ダンジョンマスター異世界侵略記   作:フリー123456789

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第18話 道中

 

 冒険者ギルドから出たサクラギたちは、ゲートが出現した場所を目的地としてエル・ラインの城門を潜る。城門を潜り、外に出ると城壁の側にいくつもの乗り合い馬車が停車していた。その馬車の行先を見てみるとどうやらゲートまで向かうらしいことが分かった。

 

「ゲートまでの馬車が出ているらしい。乗るか?」

「いくらだ?」

「王国銀貨1枚だ」

「分かった」

 

 馬車の御者に料金を聞いたトム。どうやら王国銀貨1枚らしい。冒険者が1日掛けて得られるかどうかという金額だ。中堅とベテランの域であるトムとジムでさえ、決して安いとは言えない。だが、サクラギは何の躊躇もなく麻袋から王国銀貨を1枚取り出した。

 

「サクラギは、本当に金持ちだな」

「……そうか?」

「あぁ、銀貨をそんなに簡単に出せるのは凄いぜ。流石、お抱え用心棒だな」

 

 サクラギの金払いの良さに、ジムは揶揄うように言った。だが、サクラギはその言葉の節々から小さな嫉妬を感じた。全く面倒だと思いながらも金払いを引き受けた以上は従うしかないかと溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 サクラギたちを乗せた馬車は、目的地であるゲートまで向かった。ここまでの道中は実に平和であり盗賊や魔物の類は出没しなかった。通常、商人の馬車移動は盗賊や魔物といった脅威があり、危険な旅となる。

 

 だが、サクラギたちが乗っている馬車は一味違う。この馬車には、ゲートまで体力を温存したい冒険者たちが乗っている。そのため、仮に盗賊が現れたとしても屈強な冒険者たちが傭兵替わりに馬車を守ってくれる。魔物が出現した場合は尚更、臨時ボーナスさながらに喜々として出撃して行く。

 また、この馬車を牽引する馬は王家がゲートまでの乗車用に特別に売られた。馬には<軽量化>と<体力増強>が付与された魔法馬具が装備されており、長時間に渡り移動することを可能としている。

 

「―――だからこその乗車料王国銀貨1枚だ」

「……そうか」

 

 同じ馬車に乗っている物知りな冒険者が説明していた。サクラギは、話半分に聞きながら移り変わる景色を眺めていた。

 

「……うん?」

「どうかしたか?」

 

 馬車が森の中を通過している光景を眺めていたサクラギは、何か異変を感じたのか小さく呟く。その声を偶々拾うことができた物知り冒険者は、先程のサクラギと様子が違うことに気が付いた。

 

 サクラギは溜息をつくと物知り冒険者―――というよりも外側に座っている冒険者たちに目を向ける。

 

「腕に自信が無いなら外に近付かない方がいいぞ」

「何を言って―――」

 

 何かがこちらへと向かって来る。そのスピードは風を切り裂く程であり、ほとんどの冒険者たちは気が付けなかった。

 

 音が聞こえた次の瞬間、馬車を覆っていた帆が破け床に突き刺さる。

 

 それは矢であった。

 

「盗賊だ!」

 

 御者が叫ぶと同時に、数十人の男たちが馬車を囲むように木々の間から姿を現した。装備はバラバラであり、胸当てやチェストプレート等には汚れが目立つ。枝には弓を持った盗賊が馬車に狙いを定めていた。

 

―――さてと、どうでるかな?

 

 サクラギは冷静に状況を分析しながら次の行動について考えていた。ここに居る冒険者の多くはCランク以上であり、中にはBランクの者も存在する。自分が行動せずとも何とかなるだろうと考えていた。

 

 しかしその思考は直ぐに間違いだということに気付く。

 

「死ねッ!」

 

 剣を持った盗賊が馬車との距離を瞬きの間に詰めた。続けざま、流れるように近くに居た冒険者―――サクラギへと剣を振るう。

 

「くっ……何て力だ!」

「はぁ……なんで俺なんだよ」

 

 不意を突いた一撃。

 だが、サクラギはものともせず左手で持っていた刀の鯉口を切り防ぐ。勢いが乗った剣がいとも簡単に防がれた盗賊は苦悶の表情を見せた。

 

「よっと」

「ぐっ……!」

 

 サクラギは、馬車の中では刀が振れないと判断し盗賊を外へと蹴り飛ばした。追撃するように、サクラギも外へと飛び出す。

 

 体勢を崩され地面に背中を強打した盗賊。標的を視界から外してしまったため次の行動を予測することができない。

 

「<鉄―――」

「シッ!」

 

 盗賊は武技<鉄壁>を使う―――よりも速く迫って来たサクラギの攻撃を真正面から受けてしまった。

 

「盗賊レベルなら通じるな。レベルの暴力で戦っている感は否めないが……」

 

 サクラギは盗賊の血で汚れた刀を見ながらそう呟いた。そして残っている盗賊に目を向けた。

 

「くそ、こいつら強いぞ!」

「死に晒せ!」

「<鉄壁>!」

 

 サクラギの反撃を契機に、馬車の周囲では冒険者と盗賊が入り乱れていた。冒険者と盗賊の実力は拮抗しているらしく、中々決着が着かなかった。

 

「拮抗しているな。まぁ、冒険者だらけの馬車を襲うぐらいだ。これぐらいの実力は有って然るべきか。それにしても何故、この馬車を襲ったのか分からない。普通なら商人などの馬車を襲う―――」

「その装備寄越せ!」

 

 警戒することなく周囲を観察していたサクラギの姿は、案山子同然であり今なら不意を突いて殺すことができる。

 だが盗賊の思惑とは裏腹にサクラギは、背後からの攻撃を振り向くことなく躱した。そしてそのまま右手を横薙ぎに振るう。

 

「ぎゃぁあああ!!!」

「やれやれ……。あぁ、そうか。この馬車、豪華な見た目だったな」

 

 盗賊の不意打ちを防ぎながら何故、襲われたのか見当が付き納得した。

 

「おい、無事か?!」

「なんとかな。そっちも大丈夫そうだな」

 

 声が聞こえた方を振り向くとトムが肩で息をしていた。だが、片割れのジムが見当たらない。

 

「俺はジムと2人で組んでたからな。二対一で何とか凌いだんだ」

「そうか。ところでジムはどうしたんだ?」

「馬車で休んでる。正直言うと俺もそろそろ限界だ」

 

 そう言うとトムは、馬車の中へと戻って行った。現時点で外に居る冒険者は、サクラギを含めて4人。その内、盗賊にやられたのか息の無い者が1人。経った今、盗賊に右腕を切り飛ばされ、膝を着いた者が1人。

 

 そして残りの1人は―――

 

「ど、どうして……『切り裂き』ジャックがここに居るんだぁああ!!!」

 

 次々に盗賊の息の根を止めていく冒険者―――ジャック。両手のククリナイフを巧みに扱い辺りを血で染める。その姿は、二つ名にふさわしいとサクラギは思った。

 

 ジャックの登場により形成は一気に逆転。盗賊は為す術無く、そのままククリナイフの錆となって行った。

 

「ふぅ……なんだ。無事なら手伝ってくれても良かっただろう?」

「それはすまない」

「冗談だ。それにしてもサクラギ。さっきの攻撃、中々なものだった。どこかの流派か?」

「いや、我流だ」

「うん……?まぁ、何でも良いか。それよりもゲートに向かおう」

「そうだな」

 

 サクラギはどこか落胆するようにそう呟いた。

 ジャックはサクラギの雰囲気が少し変わったことに気付いた。だが、特に気にすることなく、一部の冒険者と一緒に避難していた御者にゲートへ向かうように言った。

 

(ほとんどレベルの暴力だ。どうやらジャックには鋭く見えたらしい。現役のAランク冒険者と言えども40Lvいや30Lvにも到達していないのか。魔法タイプじゃないし、レベルは低いし……これがAランクかぁ)

 

「あとはSランク冒険者だけだな。数が少なく、世界中を活動範囲としている者が多い。アルドリンですら情報を持っていない。Aランク冒険者より魔力吸収効率は良さそうだが、転移ポータルまで来てもらうのは望み薄か……」

「おーい。何してるんだ。早く行くぞ」

「あぁ、悪い。今行く」

 

 サクラギ―――ハルは、先程まで考えていたことを置いて馬車へと向かった。

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