転生TS巡海レンジャーさん 作:─────
「……はぁ、結局ロクな成果も得られなかったね」
「申し訳ありません」
宇宙ステーションヘルタで起こったトラブルを軽く解決した私は、彼女の研究にできる限りの協力をしたが、その進捗は芳しくない。
そもそも、私たちの種族に関する記録が少ない上に、検体となる生存者が私たった一人なのだからそれもしょうがないだろう。
そうこうしているうちに、私の期限である三年がそろそろやってくる。
私はとある星の少女との約束を果たすため、宇宙ステーションを発たなければならない。
「なるべく早く帰ってきてね、続きをするから。」
「心得ました。あなたとの友誼に誓って、出来る限り早く帰ると約束します」
そうして宇宙ステーションを離れた私は、かつて少女と約束をしたその惑星へと再び降り立った。
しかし、少女が住んでいたその家は既に無く、そこにいた少女の行方すら誰も知らなかった。
私は失意と共に立ち尽くし、しばらくして考えを改めた。
人は忘れることで前に進むのだから、彼女がこの場所を捨て去って私を忘れたことで前に進んだらなら良いではないか、と。
そんな時、背後から声をかけられた。
「おにいさん?誰を探してるの〜?」
その声は聞き覚えのある、あの日の少女のものに聞こえた。
振り返ると、そこにいたのはあの日の少女だった。
服装は変わり、顔立ちも少し変わったが、彼女を見間違うことはない。
「……君を探していたんだ。三年前の約束、覚えているか?」
「ざぁんね〜ん!あなたが約束した女の子は……もういなくなっちゃった!」
「じゃあ、君は?」
「私?私は花火!」
「……なら花火さん?君は何故、他の誰も知らなかった少女の行方を知っているのかな」
「……むぅ、わからない?
そうか、と少しの悲しみと共に理解して納得した。
彼女は
「そうか、仮面の愚者か」
「こんな花火は嫌い?」
「君が愉悦の為に無辜の民を殺すような真似をしない限り、私と君は未だ友人だよ」
「──!やったぁ!それじゃあ、花火と一緒に遊ばない?」
「いいよ。何をする?」
花火の表情が愉悦に歪む。
「……──アハハっ!今の花火はね、こうやって遊ぶんだよ!」
花火の体が分裂し、それぞれが新たな花火となって、六人の花火が私を取り囲む。
彼女たちは皆おもちゃのような拳銃を手に持ち、それを私へと突きつけている。
「……私の幻術を三年前に見せただけで盗むなんて、才能があるとしか言いようがない。──だけど詰めが甘い。ソレはこうやって使うんだ」
私の意図するままに、ヒトの認識する世界の像が歪み、崩れる。
無数の炎が私たちの間を通り過ぎ、星が落ちる。
体勢を崩した花火を支えたのは思考する小石とそのかけらの集合体。
私が作り出す幻の前に、花火の作る幻であった六人の花火は消え失せた。
「……すごいけど、まだ私だって負けたわけじゃ──」
「……本当に?──君の握っているそれは未だ君のおもちゃのままかな?君の目の前に、私はいるのかい?そして、いつまでここが私が全力を出しきれない市街の真ん中だと思っているのかな?」
「……っ!?」
彼女が現れた直後のことだ、私は彼女を幻の中に呑み込み、彼女が私に従って移動するように仕向けた。
私は立ち止まって会話しているように思い込ませながら、彼女を街外れの空き地へと誘導したのだ。
幻術においてはプロフェッショナルと言って過言ではない私との間に横たわる残酷な実力の差を実感した花火は、つまらなさそうな顔で両手を上げた。
右手の人差し指にはおもちゃの拳銃が引っ掛けられて揺れている。
「こうさ〜ん、本気で潰しに来るなんてつまんなぁい」
「ごめんよ。でも、これは人前でやるような遊びじゃないからね。─────さて、まだ遊ぶかい?」
「……巡海レンジャーとは思えない顔してるよ、お姉さん?」
「ふふ、故郷で遊んだ日々を思い出しただけだよ。……さて、花火?これから時間はあるかい?」
「あるけど……」
「それなら、私が直々にコレの使い方を教えてあげよう」
こつして、私と花火、巡海レンジャーと仮面の愚者の長くて短い数週間が始まった。