「ふぅ……いやー堪能したねー。動物のウサギの耳は触ったことがあったけど、ウサ耳少女のウサ耳は触ったことがなかったからついじっくりと堪能しちゃったよ」
ウサ耳少女の耳をじっくりといじり倒した四人は満足げな表情をしており、中でも響はたいそうご満悦と言うようなホクホク顔で笑みを浮かべていた。ウサ耳の少女の方はというと、弄られ疲れたようで、その場に座り込んでいる。しかも、半泣きである。
「あ、あり得ない。あり得ないのデスヨ。まさか話を聞いてもらうためだけに黒ウサギの耳を散々弄ばれた挙句、小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこういう状況のことを言うのデス」
「いいから、さっさと進めろ」
ウサ耳の生えた少女こと、黒ウサギは、自慢のウサ耳を四人に小一時間弄られ続けると言うもはや罰ゲームにも近い状態からようやく解放された彼女は心底疲れたようにそう言うが、十六夜に一蹴される。自分たちの所為というところを棚に上げて、他のメンツも十六夜に同意のようだ。
「こ、こほん。それでは気を取り直して………それではいいですか?御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さぁ、言います!ようこそ、箱庭の世界へ!我々は、御四人様方にギフトを与えられた方々だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうと思い召喚いたしました!」
「ねぇ、一ついいかな?」
「はい、なんでございましょう!」
手を上げて質問しようとする響に嬉々とした表情で尋ねる黒ウサギ。恐らく、先ほどの定例文とやらが上手く言えて喜んでいるのだろう。
「そもそも、ギフトって何?」
「はい!いい質問でございます。ギフトとは、皆様も気づいておられるかと思いますが、皆様がお持ちのその特異な力は修羅神仏、悪魔、精霊、そして星から与えられた恩恵なのです。そして、その恩恵を駆使して互いに競い合うゲームこそ『ギフトゲーム』と言う訳です」
「へー……なるほどね。うん、理解したよ。ありがとね(……となると、恐らく僕の『アレ』がギフトっていうわけか)」
「いえいえ、呼び出したのは黒ウサギたちですので、皆々様の疑問に答える義務がありますので、構いませんよ」
ニコニコしながらそう言う。黒ウサギに響も釣られてニコニコした笑顔になる。まぁ、響の笑顔は完全に作り笑顔だったのだが。
「じゃあ、次私いいかしら?」
質問を終えた響の後に、一歩前に出てそう言う飛鳥。ニコリと笑ってどうぞと言っている黒ウサギだが、若干試すかのような、視線でいるように響には見て取れた。
「さっき、『我々』と言っていたけれど、それは貴女を含めた『誰か』のことなのかしら?」
「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者である御四人様方には箱庭で生活するにあたって数多ある『コミュニティ』に必ず属していただきます!」
「嫌だね」
「属していただきます!そして、ギフトゲームの説明の追加になってしまいますが、ギフトゲームの勝者は主催者……例外を除いて殆どの場合コミュニティが主催しますが、その主催者が提示した商品をゲットできるというシンプルな構造になっております」
十六夜の拒否をさらりとダメ出しして、響たちに説明を続ける黒ウサギ。
「……その例外ってどう言う場合があるの?」
「そうですねー、例えば暇を持て余した修羅神仏が人を試す試練を称してギフトゲームを開催するケースもありますし、その他にも例外は何パターンかありますが、やはりゲームの開催はコミュニティ主催のものが多くを占めています」
「後者は結構俗物ね……チップには何を?」
「それも様々ですね。金品、土地、利権、名誉、人間………そしてギフトを賭け合う事も可能です。
ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然ご自身の才能も失われるのであしからず。受けるも受けないも自分次第でございます」
脅しをかけるようにそう言う黒ウサギだが、期待したような反応は帰ってこない。その事に問題児だが、肝っ玉は悪くない。寧ろ、ゲームに怯えて逃げ出すなんてことがなさそうで安心したくらいだ。そう思いながら、問題児たちの質問に耳を傾ける。
「そう。ゲームはどうやったら始められるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!
商店街でも商店が小規模なゲームを開催しているので、良ければ参加していってくださいな」
「……つまりギフトゲームはこの世界の法そのもの、と考えていいかしら?」
「八割正解、二割間違いと言ったところですね。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、
金品等による物々交換も存在します。……が、しかし!ギフトゲームの本質は全く逆!!
一方の勝者だけがすべてを手にするシステムです。店頭に置かれている賞品も
店側が提示したゲームをクリアすればタダで手に入れることも可能ということですね」
「そう、なかなか野蛮ね」
「ごもっとも。しかし主催者は全て自己責任でゲームを開催しております。
先程も言いましたが、受けるも受けないも自分次第……つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話なのです」
ふぅ、と一息をついて黒ウサギは一枚の封書を取り出すとニコニコしながら響たちに提案する。
「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには全ての質問に答える義務があります。……しかし、それら全てを語るには少々時間がかかるでしょう。と言うことで、ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが…よろしいでしょうか?」
「―――待てよ。まだ俺が質問していないだろ?」
「……どんな質問でしょうか?ルールですか?それとm…」
今まで清聴していた十六夜が黒ウサギに向かって真剣な顔で話しかけた。その表情に少し気圧されたかのように言葉を慎重に選びながら黒ウサギは質問を促す。
「そんなことはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ。
俺が聞きたいのはただひとつ。手紙に書いてあったことだけだ」
十六夜はそう言うと不敵な笑みを浮かべ、こう言った。
「―――――この世界は…面白いか?」
十六夜の言った言葉に響を含む全員が黒ウサギを見据え、次の言葉が紡がれるのを待った。み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能ギフトを試すことを望むのならば、己の家族,友人、財産……元の世界で持ちうる全てのものを捨ててやってきたこの
「―――――Yes!【ギフトゲーム】は人を超えた者達だけが参加出来る神魔の遊戯。
箱庭の世界は外界よりも格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
一瞬、きょとんとした黒ウサギだが、質問の意味を理解すると今までの社交辞令の笑顔ではなく、心からの満面の笑みでそう答えた。
◆
「………なぁ、青江。ちょっといいか?」
「響で構わないよ。で、どうしたのさ?そんなに良い笑みを浮かべて」
あらかたの質問を終えて、黒ウサギが所属するコミュニティに行くことになり、召喚された場所からその場所へ向かって歩いている最中に十六夜が前を歩いている女子3人に聞こえないくらいの声音で話しかけてきた。
「そうかよ、んじゃ響。世界の果てってヤツに興味ねぇか?」
「有るか無いかで問われれば、有るね。大空に投げ出された時に少し見えたけど、パニックでよく覚えていないし」
「決まりだなっ、その世界の果てって奴を拝みに行こうぜ」
その言葉を待っていたと言わんばかりに十六夜はニヤリと口を歪めた。それに少し嫌な予感がしたが、彼に触発されて世界の果てへの知的好奇心の方が勝り、彼と同じように響もまた口を歪めた。
「いいね、それはいいよ。是非ともご一緒させてもらおうかな」
「ヤハハ、そうこなくっちゃな!じゃ、行くぜ?ついて来れなかったら連れてってやるから安心しろよな。」
「ははは、そっちこそついてこれないなんて言わないでくれよ?」
十六夜のその発言にヘラヘラと笑いながらそう返す響。その事を挑発と受け取ったのか十六夜は口を上に釣り上げておもしれえと言うと飛鳥と耀の方を向いた。
「オイお嬢様、春日部」
「………何かしら、十六夜君」
「……何?」
黒ウサギの後ろを話を流しながらついて行っていた飛鳥と耀を十六夜が呼ぶ。黒ウサギはというと、ルンルン気分で前を歩いているので、彼らが話しているのに気づいていないようだ。
「ちょっくら響と世界の果てまで行ってくるぜ」
「そう、行ってらっしゃい。あ、できれば何かお土産が欲しいわ」
「私も。珍しいものを期待しとく……ホントなら私も行きたいけど」
流石に、三人も減ってしまえば嫌でも気づくはずと今回は自重してみせる耀。……普通なら、十六夜と響の二人が減った時点で気づきそうなものだが、恐らく今超絶ご機嫌な黒ウサギはきっと、自分たちのコミュニティに着くまで気がつかないだろう。
「ま、仕方ないよ。流石に三人だとねぇ。久遠が一人になっちゃうしさ」
「ん。わかってる。………だから、お土産期待しとくね二人共」
「ヤハハッ期待して待っときな。んじゃ、行くぜっ」
「あいあい。じゃ、ちょっと行ってきまーす」
飛鳥と耀にそう告げるとお土産をごねられる十六夜。それに対してニヤリと笑うと黒ウサギに気づかれないように跳躍してその場を離れる。響もそれに少し遅れて彼を追うような形で同じく黒ウサギにバレないように跳躍してその場から姿を消した。
そして、問題児4人たちの読みよりは少し早かったが、箱庭の外門、二一〇五三八〇外門で待ち合わせしていたコミュニティのメンバーに合流してから、漸く黒ウサギは逆廻十六夜、青江響がいないことに気づいたのだった。