眩い光が、辺りを照らす。
そうか、私は…
…あのレースに、負けたんだ。
やっぱり、力の差は歴然で。
でも、一つも悔いは無い。
だって、踏ん切りが付いたから…
私は、この舞台に相応しくないって。
そう自分に言い聞かせた。
でもそんな心とは裏腹に。私の体は涙を流していた。
どうして?
負けたのが悔しかった?諦めたのが悔しかった?
あの場所にもう戻れないから?…全て、泡沫へと消えるから?
違う、泣いているのは…
自分が不甲斐ないから。
自分の運命一つ変えられない、惨めな奴だから。
そんな自分に苛立ちを隠せなかったし、
何より恥ずかしかった。
お前は此処で終わりだって、
自分に告げられた様な物だ。
“…これが、最後のチャンスだ。”
無機質の様で、そうで無い声が響き渡る。
“最大の敵は己…そう、自分自身なのだ。”
そう聞こえると、
目の前にウマ娘が現れた。
…彼女の姿は、私に瓜二つだった。
あぁ、勝って見せろと…そういう事?
進まねば、何も出来ない…そうでしょ、私。
なら。
やってやるさ…例え、自分が相手だろうと。
周囲の色彩が消え失せ、灰色で満たされる。
まるで、今の私の心みたいだ。
…そう思っていると、場所が移り変わっていた。
“ガベージ・スペース”…
…メモリ領域の名を冠するこの場所で
決着を付けるらしい。
脳内に直接情報が流れてくる。
不気味な感覚だ。
それも、吐瀉物を出してしまいそうになる程…
吐き気を堪え、何とか建て直す。
目の前に佇むウマ娘は、眉ひとつ動かさない。
まるで、走るためだけに作られた人形みたいだ。
ソイツが、私と同じ姿をしているのが、
何故だか腹立たしい。
私はこんな、マネキンの様なウマ娘では…!
ガベージ・スペースに大きなノイズが入り、
地形が大きく変わる。
中山、阪神、東京…
…その要素を全て無理矢理詰め込んだ様なレース場だ。
しかし、観客席には人1人見当たらない。
まぁ、当たり前ではあるか。
無機質な物質で形作られたゲートが、ノイズの中から現れる。
…”私”は既にゲートに入っている様だ。
刻一刻と、その時が迫り来る。
逃げ出したい。
そんなネガティブな感情を噛み砕き、ゲートへと静かに向かう。
ゲートの下は、明らかに芝でもダートでも無い感触だ。
ウマ娘の身体能力を引き出す為だけに作られたかの様な地面。
これなら、
ベストコンディションで走れるだろう、そう言われている様で。
…息を殺し、私はゲートへ入る。
隣の”アッシュノワール”の呼吸と、私の呼吸が重なる。
それも、不気味なほどに。
『…私を、超えて見せろ。』
…っ、言われなくても…!
“ゴウン…!”
開くゲートを前に、私は決意を抱き直す。