夢か、現か。   作:ST-33-4

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ターフ(戦場)、紅と灰に染めて…

 

あの後のことだ。

 

何気なく、自分の部屋でベッドに倒れ込んだ。

 

その瞬間、

俺の意識は深い微睡の中へと吸い込まれていった…

 

 

───────────────────────

 

惰眠から目を覚ますと、そこには病室の天井が。

 

どうやら、俺は戻ってきてしまったらしい…

この…美しくも残酷な世界へ。

 

今の俺…正確にはアグレッサーソウルの体は、

重篤な障害を患っている。

 

障害というのは、脚が思う様に動かないこと、

そして、色覚障害だろう。

 

前者に関しては、…常に脚が痺れている様な物だ。

 

…頭からフェンスに突っ込んだ筈だが、やけに軽い。

 

後者に関しては…

 

一定の条件を満たしてしまうと、

周囲が紅に染まったかの様に見えてしまう、という物だ。

 

レースに悪影響が及ばなければ良いが…どうだろうか。

 

幸いにも、

ウマ娘の体であれば障害からの回復は早いらしいが…

…本当だろうか。

 

 

という事で、俺は病院でリハビリを開始した。

 

毎日、思う様に動かない脚を引き摺りつつも、

手すりを伝って歩く練習を繰り返す。

 

時には、

上体起こしをサポーターを着けながらしたり…

 

時には、外科的手術を受けたり。

 

こんな日々が続いて早、6ヶ月。

 

…奇跡の回復治療というべきか。

俺の脚は、以前と遜色ないレベルで復活を遂げていた。

 

脚が軽く、まるで羽みたいだ。

 

気がつけば俺は、

病院の敷地内にある大庭園を駆け回っていた。

 

 

…その後、息を切らしてしまったが。

 

 

───────────────────────

 

アグレッサーソウルが現役復帰する。

 

 

その話を聞いた時、私はにわかに信じ難かった。

あれだけの重傷を負いながら、復帰するなど…

 

…考えても仕方がない。

私は私にできることをし続けよう。

 

さぁ、行こう...アッシュノワール。()

 

もう一度…あの場所に立つために。

 

 

 

───────────────────────

 

 

紅の攻撃者(アグレッサーソウル)と、全てを覆う灰(アッシュノワール)が交わる。

 

二者がターフに立つ時…

 

中山に、奇跡が舞い降りる。

 

その奇跡は、誰に微笑む?

 

 

───────────────────────

 

「っていうキャッチコピー考えたんだけどよ、どうだ?」

 

「却下です、私はそんな大層なウマ娘じゃありません。」

 

「ちぇ、ダメか…ならアッシュが考えろよ!」

 

「ゔっ…私にセンスが無いのは知ってますよね…?」

 

「あっ、そうなんだ。…それが何か問題?(主任風)」

 

「むぅ…アグレッサー、レースでは覚悟してくださいね?」

 

「怖い怖い…可愛い顔が台無しだぞ?」

 

「可愛い寄りの顔なのはそっちですよね?」

 

「…えっ?」

 

「…自覚無しですか…通りで女性人気が高いわけで…」

 

「んだとぉ!?」

 

「そう怒ってる顔も可愛いですよ。」

 

「っ〜…ふざけんなぁ!」ドタドタ…ガチャン!

 

「少し、揶揄いすぎたかな…」

 

───────────────────────

 

前日まで、そんなやり取りをしていたのが…

…まるで嘘みたいだ。

 

 

…有マ記念。

アッシュがかつて散った地で、俺たちは競り合う。

 

今年の俺は、

凱旋門賞には向かわずに有マでアッシュを迎え撃つ事にした。

 

全ては、ベストコンディションのアイツと戦う為…

この時の為、俺は凱旋門賞を棄てた。

 

…さぁて、ゲートに向かうとするか!

 

───────────────────────

 

私は誓った。

2度と負けないと。

 

そう、トレーナーに。

 

例え誰が相手だろうと…

…アグレッサーが相手でも。

 

かつて私は、この場所(有マ記念)で砕け散った。

でも、今の私は前までの私とは違う。

 

ゲート前へと、脚を進める。

 

その時、アグレッサーと私は邂逅した。

 

「よぉ、アッシュ。調子はどうだ?」

 

「完璧です。…パーセンテージで表すなら120%。」

 

「超完璧じゃねぇか!でもな、俺だって負けてねぇぜ?」

 

「む…?そういえば、そのボロ布は…?」

 

「見て驚け!ぬぅんっ!」

 

“バサァッ!”

 

アグレッサーはそう言うと、

身に纏っていた布を投げ捨てた。

 

「…っ…新たな勝負服…!」

 

「俺の新たな勝負服…まさに攻撃者の魂(アグレッサーソウル)ッ!」

 

「今回ばかりは負けられないんでね…先に待ってるぜ!」

 

「…君はすごいね。でも、私も負ける訳には行かないから…!」

 

 

また、始まる。

あの日の絶望も、あの時に抱いた希望も…

 

全てを賭けて、このレースに挑む。

 

“ザクッ、ザクッ…”

 

 

今日は晴天、バ場は良バ場。

 

あの時とは全くの正反対。

 

 

“ザクッ、ザクッ、ザクッ…”

 

ゲートに入る。

 

周囲が灰色に染まる。

紅に、俺の視界が染め尽くされる。

 

 

“全ウマ娘、ゲートイン完了…”

 

「「勝つのは…」」

 

“…ガコォンッ!”

 

「私だ…!」 「俺だぁッ!」

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