ソラヘノツバサ
…僕の最初の憧れは父親だった。
戦闘機に乗り大空を駆け抜けていくその姿に、憧れていた。
でもその憧れはいつしか呪いに変わっていった…父親の死をきっかけに。
今でも覚えている。
計器トラブルで制御を失った父親の乗る戦闘機は失速し、落ちてゆく。そのままベイルアウトすることも叶わずに父親は炎に飲まれ亡くなった…
それから僕は塞ぎ込んで、空を恐れる様になった。
父親を屠った、あの空を…
僕はそれ以降狂ったように走りに没頭した。
…走ってる間は、全てを忘れられるから。
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あれから、何年経っただろう。
トレセン学園に入学することとなった僕だが、未だ空へのトラウマは払拭出来ていない。
...いや、寧ろしたく無いのだろうか。
あの事を忘れたら、父親のことも忘れてしまいそうな気がするのだ。
そんな事をぼんやりと思いながら、今日も自主トレーニングに励む。
くる日もくる日も、トレーニングの連続...勿論、悪くは無い。
そんな日々を過ごし、早3週間。
いよいよ模擬レースの時期がやってきた。
トレーナー陣は今年の有力候補である複数のウマ娘に目が釘付けだ。
はっきり言って、僕の事は眼中に無いだろう。
...だからこそ面白い。
面食らった顔をいっちょ拝んでやろう...そう、僕が勝つ事で。
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結果は…辛勝。
やはり有力候補なだけあって、彼女は地力がとんでもない。
だがまだ動きにムラがあった為か、そこを突くことで勝利を収めることができた。
…彼女は負けたというのに、爽やかな雰囲気で自らを囲んでいるトレーナー達に応対している。
それに対し僕には誰も寄ってこない。
…それどころかこんな声まで聞こえてきた。
“まぐれ”、”フロック”、挙げ句の果てには”八百長”と。
……耳を塞ぎながら、僕は1人きりの自室へと向かった。
何故認められないのか、何故こうも敵視されるのか。
…いっその事、徹頭徹尾、悪を演じるか…
……結論を出すには時期尚早、と自分に言い聞かせながら、ベッドに横になりそのまま目を閉じた。
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夢を見た。
怖いはずの大空に、1人で投げ出されている夢だ。
…けれど、不思議と怖く無い。
それどころか安心感すら感じるほどに、リラックスできている。
揺蕩う様に空に身を任せていると、声が聞こえてきた。
…懐かしく、忘れるはずのない声が。
『ツバサ、お前はお前のままでいいんだ』
『周りの人達がなんと言おうと、お前が信じた空を飛んでゆけ』
…目を覚ました僕は、冷蔵庫からサイダーを取り出し一気に飲み干した。
清涼感のある甘い水がパチパチとした感触を伴って喉を通っていくのを感じながら、カーテンを開けた。
既に、空は晴れ渡っていた。
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模擬レース2日目。
依然として有力なウマ娘にばかり注目が集まり、その他のウマ娘には目もくれず…
あぁ良いさ、そのままその子を見ていてくれ。
…最後に全て掻っ攫ってやる。
……その自信は何処からくるのか、だって?そりゃ…
「…翼を手にした僕は…きっと誰よりも高く羽ばたける」から。