◇◆ デパートのランジェリー売り場、摩耶の最大の挑戦 ◆◇
摩耶は、ランジェリーの棚の前で立ち尽くしていた。
いざ自分で選ぼうと思うと、どれがいいのかわからない。
(……ど、どうする? どれ選べばいいんだ?)
可愛いもの、シンプルなもの、大人っぽいもの——種類が多すぎる。
目の前に広がる華やかなランジェリーの数々を前に、摩耶は戸惑いながらも、一つ、また一つと手に取ってみる。
(……これとか、可愛いっちゃ可愛いけど、アタシっぽくねぇかな……?
でも、こういうのってやっぱ大人っぽい方がいいのか?
いや、そもそも、どの基準で選べばいいんだよ……?)
悩む摩耶を視界の端で捉えながらも、高雄と愛宕、そして店員はあえて声をかけない。
三人は自然に談笑を続け、摩耶の方を見ないように振る舞っていた。
「ねぇ、愛宕。この前提督が食堂で眺めていた雑誌、ちょっとおしゃれなインテリア特集だったわよね?」
「あら、そうだったかしら? でも、確かにうちの提督さん、シンプルなデザインの家具が好きそうよね♪」
「ええ。摩耶の家も、落ち着いた雰囲気のインテリアでしたわね」
(……おいおい、なんで提督の話なんだよ……!)
摩耶は心の中でツッコミを入れつつ、ちらっと姉たちの方を盗み見る。
二人とも、こちらには一切気を向けていないように見えるが……わかる。
視線は向けられていなくても、自分のことをしっかり把握しているのが伝わってくる。
(……これ、絶対アタシのこと見てるよな……!?)
摩耶はさらに一つ、気になったものを手に取ってみる。
シンプルなデザインだけど、繊細なレースが施されていて、どこか可愛らしい。
「アタシでもこういうのアリか……?」と、じっと手にしたランジェリーを眺めていた——そのとき。
「あら、摩耶?」
高雄が声をかけた。
摩耶はびくっと肩を揺らし、思わず手にしたランジェリーを背中に隠すような仕草をしてしまう。
「な、なに!?」
「ふふっ、気になるものがあったの?」
愛宕も、絶妙なタイミングでにっこりと微笑む。
(……なんで今!? いや、ぜってぇ気づいてただろ!!)
摩耶は動揺しながらも、ちらりと手に持ったランジェリーを見下ろす。
「……べ、別に? ちょっと、見てただけだし……」
「ふふふ、摩耶、恥ずかしがらなくてもいいのよ?」
愛宕が少し身を乗り出して、摩耶の手にしたランジェリーをちらっと見る。
「へぇ、これを選んだのね♪ シンプルだけど、繊細なディティールがあるデザイン……ふふっ、摩耶らしくて、素敵だと思うわ♪」
「っ……!」
摩耶は顔を赤らめ、つい視線を逸らす。
でも、愛宕の言葉がなんとなく嬉しい。
「……んじゃ、これにすっかな……」
「でも、せっかくだから、もう少し他のものも見てみない?」
「え?」
「ランジェリーってね、服と同じで、身につけたときの雰囲気やシルエットが大切なの。摩耶にぴったりのものが見つかるように、もう少し選んでみましょう?」
高雄が優しく微笑みながら、そう提案した。
摩耶は少しだけ考えた後、手にしたランジェリーをそっと棚に戻した。
(……わかったよ、もうちょっと、選んでみる……)
心の中で、ほんの少し、素直になる。
ランジェリー選びという未知の領域に踏み出した摩耶。
その背中をそっと押しながら、姉たちは温かく見守っていた——。
◇◆ 摩耶、選ぶ決断 ◆◇
摩耶は、ランジェリーの棚の前で、二つのブラとショーツのセットを手に取っていた。
一つは、眩しいほどに純白のランジェリー。
(……愛宕姉がつけてた、あの白いブラ……)
脱衣所で見たとき、繊細なレースが施されたそれが、愛宕の柔らかな雰囲気と完璧にマッチしていたのを思い出す。
もう一つは、深く艶やかな黒のランジェリー。
(……高雄姉の、黒……)
凛とした美しさを纏い、大人の女性としての魅力を最大限に引き出すようなデザイン。
高雄が纏っていた姿を思い出すだけで、なんだか少しドキドキしてしまう。
(……アタシに、どっちが似合うんだろ……?)
「摩耶?」
高雄の優しい声が響く。
「悩んでいるの?」
「……え、いや……」
「あら、白と黒……どちらも素敵ね♪」
愛宕が微笑みながら、手にしたランジェリーをちらりと見た。
「ふふ、どちらか一つに決める必要なんてないのよ?」
「……え?」
「白と黒、どっちも気になるなら、両方試してみればいいのよ?」
摩耶は一瞬戸惑ったが、姉たちの温かい眼差しに背中を押され——
「……わかった、試着してみる」
摩耶のランジェリー選び、本当の挑戦が始まる——!