TSガチロリあ〜かいぶっ!   作:aaa

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第6話 なさけな~い♡

 

 “ざぁこざぁこ♡”

 

 違うんです。

 これ喋ってるのヘルメットとかスケバンなんですよ。

 そう言いたかったけど、俯瞰する形で自分一人を捉えている映像。声を発しているのはどうにも自分の声。

 否定材料が消えていく。コーヒーで身体を温めていたはずなのに、肌寒さをどこか感じてしまう。

 解析を終えたドローンが映し出したのは一人の少女と、それを相手にしている複数人の学生集団だった。

 

「……随分と、口が達者だな?」

 

「ひっ、え、まぁ……その、この時のことは覚えてないと言いますか……」

 

 “根性なし♡”

 

 カメラ止めろ! 

 カンナさんからの目線が痛ければ、横乳からの目線も痛い。

 ヒナさんの表情は特に変化はない様だけれど、何を思っているのかはわからない。

 

「君がやったのか?」

 

 カンナさんが話を向ける。

 再生途中で会話が挟まっている。その方向を一斉に見ながらだ。止める気配がないため、そのまま答える。

 目の前のロリの言葉が挟まないタイミングで。

 

 “おね〜さん達よっわ〜〜〜い♡ 銃持って生まれてきてるのにその弱さって何? 使い方分かってる? わからないんだ♡ 逆に何なら分かるの? 呼吸? ”

 

「や、やりました。あの時は無我夢中だったので、何をしてたか覚えてませんが……」

 

 “よっわ♡”

 

「そうか……」

 

「はい……」

 

 “なさけな〜い♡”

 

 煽りは止まらない。

 保険をかけておくけどこれカンナさん達に向かって言ってるわけじゃないからな? 

 自分にかける保険なのに落ち着かない。

 カンナさんはカンナさんで聞こえてくる言葉に固まっている。

 それでも無慈悲に映像は続く。

 

 “あはは♡”

 

 ……次第に目の前の内容を思い出し始めてきた。

 真っ先に考えたのは相手の冷静さを奪うことであったと思う。

 相手取るのは小学生であり、ロリ。

 見た目は手負。確保できれば一攫千金。

 強者が弱者をいたぶる構図の完成である。側から見れば誰だってロリが負けるとしか思わない。

 故に相手は舐めてかかると判断した。

 

「しかし、素早く動けてますね。小学生の割には手慣れている様に見えますが……」

 

 “お゛っ。射線管理がガバガバ♡ 鬼さんこっちだよ〜〜〜♡”

 

「そうね。武器を奪っては逃げて、遮蔽物を利用して回避。よく動けてる」

 

 “逃げちゃうの? 小学生相手に負けて日の下歩けるんですか〜〜〜♡ 恥ずかし〜〜〜♡”

 

 え、これこのまま続くの? 

 

 客観的に見る自分の闘い方を見て、無我夢中ではあるが、確かによく動けていると思う。

 ヒナの語った通り、得体の知れない力をふんだんに使って動いていた。

 接敵しては銃口を向けて発砲。怯んだ矢先から身体を動かして銃を奪って抵抗。

 本当に自分なのかと疑うが、自分であると認めるほかない。

 

 じゃあなんでこんな挑発的な口調なの? 

 冷静さを失わせる。というのが戦略の根底にはあった。こめかみに青筋を浮かばせるためには言葉を介す方が早い。

 口八丁。並べて現れたのはただのクソガキ。

 

 おっかしいな。

 ここまで口悪くしてましたっけ。

 前の自分なら確かに子供相手に煽り散らかしてるカスの大人になるが、これをロリでやるとなるほど、確かにクソガキだな。

 どちらかといえばメスガキか。

 

 そうこう考えているうちにも、映像は再生を続ける。シークバーの終わりが近い。

 ……あ、ドローンの方向に銃口を向けてる。

 パパパパガガガピー! ザザーッ! 

 その音を残して映像は止まった。

 

「あ、映像が終わりましたね! まだ解析していないデータもありますし、このまま解析を進めておきますね!」

 

「あっ、あぁ」

 

「気絶してた人たちも起きてきましたし、事情聴取も進めておきます! ではっ!」

 

 USBメモリを持ってきた女子生徒は戻っていった。

 映像は止まって、もう一度再生された。ループ再生をしているらしい。止める気配はないし、戦闘シーンを見ることに重点を置かれている以上は放置される。

 映像からの銃声とメスガキの声を除いて、場は沈黙が支配している。

 誰もがこちらに視線を向けている。

 

 どうしよ。

 

「違うんですよ、その。本当に記憶になくて、はい」

 

「なくて?」

 

 カンナさんが言葉を促してくれる。

 というか、待ってくれている。

 その優しさがかえって居心地が悪い。

 いや、本当に違うんですよ。

 

「初めて銃を持って、人に向けて使ったので、その、気分が変になっちゃって……」

 

「初めて? 本当ですか?」

 

 横乳が横槍を入れてくる。

 やはり怪訝そうな目でこちらを見ているし、片手に抱えている資料を見ながら、青い瞳がこちらを捉えている。

 さながらこちらを値踏みするような瞳。いや、映像に映ったメスガキと目の前のロリが本物かどうか確かめるつもりなのだ。

 

「アコ。さっきも言ったけれど」

 

「……わかってますよ。委員長。記憶がないのですよね?」

 

「……はい」

 

 アコと呼ばれた横乳はこちらを据えて確認を取る。

 バインダーを片手に抱えており、ペンを手に取って何やら書いている。

 

「それで? 銃を使った感想とかはありますか?」

 

「感想、ですか?」

 

「はい。ありませんか? 初めて銃を握った、と言いましたね? その割にはずいぶん慣れているように見えましたが」

 

「……」

 

「本当に、記憶がないのですか?」

 

 ない。

 断言できる。

 それで、どう証明する? 

 横ち、アコさんの言うことは正しい。幼い子供が巧みに銃を扱っている様子が今もなお映像に映っている。

 巧みに、が肝なのだ。奪った銃を投げては拾い、あるいは小さな拳を振るって対抗している。

 多対一にして一が優勢を極めている状態、異様な光景と言えるだろう。

 

「……私は」

 

 取ってつけた一人称を発する。

 

 そりゃあ、まぁ。

 先ほどまで流れていた映像のことを考えると、こちらが相手取って蹂躙している様にしか見えないだろう。

 今更ながら猫かぶってました、ごめん! って言っても腑に何を抱えているのかがわからない、得体の知れないメスガキとしかみなされないのだ。

 

 お゛っ。やべっ。選択肢間違えちゃった♡

 

 今更言ってる場合か。

 黙れば黙るほど、言葉を選んでいる様にしか見えなくなる。

 だから、こぼす。

 

「怖かったですよ」

 

 心からの言葉を。

 今更、銃を持てばメスガキ仕草を取ることと、そう言った言葉遣いを取ってしまうという事実は変えられない。

 思い出すのは──―銃を握った初めての気持ち、それと同時に味わった嫌悪感。

 

「黒くて、重くて、でも撃たないと死んじゃうかもしれないから……、目の前に落ちてた銃を拾って」

 

 初めて手に取った。

 ゲームなどとは断じて違う。握られた痕跡がはっきりと残っている、誰かが使用したものを使った。

 目の前で倒れていたヘルメットから奪った感覚は、正直、今も手に残っているのだ。

 

「必死こいて、やってきたヘルメットの集団に負けないように、構えて、それで」

 

 “ざぁこ♡ざぁこ♡”

 

 誰がザコだ。

 

「すみません一度映像を止めてもらえませんか?」

 

 ピッ、カンナさんがリモコンを操作して映像を止める。

 ヒナさんはじっ、とこちらを見つめている。

 アコさんは言葉を待っている。

 この空気の中話を進めないといけないのか……。

 

「えっと……、後のことは正直、ほんっとうになんにも覚えていなくて」

 

 それでも確かに残っている銃を使用した跡。

 確かに、調子に乗っていたという自覚はあった。

 初めて手に持って、人に向けて使って、そして勝利を得た。

 抱えていた嫌悪感は逆転して、高揚感を獲得していったのだと、今なら分かる。

 戦力として組み立ててはいた。そこに間違いはない。

 

「初めて、銃を手に持ったんです。あの場で、ビルとビルの間の小さな間で」

 

 コンクリートに無造作に放置されていた銃を手に取った。

 いつでも引き金を引ける状態にあった。

 

「手に取って、やってきたヘルメットの人たちに向けて───使った」

 

 この世界の子どもがいつから銃を持てるのか。

 そんなの知らない。

 生まれてからすぐに触れることだってあるだろう。

 あるいは、そういう環境に置かれた子とか。

 

「怖かったです。なんなら、自分も怖い」

 

 初めて目線を合わせて話せたと思った。

 昨日の今日で、数時間前の記憶が銃撃戦。

 ようやく心を休める場面に来た、心からの言葉を吐露する。

 

 正直に言えば、もう銃は握りたくない。

 けれどそれは避けられない。銃社会なんだろう、ここは。

 常識として基盤にある以上はそこに従うしかないのだ。

 

「……そうですか」

 

 わかりました。

 その言葉を置いて、アコさんはペンを走らせる。

 書き終えたところで一息こぼして、こめかみを抱える様な仕草をとった。

 

「本当にこれで……? 後で何を言えば……?」

 

 アコはそう言い残して、スマートフォンを手に取った。

 ……? なんだ、今、何が進んだ? 

 

「もういいかしら」

 

 ヒナからの言葉。

 メスガキに苛まれた空気感をリセットした声。

 自分も自分で姿勢を正して、ヒナからの言葉を待った。

 

「身元が現状わからない以上。どうしたって、この子を保護しておく必要がある」

 

「……そうだな。昨日と同じく襲われる可能性も未だある」

 

「そう。それに───」

 

「?」

 

「無自覚ながらも戦闘を一人でやってのけた以上、もう一度同じ様な事を起こす可能性だってある。誰かの目は欲しい」

 

 つまりは監視、というべきか。

 至極当然とも言える処置だ。見えないところで暴れてたら同じ様に助けが来るまで暴れ回るしかない。

 

「だから、昨日のうちに手続きは済ませておいた」

 

 うん? 

 

「アコ」

 

「はい。……では、これを」

 

 手渡されたのは用紙。

 真上には入学手続きと記されている。

 

「ゲヘナに入学させる。これでどうかしら?」

 

「ゲヘナに……?」

 

 少し前に自分は口にした。

 ゲヘナはダメなのか。何故か深刻そうな目でカンナさんがこちらを見ていたのを覚えている。

 

「とはいえ、一人で過ごさせるわけにはいかない……から、保護役を何人か決めてある」

 

「それは……大丈夫なのか?」

 

「今のままなら、問題ないはずよ。それに、負けることはないと思う」

 

「なら、いいのだが……」

 

 入学手続きに目を通す。

 一通り読み進める最中で、思ったことを口にする。

 

「ここって私入学してもいいんですか? 小学生ですよ?」

 

 中学に上がる子供が初めて門を叩ける場所なのでは? 

 未だに日本の常識に囚われてはいるが、やはりはっきりさせておきたい。

 

「問題ないわ。前例がいる」

 

 いるんだ、前例。

 

「11歳よ。……同じくらいかしら」

 

 11歳。

 小5。

 飛び級か。じゃあいいか。

 

「……わかりました。ゲヘナ学園に、行きます」

 

 決断する。しないという選択肢はなかった。

 ここで拒否をした後のことなんて考えられない。

 見えている死になぜ自分から進む必要がある。

 ネジを緩めておかなければならない。ただでさえ銃撃戦を終えた緩み切ったネジなのだ。さらに外さなければついていけない。

 ここで生きていく以上、その環境に適応しなくてはならない。

 ロリとして生きていく以上、その振る舞いを正さなければならない。

 後者がハードモードすぎる。

 

「わかった。ヒナ委員長。この子の後は任せる。私達は───」

 

「そうね。引き続き調査の方をお願いするわ」

 

「承った。何かわかればすぐに連絡を送ろう」

 

 カンナさんとヒナさんが握手する。

 結託した。お互いにやるべきことが定まった。

 そして自分も進まなければならない。

 

「というか、名前どうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 窓から差し込む日差しが身体を照らした。

 数日ぶりに味わうベッドの感触に感動を覚えながら上体を起こした。

 歯を磨き、顔を洗って、鏡を見る。

 金髪のブロンドヘアー。煌めく碧眼。そしてあどけない顔。

 昨日貰ったゴムに手を通して、長く伸び切った髪を手に取って結ぶ。

 二つ結びのツインテールの完成だ。

 黒を基調とした制服に身を包んで、改めて自分を見る。

 

「…………」

 

 本当にロリ。

 性転換して、ガチガチのロリに憑依して、そして現在。

 ここから、この世界での生活が始まるのだ。

 なってしまった以上、もう一度歩かなければならない。

 青春の只中を。

 何故か銃撃戦の音が外から聞こえる気がするが、気のせいであると思いたい。

 

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