やあやあ、去年入社して一年しか経過していない新人トレーナーだよ。
今までもいそがしかったのに、あの新人トレーナーが来てからもっと忙しくなったぞ。
なんてったって、あのカフェテラスで食らったあの目。
心に手を突っ込まれて、弄[まさぐ]られる感じの嫌悪感を抱いたんだ。
こいつの目は天性のものかもしれない。
だからどうこうするには、本人を退職させないといけないんだけど、
そこは日本の労働者に関する法律が働いている。
流石に教え子に手を出したなら、それでしょっぴけるが
当の本人は手を出していない。出されていて、拒否しているがということで
自身の正当性を証明しているんだ。
苦しいだろ理由が、どう考えても。
あれから色々と聞いて回ったんだけど、やはりまだ1ヶ月。
あの新人トレーナーのことについて、ほとんど情報が出てこなかった。
どういうことだ?
トレーナーの立ち位置によって扱いは変わるが、今回の一ヶ月冒頭の
集会に参加してないのはおかしい。
言及しても、知らないの一点張りだった。
わからない。あの新人トレーナーは、本当に入社しているのか?
いや、それだったらウマ娘は、不審者だってわかる。
現に自分もトレーナーバッジをつけていることを確認している。
だめだ。情報がなさすぎて、判断できない。
とにかく、生徒会へいこう。
あの新人トレーナーはよく正門前広場で、勧誘のたちんぼをしていたからね。
少しでも情報が入っているだろうし、ナリタブライアンさんの件もある。
うってつけだろう。
そう思って生徒会室の前に来たのだが、なにやら様子がおかしい。
厳粛な生徒会室周辺が……、おともだち関連で空気の雰囲気を感じれるようになってから、こういう違和感をなんとなく判断できるようになってる。
だからこそ、ピンク色の雰囲気に違和感しかないんだ。
生徒会室の扉に耳を傾ける。
「たわけ❤」
「パパ❤」
!?
これは、現行犯いけるのでは?
くっそお、レコーダーがない。
「縺九▽縺ヲ縺ョ縺医↓縺」
うん? 聞き取れなかった。
何だ今のノイズ。英語じゃない。霞がかかったような。
「縺阪∩縺溘■ 縺薙□縺?? 縺、縺ェ縺後j 縺励e縺?d縺」
ぜんっぜんわからん。
「縺吶∋縺ヲ縺ョ縲?縺ゅ>繧偵??縺ゅ▽繧√◆縺」
????
「まったく、わたしの杖はどうしようもないな!」
「ルナもね、縺ィ繧くんのお手伝いをしたいな!」
うーん、声からしてシンボリルドルフ会長とエアグルーヴ副会長か。
おかしいな、トップガンさんから聞いた話だと、見るだけじゃ
ダメだというのが判明している。
まさかと思うが、あの目は任意なのか?
精神汚染がとんでもないから、あのトレーナーと鉢合わせても目を合わせないようにしている。いや、目を合わせないだけで、鼻や額といった部分を注視して逸らさないようにして、少しでも目を見ないようにしたんだ。
任意か。そうじゃないと、今ごろたくさんのウマ娘に囲まれているはず。
そう考えると、あながち嘘ではないのかな?
「そこでなにをしているんだ?」
「はっ」
聞くのに夢中になって、ナリタブライアンさんの気配に気付けなかった。
今の自分は弁明できないほど、不審者としてみられる存在だ。
これはだめだね。
「ブライアンさん、久しぶりですねえ」
「お前が敬語なのは気持ちが悪いな。このことは誰にも言わないから、安心しろ」
「うっす。感謝します、姉御」
「だからやめろ」
ナリタブライアンさんは耳を生徒会室の方へ向けると、ああなるほどといった得心
したようにこちらへ向き直る。
「ちょっと面を貸してもらおうか」
「わかった。行こうか」
彼女の後をついて行って到着したのは、本館の屋上だ。
ここはちゃんと柵がついている開放された場所。風通しがよく、近くの山の吹き下ろしが涼しい場所で、夏場はよくここにパラソルが設置されて涼むことができるんだよな。
まあ、真夏日は流石に熱中症で倒れるので、屋内へ避難するんだけども。
「さて、あのトレーナーについて話そうか」
「ついでにあの生徒会の惨状も頼む」
彼女の話によると、生徒会室にいきなりきた。
そしてその場にいた生徒会のメンバーを見渡したのだという。
その時、鼻血を盛大にぶちまけたシンボリルドルフ会長とエアグルーヴ副会長が、
性格が変わったようにあの新人トレーナーへの対応を変えたらしい。
まあ、幼年の頃の思い出を口に出しているから、ほんとうにもうどうしようもないんだろうな。
しかしナリタブライアンさんは、あの新人トレーナーにぞっこんじゃない。
いったいどういう風の吹き回しなんだろうか。
「私のことが気になるか」
「気にならないといえば嘘になるね」
「単純な話。胡散臭い」
「ようは気持ちの問題と」
「端的に言えばそうだ」
上に立つウマ娘を取り込んで万全と言える体制らしい。
ここはウマ娘を競走バに育てる場所。本来なら粗相をしたトレーナーは、
即座に更迭されて豚箱へぶち込まれる。
しかし昔から論文では、ウマ娘はトレーナーがいることで力を発揮する。
だからこそ、ウマ娘がそのトレーナーを必要としている間、
仮釈放みたいな扱いを受けるらしい。
だが、その必要とするウマ娘が学園のOBとか関係なく卒業すると、
そのトレーナーは鉄の檻へ投函されるとのこと。
「まあ、我慢のしどきだな。それにあいつには、私の乾きを癒やす手伝いを
させる条件つきの採用だ」
「あ、顔採用じゃなかったんだ」
「潤うことのなかった私の世界を変えてくれようとしているからな。
普段の態度は、まあ仕方ないんじゃないか」
「ストレス発散ねー」
少しばかりゆったりとしているが、カンカンと何者かが階段を登ってくる音が聞こえる。誰かと思えば、あのシンボリルドルフ会長に懐いている子だ。
この子と交流した一番の思い出は、これしかないなぁ。
「あれ、ミスターはちみーさん、どうしたんだい?」
「はちみー!? ボクはトウカイテイオーだって、なんど言ったらわかるの!?」
「グッボーイグッボーイ、落ち着き給え」
「落ち着いてらんないよお! カイチョーがおかしいんだよ!」
「会長がおかしいのはいつものことだろう?」
「ブライアンまでなにさ!」
ウマ娘の幸福を願っている二人が、自分たちの理想を見つけられたんだからいいじゃないか。今回自分は何もしてないしね。
さて、あの新人トレーナーの被害が増えないように、はちみーさんも
距離を取ってもらえるようにお願いしようか。
「お願い!」
「仕方ないやつだな。あんたはどうする?」
「行こう。これも先輩トレーナーの努めだからね」
なお、御しきれていないので、この肩書なんざ意味はない。
さてはちみーさんのあとをついて行ってみると、例新人がタキオンさんとカフェさんに
連れて行かれている場面に遭遇する。
会長と副会長は、なにやら悔しがっている表情をしているぞ。
ここは一つ意識をそらしてみようか。
「会長と副会長ではあーりませんか」
「っ、おや、おやぁ、きみか。3日ぶりだね」
「!? あ、ああ、貴様か。どうかしたか」
「それじゃあまた。俺と一緒に遊ぼうな」
「さあさあ、未来の伴侶としての特訓をしようじゃないか」
「私と共に、来たるべきときのための修行をしましょう」
新人トレーナーがタキオンさんとカフェさんに、両手に花状態で
この場から退場した。
そしてこの妙に荒んでいる場で、ごまかすように口遊んでいる
シンボリルドルフ会長とエアグルーヴ副会長。
まあ顔見知りにこういう普段見せない情緒を見せたと思ったなら、
少々間が悪いといらついただろうな。
「お二人共、あの新人トレーナーと何を話していたのかな?」
「何ってそれは……縺励s縺シ繧翫⊂縺上§繧?≧(シンボリ牧場)で遊んでもらっていたことかな」
「私は、繝弱?繧カ繝ウ繝輔ぃ繝シ繝?(ノーザンファーム)で、世話になった」
「なるほど、昔からの縁ね」
すまない。いちばん大事な部分が、全く聞き取れなかった。
おっかしいな。今までこんなことなかったというのに。
情報が隠されているんだけれど、ここでもっとも大事なのは
なぞの聞き取れない言葉が出てきたことだ。
これを読み解けば、きっと新人トレーナーが
扱っている目の根源がわかるはず。
この後シラフに戻った生徒会メンバーやミスターはちみーさんと一緒に、
はちみつを食べに行った。