問題児がひとり増えて異世界から来るそうですよ?   作:雪人形

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第一話

「うぅ……寒い……」

 

雪の積もった道を白のトレンチコートに黒のマフラーに身を包みながらもなお寒そうに背中を丸めているしている少年「青江響」はブルブル震えながら、学校からの帰り道を歩いていた。

 

時間は既に通常のカリキュラムを終了して、放課後。寒い寒いと手を擦り合わせながら学校を出てきたのがつい先ほどの事である。帰る途中、校庭では野球部やサッカー部が声を出しながら部活に精を出していたが、帰宅部たる響には何の興味もなく、寧ろ家にある炬燵に入る事しか頭の中に残っていなかった。

 

「畜生、カイロも貼ってくれば良かった。……まさか、此処まで冷え込むとは。おのれ、冬。侮りがたし」

 

理不尽な寒さに文句を言いながら帰り道を歩くが、当然それに反応する人物は居ない。そも、他人の独り言に返す人物など余程の物好きでなければそんなことをしないだろうが。

 

「はぁ、やっと着いた。早く、炬燵の中に入りたい。ああ、こんなに炬燵のことを恋しく思ったのは生まれて初めてかもしれない」

 

そんなことを言いながら、炬燵を目指して家の中に入ろうとしたのだが、ふと玄関に備え付けてあるポストが開いたまま一通の手紙が入っているのが見えた。………シカトしようとも考えたが、もし、大事な要件であった場合に痛い目を見るのは自分なので、ため息を吐いてポストの中に入っている手紙を取り、家の中へと入っていった。

 

「おぉぅ、炬燵やべぇ……」

 

家の中に入るや否や炬燵の電気を入れる。最初は暖かくなかったが、ものの数分で暖かくなり、響は炬燵の中でゴロゴロしながら頬を緩めていた。……炬燵一つで此処まで喜べるのはもしかすると彼だけかもしれない。

 

「っと、そういえば……さっきの手紙読んどかないと」

 

コートの中に入れた手紙をゴソゴソと炬燵に入ったまま漁るとすぐに出てきた。手紙には『青江響殿』と響の名前が書かれているだけで、差出人については一切書かれていなかった。それを訝しげに思いながらも響は手紙の封を切って中身を読み始めた。

 

「あー、なになに……青江響殿?」

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

その才能《ギフト》を試すことを望むのならば、

己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

我らの"箱庭"に来られたし』

 

「……才能(ギフト)?箱庭?なにソレ。新手の宗教勧誘か何かかねー?」

 

呆れた風にそう言いながら響は手紙を投げ捨てた。バカバカしいにも程がある。確かに、才能とはいい難いが、自分がこの世の中で異常であることは年を幼くして理解していた。しかし、差出人も分からない手紙、しかも、怪しいことを書かれているものなんて信用する気にはならない。

 

手紙の変な内容の事は忘れることにして、何か面白い番組でもやっていないかとテレビを付けようとした瞬間、

 

気がついたら、大空に投げ出された。

 

「……………………は?」

 

何が起こったのか一瞬分からなかったが、嫌でも状況を理解させられた。と言うのも、落ちていくスピードが嫌に現実的(リアル)だったからだ。

 

「いやいやいやいやいや!ちょ、洒落になんないんだけどッ!?」

 

状況を飲み込んで、パニックになる響。まぁ、無理もない。恐らく、誰だっていきなり大空に投げ出されれば大なり小なり動揺はする……はずだ。響と共に落ちていっている人物の一人を除いて。

 

「てか、もう水め―――ガボボッ!?」

 

あっという間に水面に直撃した響と彼と同じく大空に投げ出されたと思われる人物たち。普通響たちが落ちてきた高さから彼らが落とされた湖に叩きつけられたら死んでしまうが、そこは何か特殊な仕掛けでもしていたのだろう。怪我一つなく陸に上がることができた。……服はびしょ濡れだが。

 

「ぷはぁっ!……信じられないわ!いきなり呼び出しておいて挙句には空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。下手すりゃその場でゲームオーバーだぜコレ!これなら石の中に呼び出された方が親切だ!」

 

這い上がってきた響の隣では、ヘッドホンを首にぶら下げた金髪の如何にも野蛮そうな目つきをした少年と白のブラウスと長めのスカートを穿いた『お嬢様』のような雰囲気を晒しだしている少女が口々に文句を言っていた。……その点に関しては響も全くもって同意している。

 

「……いや、フツー石の中に呼び出されたら動けないと思うけど」

 

「俺なら問題ない」

 

「そうなの………身勝手ね」

 

「はー、そりゃ凄いねー」

 

興味のなさそうに吐き捨てる少女と感心したように言う響。両極端な感想に石の中に呼び出されても大丈夫な少年。は面白い、と言わんばかりに『ヤハハ』と笑っていた。もう一人の少女に至っては、三人の会話に興味すらないのか、三毛猫を抱えたまま別方向を向いていた。

 

「なぁ、一応確認しておくがお前らにもあの変な手紙が?」

 

「ええ。それと、『お前』って呼び方訂正しなさい。私には、久遠飛鳥という名前があるの。以後気をつけて、あと、そこの猫を抱えている貴女は?」

 

「春日部耀。以下同文」

 

「そう、よろしく春日部さん」

 

飛鳥の言い分に不満があるのか、眉を少しだけ寄せながらそう言う耀。しかし、飛鳥の視線は既に耀を捉えておらず、先ほど話をしていた少年の方へ向けられていた。……仕方なくという意味合いが強そうな表情。

 

「……それで?そこの野蛮で凶暴そうな貴方は?」

                

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪、快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用量と用法を守った上で適正な態度で接してくれよ、お嬢様」

 

「説明書を用意してくれるのだったら、考えなくもないわ十六夜君」

 

「ヤハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しろよ、お嬢様」

 

意外な反応だったからか、自称駄目人間こと逆廻十六夜は少し、キョトンとしたかと思うと、ヘラヘラと楽しそうに笑い出した。敢えて、挑発的に言ったのにソレを流されるとは思っていなかった、と言うのもあるだろうが。

 

「で……最後になったけど、そんな暑苦しそうな格好をした貴方は?」

 

「え?ああ、僕のことか。青江響だよ因みに、この格好だけど………」

 

「………」

 

「特に意味があるわけじゃないいから気にしなくていいよ」

 

ガンッ

 

如何にも意味があると思わせるような口ぶりに十六夜と飛鳥、耀はゴクリと喉を鳴らしたが、けろりとそう言う響に思わず全員気に頭を打ち付けた。響の方はというとしてやったりという表情でニコニコ……否ニヤニヤしていた。

 

「……貴方、いい性格しているわね」

 

「そう?悪い気はしないねー」

 

「ヤハハ、お前も面白い性格してんな……」

 

会話だけ聞けば和やかな一面と捉えられそうだが、実際はそんなものではなかった。ヒクヒクと頬を引きつらせながら、黒い笑みを浮かべている飛鳥に、それに対してどこといった風で平常運転の響。そして、その二人を面白そうにギラギラとした目つきてみている十六夜。何処をどう見ても仲良しこよしといった雰囲気とは程遠い。

 

「(うわぁ……なんだか問題児ばかりですねぇ……)」

 

響たちから少し離れたところの草むらに隠れていたウサ耳を生やした黒髪の少女は彼らの様子を観察して表情を引きつらせながらそう思っていた。この世界……箱庭に呼び寄せたのだが、どうにも一筋縄では協力して貰えそうにないと思うと、気が重い。

 

「まぁ、ひとまずコレは置いておくとしてだ、そろそろこの世界……箱庭だったか?それについて説明してくれる奴が現れてもおかしくないはずだよな」

 

「だね、これじゃ行動のしようがないし」

 

「そうね、このままだと少し困るわ」

 

「………この状況に落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

「(全くです……)」

 

誰ひとりとして焦っていない中そう言う耀に対してそう言う響。言っている本人も全くと言っていいほど焦っていない。ウサ耳の少女としてはもう少し焦ってくれれば、飛び出しやすいものだと思いながら響に同意している。

 

「―――仕方ねぇ、そこに隠れている奴にでも聞くか?」

 

「!?」

 

十六夜の発言に心臓を掴まれたかのようにびくりと反応する。その際に、草むらが少し揺れてしまったが他のメンバーは気がついていない様に見えたので、ホッとしたのも束の間。あら、意外と言わんばかりの表情をした飛鳥の一言によって、黒ウサギのその安堵感は塵へと変わる。と言うのも十六夜以外からは隠れきれていると思っていたのだが―――――

 

「何だ、貴方も気がついていたの?」

 

「ヤハハ、これでも隠れんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴と青江も気づいていんだろ?」

 

「……風上にたたれたら嫌でも分かる」

 

「バレバレ過ぎて、寧ろ隠れているつもりかってくらいだね。これなら、子供の方がもっと上手く隠れ切れるよ」

 

「へぇ、やっぱ面白いなお前ら」

 

「(ひぇー!?バレていますぅっ………うぅ、仕方ありません、こうなった以上お腹括るのデスヨ)」

 

全くもってバレバレだった。寧ろ、バレバレ過ぎて泣きたくなったのはウサ耳の少女だけの秘密である。それで事が解決するわけでもないので、仕方なく腹をくくる決意をしてハンズアップしながら、草むらから出る。

 

「い、嫌だなー御四人様。そんなに狼みたいに怖い顔で睨まれると黒ウサギは死んじゃいますヨ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」

 

「だが断る」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「あっは♪取り付くシマもないですねっ!!」

 

上から響、十六夜、飛鳥、最後に耀の順で、しかも全員清々しいほどの笑顔でウサ耳の少女――――黒ウサギと名乗った彼女の発言を一蹴する彼らは、黒ウサギの予想通り……いや、予想以上の問題児っぷりに本気で泣きたくなってきた黒ウサギはもうどうにでもなれーという感じでバンザイした。

 

「って、ウサ耳!?初めて見たよ!」

 

「フギャッ!?」

 

ウサ耳が生えた少女を見たのが初めての響は、好奇心に負けて彼女、ウサ耳の少女の頭に生えた耳を引っ張ってみた。ただ付けられているだけだったら拍子抜けと言うのも、理由の一つだろう。他の理由としては……ただ引っ張ってみたかったとか、本当に頭から生えているのか気になったなど、そんなところだろうか。

 

「………狡い、私も」

 

「あ、私もいいかしら」

 

「ちょ、ちょっ、ま、待っ――――――」

 

「あ、じゃあ俺も」

 

止めようとするウサ耳の少女の事などいざ知らず。響に続いて好奇心に負けた耀、飛鳥そして最後に十六夜が自分もと黒ウサギに生えた耳を強く引っ張ったり、こちょこちょとくすぐってみたりと彼女の耳をいじり倒す。その被害者たる彼女は、響たちが召喚された場所一体に自分の声にならない悲鳴を上げるのだった。

 




ついに書いてしまった問題児シリーズ……他の作品のように飽きずに完結を目標にやっていきますので、よろしければ次回もよろしくおねがいしますm(__)m
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