きく聞こえる。親を理不尽に奪われた、ひとりぼっちの少年の慟哭のようだった。

 

 これにはシリウスも、口をつぐむしかなかった。彼だけじゃない、ハリーのあまりにも切実な声音に、誰もが言葉を失っていた。

 

「……ダンブルドア先生。八咫鏡を使いましょう」

 

 その沈黙を破って、わたしは声を上げた。全員の視線がわたしに突き刺さる。

 

「八咫鏡は、真実を見せる鏡です。これの前で嘘はつけない。だから……当時、一体何があったのか。それを見ることもできるはずです。ハリーは、ハリーには、真実を知る権利がある。そうでしょう」

「うむ、その通りじゃ。……ニコ殿下、もう一度だけ、鏡を使わせてもらっても?」

「はい、もちろんです。お好きに使うてください」

 

 ニコ殿下の了承を受けたダンブルドア先生は立ち上がると、殿下から八咫鏡を受け取ってピーターに歩み寄る。

 

 ピーターは男性としては小柄だ。対して、ダンブルドア先生は長身。その身長差と、威厳ある姿を前にピーターはびくりと身体を震わせるけど……やっぱり逃げることはなく、差し出された鏡に両手で触れた。

 

 これもやっぱり、かつてのピーターにはあり得なかった行動だろう。シリウスが小さく首を傾げてる。わたしも同じくだ。

 

「ではピーターよ。かつての戦争のとき、一体そなたの身に何があったのか。どうしてポッター夫妻を裏切ったのか。その記憶を、我々に見せておくれ」

 

 首を傾げるわたしをよそに、再び記憶の上映会が始まった。

 

 ダンブルドア先生の言葉に応じるように浮かび上がったのは、どこかの一軒家の庭先だった。

 周囲に建物は小さな納屋が一つくらいしかなく、他に家は見当たらない。平均的な、魔法族の家って言っていいだろう。魔法で大体のことができる魔法族は、マグルに比べて群れる意義の薄い種族なのだ。

 

「ぼくの実家です」

 

 ピーターが補足する。だけどその実家の庭先には、蛇顔のハゲの姿があった。ヴォルデモートだ。

 対峙するのは、見てるだけでかわいそうになるくらいに怯えて震えて、地面にへたり込むピーターが一人だけ。

 

 そんな彼に、ヴォルデモートが声をかける。毒を含んだ言葉でいざなう、賢しい蛇のような声だった。

 

『そう怯えずともよい……俺様はただ、有能な魔法使いの顔を見に来ただけだ。できれば、そんな魔法使いを育て上げた母君にもご挨拶差し上げたいところだが……』

 

 邪悪な色を隠さない声でねっとりとピーターにそう言いながら、お辞儀は家に目を向けた。続けて、にたりと嫌らしく笑う。

 

『アポイントもなく、突然に訪ねられては困られるであろう。()()()()()()()()()()()

 

 そして、後半をゆっくりと言い聞かせるようにピーターの耳元で言うと、お辞儀はバシンと音を立ててその場から掻き消えた。

 

『ピーター? お客さんでも来たのかい?』

 

 その音を聞きつけたのか、家の中から女性の声が飛んでくる。老いたとは言わないけれど、相応に年齢を感じさせる声だ。

 これに対してピーターは、なんでもないと震える身体のまま、震える声で応じることしかできなかった。

 

 やがて映像が切り替わる。今度はノクターン横丁と思われる路地裏だ。

 そこでピーターは、またしてもお辞儀に絡まれていた。話題は世間話で、文字だけで表すなら平穏なものに見えるかもしれない。

 

 だけどお辞儀は杖をチラチラ見せてるし、去り際に「母君によろしく」と告げている。こんなのよっぽど読解力がない人でもない限り、親を人質に脅されてるってわかるだろう。

 

 この記憶は想像してなかったのか、シリウスは絶句している。

 さっきと同じく、わたしも絶句してる。

 

 ピーターにこんな設定、なかったはずだよね!?

 マジでピーター、どうしちゃったんだ。洗脳されてるって言われても納得する変化だぞ。

 

 それとも、この世界では過去からして展開が違うの? 一体どっちなんだ。

 

「……あの日の一年以上前から、こうやって接触がありました。いつも周りに誰もいないときで、最後は決まって母さんによろしくみたいな言葉で締めくくってた」

 

 映像を補足するように、ピーターが口を開く。そうこうしてるうちに、映像は何度か切り替わっていく。

 

 いずれもお辞儀がピーターに接触する場面だ。だけどその内容は、次第に世間話から機密情報に移りつつあった。不死鳥の騎士団側の情報を、ピーターは漏らすようになっていた。

 

「ぼくに家族は母さんしかいない。たった一人でぼくを育ててくれた、大切な家族だった。そんな人の居場所を例のあの人が知っていて、いつでも殺せる状況だったんです……」

「……バカな……。なんで、なんで言ってくれなかった!? 知ってれば、みんなで……」

 

 この説明に、遂に我慢できなくなったシリウスが前に出る。ピーターの肩を両手でつかんだ。

 

「言えるわけ……ないじゃないか……。その瞬間、母さんが殺されるかもしれないのに……」

 

 ピーターはここで、言葉を切った。一瞬……ほんとに一秒に満たないわずかな時間、ためらったように目が泳いで見えた。

 けれど彼は、なんと言葉を続けた。原作の彼なら、言わなかったであろう言葉を。

 

「お母さんと仲の悪かったシリウスには、絶対わかってもらえないって思ってたし……」

 

 これにはシリウスも、言葉なく愕然とするしかなかった。

 そうだよなぁ。シリウスは実家に、特に母親にひどく反発してたから刺さるよね。

 

 そうこうしてるうちにも、映像は変わっていく。今度は、忠誠の術の守り人をピーターにしようってシリウスから提案されたときの記憶だ。

 問題は次のシーン。ピーターが、お辞儀に開心術を食らって自分が秘密の守り人であることがバレたシーンだ。

 

 と言っても、お辞儀は杖を使ってこれみよがしに詠唱はしてない。目が不思議なきらめきを帯びて光ったから、杖なしかつ無詠唱のものだ。

 ものすごく巧妙かつ、一瞬に近い短時間のものだったから、これを見抜ける人間はほとんどいないだろう。わたしが気づけたのは、原作知識の漏洩を防ぐためにマジで本気で練習を重ねたからだ。

 

 そしてこのことは、ダンブルドア先生も気づいたはずだ。彼もお辞儀並みに優れた開心術士だからね。

 

 もちろん、忠誠の術は秘密の守り人が自分の意思で秘密を明かさないと、秘密は漏洩しない魔法。だからお辞儀の目当ては、直接的に秘密を抜くことじゃないはず。

 恐らくは、ピーターの弱みをつかむためのこと。実際、術を終えたお辞儀の次のセリフはこうだった。

 

『お前ほどの魔法使いを正当に評価しない、友人面をしながら罵倒するような男どもを守る価値など、果たしてあるのだろうかね?』

 

 最終的にそこを突かれたピーターは、遂に秘密を明かしてしまった。

 

 映像では直後、お辞儀が会心の笑みを見せるとともに、秘密を洩らしたピーターに対峙するためいずれシリウスがやってくるだろうこと。それを返り討ちにせよと命じられる様子が映される。

 これには嫌だと言ったピーターだったけど、すぐにインペリオを受けてしまい、この命令を承諾してしまう。

 

 この様子を見せられたシリウスは、さっきよりも増してさらに愕然としてた。

 

 何せついさっき、「お前のような弱虫の能無しを利用しようとは夢にも思わないだろう」って放言したシーンが投影されたばかりだ。掛け値なしの罵倒を、親友と呼んでいた相手にぶちかます配慮のなさは既に明示されてしまってる。

 

 これにはハリーとロンも、ついでにドラコも、何とも言えない目をちらっと向けていた。

 ダフネとアストリアも似たようなもので、唯一味方はニコ殿下だけらしい。彼だけは心配そうにシリウスの背中をなでている。

 

 やがて記憶の再生は、最後のシーンに移る。シリウスがピーターを追い詰めるも、ピーターの機転で濡れ衣を着せられる決定的なシーン。先ほどのシリウスの記憶と同じ光景が繰り広げられた。

 シリウスはもはや一切の言葉がなく、天井を仰いだ状態のままフリーズしてる。

 

 そんな彼をよそに、ダンブルドア先生が問いかける。

 

「……なぜウィーズリー家にいたのかね?」

 

 この問いに応じるように、八咫鏡が新しい記憶を投影し始めた。ネズミに変身した状態のピーターが目を覚ますと、そこがどこで、自分が誰で、今まで何をしていたのか何もわからなくなっていて、あちこちをさまよう記憶だ。

 やがて心身ともに疲労困憊になったピーターは、たまに空から鳥に襲われたりと危ないところは何度かあったけど、なんとか逃げ延びた先でとある家へと入り込む。

 

「あ、僕んちだ」

 

 それを見たロンが思わず、と言った感じで言う。そう、そこはウィーズリー家の邸宅、隠れ穴だ。

 その庭先で、ボロボロになったスキャバーズは木陰で横たわっていた。だけどそんな彼を見つけて、拾い上げた少年が一人。

 

「パーシーだ。この頃はまだ眼鏡かけてないんだな」

 

 もう一度、ロンが声を上げる。

 

 ここからは、まあペットとしてさほどおかしくない流れだったと思う。不憫に思ったらしいパーシーに保護されて、そのままペットになった。飼いネズミとして、穏やかな日々を過ごし……やがてロンへと引き継がれたって流れ。

 

 ただ、やっぱりわたしは驚いていた。スキャバーズ時代、ピーターに記憶がなかった? そんなバカな。やっぱりおかしい、そんなことあり得るのか?

 

 こんなピーターにばっかり都合のいい記憶が、当のピーターから出てくるなんて。やっぱり誰かに記憶をいじられてるんじゃないか?

 

 ……発想を変えよう。仮にピーターの記憶がいじられてるとして、それで得するのは誰だ?

 もちろんピーター本人だろうけど、もし彼じゃないとしたら……。それをするであろう動機と、能力がある人間は……。

 

 …………。

 

 ……わたしじゃね? 他に可能性のある人間、いなくね??

 

 だって、よくよく考えるとおかしいんだ。わたし、夏休みの段階でもうピーターの記憶をいじることでダンブルドア先生の陣営に引き込もうって考えてた。そのために催眠魔法の開発も急いでたはず。

 なのにここ数か月の間、わたしは催眠魔法の開発を全然急いでない。肝心の魔法が完成してないのに。

 シリウスー! 早く来てくれー! なんて思いながらも、それ対策を全然してないんだよね。

 

 これはどう考えてもおかしい。今この瞬間までそれに違和感なかったけど、思い当った今、はっきりとおかしいって思える。絶対何か、そういう誘導を受けてる。

 

 そしてこれらのことは、ピーターの対策が既に終わってて、それに関する記憶を自分で消してるならつじつまが合うんだよね。

 だって、する。わたしなら、する……! 証拠隠滅のために……催眠魔法が存在するっていう、記憶そのものを消すくらいするよわたしなら……!

 

 そ、そっか……わたし、催眠魔法完成させてたのか……。じゃあ今、わたしが開発してる催眠魔法は二度目なのか……。

 ……本当に二度目かな? わたしのことだから、三度目四度目って言われても驚かないぞ。

 

「この頃は、それ以前のことがわからなかったんです。シリウスから逃げるときに起こした爆発で、どこか打ちどころが悪かったのかなって思いますけど……」

「記憶を取り戻したのは、いつ頃かのう?」

「この間の夏休み中です。シリウス・ブラック、という名前に引っかかるものがあって……それで、新聞に載っていた手配写真を見て、思い出しました」

 

 気づきたくなかった真実に気づいてSANチェックをしてるわたしをよそに、ピーターが持ったままの八咫鏡が、さらに記憶を映し出していく。記憶を取り戻して状況を把握し、混乱するピーターの姿が映し出される。

 そしてやがて現れるだろうシリウスに怯え、弱るピーターを看護するロンの姿も同時に映る。当のロンはこれを、黒歴史を見るような……死んだ魚のような目で見てるようだったけど。

 

「こんなおじさんの世話をさせてごめんよ……。でも本気で心配して、こうやって気にかけてくれたのは本当に嬉しかったんだ。それは、本当なんだ……」

 

 いやそれ、たぶん本当じゃないです。たぶんそれ、わたしが植え付けたものです。

 で、でもこの記憶改ざんがあったからこそ、今こうして丸く収まりつつあるわけだし……な、なんとかならんか? みんな大目に見てはくれまいか!

 

「ハリー……本当にごめん。ぼくが、ぼくがもっと勇気のある人間だったら……こんなことにはならなかったのに」

「ピーターさん……」

「ジェームズとリリーはぼくが殺したも同然だ……本当にごめん……」

 

 それは本当にそう。

 

「……すまなかったワームテール!!」

 

 と、ここでシリウス渾身の土下座。ここまで映し出された記憶から、ピーターを完全に信じることにしてくれたようだ。

 

 え、えっと、えーっと……な、何はともかく信じてもらえたから、ヨシッ!!

 

「俺がお前をそこまで追い込んでしまった……! 俺がもっと、きちんとお前を信じていればあんなことには……!!」

「……それは違うよシリウス。シリウスはちゃんとぼくのことを信じてくれてたよ。だって秘密が漏れたって知ってすぐ、ぼくが裏切ったんじゃなくて襲撃されたって思ったんでしょ? ぼくのほうこそ……もっとちゃんと、シリウスを信じなきゃいけなかったんだ……」

 

 それも本当にそう。マジで、本当にそう。

 

 すれ違ってしまったかつての親友たちの和解っていう、感動的なシーンなはずなんだけどね。真実をすべて知ってる上に、こうなるように仕組んでた側だと思われるせいで、わたしはどうしても正面から受け止められないのであった……。

 




今、明かされる衝撃の事実!!(人工

そしてその裏で、闇に葬った自分の所業に思い当って内心冷や汗流してるドM。
ただ鍛え上げた演技スキルが、完璧な擬態を成立させているというね。
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