転生TS巡海レンジャーさん 作:─────
突然だが、私は転生した……のだと思う。
私の内側には私の住む世界とは全く違う世界の、それも男性の記憶があり、理由は不明だが私はその記憶こそ元々の自分だと確信している。
私が今住んでいるのは辺境のとある小惑星だ。
ここに住むのは私を含む単一の種族だが、私たちは自らの種族を指し示す名を持たない。その理由は長い間カンパニーやその他の脅威から逃げ回った果てに自らの根源となる歴史の全てを喪失したからだと年長者から聞いた。
少し前に新たに名を掲げようという動きがあったが、この小惑星からもいつかは逃げなければならず、その時には今考えた名も残らないという理由で却下となった。
何故、私たちがカンパニーにすら追われなければならないのか、その理由は私たちの特性にある。
私たちの種族は長命で再生能力も高いため不死に近い体を持ち、幻術に長けていた。
長けているというのは、ただその術を長年磨いたなどという話ではなく、私たちは本能として、まるで手足を動かすのと同じようにそれらを扱い、生み出された幻は相手の心身に傷を付けるほどの錯覚を与えることすら可能なのだ。
遥か昔、とある同胞はこれを戦争にて扱い、三桁を優に超える数の敵兵を一瞬にしてショック死に至らしめた。もちろんそれほどの大規模な幻術となると私たちであってもかなりの時間を費やしての鍛錬が必要になるが、それでも一応は可能であるという危険度の高さこそが、おそらく私たちがカンパニーを始めとした諸勢力に追われる理由だろう。
そして私たちは、危害を加えられるたびに相手にそれ以上の
私たちの中で自らの手を血に染めたのは戦場に出た一人のみだった。
しかし、私たちは逃げなければならず、それは更なる恨みと敵を作ることに他ならず、そんな負のループに陥った一族の行方はもはや自明であろう。
落日の日、あちこちから人の焼ける匂いが漂い、悲鳴と銃声が本当に耳を裂いてしまうのではないかと錯覚した。
逃げ回る人を追う影は、見慣れたカンパニーの徽章を掲げるものから一度も見たこともないマークを掲げるものまで様々だった。
きっと彼らは、私たちを追っていた諸勢力に雇われたのだろう。
「……逃げて!今すぐ逃げるのよ!⬜︎⬜︎⬜︎」
母の声が聞こえて、私は駆け出した。
私たちが拠点としていた場所から遠く離れ、走って、走って、そして逃げ場など無いことに気がついた。
彼らが発した言葉が本当なら、彼らには“リスト”があるらしい。
ならば、小娘一人でもリストに名前がある以上は発見するまでこの星を探し回るだろう。
そして、私にはこの星から逃げる手段など一つもないのだ。
そうして、私は……
「……コイツ、リストのガキか……?」
「違う、私はお前たちの雇い主、でしょう?」
全力で幻術を起動し、相手の認識に介入する。
「……あ?確かにそうだった、ような……?」
「最後の命令よ。ほら、《《死になさい》」
眼前の大男が泡を吹いて倒れ込む。
近辺にはこいつしかいない。
あとはこいつの乗ってきた宇宙船を探すだけだ。
「……今のは、君が?」
「………………ええ、その通りです」
背後に現れた人影を警戒するが、おそらく相手が動けば私は間に合わない。
私は観念して彼女と会話をすることにした。
「この星で何が起こっているのか知らないか?」
「この星では……」
私は彼女に私の一族についての知り得る全てを話した。
「……本当に、君の一族のほぼ全員が手を血に染めていないと?」
「えぇ、誓って私たちの一族でその手を血に染めたのは、最初に戦場にて力を振るった一人と、たった今二人の敵を殺した私のみです。…………もしかしたら、この戦場で抵抗をした者はいるかもしれませんが」
「──そうか。ならば、待っていろ、私が死んでいったお前の同胞の仇を取ってやる」
彼女は勇んで戦場へ向かおうとしました。
「…待ってください。貴女の、名前は?」
「…………巡海レンジャー。それだけ覚えてくれ」
「ならば、私もその名を名乗ることはできるでしょうか」
「──え?」
「我が同胞は既に亡く、求めるものもありません。故に、貴女への恩を、私はその名を名乗ることで、そして巡狩を成すことで返したい」
「……そうか。いいんじゃないか?私は認める。だが、今はここにいろ。走り尽くしだったんだろ?お前、まともに立っている体力すら無いじゃないか」
そう言って巡海レンジャーはその場を去った、結論から言うのならば彼女は失敗した。
数の暴力の恐ろしさだったのか、それとも弘法にも筆の誤りというものなのかは私にもわからないが、彼女は敵戦力の半分ほどを削ったのちに生き絶えた。
ただ一つ確かのは……残りは、巡海レンジャーの名前を受け継いだわたしがやるべき課題だということだ。
先程、私たちの扱う幻術では百人以上の規模の殺戮を起こすのならば長い時間を費やした鍛錬が必要だと私は述べた。
そして私は、すでに
その日、スターピースカンパニーと、一時的に彼らの提携していた複数組織の構成員、総合三千人以上が一日にしてその命を落とし、私は自由を手に入れた。