在りし日の栄光を。
昔話をしよう。
僕は過去に、重大なレース中の事故に遭った。
頭から、内ラチのフェンスに追突した。
一命は取り留めたものの、
その代償はあまりにも大きかった。
僕は、15年間の記憶の全てを失ってしまった。
ライバルと競り合った記憶。
トレーナー君との思い出。
家族とのかけがえの無い時。
…全てを無くしてしまった。
今日は雨。
今の僕の感情を映し出した様な天候。
今日も病室で家族らしき人と会うばかりの日々だ。
そんな僕にも、一つの楽しみがあった。
“大外を突っ切って来たのはアグレッサーソウル!”
“そのまま先頭の子を差し切ってゴールイン!”
そう、レース観戦だ。
レースの中継や録画をテレビで観ているだけでも、
僕の心は多少楽になる。
でも、裏を返せば楽になると言うだけで。
次第に僕は、レースを観ることすら嫌になっていた。
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奇妙な夢を見た。
僕が事故に遭わず、現役を続行していた世界線だ。
でもその夢の僕は、僕じゃなかった。
僕の姿をした、他のウマ娘を眺めているだけ。
また、あの歓声を。
あの場所に吹く風を。
“それが、君の願いなんだね?”
“チャンスは一度きり。それでも良いのか?”
“それでも良いのなら…進みなさい。”
“さぁ、掴むんだ。在りし日の栄光を。”
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それが、僕の新たな名前だ。
僕に課せられた制限時間は3年。
この間に、目標を達成出来れば…
僕は記憶を取り戻す事が出来るらしい。
此処までが夢で告げられた話だ。
さて、此処から僕の新たな3年間が幕を開ける。
…さぁ、行こうか…目を覚そう。
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“沈むか…沈まない!?もう一度捲ってくる!”
“先頭に躍り出たのは日本のグローリーデイズ!?”
“このまま行くのか!?行ってしまうのか!?”
“残り200m!後ろは届かない!もう大丈夫だ!”
“遂に届いた!遂に掴んだ!凱旋の王冠ッ!”
“グローリーデイズだぁぁぁぁぁぁぁッ!”
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凱旋門賞。
それは、ジンクス。
僕は、そのジンクスを乗り越えた。
…乗り越えてしまった。
意識が薄れて行く。
これが、契約だから。
“日本のウマ娘に、凱旋の盾を。”
それが、