夢か、現か。   作:ST-33-4

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“グローリーデイズ”
在りし日の栄光を。


 

昔話をしよう。

僕は過去に、重大なレース中の事故に遭った。

 

頭から、内ラチのフェンスに追突した。

 

一命は取り留めたものの、

その代償はあまりにも大きかった。

 

僕は、15年間の記憶の全てを失ってしまった。

 

ライバルと競り合った記憶。

トレーナー君との思い出。

家族とのかけがえの無い時。

 

…全てを無くしてしまった。

 

今日は雨。

今の僕の感情を映し出した様な天候。

 

今日も病室で家族らしき人と会うばかりの日々だ。

 

そんな僕にも、一つの楽しみがあった。

“大外を突っ切って来たのはアグレッサーソウル!”

“そのまま先頭の子を差し切ってゴールイン!”

 

そう、レース観戦だ。

レースの中継や録画をテレビで観ているだけでも、

僕の心は多少楽になる。

 

でも、裏を返せば楽になると言うだけで。

次第に僕は、レースを観ることすら嫌になっていた。

 

───────────────────────

 

奇妙な夢を見た。

 

僕が事故に遭わず、現役を続行していた世界線だ。

 

でもその夢の僕は、僕じゃなかった。

 

僕の姿をした、他のウマ娘を眺めているだけ。

 

嗚呼、僕もまた走りたい。

また、あの歓声を。

あの場所に吹く風を。

 

…もう一度、感じる事が出来たらなぁ。

 

“それが、君の願いなんだね?”

“チャンスは一度きり。それでも良いのか?”

“それでも良いのなら…進みなさい。”

 

“さぁ、掴むんだ。在りし日の栄光を。”

 

───────────────────────

 

“グローリーデイズ”

 

それが、僕の新たな名前だ。

 

僕に課せられた制限時間は3年。

 

この間に、目標を達成出来れば…

僕は記憶を取り戻す事が出来るらしい。

 

此処までが夢で告げられた話だ。

 

さて、此処から僕の新たな3年間が幕を開ける。

 

…さぁ、行こうか…目を覚そう。

 

───────────────────────

 

“グローリーデイズ、日本のウマ娘の意地を見せるか!”

 

“沈むか…沈まない!?もう一度捲ってくる!”

 

“先頭に躍り出たのは日本のグローリーデイズ!?”

 

“このまま行くのか!?行ってしまうのか!?”

 

“残り200m!後ろは届かない!もう大丈夫だ!”

 

“遂に届いた!遂に掴んだ!凱旋の王冠ッ!”

 

“グローリーデイズだぁぁぁぁぁぁぁッ!”

───────────────────────

 

凱旋門賞。

それは、ジンクス。

 

僕は、そのジンクスを乗り越えた。

…乗り越えてしまった。

 

祝福の筈だった歓声は、僕の耳には届かない。

 

意識が薄れて行く。

 

これが、契約だから。

 

“日本のウマ娘に、凱旋の盾を。”

 

それが、グローリーデイズ()に定められた、

運命(呪い)だったから。

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