夢か、現か。   作:ST-33-4

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アフターエピソード?的なものです。


もう一つの明日へ

…唯一。忘れていたことがあった。

私の、名前だ。

 

“アッシュノワール”。

 

それが、私の…ウマ娘としての名前だった。

 

────────────────────────────────

 

夢から目が覚め、私は走る。

 

不思議と息が切れず、ずっと足取りは軽いままだ。

星々が瞬く夜を、私は駆け続けた。

 

走り続ける内に、朝日が昇り始める。

 

腕時計に目を移す。

…私の目が可笑しいのだろうか、

まだ腕時計の針は3時を指していた。

 

そう、不思議に思いつつも私は再び走り出した。

 

────────────────────────────────

 

走り続ける足を止め、強く握り締めていた拳を解く。

私の掌からは、血が滲んでいた。

無意識の内に、爪が食い込んでいたのだろう。

 

また、走り出す。

 

気付かぬ内に、見覚えのある物が目に入った。

 

…三女神の像。

この世界…現実にはあるはずの無い物だ。

 

像の前に一歩、踏み出す。

 

近づくと、女性の声が頭の中に響く。

“まだ諦め切れてないの?”

 

…諦められるわけが無い。

私にとっては願っても無い事だった。

この空っぽな自分に、あの時だけは…

トレーナーと一緒にいた時は価値を見出せたから。

 

諦めたく無い。

 

“なら、私に…私達に見せてみせなさい。”

 

そう聞こえると、辺りが眩い光で包まれた。

 

眩い光に対して

反射的に閉じてしまった目を開くと、

私の姿は変わっており、

 

かつての姿…ウマ娘としての姿に変わっていた。

 

周囲も変わっている。

あの時、あの場所で起こったことを、

私は忘れないだろう。

 

…有マ記念…中山レース場のターフビジョン前だ。

 

私は有マ記念で勝った直後、

故障を起こして意識を失い、夢から醒めた。

私にとってはトラウマに等しい。

 

呼吸が、心拍が、動悸が、

自然に上がってしまう。

 

なんとか落ち着きを取り戻すと、

ある事に気がついた。

 

目の前には、

影を纏った様な風貌のウマ娘が何人も立っていた。

 

彼女らに見覚えは無いが、はっきりと分かる。

 

<皇帝>。

 

<皇帝を超えし帝王>。

 

<日本総大将>。

 

<世紀末覇王>。

 

<新時代の扉>。

 

<金色の暴君>。

 

<お祭りウマ娘>。

 

<蒼空の覇者>。

 

<総てを蹴散らす天賦の才>。

 

 

 

 

私には”私達を、超えて見せろ”と、

言われたように聞こえて。

 

鼓動が暴れる。…前と同じだ。

 

それに加えて、

体が震える。恐怖からか、

武者震いかは私にも分からない。

 

しかし、此処で待っていても、

立ち止まっていても、何も始まらない。

 

 

覚悟を決め、ゆっくりと歩み、向かう。

…私の運命を変える為の、ゲートへと。

 

…閑散としたレース場に、足音が唯響き渡る。

 

分かってる、無謀だって。

でも踏み出さなきゃ、何も変わらない。

 

…変えることすら出来ないから。

 

運命の時が、審判の時が迫る。

 

…\ガコンッ!/

 

 

 

「よーい…スタート。」

 

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