幻想郷に迷いしカスカベ防衛隊   作:匿名ねこ

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どうも匿名ねこです!

正直アンケートの投票が少なかったので迷ったのですが、今回は風間君視点の内容となっております!

そして、ここから先の展開は、私のオリジナル設定や独自解釈がかなり含まれますので、そういうのが苦手な方はブラウザバックを推奨します!

それでも良いよという方は続きをどうぞ!!!(今回は内容が少し長めです!)


3話 吸血鬼はおっかないゾ!

 意識がゆっくりと浮上してくる。まぶたを開くと、視界に広がったのは見慣れない天井だった。

 

 

「……ここは……?」

 

 

 ”風間トオル”はゆっくりと体を起こした。頭が少しぼんやりする。だが、それ以上に気になったのは、自分がいるこの場所だった。

 

 

 深紅のシーツに包まれた寝具はふかふかで、天井には細かい装飾が施されたシャンデリアが煌めいている。見たこともないほど高級な調度品の数々。壁には年代物の肖像画が掛けられ、ベッド脇の小さなテーブルには美しく整えられたティーセットが置かれていた。

 

 

 風間君はこの状況に混乱した。

 

 

「な、なにこれ……?」

 

 

 確実に自分の家ではない。それどころか、日本の一般的な住宅ともまるで違う。明らかに異質な空間。ここはどこなのか。どうして自分はこんな場所にいるのか。

 

 

 必死に記憶を手繰る。

 

 

 たしか、自分は……しんのすけたちと一緒に「現双の森」に入って、それで……。

 

 

「……っ!」

 

 

 そこからの記憶が曖昧だった。あの森の奥で、何か不思議な霧に包まれて……気がついたら、ここにいた。風間君はベッドから降りると、慎重に室内を見渡した。

 

 

 異様なまでに静かだった。この静寂が、かえって不気味に感じる。まるで自分以外誰もいないかのように思えた。

 

 

(いや、そんなはずはない。こんな大きな屋敷、一人で管理できるわけがない。誰かがいるはず……)

 

 

 何か情報を集めるべく、彼は意を決して部屋を出る。扉を開くと、長い廊下が続いていた。赤い絨毯が敷かれ、左右には同じような扉が並んでいる。壁には燭台が設置されており、揺れる炎が幽玄な雰囲気を醸し出していた。

 

 

 慎重に歩を進める。しんのすけや他の仲間の姿は見当たらない。この場所がどこなのか、なぜ自分がここにいるのかを知るために、とにかく探索するしかない。

 

 

 しかし、いくら歩いても同じような光景が続く。扉を開けても、どの部屋も似たような作りの寝室か、調度品が並んだ応接室ばかりだった。

 

 

(同じような場所ばかり……館の中なのか? でも、こんなに広い建物なんて見たことがない……)

 

 

 胸騒ぎがした。進んでいるはずなのに、どこまで行っても同じような光景が続く。まるで館そのものが意図的に迷わせようとしているかのような感覚さえ覚える。

 

 

(何だよ……これ……!)

 

 

 風間くんは背筋がゾッとするのを感じながらも、足を止めずに進み続けた。しかし、次の瞬間。

 

 

「風間様、勝手に動かれては困ります」

 

 

 突然、背後から女性の声がした。ゾクリと背筋に悪寒が走る。驚愕して振り返る。今通ったばかりの廊下、誰もいなかったはずなのに──そこにはいつの間にか、銀髪のメイド服を纏った女性が静かに佇んでいた。

 

 

「……っ!」

 

 

 目を疑った。確かに今、自分の背後には誰もいなかったはずだ。風間君は大きく息を呑み、彼女を警戒するように一歩後ずさった。

 

 

 相手は冷静な表情でこちらを見つめている。その整った顔立ちと姿勢には、どこか威厳すら感じさせた。

 

 

「お部屋で大人しくお待ちいただければ、追って説明を差し上げましたのに……」

 

 

 まるで当然のように話す彼女。しかし、風間くんは状況を理解するよりも先に、本能的に恐怖していた。

 

 

「ひっ……!」

 

 

 彼は咄嗟に反転し、走り出した。とにかく逃げなければ──そんな思いが頭を支配する。

 

 

 必死に走り続ける。廊下を曲がり、階段を降り、扉を開けようとするが、どこも鍵がかかっていた。

 

 

「なんで……!」

 

 

 後ろを振り返る。しかし、そこには誰もいない。

 

 

(ま、まさか……いなくなった?)

 

 

 ホッとしかけたその瞬間───

 

 

「どこへ行こうとしたのですか?」

 

 

 耳元で囁かれた。

 

 

「──ッ!!!」

 

 

 次の瞬間、風間くんの肩をそっと押さえる力を感じた。恐怖で閉じた目を恐る恐る開けると、そこには再び先ほどのメイドが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──どうして?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かに、さっきまでは後ろに誰もいなかったはずなのに。まるで時間が飛び越えたかのような、不可解な現象。恐怖に震える風間くんを見下ろしながら、メイドは微かにため息をついた。

 

 

「……なぜ、逃げるのですか?」

 

 

 その言葉に答えたかったが、喉が強張って声が出ない。そんな彼の様子を見たメイドは、仕方がないというように静かに言った。

 

 

「私は貴方に害を与えるつもりはありません。どうか落ち着いてください」

 

 

 しかし、それをすぐには信じられない。

 

 

「……っ、離して……ください」

 

 

 ようやく絞り出した声も震えていた。だが、メイドはその場を動こうとしなかった。

 

 

「ここで無理に抵抗するのは賢明ではありません。まずは落ち着いて、話を聞いていただけませんでしょうか?」

 

 

 穏やかだが、有無を言わせぬ気迫を持った声音だった。風間くんは息を整えながら、頭の中で必死に考えた。

 

 

 この状況で強引に逃げ出すのは、確かに得策ではない。自分の体力には限界があるし、この館の構造も分からない。

 

 

(……ここは一旦、話を聞いた方が良いかもしれない)

 

 

 恐怖を押し殺しながら、風間くんはようやく言葉を絞り出した。

 

 

「……わかり…ました。話を聞きます」

 

 

 そう答えると、メイド──”十六夜咲夜”は微笑を浮かべた。

 

 

「賢明な判断ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マザコン祈祷中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風間君は再び、あの豪奢な部屋へと戻されていた。そして彼女は、穏やかな口調で話し始める。

 

 

「ここは『幻想郷』と呼ばれる世界です。あなたがいた世界とは隔離された場所で、人間だけでなく、妖怪や神といった存在も暮らしています」

 

 

 風間君は眉をひそめ、目の前の女性をじっと見つめる。

 

 

「……幻想郷? それに妖怪や神様って…じょ、冗談ですよね? は、ははは……」

 

 

 風間君は自分をからかう為に咲夜が冗談を言っているのだと考えるが、咲夜は静かに答えた。

 

 

「冗談ではなく事実です。妖怪や神様も普通に存在します。あなたが知っている世界とはまったく違う場所です」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 

 思わず風間は立ち上がり、大声をあげる。

 

 

「妖怪だとか神様だとか、そんなものが現実にいるわけ──!」

 

 

 突然そんな事を言われたって信じられない。風間君はそういった非科学的な存在は今まで否定してきた。だからこそ咲夜の発言が許せなかったのだが、咲夜は興奮している風間君を落ち着かせ、話を続ける。

 

 

「……落ち着きましたか? そして、ここは"紅魔館"。この屋敷の主である"レミリア・スカーレット"様のご厚意で、あなたはここで保護されています」

 

 

「保護……?」

 

 

 風間君はその言葉に疑問を抱く。覚えている範囲では森の中で気を失ったはずだ。なのに、同じ場所にいたはずのしんのすけ達はおらず、何故か紅魔館と呼ばれる屋敷に保護されているという。もしかして、これは誘拐なのでは…という考えが風間君の中で渦巻く。

 

 

「……疑っているようですね」

 

 

 しかしその考えが咲夜には見透かされている様で、風間君は思わず息を呑み、咲夜の顔を見つめた。だが、次の瞬間、咲夜はふわりと宙に浮かび上がった。

 

 

「……えぇっ!? う、浮いて……嘘?!」

 

 

 風間は驚きのあまり、後ろに飛び退いた。

 

 

 その様子を見た咲夜は、悪戯が成功した子供の様ににふふっと少し笑い、淡々と説明を続ける。

 

 

「そして次に見せるのが私の力"時間を操る程度の能力"」

 

 

 咲夜がそう言い咲夜が一歩踏み出す。そしてほんの一瞬、瞬きをした間に部屋の反対側に立っていた。

 

 

「そ、そんな……ありえないよ……」

 

 

 人間ではない。この世界は、自分の知っている常識とはかけ離れている。

 

 

 風間君は、体が震えるのを止められなかった。

 

 

 そんな彼の様子を見て、咲夜は穏やかな声で言った。

 

 

「あなたは紅魔館の門の前で倒れていました。それを門番の美鈴が発見し、レミリアお嬢様が保護を許可したのです」

 

 

「それじゃあ、しんのすけたちは!? 他の皆は!?」

 

 

 風間は必死に問いかけた。自分以外の仲間たちも、この館にいるのではないかと。だが、咲夜は静かに首を振った。

 

 

「あなた一人だけでした」

 

 

 その言葉に、風間の顔が一気に青ざめる。

 

 

 ――皆がいない。

 

 

 それはつまり、今、自分はこの異世界で、たった一人で取り残されているということだ。

 

 

「……っ」

 

 

 喉がひりついた。目の奥が熱くなる。泣きたくなった。しかし、そんな風間君の肩を、そっと咲夜が抱いた。

 

 

「風間様、大丈夫です。きっと、ご友人とも会えますよ」

 

 

 本来なら不確実で無責任なその言葉は、今の風間君にはあまりにも優しく、静かに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイド祈祷中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しづつ落ち着きを取り戻した風間君は、冷静に色々と気になる事を聞いていく。

 

 

「この幻想郷から、元居た世界に戻る事って可能なんですか?」

 

 

 咲夜はその問いにしばらく黙った後、優しく答える。

 

 

「それについては、私の方からはお答え出来ません」

 

 

「ど、どうしてですか?!この世界のことを知ってるんですよね!? だったら、帰る方法だって──」

 

 

 抗議するような風間君の声を、咲夜は淡々とした口調で遮った。

 

 

「申し訳ありませんが、私はお嬢様よりあなたのお世話と、この世界についての説明を任されただけです。それ以上のことをするつもりはありません」

 

 

「つもりはないって……っ!」

 

 

 風間君は、拳を握りしめた。

 

 

「僕は帰りたいんだ! 友達と一緒に、元の世界に戻りたい! それなのに……!」

 

 

 咲夜はそんな風間君をじっと見つめながら、しかしそれ以上の言葉を口にすることはなかった。ただ、紅茶のカップに手を伸ばし、静かに一口含んだだけだった。

 

 

 その余裕たっぷりの様子に、風間君は思わず睨みつける。焦燥感と苛立ちが入り混じる中、自分の必死な訴えをまるで意に介さない咲夜の態度が、余計に神経を逆なでした。咲夜はそんな風間君の反応を見ても、動じることはなかった。

 

 

 ふぅ……と一息つくと、先ほどまでの冷静な態度が嘘のように、ふわりとした優しい笑顔を浮かべた。

 

 

「メイドとしてはここまでしか話せませんが……私個人としては、あなたのことを助けてあげたいのです。だから、これから言うことはお嬢様にも秘密ですよ」

 

 

 彼女はそう言うと、軽くウインクをしてみせた。

 

 

 その瞬間、風間君の心臓が跳ねる。途端に顔が熱くなり、思わず視線をそらしてしまう。

 

 

「……それで?」

 

 

 なんとか平静を保とうと咳払いしながら、続きを促した。咲夜は静かに続ける。

 

 

「まず、元の世界に帰る方法ですが……八雲紫という妖怪が鍵を握っています。彼女は境界を操る力を持っており、幻想郷と外の世界を行き来することができる存在です。しかし、非常に気まぐれで、簡単に会うことはできません」

 

 

「八雲紫……?」

 

 

 風間君はその名前を頭の中で繰り返しながら、未知の存在に対する警戒心を抱いた。境界を操る妖怪……そんなものが本当にいるのか? いや、ここは既に常識の通じない世界なのだ。何があってもおかしくはない。

 

 

「それから、あなたの友達を探す方法についてですが、射命丸文という妖怪の協力を得るのが効率的でしょう。彼女は鴉天狗であり、この幻想郷で新聞を発行しています。あなたが現代の話を提供する代わりに、あなたの友達を探しているという記事を書いてもらうのです」

 

 

「新聞で……?」

 

 

 風間君は考え込む。確かに、情報を広めるには合理的な方法かもしれない。しかし、その妖怪とやらが本当に協力してくれるのか、それはまだ未知数だ。

 

 

「それ以外にも、幻想郷には様々な危険が潜んでいます。妖怪の中には人間に友好的な者もいますが、そうでない者もいます。むやみに森や山へ入らないこと、夜間の外出は避けること……これらの注意事項を守れば、危険を回避しやすくなるでしょう」

 

 

 咲夜はそう言い終えると、残った紅茶を静かに飲み干した。その仕草には一切の迷いがなく、まるで自分の中で既に全ての答えが決まっているかのようだった。

 

 

 風間はしばらくの間、言葉を発することができなかった。八雲紫という妖怪、射命丸文の新聞、幻想郷の危険……新たに得た情報はどれも現実離れしており、頭がついていかない。

 

 

 それでも、今の自分にできることは、少しでも帰る手がかりを掴むこと。風間はゆっくりと息を整えながら、強く拳を握った。

 

 

 その様子を見ていた咲夜は、少しバツの悪そうな表情をし、ためらうように口を開いた。

 

 

「……ここまでいろいろと言いましたが、まず最初の難関は、この紅魔館から出ることですね」

 

 

「え?」

 

 

 風間君は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。紅魔館から出ることが難しい?

 

 

「どういうことですか?」

 

 

 風間君が聞き返すと、咲夜は静かに答えた。

 

 

「基本的に、お嬢様は興味を持った相手や気に入った者、あるいは利用価値のある者しか助けることはしません。だから、あなたを簡単に外に出してくれるとは考えにくいのです」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、風間君の顔から血の気が引いた。

 

 

(そんな……まさかこのままずっとここに閉じ込められるってこと!?)

 

 

 焦りと不安が一気に込み上げてくる。しかし、ただ嘆いているだけでは状況は変わらない。風間は必死に考えを巡らせ、あるアイデアを思いついた。

 

 

「……だったら、そのレミリアって人に、僕がまったくの役立たずで、何の価値もないと思わせればいいんじゃないかな?」

 

 

「……何ですって?」

 

 

 咲夜の表情が一瞬険しくなったが、風間君は続ける。

 

 

「つまり、僕が何もできないと分かれば、向こうから『こいつは要らない』って判断して、館から追い出してくれるかもしれないってことです!」

 

 

 自信満々に言ったつもりだった。しかし、咲夜は小さくため息をつき、首を横に振った。

 

 

「それは得策ではありません」

 

 

「え? なんでですか?」

 

 

 風間君は驚いたように尋ねる。

 

 

「お嬢様が興味を失ったり、利用できないと判断した人間は──生かすことなく、殺します」

 

 

「……っ!!」

 

 

 殺す──。

 

 

 その言葉に、風間の全身が凍りついた。

 

 

(嘘だろ……)

 

 

 今までの人生で、そんな言葉を直接向けられたことなんて一度もなかった。死ぬという概念自体は理解しているつもりだったが、それが自分に向けられる可能性があると考えた瞬間、膝が震えそうになった。

 

 

「な、なんでそんな奴に従ってるの!? 咲夜さん、そんなの最低じゃないですか!」

 

 

 恐怖と怒りが入り混じったまま、風間君は勢いのままに言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────次の瞬間、空気が変わった。

 

 

 咲夜の微笑は消え、その美しい顔に冷たい怒りの色が滲む。部屋の温度が一気に下がったような錯覚を覚えるほどだった。

 

 

「……お嬢様を侮辱するな」

 

 

 咲夜の声は低く、抑えられた怒りを含んでいた。

 

 

「お嬢様は、私が幼かった頃に救ってくださった方です。確かに、時には酷いことをすることもあるかもしれません。でも、それだけで判断するのは浅はかでは?」

 

 

 風間君は咄嗟に言葉を返せなかった。

 

 

「お嬢様は崇高な方であり、優しいお方です。まだお会いしたこともないあなたに、何が分かると言うのですか?」

 

 

 その強い言葉に、風間君は自分の軽率な発言を深く後悔した。

 

 

「……ごめんなさい。僕、何も知らないのに勝手なことを言いました……」

 

 

 素直に頭を下げる風間。咲夜はしばらく彼を見つめていたが、やがて、ふっと肩の力を抜いた。

 

 

「……私も、少し大人気なかったですね。申し訳ございませんでした」

 

 

 静かな謝罪の言葉とともに、部屋の緊張感が和らいでいった。

 

 

 少し無言の間が続いた。咲夜は落ち着きを取り戻し、ゆっくりと紅茶のカップを指先で転がしながら、何か考えているようだった。そんな彼女を見ながら、僕はふつふつとした不安を抑えきれずに口を開いた。

 

 

「この館から出る方法は……何かないんですか?」

 

 

 咲夜は視線をこちらに戻し、一瞬だけ思案するように目を伏せる。そして、やがてゆっくりと口を開いた。

 

 

「……方法がないわけではありません」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

 風間君は思わず身を乗り出した。しかし、咲夜の表情は真剣なままだ。

 

 

「ただし、条件があります。お嬢様に気に入られ、外に出ることを完全に許可してもらうことです」

 

 

「気に入られるって……具体的にどうすれば?」

 

 

 風間君の問いに、咲夜はふぅっと小さく息をついた。

 

 

「お嬢様は気まぐれで、自分の興味を引くものには寛容ですが、そうでないものには冷淡です。そして、一度興味を持てば徹底的に気にかける……あなたが彼女にとって『退屈しのぎになりうる存在』だと示せれば、自由を得られる可能性が高くなります」

 

 

 ゴクリと唾を飲み込む。相手はどうやら、ただの気まぐれな金持ちというわけではなさそうだった。ということは、何かしらの「有用性」を示さないといけないということだ。

 

 

「でも、どうやって……」

 

 

 風間君が困惑していると、咲夜は微笑を浮かべて言った。

 

 

「簡単なことです。あなたは"賢い子供"でしょう? 頭を使って、お嬢様が面白がりそうなことをすればいいのです」

 

 

「……そんなの、わかるわけないじゃないですか」

 

 

 風間君は思わず愚痴のように呟いた。

 

 

「ですので、これはアドバイスです。お嬢様の気を引くには、二つの方法があります。一つは、あなた自身の持つ特別な才能を示すこと。もう一つは、お嬢様の興味を惹く何かを提供することです」

 

 

「才能……?」

 

 

 風間君は考え込んだ。勉強は得意だけど、こういう特殊な状況で役に立つとは思えない。運動はマサオ君よりマシな程度で、特筆すべきものはない。特技といっても、別に目立つものがあるわけじゃない。

 

 

「僕にはそんなもの、ないですよ……」

 

 

「そんなことはないわ」と咲夜はキッパリと言い切った。

 

 

「あなたの知識や考え方が、異世界の存在である私たちにとって興味深いものである可能性は十分にあります。例えば……あなたの世界の常識や文化をお嬢様に話してみるのはどうでしょうか?」

 

 

「僕の世界の……?」

 

 

 そんなことでいいのか。少し拍子抜けしたが、考えてみれば幻想郷という異世界の住人にとって、僕たちの世界の話は新鮮かもしれない。

 

 

「それに加えて、お嬢様は"知的"な話題が好きです。あなたが何か"面白い話"を提供できるなら、それだけで関心を持ってくれるかもしれませんよ?」

 

 

「……やるしか、ないよね」

 

 

 他に選択肢はない。しんのすけやみんなと合流するためにも、まずはここから出られるようにしないと。

 

 

「それで……レミリアさんには、すぐに会えたりしますか?」

 

 

「ふふ……心配しなくても、その機会はすぐに訪れますよ。まだ説明していませんでしたが、本来なら色々とこの世界の事について話した後で、お嬢様にお会いする予定でした。ですので、今からご案内致しますわ」

 

 

「……わかりました」

 

 

 風間君は深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。怖い。でも、やるしかない。

 

 

 紅魔館の主、レミリア・スカーレット――彼女に気に入られなければ、僕はここから出られない。その事実が、ひしひしと僕の胸を締め付けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイド祈祷中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咲夜に促され、風間君は館の奥へと進んだ。紅魔館の中でも一際豪華な装飾が施された扉の前に立つと、咲夜は軽くノックをした後、静かに中へ入る許可を取る。

 

 

「お嬢様、お連れしました」

 

 

 その言葉と共に扉が開かれる。目の前に広がったのは、今まで通ったどの部屋よりも広大な空間だった。壁には豪奢な装飾が施され、天井には燭台のようなシャンデリアが輝く。そしてその中心には、ひとつの玉座が鎮座していた。そこに座していたのは、一人の少女だった。

 

 

 年の頃は十歳前後に見える。淡い青髪は緩やかにウェーブを描き、まるで絹のような肌は夜の帳にも溶けるほど白い。小柄な体にはドレスが映え、愛らしい印象を添えている。そして背中には、彼女が人間では無いと証明するかのように、コウモリの翼の様なモノが生えていた。しかし、何よりも印象的だったのは、その目だった。深紅に輝く双眸。まるで血のように赤く、そしてどこか獲物を見定めるような視線。その視線を感じた瞬間、風間君は背筋が凍るのを感じた。

 

 

(こ、これが……レミリア・スカーレット……!)

 

 

 咲夜が言っていた紅魔館の主。そして、圧倒的なカリスマとともに、どこか人外の気配を漂わせる存在。その場に立っているだけで、館の空気すらも支配しているかのようだった。

 

 

「ご苦労だった、咲夜」

 

 

 レミリアはふと視線を逸らし、傍に控えた咲夜に向かってそう告げた。

 

 

「はい、お嬢様」

 

 

 咲夜は静かに一礼し、風間君を促すように一歩下がる。

 

 

「さて……お前が門の前で倒れていたという人間だな?」

 

 

 レミリアの視線が再び風間君に向けられた。まるで値踏みするような目だった。それは風間君にとって、言い知れぬ恐怖を与える視線でもあった。否が応でも分かる──この人は、自分を簡単に殺せる存在だと。

 

 

(落ち着け、僕……! ここで怖気づいたら終わりだ!)

 

 

 心臓が張り裂けそうなほどの緊張を感じながらも、風間君は震える足を前に出した。

 

 

「は、はい……僕は風間トオルといいます。助けていただき、誠にありがとうございました」

 

 

 これまで培ってきた敬語と礼儀作法を総動員し、深く頭を下げる。緊張で冷や汗が止まらない。しかし、それを見たレミリアは、何が可笑しいのかクスリと笑った。

 

 

「なに、そんなに畏まる必要はない」

 

 

「は、はい……」

 

 

(無理に決まってるだろ!)

 

 

 内心そう突っ込みたくなるが、そんな余裕はない。

 

 

「それでここからが本題だが、お前は何者だ。どうして紅魔館の門前で倒れていた?」

 

 

 核心に迫る質問。風間君は一瞬身を固くするが、ここで隠し立てしても意味がないと悟り、できるだけ丁寧にこれまでの経緯を話した。

 

 

 しばらくレミリアは考える素振りを見せる。そして、ふっと口元を緩めた。

 

 

「なるほど……。じゃあ、今すぐにでもお友達を探しに行きたいんじゃないか?」

 

 

 その問いに、風間君は思わず「はい」と答えそうになる。しかし、ふと咲夜との会話を思い出す。レミリアに気に入られなければ、ここから出ることすらできないのだ。そこで風間君は、慎重に言葉を選んだ。

 

 

「確かに友達を探したいですが……それよりも、助けてもらった恩を返すことが先だと思います。僕にできる最大限のことをして、お返しをしたいです」

 

 

 それを聞いたレミリアは、一瞬ポカンとした表情を見せた。

 

 

「へ?」

 

 

 思わず間抜けな声を漏らす。その表情を見た風間君は、なんだか違和感を覚えた。

 

 

(……今の反応、なんか変じゃないか?)

 

 

 しかし、すぐにレミリアは咳払いをし、元の威厳ある表情に戻る。

 

 

「そ、そう……。お前がそう言うのであれば、ぜひともその"最大限の恩"を返してもらおうではないか!」

 

 

 堂々とそう言い放つ。しかし、その直後、レミリアは「うーん……」と微妙な表情を見せる。

 

 

 

(……なんか、この人……もしかしてだけど、咲夜さんが言うよりも怖くなかったりする? いや、そんなわけないか……)

 

 

 そんなことを思いながら、風間君は次の言葉を待つ。

 

 

 レミリアは玉座から身を乗り出し、興味深げに風間を見つめた。

 

 

「それで? 具体的にどのような恩を返してくれるつもりだ?」

 

 

 突き刺さるような紅い瞳の視線を前に、風間はごくりと唾を飲み込む。自分の価値を試されている、そんな感覚が肌にまとわりつく。しかしここで怯んではいけない。風間は深呼吸し、用意していた言葉を口にした。

 

 

「レミリア様は知的な話題がお好きだと、咲夜さんから聞きました。だから、僕が知っている限りの現代の考え方や文化、技術についてお教えしようと思います」

 

 

咲夜ったら、余計なことを……!

 

 

 一瞬、レミリアの表情が引きつった。それはほんの一瞬で、すぐにカリスマを纏った微笑みに戻る。レミリアは咳払いをひとつすると、興味深そうに頷く。

 

 

「ほう、それはなかなか面白い提案だ」

 

 

 彼女は優雅に足を組み直し、片手を顎に添えて考える素振りを見せる。その仕草は実に様になっていたが、風間にはどこか演技じみたものを感じ取っていた。

 

 

「なるほど、なるほど……確かに現代の知識には興味がある。だが惜しい事に、私は忙しい身でな。あまり長く話を聞く時間は取れない」

 

 

 その言葉を聞き、風間君は一瞬肩を落としかける。しかし、すぐにレミリアの指先がすっと自分を指し示し、心臓が跳ねる。

 

 

「だが、そこまで言うなら特別に少しだけ話を聞いてやろう。この後、私の私室に来るがいい。……咲夜、案内は頼んだぞ」

 

 

「かしこまりました」

 

 

 そこまで言うと、レミリアは可憐な振る舞いでふわりとスカートの裾を揺らし、踵を返して奥の回廊へと消えていった。その背中はどこまでも優雅で、気高く、まるで舞台の幕が下りた後の主演女優のようだった。

 

 

 ――その姿が完全に見えなくなったところで、風間はふぅっと長く息を吐き、その場にぺたりと座り込んだ。緊張の糸が切れたのだ。

 

 

「よく頑張りました」

 

 

 そっと近寄ってきた咲夜が、やや柔らかな声で労いの言葉をかけてくる。その表情は冷静そのものだが、ほんの少し口元が緩んでいるようにも見えた。

 

 

 風間君はしばらく黙っていたが、やがて視線を上げる。そして、おそるおそる問いかける。

 

 

「……咲夜さん。本当にレミリアさんが人間を殺すところを見たことありますか?」

 

 

 咲夜は少しだけ目を細めた。まるで警戒の色をにじませるように。しかし、それも一瞬のことで、彼女は淡々と答える。

 

 

「……侵入してきた悪人でしたら、その場で処理なさっていました。ですが……迷い込んだり、助けを求めてきた者は、いったん別室に通されてからのことが多いです。私はその先のことまでは見ていません」

 

 

「そう、ですか……」

 

 

 その答えを聞いて、風間君は何かを考えるようにうつむいた。心の中に浮かびかけた仮説。それはまだ確信にまでは至らないが、奇妙な違和感として、静かに彼の思考の中に根を張っていた。

 

 

 ――けれど、今はそれを口に出すときではない。

 

 

「……案内をお願いします。レミリアさんの部屋へ」

 

 

 顔を上げた風間君に、咲夜は静かに頷いた。

 

 

「こちらです」

 

 

 彼女はすっと身を翻し、再び紅魔館の奥へと歩み始める。風間君も後に続いた。

 

 

 しばらくの沈黙の後、二人はひときわ豪奢な扉の前へと辿り着いた。赤と金の装飾が施されたその扉は、まさにこの館の主の部屋に相応しい威厳を纏っていた。咲夜は足を止め、風間君の方へ振り返る。

 

 

「先ほどと同様、くれぐれも無礼のないように。お嬢様は気まぐれですから」

 

 

 そう忠告を述べると、彼女は扉をノックし、静かに声をかけた。

 

 

「お嬢様、先ほどの客人をお連れしました」

 

 

 そのまま、扉がゆっくりと開かれていく。風間君は緊張で喉が渇くのを感じながらも、「失礼します」とやや引きつった声で言い、部屋の中へと足を踏み入れた。

 

 

 そこに広がっていたのは、赤を基調とした、落ち着いた趣の部屋だった。装飾は華美でありながら、どこか温もりも感じさせる空間。空気にはかすかに紅茶とバラの香りが混ざっていた。

 

 

 そして部屋の奥、ソファーに腰かけていたレミリアは、優雅にカップを傾けていた。

 

 

「来たか。立ち話もなんだ、そこに座るがいい」

 

 

 カップを置いたレミリアが、前のソファーを指さす。風間君はこくりと頷き、促されるままにそこへ腰掛けた。

 

 

 静かな間が流れる。レミリアは再び紅茶を口にし、風間君は目線のやり場に困って視線をあちこちに彷徨わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして、そのまま数分。

 

 

 

 

 

 

 

 重苦しい沈黙に痺れを切らし、何か話しかけようと口を開きかけた瞬間だった。

 

 

「……全く。素直に帰して欲しいって言ってたら、帰してあげたのに」

 

 

 不意に聞こえたその声は、あまりに普通の――いや、拍子抜けするほど自然な、少女らしい口調だった。

 

 

「……え?」

 

 

 風間君は思わずポカンとした表情になる。レミリアは気にも留めない様子で話を続けた。

 

 

「ああいう口調や態度、あれはね。紅魔館の長としての“役割”よ。ああでもしないと、皆にナメられるでしょ?特に妖怪たちはね、威厳がなきゃ何をしてくるかわからないし」

 

 

 そう言って、彼女はカップをくるくると指先で回す。

 

 

「咲夜もね、ずっと私のことを“あれが本来の私”だと思ってるの。幼いころからそうしてきたから……もう演技なのか素なのか、自分でもわからなくなる時があるくらいよ」

 

 

 どこか苦笑するような表情で、レミリアは言葉を重ねる。

 

 

「……でも、本当はもっと単純よ。強がって、格好つけて、威張ってるだけ。恥ずかしい話よね……だから“フラン”も………あ、いえ……何でもないわ」

 

 

 ぽつりと漏れたその名前に、風間君は思わず眉をひそめる。

 

 

「……フラン?」

 

 

 問い返そうとした時には、レミリアはティーカップに視線を落とし、まるで“それ以上聞くな”とでも言いたげな空気を纏っていた。先ほどまでの軽やかさは消え、どこか影を落としたような横顔。重い沈黙が再び部屋に落ちる。

 

 

「……ま、いいわ。話はここまで。貴方が嘘でも恩返しをすると言った以上、何かしらをしてもらうわ」

 

 

 レミリアはふいに声の調子を戻し、立ち上がる。そして、ふわりとスカートを翻しながら、背を向けた。

 

 

「それじゃあ、また明日……期待しているわよ、”風間トオル”君」

 

 

 色々と問いただしたかったが、結局風間君は問いかけることもできず、その後ろ姿を見つめていた。

 

 

 咲夜の時からだが、何故自分の名前を知っているのか。それに、“フラン”という名前。明らかに何かを隠していたあの態度。――それが、ただの気まぐれで済まされるものではないことは、風間君にも分かっていた。

 

 

 何かがある。この紅魔館の中に、まだ知らされていない“何か”が――

 

 

 不安と疑念の残響が、胸の奥に静かに染み込んでいく。そして、次第にその疑念は、確かな予感へと形を変えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――それが、後に彼を“あの部屋”へと導くことになるとは、この時まだ知る由もなかった。




お読みいただきありがとうございました!

表じゃカリスマ溢れる吸血鬼だけど、ホントはポンコツ吸血鬼なレミリア概念が好きなんです……

そしてレミリアは何故風間君を受け入れたのか。倒れていたから助けただけなのか、それとも別の目的が……?

多分次の話も風間君視点の予定です!

早く他の紅魔館メンバーとも話させてあげたい

この中でカスカベ防衛隊のメンバーと友達になれそうなのは?

  • フランドール・スカーレット
  • 古明地さとり
  • 古明地こいし
  • 因幡てゐ
  • ルーミア
  • チルノ
  • 阿求
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