親愛度+6000   作:名無しの権左衛門

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ナリタブライアン

 おはようございまっす! 去年入社したばかりの新人トレーナーでございまっす!

あれから一週間経過したんだけども、マックイーンさんがもうねおかしくなっちゃってね!

今デジタルさんと一緒に、体育館第一倉庫の掃除を行っておりますねえ!

 

 だいぶなげやりなテンションだとお思いでしょう。

でも、許してください!

うちのマックイーンさんは、うちのチームの中でも出世頭なんです!

今抜けられたら困るんです!

 だから缶詰にして、外界の情報をシャットアウトするんすね。

世の中世知辛いっすわ。

 

<ああああ、芦毛最高! マックちゃん最高っす!

 

 おいこら、カフェさんのおともだち。もといサンデーサイレンス。

なにマックイーンさんに色目使っとんじゃこら。うちの最高戦力ぞ。

 

<よいではないか、よいではないか

 

「窓閉めてるているのに、風が吹くの、おかしくありません?」

「気温差による循環風だろうよっと」

「トレーナーさん、さっきから何かぶつぶつおっしゃってますが」

「気にしないで、デジタルさん」

 

 今日はこっちの掃除だけど、明日はプールの掃除だあ。

色んな場所を転々としているけれど、これも理由があって行っていることなんだ。

 御存知の通り、先週の天皇賞・春という名誉あるレースを中途半端にし

してくれやがったトレーナーに目を奪われたマックイーンが、

惚気の言葉をチーフに言い放ってしまった。

 

 まあ、若いしイケメンだし。仕方ないと思うよ、うん。

でもね、それをよりにもよってチーフに言ったのはまずかったねえ。

彼、図体が筋肉質で大きいのに小心者なんだからさ。それを言ったら傷つくに決まってんじゃん。

自分がその時いればフォローできたかもしれないのにな。残念だ。

 まあ目の前でお前の指導は間違ってる発言だから。

それでチーフが担当している子の一人は、自分に告げ口してくれたから

今ここで掃除をやるにいたってるってわけ。

 

「マックイーンさん、あのトレーナーのどこがいいのかな?」

「はい!彼は――――」

 

 何か情報を引き出そうとしたけれど、出てくるのは外見ばかり。

声がいいとか、思ってることを理解してすべての要求に応えてくれるらしい。

はえー空気を読む力に長けてるんすね。

だったら今大事な時期にあるG1級ウマ娘たちに近づくなって話だよ。

 最初の二回は、彼を知らなかったからやってしまったこと。

しかし無知は罪だ。許されるもんでもない。

気をつけるしかないな。

 

「……トレーナーさん?」

「ごめんね、デジタルさん」

 

 ジト目を向けてくるデジタルさんに、ちょっとでも情報がほしかったんだと平謝り。

毎日少しずつでもウマ娘の尊いすがたを目に焼き付け、トレーナーの幻惑から

開放されようと頑張っている。

だが、まだまだ先は長いようだ。

 

「ふわっ、こ、これは!」

「え、何!?」

「カレンチャンさんとアドマイヤベガさんが、ぱかチューブ生放送してるゥ!

アドベさんが口ではイヤイヤしておきながら、カレンチャンさんのアプローチに

心のなかではウキウキになってる姿! 尊い! 推せる!」

「心の中ってわかるの?」

「目が完全に興味を持ってるんですよね! 古き良きツンデレってやつです!」

 

 ツンデレはもう古くないか? 

たしか暴力系ヒロインにありがちな言葉だった気がするんだけど……。

 流石にホコリが蔓延しているので、窓を開けているのだけれど、

棚の上にあるホコリを取るために跳び箱に乗っているデジタルさん。

 

「おや、あれは」

 

<マックちゃん、ハスハス

 

 芦毛スキーの変態なマイ・フレンドが、風を巻き起こしているのを無視する。

嫌な予感がしたからだ。

ウマ娘用の跳び箱は、ものすごく重い。

それを三角飛びで上まで飛び上がって、デジタルさんの隣へ赴く。

 すぐに外界を見渡した! いたあ! 緊急離脱!

即刻目隠しして飛び降りたぞ!

くっそ足の裏いてえ!

 

「どうしましたの!?」

「あいつがこっちを見ている! すぐに退避するぞ!」

「えっ、掃除は」

「全責任は自分にある。大丈夫だ、行こう!」

 

 退避するときデジタルさんは、恐怖で身がすくんでいたのですぐにおんぶする。

そして今回の被害者であるマックイーンさんは、どうも今の状況に身が入っていない気がするんだ。

やはり遠目だったからか、完全に視界が重なりきらなかったか。

あ、いや。ウマ娘の目って、基本的に良かったんだっけか。

 じゃあこの仮説は意味をなさないな。

目を合わせなければどうにかなる理論。

多分目にいれるだけでも、毒になって精神を蝕んでしまうんだろう。

 

「マックイーン、待っておくれよお」

 

 げえ、気持ちが悪い男の猫なで声!

だがしかし、もともとそういうホスト風味の囁くような、ぞわぞわする声質だから

気持ちが悪いのベクトルが違うぅ。

 

「!」

「振り向くんじゃないっ。こっちを見るんだ、マックイーンさん!」

 

 視界を遮るために振り向いた先を、自身の腕が目に入るよう方向性をあわせる。

しかし、マックイーンさんは立ち止まる。なんで!?と思うが、腕を掴まれたので

こちらも急停止せざるを得ない。

どうして!? 早くしないと。

 焦る気持ちをなるべく抑えたかったが、ソレ以上にマックイーンから放たれる嘲笑

に上がった熱が下がる。

 

「臭いんですの。私に、不衛生な身だしなみで近づかないでくださる?」

「え、え」

 

 毎日御風呂に入っているし、毎日汗を流して貯まる尿素を開放しているんだけど!?

確かに汗をかいているさ。だけども、これは掃除をしたからであって。

 言い訳が脳裏に浮かぶ。

しかし、その固まっている間に、マックイーンさんはふっと蔑視してきて腕を払い除けていく。

 

「旦那様❤」

「マックイーン、おまたせ」

 

 聞きたくない。

 

 ただ逃げた。

 

 

 チーフが苦労してメジロ家最高のウマ娘と称されるマックイーンを口説き落とした。

だというのに。たった目を合わせただけで、すべてが覆るのかよ。

 ただただ、絶望するしかなかった。

 

 チーフや自分以外にもいる先輩サブトレーナーが、

マックイーンさんを三冠最後の菊花賞に間に合うよう、全力で日程を組んで

菊花賞を優勝させた。

 そこから、天皇賞・春の二連覇を眼の前で見せつけられ、それを支え続けた

みんな。それを見て、最高のチームでありトレーナーがいると思って、

自分もお手伝いしたいと門戸を叩いた。

 

 自分も三連覇に向けてお手伝いをした。マックイーンさんだけじゃない。

他にもいろんなウマ娘がいる。彼女たちを勝たせるために、毎日頑張っている。

だというのに。

 

「トレーナーさん」

「なんだい、デジタルさん」

「あの……わたしを正式に、あなたのウマ娘にさせてください」

「……は?」

「い、嫌でしたか?」

「嫌じゃないけど」

「では決まりということで!」

「本当に自分でいいのかい? まだ新人だし、サブだし。

そもそもデジタルさんだって、まだ本格化していないじゃないか。

本格化する間に、もっといいトレーナーが」

「ソレ以上は言わないでください!!」

 

 逃げてきた先は、エアグルーブ副会長といった生徒会メンバーや

ニシノフラワーさん・セイウンスカイさんがお世話している花壇。

ここにある水やり休憩スポットであるベンチに、

デジタルさんを座らせて休憩していた。

 タキオンさんは顔見知り、カフェさんはおともだちと合わせてくれた恩人、

デジタルさんは巻き込んでしまった知人。

三人をケアするのは当然である。

 ただ、この内二人が、自分の行動スケジュールに

合わないだけで、まだ学園に所属している。

 

 まあ冷たいようだけど、精神を病むほど致命傷じゃない。

けれど、今回はきつかった。

まじできつかった。

 

 確かに草葉の陰やってきたけどさあ!

 

 自己否定とか色々やって頭を抱えていると、

デジタルさんが顔を覗き込んできて、先程の顛末だ。

ありがたいけど、同情はもうやめてくれ。

 

「私は、あ な たがいいんです!」

「そっか。ありがとうね」

「……あ、あとですね」

「?」

「トレーナーさんのにおい、わたしは好きですよ」

「いい子だねぇ」

 

 優しすぎる子だよ、ほんとに。

ついつい頭を撫でてしまう。

基本的に触れることはご法度なんだ。

しかし、体重をしっかりと測らない子とか、身長をごまかすチームのウマ娘には

きちんと測れるよう調整をしている。

 たのむから、腹囲を計測する時にお腹を引っ込めないでくれ。

筋肉量と脂肪量を計測できないからさあ。

 

「えーと、ゲノハラでしたか?」

「よくわかんないけど、大丈夫」

 

 

 その時だ。

 

 

<朗報だぞ、きょうだい!

<マックちゃんをたらしこめやがってえええ

<私怨はどうでもいいから、はよ話してやれ!

 

 おや?

きょうだいっていうのは、たぶんミスターフリスキーだな。

で、マックちゃんは、サンデーサイレンス。

強制的に話題転換かつ、サンデーサイレンスの言葉を止められるのはイージーゴアか。

どうしたんだ?

 

<あの新人トレーナーがウマ娘をスカウトしたぞ!

 手に入れたのは、ナリタブライアンだ!

 

 

 ああ、あの子か。もともともやしっ子だったけど、本格化したから運動量を増やして

怪我をしてしばらくリハビリを手伝った子じゃん。

夜のほうが涼しいからって、誰もいないトラックで走られたら困るんだけどな。

 




先ほど調べたんですが、競技場6500回ではなく9500回でした。
テンキーの打ち間違いですね。

オレと目を合わせたな! これで縁(親愛度+6408)ができた!をやってるのが、新人トレーナーです。
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