ダンジョンマスター異世界侵略記   作:フリー123456789

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第6話 <幽躰憑依>

 セレネが気絶した原因はアビスにあると判断したハル。

 

 とある道具を取り出すために<収納>を使うと空間に裂け目のような物ができた。

 

 恐る恐る手を入れるとそこには、EoCで集めた道具があることが分かった。

 

「えーと。あった!」

 

 そう言って取り出したのは、中央に純白の宝石が埋め込まれた白金の指輪―――<祝福の指輪>である。

 

 この指輪は、天使種の魔物を討伐すると高確率でドロップするアイテムだ。

 

 効果は装備者のヒットポイントの自然回復量を少し上げる程度であるが、他にもフレーバーテキストには『装備した者に安らぎを与える』と書いていたことを思い出したハル。

 

(フレーバーテキストも現実化してる、だろうなぁ。アルファたち大臣の性格とかそうだし……)

 

 閑話休題。

 

 天使種は、高レベルであることが多くレベリングの際によく討伐していたため<祝福の指輪>の効果とフレーバーテキストについて覚えていたのだ。

 

 <祝福の指輪>を取り出したハルは、セレネの指に嵌めると待機していた扉の魔女に<異界の扉>を使用するように命令する。

 

 扉の魔女が軽く微笑むとゆっくりと重みを感じさせながら重厚な扉が開く。

 

 扉の先は、恐怖が湧き出てくるような黒一色である。

 

 だが、ハルはそんなことを気にすることなく足を足を踏み入れた。

 

「お、上手く行ったみたいだね」

 

 扉をくぐった先は、女型の天使を模った石像が両扉を守っている場所――玉座の間の前に転移した。

 

 無事転移できたことに安堵するハル。

 

 玉座の間の入口に待機していたメイドを見つけると、セレネを客人用の部屋へと運ぶように命令し、ハル自身は玉座の間へと向かった。

 

 慣れてきたせいか、初めて入った時とは異なり全く緊張しなくなったハルであったが、出迎えたアルファを筆頭にホムンクルスたちに咎めるような目線を向けられたことに困惑する。

 

 いつの間にか起きていたマグナスにもアルファたちと同じような目線を向けられたことに何故か無性にイライラするハル。

 

 そんなハルにマグナスがアルファたちを代表して告げる。

 

「ハル……体目当てで助けるとは……。浅ましい奴よのぉ……」

 

「えッ!?何の話だよ!?」

 

 心当たりが無い―――わけでは無いが、セレネを助けた主目的は情報収集だと考えていたハル。

 

 だが、そんなことなどマグナスは知る由もない。

 

 マグナスはあくまでも白を切るつもりのハルを責め立てる。

 

「スカイ・オーブで全部見ておったわ!2人で何やら話していた時、少女が体を守るように腕を組んでいたではないか!助ける対価に体を要求したのじゃろう!?」

 

「いや、ちげぇーよ!?確かにやってもらいたいことがあるとは言ったけど!」

 

 マグナスの主張にたまらず反論するハル。

 

 厳かな雰囲気のある玉座の間には相応しくない論争が響く中、2人のやり取りを呆れながら止めるようにアルファは告げる。

 

「マスター、この際体目当てであっても問いただしません」

 

「いや、だから違うって……」

 

「それよりも何故助けたのですか?その人間の背後関係など調べずに」

 

「それは……」

 

 セレネの背後関係を一切調べずに助けてしまったことを詰められるハル。

 

 それもそうだろう。

 

 仮にセレネが各国に名が響き渡っている大罪人だった場合、保護したということで周辺国に詰められるかもしれない。

 

 今後エターナル・ヴェインが表に出るかは分からないが、仮に表に出た場合やっかみや不利な条約などを吹っ掛けられるかもしれない。

 

 国力的にできるかどうかは置いておくとして。

 

 言い返せなかったハルにアルファは追い打ちのように話を続ける。

 

「そして何よりも生身で外へ向かったことです。マスター」

 

 何よりもハル本体が外へ行ってしまったことが問題だ、とアルファは言う。

 

 世界級の実力を持つハルを殺害するなど困難であることは分かっている。

 

 だが、それでもマスターであるハルを心配してしまうのは、配下として当然のことだろう。

 

 アルファたちの心情を察し何も言い返せないハルは、俯き素直にアルファたちに謝罪の言葉を伝えた。

 

「……ごめん」

 

「はぁ、これからもマスターの無茶に振り回されるのでしょうね」

 

「うっ……それは、たぶん、そうなります……」

 

 これに懲りたら勝手なことはしないで欲しいと思うアルファたちだが、ハルの行動を止めることはできない。

 

 それでも生身では外に出て欲しくないと思ったアルファはとあることを提案する。

 

「……我々としては、マスターの自由意思に従うだけです。ですが、これだけはお願いします。本体での外出は控えてください」

 

「え、でもこれからも外に出たい……」

 

 アルファたちが自分を心配していることは理解できるが、これからも外に出たいと言うハル。

 

 そんなハルにアルファは提案するように口を開く。

 

「丁度良いスキルをお持ちではないですか」

 

「いや、そんなもの……って、あ!」

 

 アルファの指摘により<ダンジョンマスター>が内包する<幽躰憑依>を思い出す。

 

 <幽躰憑依>任意の魔物を選択しその視点に切り替えることができる能力である。

 

 EoCでは、魔物を観察するために用意されたおふざけスキルであり使う機会がほとんど無かったが、この世界では有用なスキルに昇華しているかもしれない。

 

 ハルは、<幽躰憑依>を使う―――前に見落としていたことに気付く。

 

 憑依先となる男型ホムンクルスが手持ちに無いことに。

 

 男型ホムンクルスは、近衛兵役の魔物を配合する時に用意したのみでそれ以外は、全て女型のホムンクルスを配合していた。

 

 そのため現在、稼働もとい魔物が保管されている異空間から出ていないホムンクルスは女型しかいない。

 

(一時的なら女型でもいいけど多分、俺のことだから長期間外出すると思うんだよねぇ)

 

 そのため男型ホムンクルスを用意する必要がある。

 

 その事実を恐る恐るアルファに確認する。

 

「あのー、憑依先の男性型ホムンクルスがいないんですけど……」

 

「左様でございますか」

 

「魔物配合―――」

 

「それは魔石収集が確立されるまで禁止です」

 

(えっと、つまり……)

 

「……つまり、配合用の魔石を自分で用意しろと?」

 

「御明察の通りでございます」

 

 男であれば誰もが惚れるであろう素敵な笑顔で告げるアルファ。

 

 魔物配合で新たな男性型ホムンクルスを作成しようと考えたハルであったが、アルファに禁止されていたことを思い出す。

 

 他に人型の魔物がいたか思い出そうとしているハルに魔物大臣のイプシロンが補足とばかりに告げる。

 

「憑依後に元の持ち主と同居することになりますので自我が確立していない魔物がよろしいかと。その場合、一度も召喚されたことの無いレベル1の魔物となりますが」

 

 そう告げるイプシロン。

 

 ハルがセレネに現を抜かしている間に異世界に渡った後の魔物の状態について調査していた。

 

 与えられている役職柄ハルの魔物が保管されている異空間にアクセスする権限を与えられている。

 

 軍務大臣であるジータも同様の権限が与えられており、この2人はエターナル・ヴェインにおいてもハルの次に軍事力を持っていることになる。

 

 閑話休題。

 

 とにもかくにも魔物について調査していたイプシロンは、憑依先の条件に適している魔物をピックアップしていく。

 

 ゴブリン、オーク、スライム、スケルトン、ウルフ……etc.

 

 雑魚に位置づけられる魔物たちである。

 

 ハルとしては、人型が望ましいため必然的にゴブリンかオーク、スケルトンとの3つの内から選ぶことになり、醜いゴブリンとオークには成りたくないと思い最終的にスケルトンを選択した。

 

「OK!スケルトンにするよ。<召喚・白骨>」

 

 そう呟くとハルの近くに一体の白骨が出現する。

 

 全身はハルと同程度の大きさで通り真っ白。

 

 だが、その色合いは低級魔物に相応しい安物感が漂い一目で”弱い”ことが窺える。

 

 また、スケルトンの名の通り肌や臓器などが一切ないため体中が空いており、そこから向こう側を見ることができる。

 

 だが、唯一目の部分だけは漆黒だ。

 

召喚が成功したことを確認したハルは続けてスケルトンに自分の意識を移すために右手をかざしながら囁く。

 

「<幽躰憑依>」

 

 スケルトンの瞳に青白い炎が宿ると同時にハルの体は糸が切れた人形のように体から力が抜けその場に倒れる―――ことなく、ハルのブレスレットとなっていたアビスが大きくなり受け止める。

 

 突如現れた100Lvのアビスにアルファたち大臣は、驚愕し体を銅像のように硬直させた。

 

 スカイ・オーブによりアビスのことについては知っていたアルファたちであったが、圧倒的に存在の格が違うため分かっていても身構えてしまう。

 

 それはマグナスも同様であり、目線をキョロキョロと動かし顔中から大量の汗が出ていた。

 

 アビスは、そんなアルファたちに目もやらずハルの本体を守るように体を重ねる。

 

「ありがとうアビス。そのまま俺の私室まで運んでくれる? ベッドに寝かしてくれたらいいから」

 

「シャァァァ」

 

 ハルの命令を受けたアビスは、底なし沼に嵌ったかのように徐々に自身の影に沈んでいきやがて姿が見えなくなった。

 

 <影転移>を使ったアビスを見て「その方法があったか……」と呟くハル。

 

 そんなハルにアルファは溜息を吐きながら話す。

 

「……なんてものを召喚したのですか」

 

「ん? ああ、集団転移の方法が思いつかなくて。兵士たちをアビスに丸吞みしてもらったんだ……って、そうだった。ガンマ、異世界の住人を大量に連れてきたから後で尋問しといて。その後は、俺が介入した所からの記憶を消してダンジョンの1階層に転移させていいよ。後は、彼らの実力次第だ」

 

「し、承知しました」

 

 ガンマは突然、格の違う存在が目の前に現れたことにより混乱したが、マスターからの命令を遂行するために行動を開始する。

 

 ガンマは、外務大臣であり外部とのやり取りを担う。

 

 ……尋問を行うのに適している役職なのかは疑問が残るが。

 

「あと、セレネのことはよろしくねアルファ」

 

「……承知しました」

 

「それとマグナス」

 

「なんじゃ?」

 

「拠点から出ない。アルファたちの指示無しに魔法・スキル使わない。いいね?」

 

「嫌じゃ! 妾も外に行きたい―――」

 

「そういうことで!」

 

「待つのじゃ!」

 

 マグナスの静止も聞かずにハルは最も遠くに離れたスカイ・オーブと<主従交換>する。玉座の間には、マグナスが駄々をこねる声が響くだけだった。

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