問題児がひとり増えて異世界から来るそうですよ?   作:雪人形

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第3話

「あ、あんの……問題児様方は…………ッ!!」

 

黒ウサギは、プルプルと拳を震えるほど握りしめてこめかみには青筋がピキピキと浮かび上がっていた。………誰がどう見ても、絶賛ご怒り中もといい、激おこぷんぷん丸である。彼女の怒りように飛鳥と耀は気まずげに目を逸らす。今ここにいない、響と十六夜の離脱に一枚噛んでいるからだ。

 

「……いい、です。いいでしょう。これは黒ウサギへの立派な挑戦状なのですよっ!とっ捕まえて、黒ウサギは……箱庭の貴族が伊達じゃないことを教えてやるのですっ!!」

 

「あ、あのー、黒ウサギ?」

 

「ふ、ふふふ……今にクビを洗って待っているのですよ御二方……この黒ウサギが今から引導を渡しに行ってやるのです!!」

 

外門のところで合流した少年――――名をジン=ラッセルと言うが、その少年が変な黒いオーラを放ちながら一人盛り上がっていることにドン引きしながらも勇気を持って話しかける。しかし悲しいかな、彼の声は黒ウサギには届いていない様子。彼の頑張りが無に帰したことを問題児ながら飛鳥と耀は同情した。

 

「………というわけで、ジン坊ちゃん。黒ウサギはこれから問題児御二方を捕まえに行ってきますので、そちらの御二方のご案内をお願いしてもいいですか?本来なら、黒ウサギが案内するべきなのですが……あの問題児様方を追わなければなりませんので」

 

「う、うん。分かった。こっちのことは気にしなくていいよ。じゃぁ、その………が、頑張って?」

 

「YES!速やかに迅速に半刻以内に連れ戻してまいりますので、それまでよろしくお願いします。……それと、御二方?」

 

ニコリと笑いながら黒ウサギは飛鳥と耀、二人の方を見る。ニコニコしてはいるものの、その目は全くもって笑っていない。その様子に二人は本能的に今の黒ウサギに逆らうべきではないと察した。

 

「御二方はそんなことないと信じていますが……向こう御二方のように消えたりしたら……わかってますよね?」

 

「も、勿論よ。……ねぇ、春日部さん」

 

「う、うん。そんなことしない……よ?」

 

「それならよろしいのです。では、ジン坊ちゃん、御二方のエスコート頼みましたよっ!!」

 

二人の答えに満足した黒ウサギはジンにそう告げると力を解放する。黒に近い青色だった長い髪は彼女の怒りを示すかのように緋色に染まっていき、そのまま二人が去っていったと思われる方向へと跳躍していく。……その距離だけなら、去っていった二人よりも高い跳躍力だ。

 

「……とりあえず、僕たちも行きましょうか?」

 

「「………ええ(うん)」」

 

この数分の会話だけでガクンと疲れたと言わんばかりにゲンナリした様子の二人はジンの提案に少し嬉しく思いながら、素直に彼についていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤハハハハハッ!!スゲェな!響っ!!本当について来てんのかよっ!」

 

「これでも結構キツいんだけど……ねっ」

 

森の中を爆走している二人の人物。言わずと知れた黒ウサギが現在血眼になって追っている響と十六夜だ。彼らが走った後は、普通の速度ではあり得ないほど土が抉れている。その様子から、彼らの走る速度が尋常じゃないことを物語っている。

 

「ホントかよ、とてもそうは見えねぇなっと!」

 

「!?ちょ、あぶなっ!?」

 

「ヤハハッ、やっぱ避けられんのか!ホントおもしれぇな響」

 

「こっちとしては、勘弁して欲しいんだけど?」

 

悪戯替わりに十六夜が蹴って飛ばしてきた木が響に向かって尋常ではないスピード………第三宇宙速度で響に迫っていく。ソレを飛んで近くに生えている木の枝に向かって飛んで、その枝に着地して蹴られた木を回避する。呆れ半分のジト目で十六夜を見るが、なんのその。そんなこと関係ないと言わんばかりに、十六夜は面白そうに笑っている。勿論、響は冗談じゃないと思っているが。

 

「で、まだ着かないわけ?その世界の果てってのに」

 

「いんや。もうすぐそこだろうな」

 

「じゃあ、早く行こうよ。僕疲れたよ……」

 

「んだよ、だらしねぇな」

 

「誰のせいだと思ってんだよ……」

 

心底残念そうに言う十六夜に口元を引きつらせながらそう言う響。ただ世界の果てに向かって走るだけならそこまで体力を使うことはなかっただろうが、途中何度も十六夜によって先ほどのように、進路妨害されたためだ。

 

「ヤハハ、んな怒んなって。……っと、こりゃスゲェな……」

 

「……流石は、箱庭ってことかな?」

 

森を抜けた先の景色に二人は、絶句していた。勿論この二人は現在目の前で見ているような絶景を元の世界で見たことがない。その事に息を飲みながら歓喜に震えていた。未知の体験への興奮。それが今この二人を震わせる要因だった。

 

『ほぉ……この、世界の果てまで人間が来るのはいつ以来か……』

 

「わぉ、水の中からでっかい蛇が出てきたよ」

 

「いい、いいぜオイ。最っ高のサプライズじゃねーか!」

 

突然水辺の水が盛り上がったかと思うと、底から大きな白の喋る大蛇が現れた。その事に、響は驚いたように笑いながらそう言い、十六夜に至っては歓喜すらしていた。

 

『小僧ら、此処に来たということは我の試練へ挑戦しに来たと受け取って良いのだな?ならば、選ぶが良い』

 

「え?いや、僕受けるつもりないけど」

 

「はっ、おもしれぇ。だったら、まず俺を試せるのか試してやるよッ」

 

『図に乗るなよ、小僧が!!』

 

「えー、僕のことスルーですか………」

 

スルーされたことに若干のショックを受けている響なんて見えていないかのように、十六夜の発言を挑発と受け取った白い大蛇―――蛇神は体を凪ぎ、水辺の水で津波を起こす。普通の人間であれば、避けることは叶わず、その水圧に体はひしゃげてしまうことだろう。しかし、十六夜は不敵に口元を上に吊り上げて笑うと津波に向かい走り出したかと思うと、その勢いを利用して津波を殴りつける。

 

『な、何!?』

 

「うわー、津波殴りつけるだけで相殺するとか、規格外すぎるんだけど……」

 

響が言ったとおり、十六夜に殴りつけられた津波は勢いを失い、そのままただの水に戻り、その場に落ちる。蛇神の方はというと、驚きが隠せないでいる。

 

「おいおい、まさかこの程度なんて言わないだろうな蛇神サマよ。今度は、こっちから行くから精々俺を楽しませてくれよッ!!」

 

『ぬ!?ゴハァッ!?』

 

目の前に現れた十六夜に寄って身体の中央あたりを彼の右足によって蹴り飛ばされる。最初は耐えたものの、耐え切れず蛇神は滝へと叩きつけられる。すぐに出てくるかと思い、待っていたが、一向に出てくる気配がない。恐らく気を失っているのだろう。

 

「………はぁ、んだよ。本当にこれでオシマイかよ……蛇神ってのも大したことねぇな」

 

「いやー、楽に勝つだろうとは思ったけど、まさか一撃であそこまで吹き飛ばすなんてね。予想外だよ」

 

「俺としちゃ、もうちょい粘って欲しかったけどな。……ま、退屈はしそうにねぇな『箱庭』は」

 

楽しそうに笑う十六夜に釣られて響も笑う。そこに少しボロボロになりながら追いついた人物――――黒ウサギがこめかみをヒクヒクさせながら響たちの前に現れた。

 

「よ、ようやく見つけたのですよ。この問題児様方……」

 

「ん?ああ、黒ウサギか。てか、どうしたんだその髪の色」

 

「いや、髪の色云々より先に言うことがあると思うけど?」

 

響の至極真っ当な意見に黒ウサギは『全くです』と大いに同意する。まぁ、そんな至極真っ当な意見を言う本人も黒ウサギがここまでくることになる一端を担いでいるわけだが。

 

「しかし、いい脚してんな。こうも早く追いつかれるとは思っていなかった」

 

「ふふん、当然にございます。黒ウサギは『箱庭の貴族』と謳われる優秀な貴種なのです。その黒ウサギが―――」

 

と言いかけて、言い止めてはっ、となる。確かに黒ウサギ―――箱庭の貴族は優秀な貴種。箱庭でもその力は決して低くなく自身も修羅神仏たちには及ばないにしても、それなりに強いと自負している。それなのに、それなのに…

 

「(黒ウサギが半刻以上追いかけても御二方に追いつけなかった……?いえ、そんな……まさか)」

 

「?黒ウサギ、どうかしたのかい?」

 

「い、いえ!ともかく響さんと十六夜さんが無事でよかったのですヨ。水神のゲームに挑んだと聞いて、肝を冷やしたのですよ」

 

「水神?――――ああ、十六夜がぶっ飛ばしたアレ?」

 

ピッ、と擬音が付きそうな動作で滝が流れている方向を指差している。は?と最初何を言っているのか理解できなかったが、嫌にでも理解することになる。何故なら………

 

『まだだ、まだ終わっとらんぞ……小僧ぉっ!!』

 

「なんだ、ようやく意識が戻ったのかよ」

 

「じゃ、蛇神!?って、どうやったらここまで怒らせることができるんですか御二方!?」

 

「いや、僕何もしてないんだけど」

 

ナチュラルに自分の所為にもされたことに納得できないという表情で黒ウサギの方を見る。その表情にう、と言葉を詰まらせる彼女に助け舟?を出すような形で主犯である十六夜が説明をする。

 

「なんか、偉そうに『試練』を選べだの上から目線で素敵なことを言ってくれるからよ、”俺を試せるか、試してやったんだよ”…まぁ、結果は少々期待はずれだったが」

 

『貴様ァ…………つけあがるなよ、人間風情がァ!!』

 

十六夜の発言に今度こそ完全にブチギレた蛇神が甲高い咆哮を上げる。すると、巻き上がる風が水柱立ち上げる。あの水流に巻き込まれれば、ただの人間であれば、一辺の慈悲なくちぎれ飛ぶことは明白。それを理解した黒ウサギは悲鳴に近い声で十六夜に向かって叫ぶ。

 

「下がってください!十六夜さんっ!!」

 

「―――大丈夫だよ、黒ウサギ」

 

「へ?ど、どういうことですか?」

 

「見てればわかるよ……ほら、十六夜が動くよ」

 

楽しそうに笑っている響に対して黒ウサギは、訝しげに思う。明らかに十六夜の方がピンチなのに心配する素振りすら見せない。響と同じく、十六夜も圧倒的不利に見える状況に対して笑っている。そして、獰猛に笑みを深めたと思った瞬間。

 

「……ハッ、しゃらくせぇっ!!」

        ・・・・・・・・

迫った水流の嵐を拳一つでなぎ払う。その異常な光景に蛇神と黒ウサギの驚いた声は奇しくも重なりその場に響き渡る。似たような光景を見た響は『やっぱりね』というような表情で苦笑いをしていた。

 

『「はぁ!?」』

 

「まぁ……中々だったぜ、お前」

 

その言葉を最後に大地を踏み砕くような爆音を響かせ、それが、十六夜の放った蹴りが蛇神の胴体を打ち付け、蛇神の体躯は宙を舞い、そのまま重力に逆らうことなく叩きつけられたことを教えた。その衝撃で川は氾濫し、水で森が浸水する。またびしょ濡れになり、バツが悪そうにしている。勿論、濡れたのな十六夜だけでなく、響と黒ウサギも同様だが。

 

「……くそ、今日はよく濡れる日だなオイ。クリーニング代位は出るんだろうな黒ウサギ」

 

「プッ…」

 

「………(ぽかーん)」

 

冗談めかして言う十六夜の言葉に響はプッと吹き出し、黒ウサギに至ってはあっけに取られて十六夜の冗談が耳に入っていなかった。そして、黒ウサギの脳裏には、ある一言が記憶の奥底から浮き上がってきた。

 

『黒ウサギ、彼らは間違いなく、人類最高クラスのギフト保持者よ♪』

 

それは、彼らを呼ぶためのギフトを賭けたあるゲームの『主催者』からの言葉。

 

ただのリップサービスだとしか思っていなかったあの言葉………もしかしたら、本当にもしかするかもと黒ウサギは一筋の希望を抱いて、響とハイタッチを交わしている十六夜を見るのだった。

 




ふぃー、第三話目投稿完了しました。いやはや、中々小説を書くのは難しいですね。………思った様に話が進められなくて四苦八苦しております(o´Д`)=з

就職活動もやらないといけないので、更新が遅れることもありますが、次回もお付き合い頂ければと思います。では、また次回にお会いしましょう。|・x・)ノシ
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