TSガチロリあ〜かいぶっ! 作:aaa
痛みが走る身体を無理矢理動かして状態を確認しにかかる。
やはり三人とも輪っかが見えなくなっている。
ビル前で伏していたお仲間と同じように心臓の動きと脈拍を確認……正常。
やはりこの世界の人類は易々とは死なないらしい。
安心感を覚えて、ようやく一息つけた。
「……というか」
どこなんだよ、ここは。
見覚えのない場所。スタート地点が閉じ込められた空間の時点で周囲の状況を把握することが出来ない。
彼女らが持っている武器を奪いつつ、光射す方向へもう一度歩いていく。
疲労困憊だ。千鳥足になっている。
だがここで倒れるわけには行かない。後方の奴らが目を覚ませばまた襲われるし、おそらくきっと同じ手は通用しないだろう。
武器の類は奪っているが、強硬手段を取られれば、加えて時間をかけられれば数の暴力で制圧されるに違いない。
今でこそ両手を銃で塞いでいる。それだけだ。
片手で先ほどまで押さえながら使っていたのだ。二丁で扱えるほどの筋肉はこの身体にないように感じる。
感じる、と表現したのは先ほどの肉体離れした動きがあったからこそだ。
曲線を描くような高速移動。推定小学生の身体から捻り出すには到底不可能な動き。
あれを流用すれば扱えるかもしれない。
ただ使い方を知らないだけで。
無意識に利用していたものなんて使用頻度を増やして感覚を掴むしかないのだ。
そのためには実践を増やす必要があるが……勘弁してほしいものだ。
死んでないとはいえ、人に向けて銃を使ったのだ。抵抗感と嫌悪感がすごかった。
もう、すごい。空虚な感覚に苛まれている。
日常の選択肢に銃を使って攻撃するが入り込んだのだ。
この世界の日常とは言っても、簡単に受け入れられるほど柔軟な感覚は持ち合わせていない。
移住した先がこんなところなら故郷に帰りたくなるものだろう。
「そろそろ出れそう」
場の暗さもあって鬱屈とした気持ちになっていたが頭を振って立て直した。
ドンパチする音は聞こえないので平穏が保たれているに違いない。
というか、そうであってほしい。
まずは1日身を隠せそうなところ。手持ちにお金はないがどうにかしてでも食事にはありついておきたい。あと情報。
物騒なものしか手持ちにはない。
銃刀法違反とかそんなものは考えない。
多分ない。
あれこれ、そう考えながら外に顔を出した。
「わぁ……」
透き通るような青空と評していた。
言葉の通りだ。浮かんでいる円環はさておき、美術館に飾ってあるような、誰かの手によって彩られた美しい世界がそこに現れている。
視線の奥には蒼き海。日差しに照らされて輝いて見える。黄色い菱形マークが目に浮かぶ。
「綺麗だ。うん、綺麗なんだよ」
鼻腔に硝煙の香りが漂っていたり、付近の惨状から目を逸らせば。
やはり気絶しているヘルメットやスケバンの集団は目立っている。
争った跡が残っている。傷ついた建物の外壁、焦げた跡の残るコンクリート。
拮抗していたのだろう。こちらにやってきたヘルメットの三人組は多大な犠牲を払ってようやく自分というターゲットに辿り着けた。
ターゲットか。
何を以てこの人は標的に至ったのか。
答えを求めたいがそうもいかないのがなんとも歯痒いところ。
今この場には倒れ伏している学生しかいない。
これ以上武器を奪って逃走するわけにもいかない。
どこぞと知らない世界だけれど、とりあえずは身の安全を確保したい。
「よし、とりあえず逃げ───」
鼻先に横一線。
首を右元に向けようとしたところで左からやってきた。
ギギギ……と、固く閉められたペットボトルのキャップを開けるかの如く、飛んできた方向に視線をやった。
「……嘘でしょ?」
今度は別の集団だった。
同じように学生服を身に纏っているのに持っているのはスマートフォンだとかクレープではなく銃に銃に銃。
頭が痛くなりそうだ。
「オイ! 金の卵がまだ残ってるぞ! 確保に急げーーーッ!!」
「撃てーーーッ! 最悪生きてればなんでもいいとの指示だ!」
「年下で負けっぱなしでいいのか!? いいわけないよなぁ! こちとら仲間やられてんだぞ!?」
なんなんだこの世界!?
頭のおかしい奴しかいないのか!?
こっちは小学生だぞ!?
ロリなんですけど!?
人に向けて銃を使ってはいけないって、両親から学ばなかった!?
大声で躍起になって士気を高めている増援。
逃げようにも土地勘がない。どこに向かえばいいのかなんて知らない。
助けを求めるために走ってもいいが、標的にされている以上、下手に動くのは得策ではない。
籠城戦を……ここで……?
嘘でしょ……?
「っぶな!?」
思案してる最中にも関係なく銃弾は飛んでくる。
このままだとマズイ。
考えろ、考えろ、今ある手札を考えろ。
奪ったマシンガンっぽいやつ×2(残弾不明)
手榴弾×3(投擲能力なし)
得体の知れない力(説明書なし)
うーん、負け!w(思考停止)
反射的に声を挙げた。
無論、襲ってきた集団に向けて。
「だっっっっっさ! 小学生相手に大勢でかかってきて、恥ずかしくないんですかーーーっ!?」
「おい、金がなんか言ってるぞ!」
「何も聞こえねェな!」
クソァ!
両手をあげて降参したいが……ここで引き下がるくらいなら必死にでも抵抗する。
隠れるならさっきまでいた建物の影で。
即座に動いて身体を隠す。
銃を構えてターゲットを見つけて放つ。両手を塞いでいたら上手く撃てないのですでに足元にもう一丁を置いている。
「もうなんでもいいっ! 今は生きることだけを考える!」
頭をこねくり回して攻撃態勢をとる。
ズブの素人による必死な抵抗が始まった。
※
気づいた時には日が落ちようとしている。自分の背後には新しいゴミの山が形成されている。
袋に詰められた形ではなく、人による山。
息はすでに切れている。肩で呼吸しながら尻餅をついて次を考える。
更に増援が来る気配はない。と、なると、周囲の安全は確保されたと見るべきだ。
ようやく自由に動けるようになる……が、やはりというべきか、身体は限界を迎えている。
瞼が重い、今すぐ眠りにつきたい。
ボロボロになっても子供の身体。眠りにつきたいという本能に抵抗して、武器も持たずに足を動かす。
「驚きましたね」
「は?」
視線の先から見えたのは、首の上がメカメカしい人型のロボット。
身に纏っているのはスーツ。清潔感と潔癖感を感じる。クリーニングに出していたのだろう。
ほつれの一つも見えないそれと、赤く輝くネクタイ。襟元には社章のようなものが見えるが、暗くて良くは見えない。
なんなんだよ、ほんと。
人外もいるなんて聞いてないぞ。
「ドローンで様子を見ていましたが……素晴らしい神秘の保有量だ。先行研究のやり方に倣うのは、やはり正解でしたね」
とはいえ、あれは失敗してましたが。なんて言葉を残しながらクツクツと喉を鳴らしている。
神秘? 何それ。新しい概念を増やすのをやめてほしい。もう眠いんだよ、こっちは。
「ここまで手こずらせてくれるとは、と思いましたが。これからの研究にやりがいが出るというもの」
耳に入ってこない。
「我が社の経営も安泰だ……。やはり金の卵は金の卵ですね。身寄りのない子供なんて足がつかないですし」
頭に入ってこない。
すでに意識は朦朧としていて、荒げていた呼吸は治り始めている。
体力の回復が出来ているが、力が入ることはない。
「では早速回収とさせていただきましょう。このまま放置すれば死んでしまう」
死んだが。
革靴の音が響く。言い換えればそれは死へのカウントダウン。
近づいて───逃げようにも力が入らなくて───近づいてきて───持てる武器はもうなくて───さらに近づいてきて───抵抗する手段がもうない。
ここでゲームオーバーか? 視線をロボに向けて、反逆の意思を見せつつも、抵抗する力がもうなかった。
過剰だったのだ。相手の戦力が。
いなして、見極めて、狙いを定めて。
頭をフル回転させ、出来うる限りの抵抗をした結果が疲弊しきった今の惨状なのだ。
何かないのか? そう考えたところで、すでにロボットはすぐ先にいる。
……終わりか。そう悟って目を閉じようとした。
「まだ立ち上がるのですか?」
身体は勝手に動くらしい。
おそらく、憑依先の人物の生存意欲からなるものだ。
よろよろと、膝を振るわせながら、しかし立ち上がる。歯を食いしばって、目の前の状況からの打開に向けて心を震わす。
「本当にさっきまで逃げ回ってたのと同じ子か?」
「なんでもいい、だろ。幼女の身体に向けて暴力振りかざしやがって。ほんとに大人? このままタダでやられるわけにはいかないから精一杯抵抗させてもらうけど、どうする?」
ニンマリと強がる。
粋がって呼吸を正してやれる事を考える。
握れる拳で怯ませて、同じように銃を奪ってヒット&アウェイが早いか。
「痛い目、見ます?」
ロボが右手を挙げると後ろから、同じくロボットの兵隊がやってくる。統率の取れた動きだ。後方で伏してる学生とは実力に差があると、見ただけで直感する。
絶体絶命とはまさにこのこと。人間と同じ動作で腕を正面に置いて、こちらに向けて臨戦態勢を取り始めた。
「いいですか? 殺しちゃダメですからね?」
殺されてるつってんだろ。
最早ツッコミを入れる余裕はこれ以上ない。
手持ちはなし、拳のみ。殴ったら痛いが我慢するしかない。
やるぞ。数秒先のことは相手の出方を見てから考える。
「それではみなさんよろしくお願いしま───」
「そこまでよ」
言い切る前に、上空からの銃声。
さながら、大木をノコギリで擦るような音。
そこらの銃とは異なる、円滑とした発射音が空間内で鳴いた。
上空から舞い降りたそれに反応できた人物はこの場に存在しない。
押されたドミノのように兵隊は前に倒れていく。
その様子をただ見ていることしかできない。
「……何者です?」
……唯一の解決手段を挙げるならば、第三者による介入だった。おおよそ2〜3時間の戦闘。
誰かが止めにかかると、助けに入ってくれると思いたかったのだ。
いつまで経っても来ないからずっと不安だった。
舞い降りてきたのは、この身体よりも少し身長が大きい学生だった。
ビルの屋上から救援にやってきたらしい。
「ゲヘナ学園所属、風紀委員会、委員長───空崎ヒナ」
頭上に浮かぶはおどろおどろしいトゲトゲとした紫色の円環。王冠を想起させるようなデザイン。
身につけているハンドグローブを引っ張って、調子を確かめるようにぐっぱっと動作を繰り返す。
黒と紫を基調としている制服なのに、白髪の髪から与えられる清廉な印象は崩れない。
見ているだけでわかる、今日出会った中で最も強いということが。
「まずは、そこをどいてもらう」
マシンガンを構えて、怠げに、しかし怒気を帯びながら、彼女はそう言った。